ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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ちょっとした気分転換に書きましたー









注:この話は、リアス×イッセーが好きな人には微妙な展開になるかもしれません



















警告はしましたよ? それではご覧ください


番外編 IFルート もし、兵夜が次元のはざまに飛ばされなかったら・・・

リアス・グレモリーは部屋の隅でうなだれていた。

 

今、冥界は窮地のただなかにある。

 

旧魔王派最後の幹部。シャルバ・ベルゼブブが英雄派の保有する神滅具を暴走させた。

 

その結果生まれた獣鬼というモンスターにより、冥界は大いなる危機に瀕している。

 

なにせ、最上級悪魔が眷属をフルメンバーにして仕掛けても足止めが限界なのだ。

 

当然動ける戦力は全員が何らかの形で動くことを命じられており、若手眷属でも優秀な者たちで編成されているグレモリー眷属も出陣を要請されていた。

 

 だが、そこに動こうというものはほぼいなかった。

 

 別行動をしているロスヴァイセやギャスパー、ゼノヴィアはわからない。だが、残りの眷属でまともに動けるのは祐斗ぐらいだろう。

 

 その理由は、まさにその獣鬼が生まれたその時にこそある。

 

 獣鬼を生み出したシャルバは、その勢いでオーフィスを捕縛してハーデスに引き渡そうとしていた。

 

 それを阻止するとイッセーが言って聞かず、仕方なく彼を次元のはざまにおいてきたのだ。

 

 むろん、すぐに連れ戻すべく龍門《ドラゴンゲート》を開いたのだが、そこにイッセーが戻ってくることはなかった。

 

 戻ってきたのは兵士の駒八つのみ。そして、そういう事例が起きた場合の生存率はゼロ。

 

 さらに、サマエルの毒が検出されたことでその可能性は非常に大きくなった。

 

 あの白龍皇ヴァーリ・ルシファーがなすすべもなく倒れ、そして無限の龍神オーフィスすら瞬く間に力を奪われた。そんな強力な力にイッセーが耐えられるとは思えない。

 

 その事実に、グレモリー眷属は機能不全に陥った。

 

 人を惹きつけ魅了するドラゴンの特性に、兵藤一誠自身の人柄は、グレモリー眷属の精神的支柱だったといえる。

 

 それが壊れればどうなるか。まさに、今の現状がその答えだった。

 

 もうすでに、リアスにとって冥界の未来はどうでもよく感じられた。

 

 彼はいない。彼がいない。兵藤一誠がいない世界が、これほどまでに色あせて見えるとはさすがに驚いた。

 

 なら、このまま世界が滅んだとして、それがどうしたというのか―

 

「・・・ものの見事に憔悴してますね、部長」

 

 と、辛辣な声が静かに届く。

 

 顔を上げる気力すらないが、リアスはその声の持ち主が誰かぐらいはすぐにわかった。

 

「何の用、兵夜?」

 

「反撃作戦のための参加要請が届いています。グレモリー次期当主として、こういう時こそ率先して参加してくれないと困りますよ」

 

「知らないわ」

 

 どうでもいい。

 

 心底心からそう思い、リアスはそのまま横になろうとした。

 

 その胸倉を、兵夜は遠慮なくつかんだ。

 

「いい加減にしろよ、馬鹿主」

 

 遠慮なく怒気をまき散らして、兵夜は静かに炎を燃え上がらせる。

 

「あれほどグレモリーの誇りだの上級悪魔の意地だの気にしておいて、男一人でこのざまか?」

 

「そうね。自分でもここまでとは思えなかったけど、当主の座はミリキャスに挙げた方がいいかしら?」

 

 いっそこのまま隠居でもしてしまおうか。

 

 そんなことが本気で思えてしまうぐらい、今の彼女はうつろだった。

 

 むしろ、兵夜がこれほどまでに仕事熱心になれていることの方に驚ける。

 

「貴方こそ、あなたにとってのイッセーがその程度だったことに驚きね。寝込んでないことが信じられないわ」

 

「寝込むさ。ただし、それはこの騒ぎが終わった後だ」

 

 突き放してから、兵夜は天を仰ぐ。

 

 その目に映っているのは天井ではない。そのさらに向こう側を見透かしていた。

 

「ここであいつがすることなんてわかりきっている。だったら俺がその分まで引き受けるしかないだろう。・・・そして―」

 

 ―ハーデスはいつか殺す。

 

 薄ら笑いすら浮かべてそう告げるその姿は、リアスが想像する兵夜にとても近い。

 

 ああ、彼はやはりそういうタイプだ。

 

 この男の恩讐に火をつけるとは、ハーデスも愚かなことをしたものだ。

 

 だが、自分には関係ない。

 

 心の大事なところが空っぽだ。もう何の熱も止まらない。

 

「・・・結局、処女を奪ってすらもらえなかった。何もかも馬鹿らしくてやる気になれないわ」

 

 だから見捨てるならお好きにどうぞ。と言外に告げ、リアスはそのまま横になる。

 

 そして少し静かな時間が流れ、ベッドがさらにきしんだ。

 

 何があったのかと思ってみてみれば、そこには兵夜の姿があった。

 

「・・・何のつもり?」

 

「そんなに処女が残ってんのが嫌なら、俺が奪ってやろうか?」

 

 怒気がしっかりと籠っている言葉だが、しかし同時に何かほかの感情があるようにも感じる。

 

 ただ一つ言えるのは、この男のことだからいいと言ったら本気でやることだ。

 

「そんなに欲しい? あなたこそ、イッセーがいなくなった空洞を埋めたくてたまらないんじゃない」

 

「・・・ああそうだな。それであんたが動けるなら、それに越したことはねえよ」

 

 そのころになってようやく気付く。

 

 兵夜の体が少しだけど確実に震えていた。

 

 ああ、この男は本当につらいのだ。

 

 そのくせ、自分の女たちはちゃんと仕事をしているから吐き出すところがない。

 

 素の弱音が、駄目な主に対する怒りという形で吹き出しかけている。

 

 ・・・なるほど。確かに自分は今あまりに情けない。

 

 下僕がこれほどまでに限界を超えて立ち向かっているというのに、情けなく部屋の隅でうずく持ったままなどと愚かなことだろう。これでは朱乃たちも立ち上がりようがないだろう。

 

 ああそうだ、イッセーなら確かにこの事態にすぐにでも動くだろう。

 

 だけど、自分はそんなに強くない。兵夜みたいに強がりもできない。

 

 だから―

 

「・・・存分に貪りなさい。頑張ってる下僕には褒美を与えないといけないもの」

 

「やっぱりあんた正気じゃねえよ。イッセーにどう報告する気だい?」

 

「ええそうね。私は今全く正気じゃないの。可愛いけれど好みじゃない下僕で純潔を汚せばショックで正気に戻るかもね?」

 

 空っぽの心を何かで埋めれば、確かに少しはごまかせるだろう。

 

 このままふさぎ込むより、やけになって散々暴れた方がすっきりする分何かが変わるはずだ。

 

 ああ、それに―

 

「・・・貴方もスッキリしなさい。そんな泣き出しそうな顔で迫られたら、可愛い下僕を断れないじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・結局、処女は奪われなかった。

 

 兵夜は本当にイッセーに対しては義理堅い。それともヘタレというべきなのか。

 

「・・・後ろの方だけ開発するだなんて、あなたそういう趣味があるの?」

 

「いえ、その、前は、イッセーの顔がちらついて・・・」

 

 性的興奮とはまったく違う意味で、兵夜は顔を真っ赤にしていた。

 

 どうやらこの男、今更だが割とヘタレだったらしい。

 

 かなり罪悪感が残る最悪の初夜だったが、おかげでだいぶ冷静になれた。

 

 あえて悪行とか悪いことをするのもいい経験だ。少なくとも、あのままふさぎ込んでいるよりかはよっぽど健康的だろう。

 

 最低でも、とりあえず冥界を守るための動きを取ろうという気分にはなれた。

 

「・・・お礼を言うべきかしらね」

 

 おかげで少しは踏ん切りがついた。

 

 自分が踏ん切りをつけなければ、きっと眷属も動けないだろう。

 

 兵夜には悪役をやってもらった。主といて非常に情けないことだ。

 

「別にいいですよ。アンタらがこういうのに向いてないのはよくわかってる。適材適所ってやつですし、その分利権を頂ければねぇ」

 

 いたずら小僧の笑みを兵夜は浮かべるが、しかしどこかぎこちない。

 

 それがわかるぐらいには余裕ができたから、リアスは兵夜を抱き寄せた。

 

「・・・すいません部長。俺の対物ライフルがカートリッジを装填しそうなんでストップストップ」

 

「あら、今更だし好きにしていいわよ?」

 

 そう茶化す余裕ができたのは、間違いなく彼のおかげだ。

 

 そう、毎回毎回彼には苦労を掛けている。

 

 だから、まあ。

 

「・・・今度はあなたの番。全然吐き出せてないんだから、今からしっかり吐き出しなさい」

 

 その言葉に、

 

「・・・うぅ」

 

 突然の事態の連続に、ずっと対処をし続けてきた。

 

 グレモリー眷属がほぼ機能停止しているなか、たった一人で大量の仕事をこなした。

 

 グレモリー眷属で一番イッセーの死に堪えて、それでもイッセーに胸を張れるように無理をし続けてきた。

 

 弱い子である兵夜は、一気にたまったものを吐き出した。

 

「ぅう・・・ぐ、うぁあああああああああああっ!!!」

 

「ごめんなさい。本当にあなたによりかかってたわ。だから、今だけはしっかり寄りかからせてあげるから」

 

「イッセー・・・イッセー・・・イッセー・・・イッセー・・・っ」

 

「ええ、ホント馬鹿なんだが、イッセーの・・・イッセーの・・・馬鹿っ」

 

 主従は抱きしめ合って涙を流す。

 

 敵の首魁をめぐる仲間割れなんかに首を突っ込んで、挙句の果てに死んでしまった馬鹿男を怒って恨んで悲しんで。

 

 二人は、年相応に泣いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんでもってイッセーは生きてました。

 

「「・・・お、お、お、お、おかえりなさいイッセー」」

 

「ん? リアスも宮白も何か変なんだけど?」

 

 まったく素直に喜べなかった。罪悪感で死にそうだった。

 

 ・・・数日後、素直に二人は土下座付きで白状して、グレモリー眷属が一週間ぐらいぎこちなかったのはこれだけの話だ。




・・・兵夜は何とかことが終わるまでは頑張ると思うんです。

だけどいっぱいいっぱいである意味誰よりもダメージでかいと思うんです。









損な妄想のままに勢いで書いてたらなぜかこんなことに

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