ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
魔女メディア。
コルキスという国に産まれた正真正銘の王族。
叔母から様々な魔術を学んでそれに長けていた実力者。神代の存在であると同時に、神の血をついでいるとか諸説あり、それゆえに現代の人類では発音不可能な神言を語ることができる。これによる従来の魔術詠唱とは格が違う魔術詠唱こそ本命。それゆえに現代の魔術詠唱の縛りにとらわれないため、下手な対魔力など一言で発生した魔術に吹っ飛ばされる。
彼女は幸せな生活を送っていたが、しかし問題が二つあったために人生を大きく狂わされる。
一つは自身の性格。サーヴァントのステータスでいうなら中立・悪なこの思考は、必要じゃないなら安全で無害と言ってもいいが、必要になった場合手段を選ばないという危険を持った性格である。
俺もイッセーに理不尽な危害を加える相手には容赦しないので、その辺意外と相性が良かったのかもしれない。少なくとも、情愛が深いゆえに足元をすくわれる余地があるグレモリー眷属には必要な人材かもしれない。
で、もう一つは最悪なまでのめぐり合いの悪さだ。
英雄イアソンと女神ヴィーナス。この二つが関わったが故に人生がねじ曲がる。
跡目争いによって悪龍が守る宝を奪い取るという無理難題をふっかけられたイアソンが、コルキスの国に辿り着いた。しかも、それを助力するためにヴィーナスが手を貸そうと行動。まあ、これだけならファンタジーでもありそうな展開なのだが、やり方が最悪だった。
ヴィーナスは、魔女メディアの恋心を操作し、イアソンに惚れさせたのだ。
その恋心自体が凶悪なものだったこともあり、王女メディアはヤンデレの魔女へと変貌。ここから彼女の人生は大きくねじ曲がる。
持てるすべての力を使いイアソンの目的を達成させることに成功したメディアは、そのままイアソンについて行って国を離れる。
その追撃に対して、メディアは実の弟を殺して八つ裂きにし、それを利用して逃げおおせるという策に出たのだ。
その後、跡目争いに手を貸したメディアによってイアソンは王になることができるが、そのヤンデレっぷりが仇になりイアソンはメディアから離れて別の女性を結ばれる。
それを恨んだメディアの手により、その花嫁は父親とともに焼け死に、メディアは自分の子供も殺してそのまま国を去る。
その後、彼女は不死の存在になったとも、他の男と結婚したとも言われているが、これはまあ関係ない。
とにもかくにも、放っておけば問題なかったのに余計なことをされたがために、自分の人生を血なまぐさいものとしてしまった女性。
それが、俺のサーヴァントなのだ。
「いくら世界が違うとはいえ、メディアの後継の兄の下に、メディアが来るとはどんな運命かしらね」
部長があきれたように言ってくるが、俺だってまさか自分の家族に英雄の子孫がいるだなんて考えません。
いや、相性召喚でよくもまあここまでハイスペックな英霊が呼べたとは思っていたが、まさか肉親が触媒になっていたとは。
「奇跡みたいな確率なのは認めるわ。・・・この世界の私は私で波瀾万丈な人生を送ったようね」
既にローブを召喚時のものへと戻しながら、アーチャーはまじまじと雪侶を見詰めていた。
並行世界とはいえ、自分の子孫の姿に思うところがあるのだろう。
「Yes。まさか並行世界のご先祖様を呼び出していたとは、兄上も奇想天外な悪魔になったものですの」
髪をなでられながら、雪侶も心地よさそうにされるがままになっている。
並行世界とはいえ自分の大元と会うことができてテンションが上がっているのだろうか。
「神代の存在を呼び出すこともできるだなんて、聖杯戦争というのは恐ろしいね」
「ああ、だがそれならあらゆる聖人と出会うこともできるということだ。・・・私としてはジャンヌ・ダルクにあってみたいな」
木場やゼノヴィアも、改めて聖杯戦争のシステムのすごさを知って驚愕している。
俺もさすがに驚きだよ。いろいろな意味で当たりサーヴァントを引いた気がする。
「にしてもここはまでハイスペックなキャスター相当の魔術師をアーチャーで召喚って・・・。なんか申し訳なさ過ぎて涙出てきそう」
正直落ち込むしかない。申し訳がなさ過ぎてどうしたもんか。
「・・・すごいのかすごくないのかわかりませんね、宮白先輩」
「いや明らかにすごくないだろ。ピンポイントの触媒があればピンポイントで召喚できるのは当然だ。それをよりにもよってずれた枠で召喚するとか俺がアホすぎる」
小猫ちゃんの言葉にそう返せるほど、自分が正直情けない。
これがキャスター枠ならクラス別スキルの補正もあって規格外の戦闘能力を発揮できていたであろうに。
それこそ駒王町全域を工房化とかもできたかもしれん。いや、アザゼル達の全面的な協力があれば可能性は十分にある。超正確な探知能力に侵入した敵に襲いかかる殺人クラスの呪術攻撃の数々に、さらには発生した亡霊は無条件で使い魔として攻撃用に調整可能とか普通にいけそう!
そうなれば防衛戦に置いては無敵クラスの圧倒的防御が可能になったというのに! 俺はなんというミスをしでかした!
「正直ここに呼ばれただけでも十分すぎる価値はあるわね。他の連中は強力な武装扱いをしてきそうだから問題外だわ。・・・可愛い子もいっぱいいるから着せ替えし放題」
「あわわ。お、お手やわらかにお願いしますぅ」
「は、はい! 私でよければお手伝いします!!」
ギャスパーとアーシアちゃんをターゲットにひび楽しむ気な姿を見ると、そこまで壮絶にすごい存在にはなかなか思えないな。
実際ただ生活する分には全く問題のない女性だ。・・・こと食に関しては時代が時代なのでいい反応してくれるし。
「・・・アーチャー」
「何かしら?」
雪侶の頭をなで続けているアーチャーだが、一応マスターなので俺にもちゃんと反応してくれている。
「・・・直接関係してない以上、こっちのギリシャ神話には手を出すなよ。・・・俺が言うのはそれだけだ」
「・・・・・・意外ね。もっと踏み込んでくるかとも思ってたけど」
本気で意外そうな顔をされた。
そんな会話に、その場にいる全員の表情が変わる。主に俺に対して意外そうだ。
まあ、グレモリー眷属は総じて情愛が深いし、アーチャーは過去が過去だ。
復讐はだめだとか、もしくは神に対する怒りを見せるとか普通にあり得るだろう。実際俺もこの話に関しては、何考えてんだ神とか言ってやりたいとは思う。
だけどまあ・・・。
「合計で30年以上生きてるとはいえ、大して深い人生を送っているわけでもない俺が、お前の完遂した人生にとやかく言う資格はないしな」
そう、そういうわけだ。
人によっては同情したり一緒に怒りを感じてくれる人間に喜ぶ人もいるだろう。
とはいえ、たぶんアーチャーの人生は俺達なんかじゃ知りようもないような複雑な展開で、なにより彼女は誇り高い女王だ。
たぶん、それは望んでいない。
「多分だけど、お前は人に同情されたりとかされるのは嫌なタイプだろ? そういう意味ではこの陣営とはある意味相性が悪いか」
「・・・まあそうね。下手な同情なんて侮辱も同じ。ここで神がどうとか言ってくるようなら、ちょっとお仕置きでもするところだったわ」
・・・危なかった。
イッセーあたりは一緒になって怒るだろうし、そうなればどんなことになっていたことやら。
「正直に言って復讐する気なんてないわ。・・・触媒が強かったから来ただけで、聖杯を使ってまでわざわざかなえようとか思うほど強い願いもない」
やはり悪いことをしたと思う。
あの場合はそれしか方法が思いつかなかったし、実際彼女が来てくれなければ負けていたかもしれないとはいえ、無理やりに呼び出して戦わせるのは今でも失礼だとは思う。
だけど、こうなった以上彼女にはいてもらわないと困る。
英霊に対する対抗戦力以上に、敵が聖杯を完成させる阻止するためにも、なんとしても最後まで生き残ってもらう必要がある。
まったく、魔術師なんていきものは本当に迷惑極まりない存在だよ。
「せいぜい美味しい食事と美味しいお酒を用意してもてなしなさい。報酬分の仕事はちゃんとしてあげるわよ」
「・・・ああ。分かってる」
俺にできることなんてそれぐらいだ。
しっかり金稼いで王女様にふさわしい贅沢をさせてやらないとな。
「・・・・・・お前ら、大丈夫だったか!!」
視界の隅から、正直ビビるぐらい血相を変えて親父が走ってきた。姉さんも後ろからついてきている。
「雪侶!! 心配をかけさせて!!」
「お父さま!!」
親父が雪侶を抱きしめる。
・・・潮時、か。
「じゃ、俺たちはそろそろ帰るとしますか」
「いいのかね? 今回の功労者は間違いなく君たちだ。もう少し勝利の余韻に浸っても・・・」
傷の治療をしていたフィネクス卿が呼びとめるが、そんな気分にはなれなかった。
「正直今日は疲れました。もう帰って寝ますよ」
手を振りながら俺は歩き出す。
しかしまあ、何とかなって良かった。
ここまで異能がらみの事態になれば、さすがにマスコミに情報が漏れることはないだろう。
何とかテロなんて大騒ぎになる前に集結させることができた。これで正姫工業は大したダメージを受けなくて済む。
そんなことになったら、さすがに寝覚めも悪い。
確かな達成感に身を包みながら、俺はそのまま歩いて行って―
「・・・兵夜」
後ろから、声が聞こえてきた。
「何かあったらいつでも頼れ。お前は、私の息子だからな。・・・今日は、ありがとう」
・・・・・・。
「・・・・・・今後のオプション武装に、
「分かった。・・・今度資料を送ろう」
その言葉を聞いて、俺は今度こそ帰ることにする。
後ろから笑顔が咲き誇ってるような気がするがそこは無視だ。
無視ったら無視だ。
どうせ、明日からかわれるにきまってるんだからな。
せいぜいそれまで、帰ってから1人ベッドでにやけるとしますか。