ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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堕天使、複雑です!

 ・・・使い魔の練習も兼ねていろいろと飛ばしていたら、なぜか神社で小雪の姿を見つけた。

 

 なんだか気になったので様子を見に来たら、さらにイッセーの姿も発見した。

 

「・・・ものすごい気になるから興味本位でみるとすっか」

 

「すっごく同感! さーて、アニマルソウルでウサギの耳出して遠くから聞いちゃうよ~っと!」

 

 俺も魔術で聴覚を強化しながら少しずつ前進を開始する。

 

 神社に悪魔が入れるわけがないから、最悪の場合はナツミにカメラを渡して内部潜入をさせるとして・・・。

 

「・・・なにやってんだーお前ら?」

 

 いきなり見つかってしまいました。

 

「・・・青野小雪か。奇遇だな、イッセーを探してたらこんなところまで来ちまったよ」

 

 俺は速攻で白を切る。

 

 え? なんでだって?

 

 正直に言ったらなんか怪しまれるじゃん!

 

「・・・まあ気になるなら中に入れよ。ここはいろいろと例外って奴だから、悪魔でも中には入れるぜ」

 

 そういうと小雪はそのまま神社へと足を向ける。

 

「「・・・」」

 

 俺とナツミは顔を見合わせたが、とりあえずいうことを聞くことにした。

 

 確かに小雪の言うとおり、神社に入ることはできたが、何やら聖なるオーラが充満している気がするんだが。

 

「聖剣でもやってきたのか? ・・・壮絶に嫌な予感がするんだが」

 

「勘が鋭いな。・・・大天使ミカエルが、兵藤一誠に聖剣アスカロンを移植するんだよ」

 

 ・・・

 

 いま、とんでもないことが聞こえた気がするんですが?

 

 アスカロンっていうとあれだよな? ドラゴンを退治した聖人ゲオルギウスが持ってたとされる剣。

 

「・・・なあ、そんな物をドラゴンがもって大丈夫か?」

 

 明らかに危険な匂いしかしないぞ!?

 

「だいじょーぶだよ。魔王やアザゼルも手ーかしてるし、神器に融合させる形だから影響はないはずだ」

 

 小雪は対して気にもしてないのかそう適当に返すが、俺としてはものすごい心配なんだが・・・。

 

「でもでも、それってなんで? イッセーに聖剣渡して得することあるの?」

 

「同盟締結ってことで、赤龍帝を強化しようってことじゃねーのか? あたしはそこまで詳しく知らねーし興味もねーよ」

 

 だったら何で来た?

 

 そう思ったが、そんな俺の耳に小さな声が届いた。

 

 ほぼ同時に、小雪が一気に詰め寄ると俺とナツミの口をふさぐ。

 

「しっ! 静かにしてろ」

 

 ・・・どうやら、これが本題らしいな。

 

「・・・ええ、そうよ。神の子を見張る者(グリゴリ)幹部、バラキエルは私の父です」

 

 朱乃さんの、そう絞り出すような声が聞こえてきた。

 

 やっぱりか。

 

 ギャスパーは吸血鬼と人間の混血。しかも、超強力な神器を持って生れて家を追い出された。

 

 木場は、聖剣を扱えるようにするための実験の被験者。その後利用されて処分された。

 

 アーシアは、その神器の強力さゆえに教会から捨てられた者。さらに、それを利用しようとした堕天使に殺された。

 

 俺は、よりにも寄って前世の記憶なんてものを持っている。しかも、神の死が遠因となって異世界からやってきたというスペシャル仕様だ。

 

 そして朱乃さんは朱乃さんでものすごいビッグな堕天使の血をひいているときたもんだ。

 

 回転寿司の時からうすうす感づいていたが、わけありが多すぎだろグレモリー陣営。

 

 小猫ちゃんも相当の身の上だろうし、イッセーがノーマルすぎて異彩を放ちまくっている。

 

 俺たちは少しずつ移動して部屋の中を確認しようとする。

 

 その視界に、黒い羽根が舞い踊った。

 

「汚れた翼でしょう? ・・・悪魔の翼だけでなく、私は堕天使の翼も持っています」

 

 ・・・正直な話、そんなことはないと俺は思った。

 

 黒光りするその羽は美しく、巫女装束と相まって幻想的な光景にすら見える。

 

 だが、その羽を見る朱乃さんの表情は憎悪すら見える。

 

「・・・っ」

 

 そして、それを見る小雪の姿はなんだか悲しみが浮かんでいた。

 

「リアスと出会い悪魔になった時、私はこの羽がなくなることを期待したわ。・・・結局、両方を持ったおぞましい生き物になってしまったけど、穢れた血をもった私にはお似合いかしら」

 

 ・・・隣にいる小雪の両手が、爪が食い込むほど握られているのが分かった。

 

 あわてたナツミは手を添えたのに気づいて力は緩むが、それでも少し食い込んでいる。

 

「・・・イッセーくんは堕天使は嫌いよね? あなたとアーシアちゃんをころし、この街を破壊しようとしたんですもの。良い思いをするわけがないでしょう」

 

 よっぽど、自分が堕天使の関係者だというのが嫌なんだろうか。

 

 どういう事情でそこまで嫌いなのかは分からないが、それほど言いたくなるほどに堕天使が嫌なのははっきり分かった。

 

 なにがどうなってこんな展開になったんだろうか?

 

 ・・・まあ、コカビエルあたりが挑発のために朱乃さんの身の上をばらし、イッセーがそれを気にしていい機会だからとつい訪ねたんだろうな。

 

 んでもって、小雪の場合はそれを気にして・・・。

 

「俺、堕天使は嫌いですけど朱乃さんのことは大好きですよ」

 

 ・・・まあ、こうなるのは当然だろう

 

「・・・帰るぞ」

 

 俺は小声でつぶやいた。

 

「これ以上いても、イッセーが男を見せて朱乃さんの好感度を上げるってことで終了だろう。無粋な真似はこのへんにしとこうぜ」

 

「いや、ここまで覗いてカッコつけてもいみなくない?」

 

 ナツミよ、それ以上言うな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・前の人生じゃ、ガキのころから魔術の練習をして、しかし年頃のガキで正体がばれにくいのがアタシしかいないって理由で、能力開発の本場に送り込まれたファックな身の上でな」

 

 階段をゆっくり下りながら、小雪は身の上話を話し始めた。

 

「ま、すぐにばれた挙句、そんな身の上なのを利用して非人道的な実験の被験者になったりしてよ、最終的に裏社会で殺し合いする人生だったな」

 

「一応平和な学園生活を送ってた、死因交通事故の俺とは雲泥の差だな」

 

 いや、割と本気でそう思う。

 

 ベルも相当ひどい身の上だったらしいし、久遠にいたっては小学校ぐらいの時から戦場で暴れれたとかいう壮絶な過去な奴が多い。

 

 前世うろ覚えのナツミはもちろん、俺もかなり平和な人生を歩んでるのでちょっと引いてる。

 

 ・・・あれ? 今度の人生、波瀾万丈すぎやしないか?

 

 一度死んでから生き返って、そのご激闘の毎日って明らかにハードスケジュールな気がするんだけど?

 

 いや、それでも悲惨さでは小雪には逆立ちしたって勝てないだろうな。

 

「・・・そんでもって生まれ変わってみりゃ、アザゼルの奴はアレで戦争反対派でな? ・・・正直、賭けてみてもいいんじゃねーかって思ったわけだ」

 

 そういう小雪の表情は、ちょっと晴れやかだった。

 

 普段から散々こきおろしているが、それでもアザゼルはこいつにとって信頼できる人物なんだろう。

 

 ・・・それほどの人物なら、今回の会談も安心してもいいのかもしれない。

 

「ガキの頃も結構楽しめた。死んだ親父がバラキエルの部下だったんでな。同年代の朱乃んところには何度も遊ばせてもらったよ」

 

 大切なお守りを見るかのような目で、小雪は過去を振り返っている。

 

「そうなんだ。だったらさ、今でも仲良くなれるんじゃない?」

 

「だったら・・・いいんだけどな」

 

 ナツミの言葉に、小雪はものすごい悲しそうな表情になっていた

 

 ナツミのやつ、思わぬところで逆鱗踏んだか?

 

 ついかばうように前に出るが、小雪は決して暴れたりはしなかった。

 

「アンタには言っとくが、今回の会談で、アザゼルは和平を申し出るつもりだ」

 

 小雪がそう言って振り返るが、その時にはさっきの表情は消え去っていた。

 

「あたしらがこの世界に来る前からのくだらねえ争いで、三大勢力はどいつもこいつもボロボロだ。いい加減仲直りして前に進まねえと、あたしらも含めて皆滅びる」

 

 ・・・確かに、悪魔も多くの純潔悪魔を失い、魔王は全員討ち死にと来ている。

 

 さらに神は失われ、神によって生み出される天使ももう増えない。

 

 その天使から堕ちる必要がある堕天使なんてもっと少ないだろう。

 

 しかも問題なことに、聖書の教え以外にも神話が存在するということは、そんな緊急事態に対して行動する奴らが必ず出てくるはずだ。

 

「仲良くできるならそれに越したことはない。いい機会なんだよ、このファックな状況は改善できる、あの世界みたいに、冷戦もどきなファックなままになるわけじゃねーんだ」

 

 その表情は決意に満ちていた。

 

 邪魔をするなら、誰だろうと自分の手で皆殺しにする覚悟があると言ってもいい、かなり冷徹な決意に充ち溢れていた。

 

「・・・ま、お前ら下っ端に何か言ったところで意味はねーけどな」

 

 と、その冷たい感覚をあっさり霧散させた。

 

「いちいちビビらせんなよ青野小雪。ほら、ウチのナツミがビビってるじゃねえか」

 

「ビ、ビビってないもん! 夏なのに涼しすぎてちょっとぶるぶるしてただけだもん!!」

 

 ナツミが顔を真っ赤にしているが、それはあえて気付かないふりをしておく。

 

 かわいいねぇナツミちゃんは。ま、からかわねえけどな。

 

「まあ、俺としては平和に終わってくれればそれが一番だからな。変に騒がしくする気はない」

 

 それは当然だ。

 

 何が悲しくて戦争起こしてまで大暴れしなければならない。

 

 既に一生分のトラブルに巻き込まれていると言っても過言ではないのに、余計な大騒ぎに巻き込まれるのだなんてごめんこうむる。

 

 俺は自分で容易に対処できる以上の手間など勘弁だ。

 

 少なくとも、三大勢力で和平が成立すればあんなもめごとからは当分解放されるだろう。

 

 ・・・あまり、レーティングゲームで活躍するのはやめた方がいいかもしれない。

 

「・・・それで? お前はその前に朱乃さんのことが気になって様子を見に来たってか?」

 

「あれで付き合い長いしな。悪魔になったって聞いてから、ずっと気になってたんだよ」

 

 その表情は本当に安心しているようで、小雪が朱乃さんを気にしているのが嫌でもわかった。

 

「グレモリーは情愛が深いって言うが、本当みたいだな」

 

「・・・ええ。私は私の眷属を大事にするわ」

 

 その声に俺たちが振り向くと、部長が階段を上がっていた。

 

「ごきげんよう。どうやら、アスカロンは無事に移植できたようね」

 

「部長・・・来てたんですか」

 

 まさか部長までここに来るとは・・・。

 

 会談の準備に忙しいはずなのに。これが愛のなせる業か。

 

「あたしは邪魔みたいだな。・・・んじゃ、会談で会おうぜ」

 

 小雪はそういうと、翼を広げて空へ舞い上がった。

 

「あ、待って!」

 

 ナツミがその背中に声をかけて、小雪は少しその場にとどまる。

 

「・・・なんだよ。どうかしたか?」

 

「今度ね、今度・・・一緒にお話ししよう?」

 

 ・・・ナツミ。

 

「・・・機会があったらな」

 

 それだけ言うと、小雪はそのまま飛んで行った。

 

「部長、会談の準備は大丈夫なんですか?」

 

「ええ。もう一通りの準備は終了したわ。イッセーたちは?」

 

 ・・・ふむ。ちょっと面白く言ってみるか。

 

「イッセーが無自覚に朱乃さんを口説・・・い、て・・・」

 

 一瞬で強大な殺気が放たれた。

 

「ヒッ!?」

 

 ナツミがおびえて俺の後ろへと勢いよく隠れてしまった。

 

 待てナツミ! むしろ俺が隠れたいんだけど!?

 

「へぇ・・・。イッセーたら本当に仕方ないんだから」

 

 怖いです部長! オーラだけなら魔王級ですよマジで!?

 

 いかん! 部長、イッセーのことになるといろいろと冗談が通じなくなる!

 

 いや、冗談なんて一つたりとも言ってないんだけどね? どう考えてもアレはクリティカルヒットだから・・・ねえ?

 

「それじゃあ私はイッセーを迎えに行くわ。兵夜たちはどうするのかしら?」

 

「さ、先に帰ってます! なあナツミ」

 

「ぅぅぅぅぅぅ、うん! うんうんうん!!」

 

 涙目でブンブンと首を縦にふるナツミだが、部長は全然みていなかった。

 

「じゃあ行ってくるわ」

 

 そういうと、ズンズンと登っていく部長。

 

 俺たちは、それを黙って見送るしかなかった。

 

「イッセー・・・ゴメン」

 

 いろいろと部長は怒り心頭になってるから気をつけろ!

 

「・・・うぅ、兵夜ぁ」

 

「泣くなナツミ。もう怖いのはいなくなったからなぁ」

 

 泣きかけているナツミをあやしながら、俺は一つだけ心に誓った。

 

 今後、部長にイッセーフラグネタでからかうことだけは決してすまいと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・本気なんだな」

 

「ああ。俺にとってこの世界は退屈極まりない。そんな俺にあの誘いは断りきれない」

 

「まったく、この性分を理解しておきながらあの放任主義には困ったもんだ。・・・コソコソ動いている俺がバカみたいだな」

 

「確かに、お前がそんなことを考えているとは思わなかったよ。人はみかけによらないな」

 

「俺は半分人じゃないだろ? ま、お前もだがな」

 

「ああ、しかし残念だ。俺は神と戦ってみたかったのに、この世界には神がいないんだから」

 

「別にいいだろう。それに、不思議に強い奴とならこれから普通に戦える」

 

「ああ、あいつから異世界の強さを聞いた時には不思議に思ってはいたよ。・・・出力がおかしいとは思っていたさ」

 

「その辺は我らが大将が明日説明するだろうし・・・二重の意味での転生悪魔たちは驚くだろうな。お前はどう思う」

 

「お前の考えたプランは見させてもらったし、それに関しては完璧だよ」

 

「うんうん。やっぱ見たやつの感想があるっていうのは嬉しいねえ。俺、本当は自慢大好きで自己顕示欲強いから、こそこそやるのは本当に大変だった本当に」

 

「よくアイツから隠し通せたものだ。・・・明日の会談、本当に楽しみだ」

 

「できればさっさと決着付けてくれよ。お前も、何かあった時のために待機だけはしといてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かったよ。せいぜい、俺が満足できそうな奴と戦えるのを祈ってるぞ?」

 

「なら無理だ。・・・明日は予定通りにいけばすぐに終わる。伝説級の首は、俺が取る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして深夜。

 

「イッセー先輩ぃいいいい。つ、疲れてきましたぁあああ」

 

「気合を入れるんだギャスパー! 俺達の新たなステージがかかってるんだぞ!」

 

 イッセーは今日も頑張ってギャスパーを鍛えていた。

 

 ちなみにギャスパーのためでもあるんだろうが、それ以上に自分の欲望のために頑張っている。

 

 時間停止能力と洋服崩壊(ドレス・ブレイク)を組み合わせた邪悪な作戦を生み出すために全力を尽くしていた。

 

 ・・・一応言っておくが、ホントに実行しようとしたら止めるからな?

 

 最初に聞いた時は、俺にそれを言う以上冗談の一種かとも思ったが、どうも本気らしい。

 

 アイツ、俺がいつも止める側だというのを忘れてはいないだろうか?

 

 20回に一度ぐらいは成功するようになっているが、これはまあ結構成果が出てきたのではないだろうか。

 

「そろそろ休憩しろぉ。夜食は持ってきてるからな」

 

 そういうと、俺はそのまま持ってきたホットドッグをイッセーたちに渡した。

 

「しっかしお前もすごいことになってきたな。・・・聖剣、使えるんだろ?」

 

「知ってたのかよ。まあ、こんな感じだけどな」

 

 そういうと、イッセーは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を展開し、さらにその先端から剣を生やした。

 

「それがアスカロンか。・・・確かに聖なるオーラがみなぎってるな。大丈夫か?」

 

「何でも特別に調整したらしいってさ。ドライグも大丈夫だって言ってる」

 

 なら大丈夫か。

 

「すごいですね、お二人とも。それに比べて僕は、人間としても悪魔としても吸血鬼としても中途半端で・・・グス」

 

 あぁあぁ。ギャスパーったらなんか泣き始めたし。

 

「別に泣くことはないだろ。・・・俺たちだってまだまだなんだしさ」

 

「そうだギャスパー! 泣いてる暇があったらぶつかってこい! 俺もその方がわかりやすい!」

 

 俺とイッセーはそう言ってギャスパーを励ます。

 

 確かにコントロールできてないのは困るし、俺も少し怖いと思うところはある。

 

 だが、悪気があるわけではないしそこまでパニックなる必要もない。

 

 悪魔としてはともかく、学生としては先輩なんだ。もう少し頑張って安心できる先輩にならないとな。

 

 とりあえず話をそらした方がいいだろう。

 

「しっかし、聖剣をゲットしたと思ったらその後朱乃さんと色々あったみたいだし? 羨ましいねぇ?」

 

「あ、みてたのかよ!? いやぁ、あの後朱乃さんに膝枕までしてもらっちゃってさぁ」

 

 とたんにデレデレしだすイッセー。

 

 完璧に欲情してやがる。

 

 まったく、既に撃ち落としているような状況下だが、こいつに自覚はあるんだろうか?

 

「朱乃さんも俺みたいなペットが欲しいんだろうなぁ。あの人ドSだし」

 

 はい。やっぱり一切気づいていませんでした。

 

 やれやれ。こいつには困ったもんだ。

 

 小さく、袖を引っ張られる。

 

 みると、ギャスパーがイッセーを見ながら袖をつかんでいた。

 

「み、宮白先輩・・・。イッセー先輩ってもしかして・・・」

 

「うん、みての通り」

 

 鈍感だ。

 

「あの、宮白先輩に少し伺いたいんですけどいいですか?」

 

 ギャスパーは、少し言いにくそうにしながらもそう聞いてきた。

 

「なんだよ? とりあえず言ってみろ」

 

「僕の目、怖くないですか?」

 

 ・・・結構ズバっと聞いてきたな。

 

 適当にごまかすことは簡単だろう。

 

 だが、それはギャスパーのためにも俺自身のためにもならないだろう。だからあえて正直に答えよう。

 

「正直言えば少し怖い。・・・ま、俺もイレギュラーって意味じゃ超ド級だからな。お前も苦労してるみたいだし、排除しようとか考えるほどじゃねえよ」

 

 偽らざる本音だった。

 

 俺はイッセー程、差別感覚とか無しで物を見れるわけじゃあない。

 

 イッセーという影響元と、俺自身のイレギュラーがあるからこそ同じように対処することができるからこそ、冷静な対応ができる。俺自身まあ許容範囲は広い方だと思うが、それでもイッセーに比べればデフォじゃ狭い方だと言わざるを得ないだろう。

 

 だけどまあ、それでもこいつには同情するだろう。

 

 それは、嘘偽りない本音だと断言できる。

 

「いいかギャスパー。魔術でも制御できない才能は自分にとっても害になる。・・・ちゃんと制御できるようになるってことは、絶対にしなきゃいけないことだ」

 

「は、はい!」

 

「俺も手伝ってやるから、頑張ってオンオフぐらいはできるようになれ。それさえ出来れば、お前は大丈夫だ」

 

 緊張して応えるギャスパーの頭をなでる。

 

 最近、ナツミとつるんでいることが多くなったからか、なんというか子供系のキャラの扱いに慣れた気がした。

 

 とはいえ、このままではいけないことも確かだ。

 

 アザゼルが以前ぼやいていたように、悪魔側には神器の知識が足りないのだろう。

 

 明日の会談が平和に終われば、神器の制御方法をより詳しく聞くことができるだろうか。

 

 ・・・イッセーを殺す指示を出した奴に聞くのは業腹だが、それぐらい剛腹な相手だと正直助かる。

 

 そう、明日だ。

 

 明日、この世界の大きな方向の一つが決定される。

 

「・・・明日、何とかなるといいんだがなぁ」

 


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