ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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裏話、相続騒動

「すまないが、リアスさんと二人きりで話がしたいんだ」

 

 そう親父さんに言われて素直に部屋の外に出た俺だったが、隣の部屋に入った瞬間に度肝を抜かれた。

 

「やあ、遅かったねイッセーくん」

 

「イッセー先輩。ど、どうしましょう」

 

 苦笑している木場とおどおどしているギャスパー。

 

「待っていたぞイッセー。丁度いいタイミングだな」

 

「イッセーさん。あの人が宮白さんのお父さんなんですか?」

 

 平然としているゼノヴィアとピントのずれたアーシア。

 

「やっほー。兵夜はまだ来てないんだ」

 

 お茶菓子を食べているナツミちゃん。

 

「遊びに来たら凄い事になってるねー」

 

「ファックな展開になっちまって悪いな」

 

「実質興味に負けました。すいません」

 

 桜花さんに青野さんにベルさんも来ていた。

 

 そして・・・。

 

「よし全員揃ったな? そろそろ盗聴器のスイッチを入れるぞ」

 

 アザゼル先生が機械を弄っていた。

 

 って盗聴器?

 

「悪魔になった事を知らない親が何を相談しに来た気になるしな。ちょっと盗み聞きをってわけだ」

 

 何を考えてるんですかこの人は!

 

『美味しいお茶ですな。アイツ、舌が肥えてるのでいい環境でしょう』

 

『ぜひ朱乃にも言ってやってください。喜びますわ宮白さん』

 

 ああ、もう始まっちゃったし!!

 

 しかし俺もちょっと気になる。

 

 親父さんは宮白のあくどい事を知らないはずだし、いったい何をしに来たんだろう。

 

 あの人も悪い人じゃないけど、宮白とは距離を取っているはずだったんだけど・・・。

 

『流石は72柱の一人。現魔王の血筋なだけありますな』

 

 ・・・え?

 

 その言葉に全員の時間が一瞬止まった。

 

 そりゃあそうだろう。部長の正体がばれてるんだから。

 

 な、ななななななんで!?

 

『・・・何のことでしょうか? 確かにオカルト研究部として悪魔については詳しいですが・・・』

 

『隠さなくても結構。我が社は管理職以上は悪魔と契約する事が創立時からの習わしです。頼む事も少なくないので悪魔について尋ねていたら詳しくなりました』

 

 え? 親父さんって悪魔と契約しているの? マジで?

 

『そう・・・ですか。そこまでお詳しいとは驚きですわ』

 

『正直、あなたがここにいるという事もアイツにここを選ぶように言った理由でもありますよ。いざとなれば契約した悪魔経由で守っていただけるかとも思ったので』

 

 も、もしかして宮白って親父さんの手の内だったりする?

 

 悪魔について詳しすぎだろ親父さん!? やばい、想像以上に凄い人だった。

 

『まあ、一番は一誠くんがここを選んだ事ですけどね。彼はいい子ですがなにぶんスケベすぎる。出来れば将来我が社の人事部辺りにスカウトしたかったので、あいつをお目付け役にして余計な汚点を作らせない様にと思いましてね』

 

『確かにあの子は凄いスケベですからね。その判断は正しいですわ』

 

 俺も手の内だった!?

 

 え? っていうかなんで俺スカウト予定なの!? しかも人事部ってマジ!?

 

「・・・意外といい判断かも」

 

「確かに引き抜きとかに向いてるかもしれないね。スケベさえ除けばついていきたくなるところがあるし」

 

「度胸もある。上手くすれば女子社員を食い放題でイッセー自身にも得だということか」

 

 小猫ちゃんやら木場やらゼノヴィアやらが後ろでこそこそ何か言ってるけどどういうことだろう。

 

『まああいつもそれなりに動いているようですが、こちらに被害が出ないように気を使っている辺り優秀だ。こういう事業をやっていると黒に近いグレーな事も必要ですし、何かあったら頼ってみると良いですよ?』

 

 ・・・手の内だよ宮白。

 

 大体把握されてるっぽいぞアイツ。優秀な息子の親はやっぱり優秀だった。

 

『・・・意外と、高評価なんですね?』

 

『聞いていましたか。・・・ええ、私とあいつはかなり距離があります』

 

 ・・・そうだよな。

 

 真面目な話、俺は二人が笑い合ってるところとか見たことない。

 

 別に宮白も悪く言ったりしてる事はないんだけど、やっぱり壁があるんだよな。

 

『あいつは優秀ですし、何というか不良漫画の主人公みたいなタイプの善良さです。少なくとも根っからの悪人にはなれないダークヒーロータイプといったところでしょうね。その辺りは信用しています』

 

『そういえばそんな感じですね。その辺りはイッセーとは対照的ですわ』

 

「正統派とダークヒーロー。なんか最後辺りで合体攻撃とか生み出しそうだよな」

 

「何気に色々出来る完璧人間。実質ヒーローというよりライバルキャラっぽい感じですね」

 

 アザゼル先生とベルさんが二人の会話を聞いてそんな感想を漏らす。

 

 いや、俺ってそんなヒーローみたいな奴か? どう考えてもそれこそ宮白が言われる方だと思うが。

 

「ファックな話だがアイツどう考えても正統派じゃねえよな。策で活躍してたからな」

 

「拾った聖剣と産まれ持ったドラゴンかー。確かにダークヒーローと正統派ヒーローって感じかもー」

 

 青野さんと桜花さんまでそんなこと言ってきた。え? マジで俺そんな感じ?

 

『正直、頼ってくれば力を貸す気はあるんですが、アイツ自力でその辺作り上げてるみたいで。少し前にわが社の重役が親バカをこじらせたのを報告した時ぐらいですね』

 

『あの時は部員達にも被害が出かけました。お力を貸してくださって助かりました』

 

 そういえば、あいつが親の権力頼りにしたの超レアだ。

 

 少なくとも、駒王学園に入ってからは初めてだ。

 

『今更ながらに思いますが、もしあの時、あいつがその判断を下していればここまで距離は空かなかったのかもしれません』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 最初に感じたのは僅かながらの恐怖心ですね。

 

 幼児の頃からあいつは、まるで高校生ぐらいの判断能力を持っていたような気がしました。

 

 少ししたらその判断能力も低下しましたが、あれはどう考えても意図的に落としたのでしょうね。違和感はこびりついたままでした。

 

 実際、あいつは昔から異常なぐらい努力家でした。幼稚園児の頃からランニングを日課にして、中学に入る前からフルマラソンを走りきれるほどに体を鍛えていたんですよ? 勉学に置いても駒王学園に入るまではまるで大昔に予習してきたかの如く吸収率が早かった。教師も関心より違和感を感じていたのかあまり関わろうとしませんでした。

 

 正直にいえば、私の前の妻が離婚した原因は何割かはあいつにあるでしょう。

 

 その後であった今の妻はまあ、深く関わる事はなかったですが大丈夫だったんですがね。

 

 実は、今の妻は魔法使いの家系なのですよ。実際雪侶も勉強しています。二人とも他の家族には内緒で幻想的な光景を見せてくれたりする事があるのですが、それに照らされた二人の方が美しくてもうたまりません。

 

 ・・・失礼、脱線しました。

 

 まあ、前の妻が耐えられないわけですから、子供が耐えられるわけがありません。

 

 あいつの兄の天騎(てんき)も姉である陽城(ひしろ)もあまり関わろうとはしませんでした。

 

 他の子供達との折り合いも上手くつく事が出来ず、喧嘩したり気味悪がられたりする事が多かった。報復はきちんと行ううえに陰湿ないじめとかをされた時はわざと誘い出して正面から叩き潰してたりしたので、喧嘩の強い子供以外から絡まれる事はありませんでしたが、それでも荒れた小学時代でしたね。

 

 まあ、それも一誠くんと出会ってからは大きく変わりました。

 

 あんな感じで友人に恵まれなかった事もありましたからでしょうね。始めて友人が出来た事ではしゃいだのか、精神年齢が下がったように見えて周りの子達も違和感をあまり感じなくなったようです。

 

 一誠くん自体も友達を大事にする少年でしたので、兵夜を排除しようとする子達に真正面から喧嘩を売っていましたよ。

 

 中学に入ってからは兵夜も薄い繋がり程度の友人は作れるようになりましたし、一誠くんの友人ともつるむようになりました。

 

 年齢が上がるごとに違和感も少なくなりますから、あの頃には距離も多少縮んでいたように思います。

 

 ・・・あんな事件が起こらなければ、今でも家族一緒に暮らしていたでしょう。

 

 一誠くんに聞いた事はありませんか? 中学の頃、下の娘が急に自分に会わなくなったとか。

 

 下の娘は雪侶というのですが、あれは兵夜がいる事が当たり前で育ったので違和感も感じませんでした。それゆえに違和感を気にしない一誠くんとも仲良く、その本質をよく知っているからか好意を持っております。

 

 あの当時は兄と一緒にいるという名目でべったりでしたからね。一誠くんの色欲を強制するのではなく出しても問題ない状況にしようと、政治家になって一夫多妻を認めさせようと勉強した事もあります。あ、もちろん流石に止めましたよ?

 

 話は多少変わりますが、正姫工業というのは世襲制ではなく、管理職から社員達が選挙で選ぶという方針を取っております。

 

 当時部長の一人でしかなかった私が社長に選ばれ、しかも管理職も含めた投票率が高かった所為か、社内では一応揉め事は起きませんでした。自分でも驚くのですが、当時の社長と専務も私を選んでくださりました。

 

 ですが、世の中は上手くいかないものですね。

 

 当時の社長の息子や、専務や副社長の関係者がそれに不満を感じていたのです。

 

 その結果、彼らは雪侶を誘拐するという暴挙に出た。

 

 ・・・社内会議の時に会社に直接誘拐したと電話をかけた為、電話を受けた者が慌てて会議室に飛び込んで伝えた為大騒ぎになりました。

 

 その時に内通者がいたのです。警察に連絡しようとしたタイミングで、電子メールが送られてきました。

 

 その内容については語りません。ただし、その時の経験があって、妻は護身も兼ねて雪侶の指導方針を戦闘特化にしたといえば、何をされたのかは想像がつくでしょう。

 

 その為、我々は警察の力を借りる事もできませんでした。

 

 後日知ったのですが、誘拐した者達は最初から雪侶を殺すつもりだったそうです。それを私が身代金を出し渋った事にして、社長の座から引きずり落とすつもりだった。

 

 事態は切迫しました。電子メールの後、半日も連絡がなかったのです。家に帰る事も忘れ、私は震えて待っていましたよ。

 

 正直心臓が止まるかと思った。今でも夢に見て飛び起きることがたまにあります。

 

 事態が動いたのは夜になってからです。

 

 なんと、雪侶自身が私に電話を送ってきたのです。

 

 あの子が警察には連絡せず、医者を連れてくるように言ってきました。兵夜の携帯から電話をかけているから、そのGPSを頼りにしろとも。

 

 私は一部の警備員などに事情を話して移動しましたが、何故兵夜の携帯が関わっているのか疑問に思っていました。

 

 ・・・着いた瞬間に理解しました。

 

 最初に目にしたのはボロボロになっている上に幻覚にさいなまれている男の姿。そしてそれは道筋を教えるかのように次々と見つかりました。

 

 最後に見つけたのは、完全に怯え切ってズタボロで拘束済みの前社長の息子達と、関わった者達の名前を記録したICレコーダー。そして命に別条がない程度の雪侶。

 

 そして、精根尽き果てたのかほぼ無傷で気絶していた兵夜の姿でした。

 

 ・・・なんでそれがニュースにならなかったのだって? それはね、雪侶も兵夜ほどではないが人より遥かに聡い子だったからです。

 

 あの後聞いたのですが、兵夜が拷問レベルの行動を行って犯人達から情報を聞き出しているのが聞こえていたそうで、それでだいたいの事情を把握したようです。マスコミに知られれば会社に大打撃が走ると理解したそうです。

 

 その為に内密に対処できるように私に直接電話をして助けを求めました。

 

 ああ、犯人達なら大丈夫です。どんな方法で拷問したのか分かりませんが、そこまで酷い怪我を負っていないのにも関わらず酷いトラウマを背負ったみたいで、我が社に関するものを見るだけで呼吸困難になるほど恐怖を刻み込まれているそうです。今は我が社の影響がない海外に永住し、日本には近づこうともしてないそうです。

 

 ・・・・・・リアスさん。私は、アイツのことを恐ろしいとも感じてもいます。

 

 あいつは、必要となれば非常に冷酷になれる。社の運営の為にはそれが必要な素質とも思ってますが、それでもあいつはあまりにも危険すぎる。

 

 実際裏の人脈を作っているのもその一環でしょう。世の中には何度警察に捕まろうと反省しない者がいる。そういった者を何とかする為には裏の力で闇の中に葬るのが必要なのかもしれません。

 

 あいつはそういう事をするのを選べる人間だ。人間としては実際善良なのだが、敵に対しては基本的に冷酷。一歩間違えれば鬼にもなれるのがどうしても恐ろしいと思う。

 

 ・・・・・・それでも、あいつは私の息子です。

 

 妹を守る為に全力を尽くせる、大切な友人の為に努力できる、立派な息子でもあるのです。

 

 お願いしますリアスさん。機会があれば、彼を眷属悪魔にしてください。

 

 あいつの人脈はこの街で行動するにおいて確実に力になるし、その人脈で築いてきた力も役に立つでしょう。

 

 あいつに必要なのは、闇を使わずに済むだけの存在と力です。そしてそれは、きっと怯えが見せる私ではできない事だ。

 

 あなたを魔王の血を引く事を誇っていいだけの人物だと期待して頭を下げる。

 

 どうか、アイツを見捨てないでください。

 

 どうか、力になってやってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 


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