ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
ナツミはそろそろ到着しているだろうか。
そしてそれまで、イッセー達は持ちこたえているだろうか?
そんな風に現実逃避しつつ、俺たちは全力で逃走していた。
「ふはははははははは!! 錬金術で一から作り直したこの対悪魔用スラッグ弾。当たれば悪魔は当然、堕天使でもただじゃぁ済まないぜぇ!!!」
高笑いしながらせまってくるフィフスと銃弾から、俺たちは本気で逃げ回っていた。
どれぐらい本気かというと、翼を出して宙に逃れて三次元的なジグザグ軌道をとるぐらいには本気だった。
「ファックファックファックファックファックッ!! あの野郎、どんだけ下準備万全にやってんだよ!!」
「ちょっと待てマッドメイガス!! お前魔術師だろう!? なに科学技術愛用しすぎてんだ!!」
言い忘れていたが魔術師は基本、科学を毛嫌いしている。
原初の過去へ駆ける魔術の研究と、はるか未来へと走る科学の追及は魔逆の代物だし、そもそも魔術とは科学に追いつかれてしまった神秘のことを指すからだ。
「バカめ! 俺は根源到達のためなら手段は選ばん! 科学技術で聖杯戦争勝ち抜けるなら、俺は核爆弾を購入する覚悟すら持ってんだよこれが!!」
俺の挑発をあっさり流して、フィフスは光の槍すら生み出して攻撃を繰り返す。
正直、奴の光の槍も対して強くないのか連射はしてこない。
だが、奴には四丁のショットガンがあり、その乱射がそれをカバーしていた。
しかも、針金の腕はさらに二本増えている。それにより弾切れになったショットガンに弾倉を補給することで、弾切れのすきを突くことも出来なかった。
「クソが! あの野郎あそこまで強いだなんて聞いてねえぞ!!」
俺はそう毒づくが、そんなことを言っている場合でもなかった。
カッコつけて介入してこのざまか、俺も大概情けないな!!
決めた! この戦い生き残ったらちょっとトレーニングハードにする!
「だーもう! このままだと完全にジリ貧だ! なんかいい手はねーか兵夜!!」
「いきなり言われても困るって小雪! そっちこそなんか手はねえのか!?」
畜生! これじゃあ面倒事をなすり合ってるだけだ! 何とかして状況を変えないと!!
銃弾が頬を掠める。
チッ! こうなったら・・・。
「駄目もとで接近戦で翻弄するのはどうだ?」
「絶対だめだ。あの一撃から見て、体術限定なら
つったって遠距離戦じゃヤバいぞアレは!
あ、いつの間にか銃の種類が変わって・・・。
「喰らえ! 対戦車ライフル!!」
「「ヤバい!?」」
とっさに伏せた直後、前方にあった木が真っ二つにへし折れた。
ちょっと本気でヤバいんだけど!?
「さぁて、そろそろこっちもけりをつけようか?」
・・・想像以上にヤバすぎる。
接近戦では太刀打ち不可能で、遠距離戦でも圧倒的優位。
どうやって倒す? どうやって?
「・・・これで、終わり―」
「・・・・・ドラゴンショットォオオオオオオオッ!!」
構えたライフルが、横合いから放たれた魔力の塊に吹き飛ばされた。
この声、イッセーか!!
「イッセー!」
「宮白! 逃げろそっち行った!!」
俺の歓喜を邪魔するかのようなイッセーの言葉の内容に、俺は初めてそれがフィフスを狙ったものじゃないことに気づく。
明らかに不健康そうな男が一人、背中から腕を生やしてイッセー達から先行する形で走ってきていた。
「済まないフィフスくん! ハーフヴァンパイアは奪われたよ!!」
「マジかよ!? クソッ! これじゃあ計画の半分以上が頓挫してるぞ!!」
フィフスは舌打ちするが、状況はまだあっちの方が有利だ。
首脳陣はアザゼルを除いて軒並み戦闘不能。おかげで転送魔法陣は停止しそうにないからこのままいけば数で押される。
白龍皇がいるから何とか形になっているが、このままだと本気でヤバい。
「フィフス・エリクシル。私の下僕を散々可愛がってくれたようね」
「いや、こいつがいなければあなたのお兄さんの首が取れたんで、どっちかって言うと俺が可愛がられた感じかなぁこれが」
フィフスは肩をすくめるが、それだけで部長のオーラが急激に高まるのがわかる。
「まさか魔王さまにすら手を出すとはね。万死に値するわ」
「たかが魔王風情でそこまで言われてもねえ? 俺は一応、全世界に手を出す男なもんで」
部長の睨みを軽く受け流すフィフス。
実際、それだけの実力があるのは既に分かっている。奴の能力はいろいろな意味で危険すぎるのだ。
「・・・まあいいか。今のお前らじゃあ、逆立ちしたって勝ち目はないしな」
・・・なめられているな。
「なめんじゃねえよこの野郎! アザゼルのおかげで少しの間なら俺も禁手になれるんだ! そうすりゃぁお前だって・・・!!」
「だから言ってるんだよ。不完全な禁手じゃぁ、同格の完全な禁手に勝てる道理がないだろう?」
・・・オイ待てお前。
今、こいつなんて言った?
次の瞬間、起きた出来事は大きく分けて二つ。
なんか剣でできた人形と切り結びながら、ベルたちが森を切りわけながらこっちに来たこと。
そしてもう一つは、高速で俺達の目の前に何かが落ちてきたことだ。
土煙が晴れるとそこにできたのはクレーター。そしてそこにいたのは―
「やれやれ。小雪以外はそろいもそろって反旗翻しやがったのかよ。ヴァーリにフィフス」
堕天使総督のアザゼルだった。
体そのものには大きなけがはないみたいだが、服はボロボロで激戦なのが見て取れる。
「悪いなアザゼル、こっちの方が面白そうなんでな」
「そういうことさ。アンタの下じゃあ、俺の悲願は達成できない。テロリストじゃなきゃできないんだよ、これが」
アザゼルを見下ろすのはヴァーリとフィフス。
フィフスだけじゃなく、ヴァーリまで裏切りやがったのか!
さらに、そこにカテレア・レヴィアタンまで降り立った。
・・・オーラが急激に上昇している? いったい何があった?
「和平が決まった瞬間にハーフヴァンパイアの神器を暴走させ、私が直接対峙する。フィフス・エリクシルのアドバイスであなたが動くことは読めてましたから、そこでフィフスがそちらの開発した鎮圧ガスを改良してサーゼクスやミカエルたちを無力化する作戦でした」
「・・・で、フィフスが奥の手を使ってあいつらを始末するのが本命だった、と。まあ、その様子じゃそれは失敗したみたいだろうな」
カテレアの言葉に得心が言ったかのようにアザゼルは頷いていた。
・・・この状況下で余裕だなこいつ。
「残念な赤龍帝は最初から度外視だったが、まさかそこの転生者がフィフスを警戒しているのは予想外だったよ。つくづく残念な赤龍帝の友人にするには惜しい」
ヴァーリは俺を称賛しているようだが、イッセーをとことんまでバカにしてくれる。
落ち着け落ち着け。今頭に血を登らせたら本気で俺の命がヤバい。
「俺だって一生懸命なんだよ! 人のこと残念残念言ってんじゃねえ! ・・・つーかその姉ちゃん誰だよ。俺に状況を説明してくれ!!」
「とりあえず白龍皇とフィフスとその女は敵だ。・・・で、魔王さま達は現在戦闘不能」
イッセーに説明する俺だが、どう考えてもこの状況下はヤバい。
敵陣営が強力すぎる癖に、こっちの戦力で対処できる気がしない。
「ヴァーリ! このクソファックドラゴンがいつから裏切った!!」
目を血走らせて小雪が激昂するが、ヴァーリは冷静な様子を崩さない。
「コカビエルを連れ帰る途中にオーフィスから直々にオファーを受けてね。まさかフィフスがずっと前からつるんでいたとは思わなかったよ。・・・積極的に調べるのを手伝っていたからな」
「この国のことわざで灯台もと暗しってやつだ。・・・調べてる側に入っていれば、どう気をつければいいか手に取るように分かるからな」
フィフスは平然と胸を張る。
こいつ、本気で裏切ることに躊躇がねえ。
「・・・俺はお前らに、世界を滅ぼす要因にだけはなるなって言ったはずだがな」
「関係ないね。俺は強い奴と戦えればそれでいい」
「知ったことか。それで根源に辿り着けるなら安い代償だこれが」
アザゼルの言葉も二人には届かない。
・・・状況は最悪、か。
「彼らの危険性を理解していなかったあなたの落ち度です。・・・正直、あなたらしくもない」
と、カテレアはアザゼルを嘲笑う。
・・・余裕だな、こいつら。
「そうだな。追放された旧魔王の末裔たちが元魔王に牙をむくなんて、別段おかしくもないことだったか」
アザゼルはそう言って肩をすくめる。
まて、今、なんて言った?
「実質、達とはどういうことですか!? フィフス・エリクシルはハーフ堕天使ですし・・・まさか!?」
疑念を浮かべたベルが、しかし自分でたどり着いたのか顔を真っ青にさせる。
なんだなんだ? どういうことだ?
ついていけなくなってきた俺に、ヴァーリが自分の胸に手を当てて宣言した。
「言ってなかったな。俺の本名は、ヴァーリ・ルシファーというんだ」
ルシファー? ルシファーって・・・あのルシファーか!?
「死んだ先代ルシファーのひ孫がこいつなんだよこれが。・・・しかも母親が人間だったおかげで
フィフスが俺達にそう説明してくるが、ちょっと待て!
それってマジか!?
「なあ小雪? それって・・・」
「今となっちゃーファックな話だがマジだ。正真正銘、奴は魔王の血を引く神滅具持ちだ!」
あり得ないだろ・・・それ。
「バカな・・・神滅具の持ち主が悪魔になったイッセーだってあり得ない存在だぞ。それが・・・旧魔王の子孫だと?」
「嘘でしょ・・・。しかもそんなのが堕天使側にいただなんて」
ゼノヴィアとイリナが愕然としている。
神が残した伝説クラスの神器が、二つも堕天使の下にあってはそりゃあショックだろう。
「ほんま驚くやろ? うちも始めて知った時は奇跡って言葉はヴァーリにあるもんやと思ったぐらいやしなぁ?」
剣の人形を引き連れてきた女が、そんなことを言いながら姿を現す。
ここにきて増援かよ!
「うわー。ちょっとあり得なくないー?」
「え、えと・・・すごすぎ?」
あまりの事態にキャパシティをオーバーしたのか、久遠とナツミも茫然としている。
・・・最近、驚きの事実が多すぎるだろ。
「さて、覚悟きめてもらおか? ・・・その首、もらうで?」
日本刀を揺らしながら、女が一歩前に出る。
・・・話し合いの時間は終わりってわけか。
「詰みですね。サーゼクスたちはまだ動けず、残ったものはほとんどが薄汚い転生悪魔。・・・これでは負ける方が難しいというものです」
勝ちを確信したカテレアが、高笑いをしそうな勢いで魔力を放出し始める。
「出力の急激な増大・・・。カテレア。お前、オーフィスになにをもらった?」
・・・アザゼルの読みは鋭いな。
俺でもわかるような急激な出力の増大。何か裏があると考えるほうが自然だろう。
「彼には力を授かりました。無限をつかさどるドラゴンの力の一端がある限り、私に負けはありません」
「これが終わったら俺も使う予定だぜこれが。ドーピングだろうと何だろうと、強化する必要は必須だしなぁ」
フィフスが懐から黒い蛇のようなものをちらつかせる。
アレが、パワーアップの原因ってわけか。
ヴァーリも勝ちを確信しているのか、少し退屈そうに息を吐いた。
「やれやれ。白龍皇が俺のような尋常じゃない生まれにも関わらず、対となる赤龍帝がこれじゃあ涙が出そうだ。早く終わらせよう」
「まあ、先祖代々魔と何の関係のない家系の出で、制御できないと判断され殺されるような男だ。仕方がないだろうな」
今まで黙っていた、イッセーに追いかけられた男もそういう。
・・・こいつら。
フィフスもそれには同感なのか、両手を広げると肩をすくめる。
「ま、肩すかしはくらったなこれが。・・・おかげでこのテロは成功しそうだし、相方の方も勘はいいが魔術師としては二流、これなら武装の強力さから見て赤龍帝の方がまだましだ」
そう言ってため息をついてくるが、俺は正直それどころじゃなくなった。
・・・こいつら、ちょっとふざけんなよ。
「まてフィフス。俺としてはその相方の方はなかなか見どころがあると思うんだ。ろくな殺し合いもない世界に生きていて、ここまで戦えるようになったのは評価できるし、気転もきいているだろう?」
「ヴァーリ? この程度の二流魔術師を評価するなよ。素質だけなら赤龍帝の籠手の足元にも及ばない。独創的な技の開発と言い、油断ならないのは赤龍帝の方だ」
「・・・いや、ヴァーリもフィフスはんもなに言い争いしとるん? まだアザゼル残っとるんやしちょっとそれ舐めすぎとちゃうか?」
「気にすることはないムラマサどの。いざとなれば切り札はまだあるし、この程度では危機とは言わんよ。・・・どっちも見るべきところはあると考えるべきではないかね?」
「薄汚い転生悪魔になにを期待しているのですか? どちらも所詮は雑魚。それでいいではありませんか」
・・・さっきから、
「「さっきから好き勝手言ってんじゃねえぞこの野郎ども!!」」
本気で俺を怒らせたな!?
「「人の親友馬鹿にすんのもいい加減にしやがれ!!」」
堪忍袋の緒が切れた!!
「「あいつはな、俺なんかが親友でいいか不安になるぐらいすごい奴なんだよ!!」」
頭に血が上って血管が破れそうだ!
「「あんまりふざけたこと言ってるとぶっ飛ばすぞ!!」」
・・・ん?
さっきからステレオになってるような気がするぞ?
声がする方に視線を向けていると、そこには同じように振り向いたイッセーの姿が。
・・・・・・・・・・・・。
これって、つまり?
「なに同じこと同時に言ってるの!? いまピンチだよ!?」
ナツミのおかげで状況が理解できた。
・・・こいつ、そんな風に思ってやがったのか。
正直、ずっと不安だった。
一度転生いているというチートを以ってしても、時折劣等感を感じるほどにこいつの人間個人としての資質は好感を持つ。
文字通り一度死んでようやく追いつける自分が、本当にこいつの親友を名乗っていいのか不安になったこともある。
・・・同じこと、考えてたのか。
「「・・・ぷっ」」
やべ、こんな時なのにおかしくなってきた。
ああ、なんか肩の力がいい感じに抜けてきた。
「・・・しゃあねえ。ま、いつものことか」
「ああ、そうだな」
俺とイッセーは拳をぶつけ合う。
冷静に考えれば、圧倒的実力差のある相手との戦いなんてここ最近連発してるじゃないか。
若手のエースであるライザーとの、圧倒的人数差のレーティングゲーム。
圧倒的実力差のある、コカビエルとの都市防衛戦。
むしろ、回復するまで持ちこたえれば魔王さまたちの援護が見込めるいまは、状況としてはましな方かもしれない。
「フィフス。俺は確かに魔術師としても魔術使いとしても二流だ。それは認める」
「へえ、自分でもわかってんだなこれが」
ああ、それ認める。
だが・・・。
「一流って言うのが人間性の喪失と密接なかかわりがある以上、俺は二流でよかったよ」
「・・・へえ」
気配が、変わる。
二流を恥じるのではなく、二流を誇る俺に、フィフスの反応が変化する。
「俺は昔から、根源のために家族すら道具としてしか見ない魔術師らしい魔術師って言うのが本当に嫌いだった」
・・・全身のダメージを再確認。
大丈夫、これなら全力で戦闘しても問題はない。
「それでも、それが俺の生活を邪魔しないなら見逃してるような、くだらない男が俺だった」
魔力の量は十分に残っている。
宝石もちゃんと確保している。十分戦闘は可能だ。
「だが、それはもう終わりだ」
・・・俺は、親友に胸を張れるだろうか?
いや、胸を張る俺になるんだ。
「お前らが、異世界にまで来てまで根源のために無関係な連中巻き込もうっていうなら、おれは同郷としてそれを止める!!」
実力は向こうの方が上。
重ねて来た年月も、才能も、努力の質も今まで全部上だろう。
それら全部をひっくるめても、俺は戦うことをここに誓う。
それが、兵藤一誠の親友としてあるべき姿だと信じている!!
「いま目標ができた! 俺は、バカな同郷がやらかす真似を今後防ぐために全力を尽くす!! 最低でも目の前でやらかしたお前は絶対に、絶対に、絶対に叩きのめすから覚悟しろ!!」
真正面から宣戦布告。
ああ、無謀なのは先刻承知だ。
それでも、それでも、
それでもひざをついてあきらめたりはしない!
「たとえ自爆してでもお前は倒す!! 俺の親友をバカにしたお前に、屈することだけはあり得ない!!」
たまには、それぐらいバカやってもいいだろう。
「面白いわね、坊や。・・・決めたわ。あなたの行く末、見届けてあげる」
ついに、ついに、ついに! Fateの肝が登場します!!