ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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珍妙な、才能

アザゼルside

 

 酷い目にあった。

 

 なんでちょっと実験しただけでこんな目に会わなきゃいけねぇんだよ! 人間だったら死んでたぞ!?

 

 科学の発展の為には犠牲が付きもので、別に死人も後遺症も一切出てないというのにマジで酷い奴らだ。酷い目にあっても知らねぇからな?

 

「いや、あれはどう考えてもあなたが悪いでしょう?」

 

 ブツブツ言っていたのか、隣にいたアーチャーがそんなことを言ってきやがった。

 

 今いるのは兵夜が紹介してくれた奴が馴染みにしているバーだ。

 

 様々な種類の酒を色々と取り揃えているのが特徴で、安めの酒が中心だが下手な酒屋より酒の種類が多い。バーなのに日本酒の種類も豊富で、泡盛やら焼酎やらまでおいてやがる。

 

 ちなみに俺は色々な酒を楽しんでいるが、アーチャーの奴はエールを楽しんでいる。

 

「あそこの制服は可愛いのにびりびりに破ったりして。女の子達が制裁に来なかったら私が相手をしていたわ」

 

「・・・俺は運が良いのか悪いのかわからねぇな」

 

 こいつとタイマンとかできれば本気で避けたいところだ。

 

 相当レベルの高い魔術師らしく、兵夜が言うには神代の魔術師じゃないかとか言われている。

 

 俺が戯れに見せた人造神器のデータを少し見ただけで、それを参考に対ヴァーリに使ったようなマジックアイテムの案を出して作っているとかいう話だ。

 

 下手したら堕天龍の閃光槍程度の対策は整えているかもしれん。俺もそうだがこいつも相応の下準備を整えてから戦闘を挑むタイプだろうし、一度戦っただけで次はいきなり戦況が裏が得ることもあるだろう。お互いやり合いたくないタイプだ。

 

 ・・・そんな強大な連中を使役するとか、あいつのいた世界の魔術ってのはどんな滅茶苦茶なんだ? 一度行ってみたいな、マジで。

 

「・・・それで? 会談が終わってから色々とやってるみたいだが調子はどうだよ?」

 

「正直言って苦戦は必須ね。あなたがいてくれているのは正直言って兵夜も感謝しているのよ? いろいろな意味で抑止力になっているもの」

 

 ほう・・・。そこまで警戒しなきゃいけないほどのことだというわけか。

 

 まあ、六対一という状況下じゃビビっても仕方がねぇか。

 

「・・・一応言っておくけど、聖杯戦争という観点に置いて私達の状況は最悪だわ。追加で言うと、私達というのは三大勢力も含めた大勢側を含めてるわよ」

 

「そこまでいうほどかよ。まあ、何でも願いを叶えるアイテムがあるっていうことは、戦況をひっくり返すことも可能だろうな」

 

 専門家のフィフスがあまりに無茶苦茶なことはできないと言っている以上世界滅亡とかはないだろうが、それでも確かに危険ではあるな。

 

 俺達が勝てなけりゃ首脳陣を抹殺するぐらいのことは不可能じゃない。そんな核弾頭が存在しているって言うだけで大きな問題だ。

 

「やっぱり勘違いしているわね。今の状況がどれだけ危険か考えたことはないの?」

 

「六体の英霊が倒されると相当の願いが叶っちまうんだろ? お前が勝ち残ればいいだけだろう」

 

 確かに不利な戦いではあるんだろうが、こっちは大勢側のバックアップもついているんだ。そこまでビビることでもないだろう。

 

「厳密に言えば英霊という燃料を利用して願いを叶えるのがあの聖杯のシステムよ。それはつまり―」

 

「やろうと思えば一体でも使えるってことか?」

 

 アーチャーが目を開いて俺の方を向いてくる。

 

 おいおい、俺だって聖杯戦争の情報はちゃんと聞いてるぜ?

 

 そして、本来の目的と首謀者であるフィフスの願いももちろん聞いている。

 

「再現したフィフスの目的が七体全て使わなきゃ叶わない以上、横取りする可能性が出てくるそんな情報をバラすわけがないだろう? 考えすぎだと思うぜ?」

 

 そう、フィフスの目的は世界に穴を開けるとか言うことだ。

 

 その為には自分以外の全てのチームが敗北し、英霊の魂が聖杯に込められている必要がある。当然その後自分の英霊も殺す必要があるわけだ。

 

 あいつの性格から言って余計な情報をばらすわけがないし、そこは警戒することはあっても過剰な心配はする必要がないだろう。

 

 だが、アーチャーは俺の話を聞き終わるとエールを飲み干してからまたため息をつきやがった。

 

「危険視するところがもう一つあるわよ。・・・聖杯戦争の成り立ちは聞いているでしょう?」

 

「ああ、三つの魔術師の家系が協力し合って作ったんだろ?」

 

 俺から見ても聖杯戦争のシステムは非常にできた物なのがよくわかる。

 

 話を聞くだけでもアレを構成する聖杯のシステムは非常に高レベルな代物だろう。フィフスが封印系神器の研究に参加していたら堕天龍の閃光槍はもっと強力なものになっていたかもしれない。

 

「言っておくけど、ここで気にするべきは聖杯本体じゃないわよ」

 

 そういうと、アーチャーはカクテルを注文する。

 

 言い忘れていたが、この会話は他の人物には認識できないように俺とアーチャーが協力して対策済みだ。

 

「非常に大まかにかつ重要部分だけをいえば、聖杯戦争を行うだけのエネルギーを内包した土地を兵夜がその血を継ぐ遠坂が担当。英霊を封じ込める聖杯というアイテムをフィフスの家系であるアインツベルンが対応しているのは分かっているでしょうけど、ある意味で一番重要なのは最後の一つよ」

 

 カクテルで例えるなら材料が遠坂、それを入れる器がアインツベルンと言ったところか。

 

「カクテルを作るバーテンダーとも言える、魔術師と英霊を繋ぐ契約を担当したのがマキリ。そこが重要なのよ」

 

「確かに地味に根っこの部分を担当してるが、それがどうし・・・た・・・」

 

 ・・・やべぇ。ようやく分かった。

 

 土地はいい。この世界の技術を使えば、世界全土の魔力の流れなどを利用して代用することはできる。やろうと思えば神の子を見張るものだけで再現は可能だ。

 

 聖杯はもっと簡単だ。フィフスが自分で作れるんだから気にする必要はない。

 

 他のこまごまとした部分は百年かけて様々な技術を利用して代用したんだろう。

 

 だとしたら・・・。

 

「一番繊細な契約を担当とするマキリ。・・・聖杯戦争の最重要根幹部分を担当とする家系の力を借りないで、どうやってフィフスは聖杯戦争を再現したのかしらね?」

 

「・・・兵夜やフィフス以外に、マキリの家系に関係する奴らもこの世界に転生しているって考えてるのか?」

 

 ・・・一流の魔術師が更にもう一人。それは考えてなかった。

 

「二度あることは三度あるとかこの国ではいうのでしょう? 問題は、そのマキリの奴も根源到達を目的としている保証はないということよ」

 

 それは確かに危険だな。

 

 裏を知っているから騙されずに行動するし、もし根源に興味がなければある程度減ったタイミングで願いを叶えるかもしれん。

 

「欲を言えば敵サーヴァントを二騎奪い取っておきたいところね。・・・この世界の影響力から逆算すれば、少なくとも五騎の英霊を贄にしないと不安で使えないでしょうし」

 

 出されたカクテルを口に運びながらだが、そう考えると確かにアーチャーの懸念も納得だ。

 

 フィフスの奴があまりにも有能だったから、そこまで考えてなかったな。

 

「・・・あいつのことだから不完全な状態での使用はできないようにシステムに細工してる可能性もあるが、それを過信するのもやべぇか」

 

「どれだけ優秀なのよあの男。・・・とりあえず、私の方はせめて魔力供給を何とかしないと」

 

 ・・・どうやら例の剣を真剣に考え解く必要があるみたいだな。

 

「魔力供給ねぇ? ・・・兵夜の奴じゃ足りないのか?」

 

「セイバーの存在がネックね。いくら私といえど、対魔力が高いセイバーを相手にするとなると相当の魔力を消費する必要があるわ」

 

 そういえば、あの騎士の英霊はアーチャーの相当本気ぽかった魔術攻撃を防いでやがったな。

 

「対魔力が高かろうと私なら抜けることもできるけれど、流石に発動に時間もかかるし、兵夜の魔力量でもそうそう無駄撃ちはできないわ。・・・流石にあなたレベルがマスターになれば話は別でしょうけど、私も燃費が悪いのよ」

 

「・・・どうにかなんねえのか? あいつは別に自分がマスターになることに拘らねぇとは思うが?」

 

 そういうと、アーチャーは今度は両手で頭を抱えてしまった。

 

 俺なんか不味いこと言ったか?

 

「実は二人でそれも考えたのよ? 考えたんだけどそこで問題が発生したわ」

 

「なんだよ?」

 

「召喚の経緯は知ってるでしょう? アレが問題だらけだったのよ?」

 

 ・・・確かに、元々召喚する儀式を発動させることが目的で、失敗を前提とした召喚で呼び出されてやがったなこいつ。

 

「バグが発生したのか、わかりやすく言うと糸が絡まった挙句に接着剤が大量について、更にケースに鍵と一緒に入れられてロックされた挙句海溝に沈んだような状態になってるのよ」

 

 ・・・契約解除は不可能になってるようだ。

 

 どう考えても解除できないだろ、それ。

 

「奥の手を使えば解除はできるかもしれないけど、反動で大ダメージが入りそうで怖いわ。・・・極力使うのは控えたいわね」

 

 前途が多難すぎるな。

 

 俺も本腰を入れて手伝ってやった方がいいみたいだ。忙しそうで面倒だなオイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気を取り直して酒を飲んでいるが、しかし色々と今後の話が出てくる出てくる。

 

 ものすごい面白いことも考えてやがるし、こいつの提案は呑んだ方があいつらの為にもなるか。

 

 とはいえ、そんなものを維持するのは別の意味で大変だし、結局はまだ先の話になりそうだな。

 

「そうだ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどよ?」

 

「何かしら? 魔術のことはどうせ教えても出来ないんだし、ペラペラしゃべるつもりはないわよ」

 

「別に込み入った話を聞きたいわけじゃねぇよ。兵夜の魔術師としてのスペック、アンタからみてどんな感じなんだ?」

 

 あいつは結構興味深いからな。今後指導の手伝いもすることだし、参考程度には聞いてみたかった。

 

 本来魔術師の英霊として召喚されるはずだったらしいし、専門家の分野で話してくれるだろう。ちょっと気になってきたぜ。

 

 だが、アーチャーは俺の言葉を聞いたとたんにまた頭を抱え出した。

 

「・・・なに? そんな話し難いことか?」

 

「いえ、話し難いというわけではないのだけど・・・」

 

 その割にはものすごく言い難そうだな。目も泳いでるし。

 

「アザゼル、あなたは接近戦闘用の人造神器を作ったとして、それが高い遠距離攻撃能力とか探知機能とか持ってたらどうしてそうなったか気になったりしない?」

 

「首はかしげたくなるがそれがどうした?」

 

「いや、まさに兵夜の魔術回路がそんな感じなのよ」

 

 ・・・なんか気になることが出てきたなオイ。

 

「魔力量はそれなりにあるし、宝石魔術や強化等もそれなりに高いのだけど、暗示とかの素質は明らかに低いのに実際にやってみると魔力のロスが多いけど相当の結果を出せたりするの。・・・正直どう説明していいのかわからないわ」

 

 イッセーの奴も意外性があるが、親友なだけあってあいつも相当意外性があるなオイ。

 

「指導そのものは普通に教えればちゃんと飲み込んでくれるから問題ないのだけど、あの特殊性は正直ちゃんと理解しないと今後の指導に影響が出るわ。・・・今度そちらの技術での解析データを用意してくれないかしら。もちろん、そちらで囲っている魔術師の転生者と照らし合わせてもらいたいわね」

 

「そいつはいいが、そのことあいつに言ったのか?」

 

「まさか。どう正せばいいのかわからないのに下手なことを言っても逆効果よ。・・・今後どうやって戦っていくかも不透明なのに、下手な不安要素は増やせないわ」

 

 イッセーの奴も意外性があるが、その親友も意外性にあふれてるようで。

 

 さて、この特殊性が今後の状況に置いて吉と出るか凶と出るか。

 

 ・・・本当に面白いことになってきたようだ。今後の研究にも役立ちそうだし、ここに残ることにしてよかったな。

 

「そういうあなたの視点はどうなのよ? 兵夜のグレモリー陣営での戦闘面では、どれぐらい役に立つと考えてるのかしら?」

 

「一言で言えるな。よく言えばオールマイティ、悪く言えば器用貧乏」

 

 ある意味あいつがグレモリー陣営なのは不幸なことだといってもいいかもしれん。

 

 正直言ってあいつは非常に優秀だ。

 

 光魔力による遠距離攻撃は優秀でウィザードタイプとしても並みの転生悪魔を寄せ付けないレベルだ。水も使うことができるのでやれることが豊富なのはいける。

 

 近接戦闘能力も優秀。武器戦闘に始まり、体術も半ば我流だが鍛えられており、実際人間のままで優秀なはぐれ悪魔祓いを返り討ちにできるレベルなのは非常にすごい。アイツ本当に前世も含めて殺し合いの経験がないのか?

 

 更に魔術の存在は優れている。使い魔と視覚を共有することによって索敵は優秀。強化魔術を利用すれば味方のブーストもできる。治癒魔術の存在は悪魔にとってチート一歩手前の優れた能力だ。サポートタイプとしての万能だろう。

 

 そこに多種多様な武装を、集める手間がかかるとはいえ展開できるアーティファクトとかいうのが加われば更に対応能力が増える。あらゆる状況に対応できるテクニックタイプというのが一番近いだろう。正直パワーに偏っている傾向が強いグレモリー眷属にとては、木場に並ぶテクニックタイプなのは最高ともいえる。

 

 だが・・・。

 

「あいつにとって不幸なことに、グレモリー眷属はどいつもこいつもあいつができることを上位互換で対応できる」

 

 聖母の微笑という桁違いの回復能力を持つアーシアに比べればあいつの治癒魔術はスズメの涙。

 

 自分自身が直接目で見て確認できるギャスパーの方がよりリアルタイムで偵察できるし、更に停止というコンボが使える。

 

 赤龍帝の贈り物が倍化である以上、強化魔術は出力で大幅に劣る。

 

 光魔力の攻撃力も、リアスや朱乃の力に比べれば単純な出力では一歩劣るだろう。

 

 体術の技量はあらゆる格闘技を習得している小猫には敵わない。

 

 スピードも木場の方が上だ。

 

 しいて言えば弱点攻撃による攻撃力ブーストがあるが、その辺も伝説クラスの聖剣であるデュランダルを使うゼノヴィアがいる。

 

「平均的な眷属悪魔としては間違いなく破格の活躍ができるというのにこれってのはマジ酷い。というか他の連中がルーキーの眷属として破格すぎるから目立ち難いな」

 

「頼りになる味方が多いって意味では私としては助かるのだけれどもね。私が本来対応できないアーチャーで呼ばれたことといい。今回の触媒は変な意味で不幸なことかしら」

 

 流石に同情したのか、額に手を当てるアーチャー。

 

 ああ、俺もグレモリー眷属のスペックを見た時思わず同情したね。

 

 実際フェニックスとの一線では、大金星をあげたイッセーや最多撃墜数の木場に並ぶ隠れた好評価を受けているのは想像にたやすいだろう。

 

 それだけのスペックを発揮しているのにも関わらず、その肝となった弱点攻撃で上位互換が出たのが非常に痛い。

 

 別にだからってあいつが役に立たないわけじゃない。

 

 一番になれないとはいえ同時に発動させればかなりの範囲をフォローできるというのは大きいし、強力な武装をかき集めることができればあいつはそれを瞬時に呼び出して使うことも出来る。

 

 悪魔家業においても色々やれるから対処の幅が広いし、言ってはなんだが後ろぐらいことに関してはあいつは他の連中を遥かにしのぐ。

 

 色々と調べてみればこの街の範囲内なら相当の権力を発揮することも出来るようだし、悪魔家業に置いては逆に飛びぬけたエースになることだって不可能じゃないだろう。

 

 何よりこいつは木場をしのぐイレギュラーだ。

 

「正直結構期待してるんだ。いい感じに伸ばしてやってくれやアーチャーさんよ」

 

「魔術に関してはまあ頑張ってみるわ。・・・他はあなたにお任せするわね」

 

 ああ、色々な意味で面白い奴が多すぎる。

 

 これからのあいつらには期待してるぜ?

 




ツッコミが入ったので補足。


アザゼルの視点での万能は、あくまでレーティングゲームの選手として、各タイプとして行動することが可能という意味です。学校でいうのならば、運動も勉強もクラスでのかかりもこなせるというわけです。

アーチャーの視点による特性のばらつきというのは、勉強でいう、理科や社会や英語などの各成績における得意分野などの話です。兵夜は理科が得意で社会はそこそこなはずなのに、体力を消費するとなぜか理科と同じぐらいの成績を出せる・・・といった感じです

ネタばらしはいささか長くあきますが、この特性は兵夜の魔術師としての才能に関わってきますので、是非首を長くしてお待ちください。

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