ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
兵藤邸、転がり込みます!
以前から、聖杯戦争について考えていたことがある。
グレモリー眷属は一か所に集まっていた方がいいんじゃないかということだ。
これは別にさびしいとかそういうわけじゃない。ものすごい実利的な理由だ。
魔術師は工房というアジトを形成する。そしてその制度はたいてい魔術師の能力に比例する。神代の魔術師なら間違いなく先進国の基地にも匹敵するレベルだろう。
そんな要塞にこもって策を練るのがキャスターのサーヴァントの基本戦略。そして俺のアーチャーは神代の魔術師なので当然キャスター戦略でいくのが必須だ。
一応アザゼルの技術提供と部長の根回しにより、この駒王町そのものを一種の結界化させて、不完全ながら迎撃態勢は整えている。
一時はキャスター枠でもないのにできるわけがないとあきらめていたが、そこは神の子を見張るものの技術力と冥界全土を上げた様々な材料でフォロー可能だった。大勢側唯一の聖杯戦争参戦者というのがきいたようだ。
敵が潜入してきたらすぐにわかるようになるし、その精度はただの悪魔の力をはるかに凌駕するほどだ。しかも侵入者には竜牙兵というモンスターの迎撃付きというスペシャル仕様。
さらに魔術礼装をベースに強化改造した端末を利用することで、町内なら自在に転移することが将来的に可能になるはずだ。アーチャーなら数秒で位置設定ができるし、俺だって特定ポイントを設定済みなので逃げるだけなら一秒もかからない。
完成まではまだ少しかかるだろうが、完成さえすればアザゼルの存在もあるしサーヴァントが三騎がかりで来ない限りピンチにはなるまい。
それだけでも十分すぎるほどの防衛設備の完成だ。
だが、それをピンポイントに設定した狭いアジトならその能力ははるかに上昇する。
こちらで指定しなければ転移すら防ぐ障壁をはり、さらに外部からの攻撃に対してはハード&ソフトキルの魔術的迎撃も可能。
入った瞬間に強烈に逃げたくなる衝動を与えるといった精神攻撃も可能だし、間違いなく圧倒的優位に立った戦闘が可能になるだろう。
それを最大限に発揮するならば、グレモリー眷属自体がひとまとめになっていた方が効果的だ。
幸い、サーゼクスさまはイッセーのハーレム建設を支援する気のようであり、既にイッセーの家にオカ研女子を集める計画を立てていた。
さらに、部長が手狭になることを考えてイッセーの家を改築することを決定。既に周りの家などに対して交渉して土地まで確保している。明らかに改築どころの騒ぎではない。
もちろんそれには便乗させてもらう。
建物の設計段階から魔術的な加護などを加えることで、健康面などにも完全配慮。
もはや外部からの攻撃対する防御力も堅牢で、一見オープンに見えるがその実超侵入しにくい警戒厳重な防衛網。
さらに建物そのものが暗示用の魔術礼装と化すことでイッセーの両親や招待した一般人の目の前で万が一禍の団と戦闘しても違和感を感じさせない素敵仕様!
本気で聖杯戦争を勝ち抜くための重装備の要塞に、万が一のことを考えてオカルト研究部メンバーが集結することになった。
と、言うわけでいままでイッセーんちにいなかったメンバーでイッセーの家まで移動中だったりする。
「さすがに夏本番でこの大荷物だと、いい加減汗が止まらねぇな」
「だらしがないわよ。あなたはマスターなのだからしっかりしなさい」
俺のぼやきにアーチャーが辛らつな意見を投げつける。アーチャー、お前なにも持ってないだろうが。
英霊のスペックなら並みの人間よりはるかに大荷物を持てるわけだし、少しぐらい持たせるべきだったろうか。
「いや、すごい大荷物だね。後ろから押すよ」
「微力ながら手伝います。・・・いや多すぎですよ宮白先輩」
途中で合流した木場とギャスパーが後ろから押してくれてはいるが、やはり重い。
・・・引っ越し業者を呼ぶべきだった。下手に筋力トレーニングとか考えた結果がこのありさまだよ。
そんなことを考えながら、ひーこらひーこらと汗を流しながら向かっていたら、ついにでかい家が見えてきた。
「・・・ようやく、付いたか」
もはや原型など一ミリもとどめていないイッセー邸に、ついに到着した。
さて、これで夏休みを楽しむとしますか。
「・・・宮白、お前どんだけ要望を出してんだよ」
一切聞かされていなかったイッセーがジト目でこっちを見てくる。
どうやら本当に何一つ聞かされていなかったらしい。哀れな。
「いや、今後を考えたら必要だろ。非常時に備えた対策って言うのは必要だ必要。聖杯戦争なめるな」
いやどう考えてもマジで必要だって。
主にアサシンとかアサシンとかアサシンとか。
暗殺ダメゼッタイ。家の中でぐらい完全に気を抜きたいじゃねえか。
「だからってどんだけ手を出してんだよ。・・・家自体が六階建てになってる上に離れまでできてんじゃねえか!!」
そう、イッセーの家はもはやビルと言っても過言ではないスケールになった上にはなれまでできているのだ。
この辺はイッセーに気を使った結果でもある。
いや、この調子でいけばハーレム御殿は確定になるって言うのに、俺達まで同じ屋根の下ばっかにいたら空気が気まずいだろ?
だからは離れをつくってそこで暮らすことにすることで、最低限の心理的抵抗を減らすことにしたのだ。
ちなみには離れも四階建てだ。・・・そこ、やりすぎとか言わない。
一階は車とかを格納できるガレージに、男用の風呂を用意。二階はイッセーのご両親のために趣味として活用できるスペースになっており、さらにサンルームを追加している。
三階から上が居住区になっており、三階は木場とギャスパーと俺の部屋。四階はアーチャーの部屋になっており増員を視野に入れて空き部屋もある。
さらに地下室には俺とアーチャーの工房を設置している。
また、離れを形成するに当たって土地の拡張も大きくなっており、庭には池まであるスペシャルな設計だ。既に魚を何匹か放流してあるので、ペット代わりに可愛がるつもりだ。
「・・・なんで俺んちの改装計画に俺が一切かかわってないわけ? なんか理不尽な気がする」
「そこはマジで悪かった。・・・まさか改装する以外の情報を一切知らなかったとは思わなかった」
俺としてはあっさり受け入れたイッセーの両親に驚きなんだが。
あれ、悪魔の力とか使ってないよな?
「どうせならイッセーを驚かそうと思ったのよ。 どう? 素敵な家になったと思わない?」
部長が魅力的な笑顔でそう訪ねてくる。
いや、確かにものすっごい豪邸にはなったと思いますがね?
せめて要望を聞きませんか、普通。
まあ、もうすぐ夏休みという状況下でこの改築はいい気分転換になっただろう。
ここ最近、街の命運をかけた戦いを終えたすぐ後に冥界の命運をかけた会談の成否をかけた対テロリストとかやったからなぁ。どう考えてもハードな展開だ。
夏休みぐらいは平和に過ごしたい。いや、無理だろうけど。
フィフスなら夏休みという気が抜ける時期を利用して攻撃を仕掛けるぐらいはしかねない。いや、俺だったら必ずする。
そして気が抜ける夏休みという時期は俺も当然忙しい。
主に配下にしている不良連中がが暴走しないように適宜見張る必要がある。うっかり目を離して大騒ぎを起こされてはこっちの面目が丸つぶれだ。
そして羽目を外すイッセーたち変態三人衆の監視もしなくてはいけない。海に行くときとか暴発しないようにしっかり目を光らせておかないと、何をしでかすかわかったもんじゃない。
「今度の夏休みはどこの海行くよ。とりあえず、そういうの目的の女子が行きやすいところはピックアップ済みだが」
「お前準備いいな!?」
イッセーに驚かれたが、その辺は俺も予想済みだ。
だてに十年前後イッセーとダチやっているわけじゃないのだ。これぐらいは当然やって見せるとも。
だが、そんな会話をしている俺たちに、部長がキョトンとした顔を見せた。
「・・・あら、そういえば言ってなかったわね」
なんだ一体? まさか夏休みもなんかあるんじゃないだろうな・・・。
「私、冥界に帰るのよ」
「ガッデム!!」
なんてこったい!!
部長が一度実家に帰省することになった。
まあ、部長は家族から離れて一人で人間界にいるわけなんだから、当然長期休暇に実家に行くことになるだろう。それはまあいい。
それに俺たちも同行することになった。下僕悪魔が主の行動に付き合うのはまあ予想の範囲内だ。これもまあいい。
ついでにその夏休みで合宿などをして、パワーアップを図ることになった。これはむしろ好都合。聖杯戦争に巻き込まれた以上、仲間達のパワーアップはむしろ必須だ。ない方がダメだとすら断言できる。
そう、問題は・・・。
「明日から、八月の終わりまで、冥界にいっぱなしかよ! ・・・今日中にあいつらの引き締めとあいさつ回りとか全部終わらせねえと!?」
「ごめんなさい。・・・兵夜がいろいろと人間関係が複雑なのを忘れていたわ」
素直に謝られては怒るに怒れない。
もっと早く予定を提出しておけばよかった。ついいつものノリで行動していたのが裏目に出るとは・・・っ!
「ついでに言うと魔王血族や次期大王や大公を集めた若手悪魔の集まりもあるのよ。・・・時間、大丈夫かしら?」
「とりあえず最低限のことは今日中にやっておくので、できれば一度こっち戻らせてください」
素早く予定表を確認してスケジュールを詰め直しながら、俺は今後の状況を考える。
そういえば俺たちは一度も冥界に行ったことはなかった。
・・・今後の行動を考えると例のプランを整えた方がいいかもしれないな。
「・・・部長、そういえば例の件をサーゼクスさまは了承してくださいましたか? どうせ長期間冥界に行くなら、ついでに終わらせておきたいのですが」
「ええ、条件は提示したとおりでいいそうよ。もう一つの件も大丈夫でしょうね?」
「もちろん。既に試作品は完成して、神の子を見張る者にテストした結果良好な結果を出しています。・・・量産体制も万全です」
俺と部長は向かい合うとニヤリと笑う。
ああ、これで冥界はかろうじて今後の対策をとれたことにもなる。
「・・・宮白、いったい何を考えてんだ? ちょっと怖いんだけど」
「いや、大したことはねえよ」
ああ、この程度アーチャーと冥界の技術力を持ってすれば何のことはない。
「冥界の監獄に捕縛されている囚人たちに、三時のおやつやらの贅沢を与える代わりに、その生命力や魔力をバイパスしてアーチャーのエネルギー元にさせる程度だ」
これで、俺は自分の魔力消費を気にせずに戦闘をすることができる。
マスターとしての最低限の魔力供給は必須だが、これで負担は大幅に減るうえにアーチャーは魔術を使いたい放題だ。
「なかなか考えた案だと思うわ。・・・これで私も気にすることなく全力を出し続けられる。EXランクの魔術も打ち放題」
昼からエールをたしなみながら、アーチャーも頼りがいのある笑顔を浮かべてくれる。
ああ、これで問題の一つが解決したも同然だ。
監獄では囚人たちの魔力が消費されるから反乱の可能性が減ってラッキー。囚人は生活に潤いができてラッキー。そして俺たちは継戦能力が大幅に強化され、戦闘が楽になり超ラッキー。
誰も不幸にならない方法だ。聖杯戦争どんとこい!
「だけど宮白くん。いくらお金が手に入ったからって、それだけ出費して大丈夫なのかい?」
木場が心配してくれるが、安心しろ。その辺も大丈夫!!
「・・・フィフスはいいことを言ってくれた。具体的にいえば神秘の秘匿を気にしなくていいということを言ってくれた」
そう、魔術布教の最大の難点が、ここにきて完全に解決してくれた。
それはすなわち!
「魔術礼装をベースにした、治癒魔術行使タイプの回復ユニットの製造に成功してな! 量産体制も整っているから当分の間、俺は超金儲けれるんだよ!!」
「なかなかいい出来だとは思うわ。まあ回路なしで使うには相応のバックアップが必要だから治療施設に置かないと無理でしょうけど、それでも十分でしょう?」
アーチャーからの太鼓判も付けられており、人に勧める分には無問題!
既に特許申請も終了しているので、金儲けまくりでウハウハだなおい!!
「これで悪魔の方たちも怪我が簡単に治せるようになるんですね! あぁ、宮白さんはすごいです!」
「すさまじい成果だと思うよ。ここまでの成果を上げるなんてそうはないだろうね」
アーシアちゃんとゼノヴィアからも絶賛の言葉が投げかけられる。
そうだろう、そうだろう!
「あらあら。兵夜くんは頑張ってますわね」
「はぅう。宮白先輩はとんでもないですねぇ。イッセー先輩とは違った意味ですごいです」
「マジやってくれたじゃねえか。これで俺らも対テロ態勢が整いそうだ」
朱乃さんやギャスパーも大絶賛。うん、もっと褒めてくれ・・・よ?
「それでアザゼル? 一応言っておくけど悪魔が先なのはわかってるわね?」
「分かってるよそんなこたぁ。ま、テストで手に入った試作品は手元にあるからな。いざとなっちゃあライセンス生産すりゃいいか」
アーチャーが平然と言葉を交わすが、俺たちは言葉もなかった。
だって・・・。
「あ、アザゼル? あなたどこからやってきたの?」
堕天使総督がいらっしゃってますよ!?
いや、ちょっと待て! いつから入ってきた!?
部長も驚いてるんだけど、あんた味方なんだから驚かせるなよ!!
「なんだ気づいてなかったのか? 普通に玄関から入ってきただけなんだがなぁ。修行不足だぞお前ら」
「どこが普通に入ってきただけよ。アレが普通ならこの世に暗殺者は必要ないわね」
バッサリツッコミを入れてくるアーチャーだが、発言から考えると結界で感知したようだ。
・・・俺も結界の感知システム制御対象に入れてもらおう。心臓に悪い。
まあこいつがすごいのは分かり切っていたから、そういう意味では驚かない。
アーチャーと撃ち合いで勝負になるほどの戦闘能力をもち、さらに神器の研究者としても一流だ。
実際アザゼルの指導でおれの天使の光力回路の光魔力分化がだいぶできるようになった。この調子でいけば一カ月程度で完全に制御できるはずだ。
木場の聖魔剣もかなり制御が可能になっていると聞く。どちらもイレギュラーであるにも関わらずのこの成果だから驚きだ。
反面、イッセーの赤龍帝の籠手とギャスパーの停止世界の邪眼はあまり進んでいない。これはアザゼルが問題というより所有者の問題もあるから仕方がない。
「冥界での行事はグレモリー当主に眷属悪魔の紹介をすることを含めてさっき言った通りだな。俺はその間サーゼクスと会談したりとか面倒だが、ま、指導する時間ぐらいは用意してやるよ」
正直心強い。
何千年も続いたような戦争を生き抜き、堕天使はおろか神器所有者を含めた人間、はてはヴァーリのような悪魔まで指導した堕天使だ。
当然、その指導能力は本物だろう。どう少なく見積もっても一見の価値はある。
・・・サーヴァントマスターに総出で睨まれているこの状況。イッセーたちも強くなってもらう必要があるからな。マジ頼んだぜ、アザゼル。
それだけの大人物なだけあって相当数の堕天使がこの街に押し掛けてきてるからな。秘書やらメイド代わりやら身辺警護やら。中には堕天使側の人間が側女にしてくれとかあった。全部追い返されてたけどな。
ちなみに、俺が金を稼げるバイトとかを生活費稼ぎ用に紹介して近くの町に匿ってたりしている。人では多い方が便利だからね!
「どっかの誰かがこっそり人でを残らせたりしてるから困ったもんだ。追い返すのも手間なんだぞ?」
・・・・・・バレてた。
さ、さすがは堕天使総督! ゴメンすこし舐めてた!!
ま、まあ気を取り直して・・・。
夏休み、冥界旅行に臨むとするか!