ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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テロリスト、襲来です!

停止した感覚は、意外とすぐに戻ってきた。

 

「兵夜!? 大丈夫!?」

 

 心配しているナツミの表情がどアップになり、俺は思わずのけぞる。

 

 こんな時になんだが、こいつも本当に美少女だからな。目の前に顔があったら少し照れるぞ。

 

「お、おう。それで状況は・・・」

 

 ・・・明らかに変化が起きていることが一つあった。

 

 何人ものメンバーが停止している。

 

 小猫ちゃんやアーシア。朱乃さんや会長まで停止している。

 

 ・・・つまりこれは。

 

停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)を利用したテロ行為かよ! クソが!! 完全に失念してた!!」

 

 まさか、制御できていないギャスパーを利用してテロを起こすとは思わなかった。暴発が怖くないのかあいつらは!

 

 うかつだった。完璧に俺のミスだ。

 

 せめて監視網をもっとしっかり張っていれば、もう少し早く気づくことも出来ただろうに・・・!!

 

「敵が一枚上手だったってことだねー。ギャスパーくんを使うとは思わなかったよー」

 

「グレモリー関係者に停止能力者がいたとは・・・。実質、それをテロリストがどうやって知ったのかが気になりますね」

 

 こっちの様子を気にしながら、久遠とベルは外をうかがっている。

 

 ・・・何やら巨大な魔法陣が現れている。

 

 まさかと思うが、アレで学校ごと吹き飛ばすつもりじゃないだろうな!?

 

 だが、その心配を取り除くかのように、小雪の吐き気をこらえるような声が響く。

 

「ファック! 転送用か!!」

 

 あ、いきなり吹き飛ばされるとかはないのか。安心したよ危なかったぁ。

 

 ・・・じゃねえよ! どっちにしてもピンチだろうが!!。

 

 だが、そんな俺の心の絶叫は、魔法陣から現れた物体を見て吹き飛んだ。

 

 ・・・ドラム缶が、いっぱい降りてきた。

 

 ドラム缶のようなボディの一番上には、なんか砲台みたいなものが接続されている。

 

 なにアレ?

 

「アレなんですか? ドラム缶タイプのゴーレムか何かで? つか、円筒型ボ○ル?」

 

 俺の疑問の声にも、首脳陣も首をかしげていた。

 

 そんな疑問に応えてくれたのは、心配を取り除いてくれた小雪の言葉だった。

 

「・・・アタシがいた世界の化学分野で、あんな感じの警備ロボットがいたな。・・・頭にあんなもんはつけてなかったけど」

 

 ・・・なるほど。つまり―

 

「科学技術を利用して似たようなロボットを生産し、それを使ってテロを起こしたということか。よほど構成人員が少ないのか、それとも損失を恐れたのか」

 

 俺はそう結論づける。

 

 まさか単純な科学技術を応用するとは思わなかった。

 

 なにせ、超能力やら気やら魔術やらばっかりだったからな。まさかメカアクションが入ってくるとは思わなかった。

 

「・・・元いた世界のアレの戦闘能力はどれぐらいかね?」

 

「元々警備用だから大したこたーねえよ。・・・設計図もないんだし、さらに脆くなっててもおかしくねーな」

 

 サーゼクスさまの質問に対する答えは一見安心しそうだが、世の中そんなに甘くない。

 

「魔術とかで強化されてたらそれでも厄介だよねー」

 

「同感だね。どう見ても遠距離からちくちく攻撃する仕様だし、切りに行くのも一苦労だ」

 

 久遠の感想にゼノヴィアが同意した。

 

 実際、召喚されたドラム缶はこちらに向かって魔力らしきものをぶっ放すが、防護結界が張ってあるのかびくともしない。

 

「やれやれ。めんどくさいこった」

 

 そう言ってアザゼルが腕をふるうと同時に、ものすごい威力なのがすぐ分かるほどの光が放たれる。

 

 ・・・適当に撃ったにしてはコカビエルの本気クラスにも匹敵しそうなんだが。こいつどんだけだよ。

 

 だが、それはドラム缶の群れの前に展開された壁によって防がれた。

 

「アザゼルの一撃を防ぐとは・・・。どうやら、敵の中に防御に優れた者がいるようですね」

 

「外の軍勢を停止させたことと言い、相当の実力者が手引きしている可能性があります」

 

 大天使ミカエルとグレイフィアさんの言うとおりだ。

 

 最低でもコカビエルクラスはあると考えた方がいいな。

 

 ・・・俺、出番なさそう。

 

「・・・私の可愛いギャスパーを利用してテロだなんて、許せないわね・・・っ」

 

 部長が怒りに震えながら、さらに増えるドラム缶の群れを睨みつける。

 

 その言葉がきっかけになったのか、イッセーが急に動きだした。

 

「え!? ちょ、これっていったい何なんですか!? どういう状況!?」

 

「起きたみたいだな赤龍帝。・・・ま、みての通り絶賛テロ勃発中ってわけだ」

 

 アザゼルがそう言いながら視線を鋭くさせる。

 

 既にドラム缶の数はちょっと数えきれないレベルになってきており、さらにローブ姿の老若男女がより強大な攻撃を放ちまくっている。

 

「ちなみに、ローブの連中は魔法使いだ。悪魔の力を人間が再現できるようにした連中だよ」

 

 解説しながらアザゼルは追加で光をぶっ放すが、防壁が邪魔をしてなかなか数を減らせない。

 

 さらに、転移魔法陣はさらに大量に発動し続けているため非常に厄介だ。

 

 どうやって倒せばいいんだよこいつらは!!

 

「どうするつもりだアザゼル。強化系の神器で強化したのかそれとも魔術によるものなのかは分からないが、今でも出力は増大を続けてるぜこれが。この調子じゃ俺たちだっていつまで持つかわからないな」

 

 フィフスが何やらモニターのようなものを見ながら、そう言ってくる。

 

 ・・・さらに俺たちも停止される可能性があるっていうことは、本気でヤバいな。

 

「ついでに言うと、外側にいる連中も完璧に停止している。・・・警護の意味が全くないなこれが」

 

 そういうとフィフスは肩をすくめた。

 

 このままだとヤバいということか。とにもかくにも・・・。

 

「・・・ギャスパーを救出しないといけないんだよね? どうする? マルショキアスで突っ込もうか?」

 

 ナツミが結論付け、頼もしくも恐ろしいことを言ってくれた。

 

「そんな単純な力押しはやめとけ。外に出てそんなことすりゃ、高確率で集中砲火だし、向こうも対策立ててくるだろ」

 

 アザゼルがそんなナツミを止める。

 

 しかし、このままだと俺達まで停止されるかもしれないという危機的状況なのには変わらない。

 

 どうする?

 

「とりあえずトップ陣の方々は撤退したらどうですかー? 完全停止状態じゃ増援も呼べないし、何かあってから遅いですよー」

 

 久遠の意見は打倒だと思うが、しかしアザゼルは首を横に振った。

 

「それこそ却下だよ転生者の剣豪クン。今の状況でそんなことをすれば、結界の外の人間社会に大きな被害が出ちまうからな。それに、しばらくここで待ってりゃあ、敵の大将が痺れを切らして出てくる可能性もある」

 

「下手に外に出て暴れたら思うつぼだろうしな。ファック! とにかくあのハーフヴァンパイアを何とかしなきゃ話しにならねー」

 

 どこから出したのか拳銃を取り出しつつ、小雪は外を睨みつける。

 

 しかし正体がわかるまであえて待つとは。

 

 さすがは、三つ巴の戦争を生き抜いてきた猛者ぞろいということか。どいつもこいつも度胸がありすぎるだろう。

 

「実質、今は下調べ中で動けないということですね。とはいえ、できる限り早くハーフヴァンパイアの少年を助け出す必要があるということですか・・・」

 

 そう結論づけると、ベルはすこし考えた後大天使ミカエルの方に体を向ける。

 

「・・・ミカエルさま。私が救出活動を行いま―」

 

「却下よベル・アームストロング。ギャスパーは私の下僕。ならば私が助け出すのが筋というものよ」

 

 ベルの言葉を遮って、部長が毅然とした口調で言い切った。

 

 その目はどう考えても説得できそうにないぐらいまっすぐだ。

 

「確かに正論ですが、どうするつもりですか? 外から出れば集中砲火ですし、転移対策ぐらいしてあるのが当たり前でしょう?」

 

 ベルはたしなめるようにそういう。

 

 確かにそうだよなぁ。俺だったら空間転移で直接救出に行くことを想定して相応の対抗策を考えてからテロに移る。

 

「私は瞬間移動能力(テレポーテーション)も持っている複合能力者なので対抗術式の法則外ですが、あなたはどうやって移動するつもりですか?」

 

「旧校舎には未使用の戦車(ルーク)の駒があるわ。キャスリングを使用すれば私だけなら転移は可能よ」

 

 ・・・たしか、チェスのルールの一つで、ルークとキングを入れ替える奴だったな。

 

 そんなことまでできるのか。恐ろしいな悪魔の駒は。

 

 移動手段が確かにあることで、ベルは納得したようだ。態度が軟化するのが見てわかる。

 

「・・・わかりました。では、私が護衛に付きましょう。それで文句はありませんね」

 

「いや、俺が行きます」

 

 イッセーが、一歩前に出た。

 

「ギャスパーは俺の大切な後輩です。なら、俺が、俺たちが助け出す!」

 

 気合十分なイッセーに、ベルは少しの間静かに見つめると頷いた。

 

「良いでしょう。ですが、実質それが可能かどうかが問題ですね。・・・そのあたり、悪魔側の技術で何とかなるのでしょうか?」

 

「グレイフィア。・・・大丈夫かね?」

 

「簡易術式でしか干渉はできませんが、サーゼクスさまの魔力方式を利用すれば一人までなら可能です」

 

 それなら大丈夫か。

 

 まあ、イッセーならここぞというときは何とかするし安心できるだろう。

 

「任せたぜイッセー」

 

「分かってるよ宮白」

 

 俺たちは腕をぶつけ合う。

 

 これで、ギャスパー救出は可能なはずだ。

 

 あとは、救出した後のギャスパーの能力をどうするかだ。こちらの技術で何とか出来ればいいんだが。

 

「決まりだな。・・・赤龍帝、これを持って行け」

 

 アザゼルが、腕輪みたいなものを二つほどイッセーに渡そうとする。

 

 堕天使総督からの贈り物に、イッセーはちょっと怪訝な顔をしている。

 

「・・・これは?」

 

「俺特性の神器制御用のアイテムさ。それをハーフヴァンパイアにつければ、停止世界の邪眼を制御することはできる」

 

 おお! 神器を研究しているだけあってそんな便利アイテムを用意できるのか!

 

 だがなんでこんなところに持ってきてるんだ? 自慢したかったのか? 子供か。

 

「もう一つはヤバくなったらお前がつけろ。一時的にだが擬似禁手の代償になってくれる」

 

「マジで! すっげえ!!」

 

 ホントにすごいな。

 

 むしろ代償を取り戻すぐらいできれば万歳なんだが、さすがにそこまではできないみたいだな。

 

 しかし禁手化させるマジックアイテムまで持っているとは、本当に研究が進んでいるみたいだな。

 

「・・・そんな面倒なことをしなくても、俺が旧校舎ごと吹き飛ばしてしまえば早く済むんじゃないか」

 

 やけに物騒なことを、ヴァーリの奴がほざいてきた。

 

 思いっきり自然な口調で言ってくれるな。こいつこの状況下で喧嘩売ってるのか?

 

 あ、小雪が回し蹴りを叩きこんだ。

 

「何考えてんだこのファック野郎が。和平結ぶんだぞ? この場で戦争起こしたいのか!?」

 

「いい加減退屈なんでな。そろそろ暴れたくて仕方がない」

 

 いや、退屈しのぎにウチの同僚殺そうとしないでくれない?

 

 こいつ和平向きじゃない性格してるな。アザゼルもなんでこいつ連れて来たんだ?

 

「だったら外のドラム缶吹っ飛ばしてろよ。いいデータ収集になるんじゃないか?」

 

 ためいきをつきながらのフィフスの言葉に、ヴァーリは好戦的な笑みを浮かべるとそのまま外に出る。

 

「あ、魔法使い連中は極力避けろ。生かしておいた方がいろいろな意味で有効だ」

 

「了解」

 

 フィフスの要望に答えると、ヴァーリの全身が光に包まれる。

 

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!!!』

 

 白い輝きをもつ全身を覆う鎧。

 

 白龍皇の禁手か。

 

 ヴァーリは光の軌跡を生みだしながら敵陣真っ只中に突入し、波動弾を放って敵を蹂躙する。

 

 防護障壁は個人の突入まで防ぐような便利な代物ではなかったらしく、相手は完全に圧倒されていた。

 

 円柱が砲撃を放つが、奴の鎧には傷一つつかない。

 

 あれが、イッセーの宿敵となる男の本気か・・・。

 

 俺たちも頑張らないと、あっさりイッセーが倒されることになりかねないな。和平結ぶことが決まって良かった。

 

 そんな超強力な男の大活躍をしり目に、小雪はためいきをついた。

 

「・・・アザゼル。やっぱり、このテロは奴らがやらかしたのか?」

 

 ・・・奴ら?

 

「待って。あなた達、いったい何を知っているの?」

 

「実質隠し事はなしにしましょう。・・・心当たりがあるなら言ってください」

 

 イリナとベルの視線を受けて、小雪は肩をすくめた。

 

「『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスを頭とした現政権の不満分子が集まったテロ組織の存在を、ウチの副総督が確認してたのさ」

 

「名前を禍の団と書いてカオス・ブリゲートと読む。神滅具(ロンギヌス)持ちも複数確認される、正真正銘の危険分子の集まりさこれが」

 

 アザゼルの言葉をフィフスが引き継ぐ。

 

 そして、その言葉にサーゼクスさま達が戦慄していた。

 

「・・・この世界でも頂点に立つ存在、あのオーフィスがテロリストになるというのか・・・っ!」

 

 以前ヴァーリが言っていたトップの存在か?

 

 サーゼクスさまが戦慄するほどとはちょっと洒落にならないな。いったいどういう連中なんだ?

 

『その通り。オーフィスが禍の団(カオス・ブリゲート)のトップです』

 

 突然、聞きなれない声が会議室に響き渡る。同時に見たことのない魔法陣が展開されるが、これは転移か?

 

「この魔法陣・・・! そうか、今回の黒幕は―!」

 

 舌打ちするサーゼクスさま。知り合いか誰かか?

 

 とはいえ分かることはただ一つ。

 

 今回の下手人、予想通り相当の実力者だ!!

 

「グレイフィア! リアスとイッセーくんを早く飛ばすんだ!!」

 

「分かりました! お嬢様、ご武運を!!」

 

 サーゼクスさまの指示に、グレイフィアさんは即座に反応し二人をすぐに飛ばす。

 

 いやいや待て待て。俺たちはどうなるんだ!?

 

 魔法陣から現れたのは、トップ陣にこそ劣るが強大なオーラを纏った一人の女性。

 

「先代レヴィアタンの末裔、カテレア・レヴィアタン。君が今回の首謀者か」

 

 サーゼクスさまが正面から見据え、カテレアと呼ばれた女悪魔は悠然と微笑む。

 

「ええ。我々は今回の会談とは逆の結論に至りました。・・・魔王と神がいないのなら、この世界を変革するべきだとね」

 

 ・・・いったいどういうことだかさっぱり分からないんだが。

 

『簡単な説明をしますので聞いてください』

 

 脳内に、ベルの声が響いた。

 

 なんだなんだ? 幻聴か!?

 

精神感応能力(テレパス)で、新米の悪魔さんの中に言葉を飛ばしています。・・・途中で割って入るのも何なので、実質私が説明します』

 

 こいつどんだけ超能力使えるんだ!?

 

 だが非常に便利だ。このタイミングで詳しい説明を求めても、空気が読めなさ過ぎて俺が殺される。

 

『先代魔王が死亡した後、悪魔は種の存続に重点をおく側が実力順で新魔王を担ぎあげました。しかし、先代魔王の血をひく者たちを中心として、戦争継続を願う側の悪魔たちと内戦状態に陥ったのです』

 

 やけに和平の流れが速くないかと思ってはいたが、悪魔の間ではとっくの昔に内戦状態になってまでもめていた話題だったってわけか。

 

『その後、旧魔王派は現勢力に追われ、冥界の片隅へと追いやられました。旧魔王の血をひく者たちは、自分達後継者を差し置いて魔王となり、さらには戦争を否定した新世代を憎んでいると聞いています』

 

 それでキレてテロリストに変化したってわけか。

 

 やれやれ。その後悪魔になった側にしてみればいい迷惑以外の何でもないな。

 

 カテレア・レヴィアタンは相当今の自分の立場が我慢ならないのか、セラフォルーさまにまで憎悪の視線を向けている。

 

「オーフィスはあくまで我らが新世界の象徴です。そのシステムは私達が構築する。あなた方はもはや不要なのですよ」

 

 とんでもなくスケールのでかい話になってきた。

 

 世界全土を巻き込んだクーデターってことかよ! 洒落にならないだろ。

 

 サーゼクスさまたちも表情を陰らせている。

 

 最悪なタイミングで悪魔になっちまったなぁ俺も。いったいどうすれば・・・。

 

「言いてーことはそれだけか? このファック年増が!!」

 

 俺の頬を掠めるぐらいの距離で、光の弾丸が通り過ぎてカテレア・レヴィアタンに叩きこまれた。

 

「・・・混血の下級堕天使風情が、何のつもりですか?」

 

 やすやすと防ぎきったカテレアの殺意だらけの視線を受けても、一切ひるまず、こちらも殺意を叩きつけている。

 

 まず間違いなく、この中で一番ブチ切れてやがるぞ・・・!

 

「下級の混血堕天使でもわかるような腐ったことしてるバカが、偉そうにしてんじゃねーよ」

 

 青野小雪が、拳銃片手に目を血走らせていた。

 

 ・・・相当本気だな、オイ。

 

 いろいろと心配な堕天使は以下連中だったが、まさか平和主義的発言をしていたこいつがここまで暴走するとは。

 

 いや、だからこそか。平和そのものともいえる和平を台無しにしようというのだから、怒りに燃えるのも当然だ。

 

「くっくっくっく・・・。おいおい、やると思ったがホントにやってんじゃねえよ小雪」

 

 心底面白そうに、アザゼルが笑い声を洩らし始める。

 

 だが、その視線はまるで父親のような慈愛に充ち溢れた物だった。

 

「真っ先に和平の申し込みを頼みに来た時から面白すぎて部下にしたが、お前も本当にぶれないなぁ」

 

 そういうと、小雪の頭に手をおいて、そのまま力を込めて撫で始める。

 

「ちょ、このファック総督!? アタシは本気でキレてんだぞ!」

 

「そんな薄汚い小娘を直属にするとは。・・・あなたもそれだけの力を持っていながら、今の世界に満足するだけではなくそのザマですか」

 

 怒りを通り越してあきれたのか、殺意が僅かに薄れたカテレアが嘆息する。

 

 そのカテレアに対して、アザゼルは一転して鋭い視線を向ける。

 

「俺の秘蔵っ子をバカにしてんじゃねえよ。少なくともお前よりかははるかにマシだね」

 

 その言葉にカテレアの額に青筋が浮かびかけるが、むしろ面白そうにアザゼルは両手を広げた。

 

「テレビ番組で一番最初に死ぬ連中のセリフをかましたはた迷惑な旧魔王の血族が。そういうのに限ってやたらと強い奴が多くてマジで困るなあ? ま、将来性込なら間違いなく小雪の方が大物になるぜ。・・・命をかけてもいい」

 

「そこまで愚弄するか! いいでしょう・・・ならばその賭け金をどぶに捨ててもらいましょうか!」

 

 一気に激昂したカテレアが、強大な魔力を全身に纏う。

 

 思わず戦闘態勢をとった全員を、アザゼルは手を広げて制した。

 

「手を出すなよお前ら。雑魚は任せたぜ小雪。・・・カテレアは俺が片付ける」

 

 まるで黒真珠のような奇麗な黒翼を広げ、アザゼルも強大なオーラを放ち始める。

 

「・・・・・・・・・降るつもりはないのか、カテレア」

 

 サーゼクスさまが、確認する。

 

 正真正銘の最後通告だろう。カテレアもそれが分かっているのか首を横に振る。

 

「あなたは良い魔王でしたが、最高ではない。・・・私達は新たな魔王と成ります」

 

「そうか。・・・残念だ」

 

 その確認を合図として、二人は窓際の壁を吹き飛ばすと空高く舞い上がる。

 

「終末の怪物の一匹、四大魔王レヴィアタンの末裔。相手にとっちゃぁ及第点だ! さあ、いっちょハルマゲドンとシャレこもうか!!」

 

「望むところです! 死になさい、堕ちた天使の総督よ!!」

 

 次元が違うオーラを纏いながら、頂上存在の戦いが切って落とされた。


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