ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
暗闇の中、一人の少女が全力で走っていた。
それを追撃するイッセーだが、近づいたと思ったら勢いよくすっ転ぶ。
それに気付いた俺は素早く跳躍すると壁となっているビルから出たパイプをつかんで飛距離を伸ばす。
視界に移る足元には鈍い輝きがところどころ見える。転ばせるためにばらまかれたパチンコ玉だろう。
そしてそれに一瞬気を取られた次の瞬間には、少女の姿は消えて金網と向こう側の川だけが見える。
だがだまされない。俺は冷静に周りを見あ渡すと、さりげなく置かれていた大きめの段ボール箱を蹴り飛ばす。
段ボールが隠していた金網には大きな穴が開いていた。古典的だがいい手だ。
だが、種さえ分かれば恐れるほどのことではない。素早くくぐると人影を探し、すぐに発見すると追いかける。
イッセーの心配はしない。あの程度でけがをするような鍛え方はしていないし、全員にGPSを持たせているので、位置はすぐにわかる。
俺は素早く追いかけるが、相手もなかなかに逃げ脚が早い。
小柄な体格を利用して障害物をすいすいくぐりながらでは追いかけるのも一苦労だ。
俺は不良から距離を取ったり翻弄したりするためにフリーランニングを習得しているから追いかけられているが、そうでなければ悪魔の身体能力を以ってしても逃げられているだろう。
だが、それもここまでだ。
既に奴は俺達の術中にはまっている。逃亡ルートをある程度コントロールすることに成功しているのだ。
もちろん隠された逃げ道もちゃんと把握済み、このルートを通ることもわかった上でわざと進ませている。
優秀な逃げ方だがまだまだ甘い。何度も不良の大軍を撒いたりしてきた俺の前では素人に毛が生えた程度だ。
案の定、回り込んでいた木場と小猫ちゃんがその進行方向をふさぐ。
その状況に対して少女も素早く対応した。
近くの障害物を足場にすると跳躍、そのまま鉄パイプをつかむと壁を登ってエアコンの室外機などを足場にする。
だが、すでに対策は終わっている。
「捕まえましたわ。ごめんなさいね?」
回り込んでいた朱乃さんにとっ捕まった。
「BAD!? なんでこんなことろで・・・っ!!」
とっ捕まった少女が悔しげに唸るが、おかげで完璧に判明できた。
特徴的な髪形に破格の戦闘能力。加えて豪快な金遣い。無茶苦茶心当たりがあったが的中したよ。
「おまえ、やっぱり
「せ、雪侶ちゃん!?」
「・・・YES。確かにその通りですの兄上にイッセーにぃ」
ものすごい視線をそらしながら、トリプルテールの異色の美少女・・・。
俺の腹違いの妹、宮白雪侶はついに降参した。
宮白
俺の母親が不倫したことで離婚してから、一目ぼれが原因で電撃結婚した後妻との間に産まれた少女。
自信家で偉そうなところがあるがそれだけの活躍を示しているし、身内には情があるので人気が高い美少女だ。真面目な話、俺は自慢できる。
エリート意識が強いというか、社長令嬢クラスならば相当の外見じゃなければと考え、特徴的な髪形を研究していたが、まさかトリプルテールに落ち着くとは。と、いうか変なところでエリート意識があるな。
英才教育とたゆまぬ努力ゆえに一般人としてのスペックなら間違いなく俺より有望。将来はスポーツ選手か芸術家か、それとも親父の会社で重役を務めることになるのかわからないが、高確率で成功するだろう。
欠点を上げるとするならば金遣いの荒さ。丁度金使いまくれる状況で育ったせいか、使うと決めた時は手加減なく使う悪癖がある。買い物は基本大人買いだ。
いろいろあったせいで親父がその辺ゆるくなったことで、さらに拍車がかかっている。
なぜか俺のことを気に入っており、たぶん家族の中でも段違いで仲がいい。
そのせいか結構似ているところがある。まあ、それは褒められたものではない。
具体的に言うと、かなりダーク的な方法で行動することがたまにあるというわけで・・・。
「で? 俺の行動が最近おかしかったから支配してるはずの不良集団を撃破しまくって反応を見ようと行動したと?」
「YES。普通に聞いても兄上が答えないのはだいたい想像がついていましたの」
さすが俺の妹。俺のことがよくわかってるな。
だからってその作戦はどうだよ。他になんかなかったのか?
「宮白はあくどいけど雪侶ちゃんは過激だよなぁ。俺、本気でビビってるよ」
「そこまで言うことないじゃありませんのイッセーにぃ。この程度でビビっているようでは現代社会の闇に狙われたら生きていけませんのよ。この私を見習うとよいですの」
胸を張って断言する雪侶の後頭部をハリセンではりたおす。
このおバカは。そういうことを言っている場合じゃないんだぞこのおバカは。
「NO! 心の中でバカを二回も言わないでほしいですのよ!」
「お前は心の中を読むな!」
反省の色がないなホント!
頭痛くなってきたが、その隙を狙ったのか部長が一歩前に出た。
「ごきげんよう宮白雪侶さん。オカルト研究部部長のリアス・グレモリーよ」
「ごきげんようリアス・グレモリーさん。いつも兄がお世話になってますの」
気品あふれる者同士の会話は絵になるが、絵心はないので意味はない。
「兵夜の妹ということはイッセーのことも知っているのね? イッセーが何度も迷惑をかけたかもしれないわね」
いや、今はそういうことを言っている場合じゃないんですけどね部長。
「いえいえ。愉快な方で一緒にいると楽しませていただきましたの」
「そう、この子は確かにいい子だもの。私も助けてもらったこともあるわ」
「助けてもらって始めてよさに気付きましたの? お言葉ですけど見る目があまりありませんのね」
・・・緊張感が漂ってきたぞ。
「あら、前から結構すごい子だとは思ったわよ。特に意思の強さと優しさはすごいわ。いまどきここまですごい子はいないもの」
「それに関しては同感ですの。英雄色を好むといいますし、好む度合いにふさわしい
しまった、勘づいていたか。
やはり部長をこの作戦に巻き込んだのは失敗だったか?
様子が変わったことに気付いたのか、アーシアちゃんが俺の服を少し引っ張ってきた。
その表情は強張っている。こりゃ裏まで完全に呼んでいるな。
「み、宮白さん。もしかして妹さんって・・・」
「うん、イッセーのことが気に入っている」
『嫁公認の愛人という概念は成立すると思いますの?』
唐突にあんなこと言われた時は俺も少しパニクったものだ。あいつがスケベだからって妥協が早いぞ妹よ。
アイツ突拍子もないことを言ってきたりするわけだ。男を見る目があるのは認めるが、まさかそこまで割り切るとは思わなかった。
しかしそれが成功すると俺とイッセーが義兄弟か・・・。いかんいかん、妄想にトリップしている状況ではない。しかし何人かには悪いが成功するとお得だ。・・・だから妄想は禁止だ俺。
「イッセーったら私の婚約を止めるために相手と殴り合ってまで頑張ってくれたもの。あの男を相手に一歩も引かなかった姿はカッコよかったわ。あなたに見せたいぐらい」
「
「い、イッセーさんなら当然です! イッセーさんは私を助けるために何人も集まっている中に乗り込んでくるほどすごいんですから!!」
「人を受け入れる器の大きさも忘れてはいけませんわ。私の家系の問題をあっさり乗り越えるのは本当に嬉しかったですよ?」
アーシアちゃんに朱乃さんまで入ってきたぞ!! 頼む、ゼノヴィアまで入ってくるなよ!!
ちなみにエロ会社関係は割と本気だ。
新規参入でヤクザの方々が巨乳ジャンルに特化したエロビデオ作成の会社をつくる動きがあったので一枚かめないか本気で考えた。
イッセーはスケベがでかすぎて隠れているが、人間的魅力にあふれた人間だ。加えて、エロがからんだ時の努力と爆発力は目を見張るものがある。
細かい雑務は俺が何とかすれば良いし、コネを利用すれば相応の活動はできる。俺が副社長でイッセーを社長にすればスケベに耐性がある人物が集まるはず。それならイッセーのいい面を見て心酔する連中も増えるだろう。
・・・我ながら、この作戦は非常に有効だと思う。いまさらながらに思うが、最初からその方針でイッセーを教育していけばよかったんじゃないか?
「イッセーは確かにすごい。度胸も本当にある男だしな。目の前で対峙したことがあるから断言できるぞ?」
「
ゼノヴィアをスカウトしながらイッセーハーレムを建設しようとするな。
・・・もう説教するどころじゃないな。どうやって軌道修正しよう。
「大変だね宮白くん。なんというかアグレッシブな妹さんだね」
「・・・・・・イッセー先輩なみに変わった人です」
木場と小猫ちゃんの感想が聞こえてくる。
うん、変人でごめんなさい。俺も大概だけどこいつも相当なんだ。
「But、私もこれ以上長話をするわけにはいきませんの。今までの作戦が上手くいかなかった以上、今度は別の方法で最近の不思議行動について調べますのよ」
などと考えていたら雪侶が立ちあがった。何をする気だ?
と、ふと視線がずれた先には細いワイヤーのようなものがあった。しかもそれは雪侶の服の裾に繋がっていて。
「それではごきげんよう、オカルト研究部の皆様。兄上の行動にも関わっているかもしれませんし、いろいろと調べさせてもらいますの」
そう言って雪侶がお辞儀をした瞬間、ワイヤーがすごい勢いですその中に引き込まれる。
その勢いに乗って走り出した雪侶は、そのままビルの外壁を垂直に駆け上がって屋上まで上りやがった!
アンカーガン!? いつの間にそんなもの入手しやがった!? っていうか現実にあったけ!?
「サバイバル部隊用にお父さまの会社が試作したアンカーユニット。小型軽量版を調達しておいて正解でしたの!」
「親父なにロマンアイテム作っちゃってるの!?」
いくら稼いでるからって何考えてんだあいつは!! ツッコミどころをつくってんじゃないよ!!
「さようならですのよ! 今度はアルバム込みでイッセーにぃのいいところを自慢させてもらいますのぉおおおおお!!!」
そう言い捨てて姿を消す我が妹。
・・・あの状況下では追撃は無理か。翼を出せばすぐにでも追いつくが、それだと目立つ。
もうどうしたらいいんだろうかこの状況。ああ、ややこしいことにならなければいいんだけど・・・。
イッセーSide
昨日の夜はマジで大変だった。
まさか雪侶ちゃんがあんな危ないことしてるとは思わなかった。
昔っから宮白異常にアグレッシブというかなんというか、結構いろいろと行動してたからなぁ。
『兵藤さん? 今度からイッセーにぃと呼んでもいいですの?』
『イッセーにぃ。私豊胸手術に興味があるのですけれど、おっぱい好きなイッセーにぃは詳しくありませんの?』
『巨乳の妻と巨乳の愛人、貧乳の妻と貧乳の愛人、ランキングを付けるとしたらどんな感じですの?』
『不倫は男の甲斐性だといいますけど、イッセーにぃは甲斐性ありますの?』
『アダルト方面の会社社長の妻はどういう感じがいいと思いますの?』
答えずらい質問をいっぱいされたもんだ。マジ大変だった。
一緒に遊ぶ分では貴重な女友達だし、とってもいい子だから大切に思ってる。宮白の家族ってこともあるし、これからも長い付き合いでいたいもんだ。
でもアレは本当に困る。人間誰にでも欠点はあるものだけど、あれはかなりひどいよなぁ。
昨日とっ捕まったし不良狩りなんて挑発行為はしないと思うけど、今度はなにをしてくるか非常に気になる。
どうも悪魔になったことで変化した宮白の様子を気にしているみたいだけど、さてどうしたもんか。
俺もそうだけど、宮白も家族に悪魔になったことは話してない。
もともと雪侶ちゃん以外の家族とは距離を取ってるから、ばらす意味も少ないとは考えているんだろうけど、さてどうしたもんか。
バレたらバレたで面倒なことになるだろうし、とにかく上手くごまかした方がいいんだろうなぁ。
そんなことを思いながらとりあえず部室に付いた。
ちなみに今日は宮白はお休みだ。
前回の一件で自分の傘下の不良集団に頭を下げに言っているらしい。あと、自分の参加じゃない不良集団のフォローというか怒りの矛先を自分にそらすとかいう工作もやってるらしい。
自分が原因であんな襲撃があった以上、今後のフォローは重大だということなのかな。
アイツ学生にしては収入ありまくる方だけど、その分配下に報酬として金払いよく行動してるからそんなに金持ってたわけじゃないからな。本当に面倒見がいい男だと思う。最近すっごくお金持ちになったけど。
今度のことが原因で行動に支障をきたさなけりゃいいんだけど。雪侶ちゃんには俺からもバシっといった方がいいんだろうか。
・・・いかんいかん! 今は部活に集中しないと!
気を取り直して、俺は元気よく部室に入る。
「お待たせしました部長! 兵藤一誠ただいま到着しまし・・・た・・・」
「あらイッセー。ごめんなさい、今丁度お客様が来ているのよ」
部長はスーツを着た男性と向かい合って座っていた。
そのすぐそばでは朱乃さんが紅茶の用意をしているが、俺はそこは気にならなかった。
だってそうだ。その男の人は・・・。
「宮白のお父さん!?」
「やあ一誠くん。久しぶりだね」
宮白の親父さんが、なんとオカルト研究部にお邪魔していたのだ。
本作初の、転生者じゃないオリジナルキャラクターです。
インパクトの強いキャラしてみましたがどうでしょうか?