ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
顔面に拳が突き刺さったことで、俺ことアザゼルは思いっきり吹っ飛ばされた。
体感的に五メートルぐらいは吹っ飛ばされただろう。この俺をここまで殴り飛ばすとは、宮白の奴は将来有望だ。
っていうかアイツ禁手で全身強化しやがったな? あれはリターンは高すぎるがリスクも高すぎるから使用禁止だって言ったのに、説教するべきか。
だが、それよりまずは―
「ファファファファファファックファックファック!! 何考えてんだてめーは!! 酸欠で死ぬか? アァ!」
「~~~~~~~(声にならない悲鳴)っ」
ブチギレて能力使って宮白の呼吸を止めてる小雪を止めるべきだ。
口と鼻に当てる感じで腕を当てれば、呼吸の妨害ができるのはかなり怖い。
人間の暗殺とか考えたらかなり効果覿面じゃないか? どうやって殺したのかわからねえから、完璧に迷宮入りだ。
つーか小雪も落ち着けよ、まったく。
お前宮白に惚れてるのは分かってるんだからな。さっそうとピンチを助けた挙句、付き合いの長い同僚の裏切りというショックな出来事に対してさっそうと立ち向かったりで漢を見せたからなアイツ。
自分で殺してどうするんだか。
「あー、大丈夫だから気にすんな小雪。つかそれじゃあ弁明もできん」
「はーはーはーはー・・・。とりあえず理由をいえ、さもなきゃ撃つ」
「こ、この・・・ややこしい・・・状況の・・・遠因が・・・アザゼルにあるかと思うと、つい我慢できなくなった。反省はするが後悔はしない」
妙なところで男らしい弁明をかましたな。
いやいやいやいや。俺がいつどこで何をした?
「まさかと思うがイッセーを殺す指示を出したことじゃねえだろうな? アレは組織の長として当然の判断だから、それこそ反省も後悔もしねぇぞ?」
「俺はそこまで子供じゃねえよ。・・・・・・感情的には生涯認めんが、組織運営的な視点では一億歩ぐらい譲って譲歩せんでもない」
全然譲歩してねえだろうが。どんだけイッセー好きだよ。
「と・は・い・え! 人選ミスについては土下座と生涯にわたる生活の保障を要求しても問題ねえような気がするんだながな。いや、マジで」
・・・殺気!?
思わずその場にいた全員が身構えるほどのオーラをだした宮白だが、数秒後に深呼吸とともにひっこめる。
数秒間なにか考えてから、宮白は再び深呼吸して切りだした。
「とりあえず質問だ。お前がモテたくてモテたくて仕方がないが、全然モテなくて悪夢を見るほど恋人が欲しかったとしよう」
・・・それは部下や仲間がポンポン結婚している俺に対する嫌味か。
小雪の奴の同情する視線が突き刺さるのが腹立つ。お前も彼氏いない歴=人生だろう。頑張って宮白落とせ。
「そんな恋人いない歴に枕を濡らす日々の中、誰がどう見ても美系な見知らぬ人が、「好きです。付き合ってください!」だなんて言ったとしよう。まさに人生バラ色だろう。そうは思わないな?」
定番だな。うん、俺もそんな女が欲しくなってきた。
「そして勢いよく人生初デートだ。当然頭を抱えて悩んでデートコースを考えるわけだ。当然だな。そしてデートも楽しむわけだ。最高だな」
あー、俺も過去ハーレム作りすぎたなぁ。そんな純な恋愛ができそうにない。
で、それをなんでこんなところで―
「ところがデートも終わって夕方の公園というよりにも寄ってロマンチックなシチュエーションで。「実はあなたを殺すのが目的だったの♪ ごっめんね~?」だなんてなったらもう異性恐怖症どころか異性嫌いになってもおかしくないトラウマになるよな? つーかそんな人選した奴殺したいと考えるのは当人じゃなくても普通だとは思わないか? えぇ?」
そりゃひどい。ああ、俺関係者だったら真剣にカウンセラーを紹介するレベルだ。
・・・・・・・・・ん?
「・・・・・・・・・えっと・・・それ、実話?」
「ノンフィクション♪」
にっこり笑って宮白が断言する。
それってもしかして・・・。
「い、イッセー?」
「ザッツライト♪」
もはや地獄の悪鬼の例えすら生ぬるいと思うほどの、つーか本当に生ぬるいかもしれんレベルで怒りのオーラがまきちらされた。
ちょっと待てェエエエエ!! 何やらかしてんだそいつ!!
「アザゼル。すまねーが、反論できねーよ」
「待て小雪!! 確かに一番上から指示出したのは俺だが、最終的に末端動かしたのは別の奴!!」
いや、そんなの見過ごしてたのは謝るけど!! マジ悪かったイッセー!!
うわやべぇ! グレモリー夫妻の視線もなんか冷たいぞオイ! 俺は晩飯にあり付けるのか!?
「・・・まあ、過ぎたことは仕方がないとして、だ。当然そんな目になればトラウマになるのは当然で、すなわちできうる限り当面の間そっとしておく必要があるわけだ」
宮白が僅かに話の方向をずらしていく。
この野郎、こっからが本題だな?
「ちょっとまて兵夜。ファックな展開だが朱乃とかほっといていいのか?」
「安心しろ小雪。朱乃さんは不倫狙いだ。・・・本命ができなければ決定打にはならん。故に放置だ」
「それはそれでファックだが、じゃあアーシアってのはどうすんだよ」
「イッセーの中でアーシアちゃんはバカ桐生のせいでものすごい天然行為を繰り返す妹ポジだ。・・・いや、イッセーマジで馬鹿だよな? 異文化だといえ敬虔なクリスチャンが裸見せるなんて相当だろ?」
小雪と宮白が話を進めていくが、確かにイッセーはバカだな。
「それじゃあリアス・グレモリーはどーすんだよ? あれ、アプローチが強烈じゃねーか?」
確かにその通りだ。
おもっきしベタ惚れしてるだろ、もう少し警戒した方がいい気がするんだが。
だが、宮白は視線を横にずらすと、微妙な空気を見せ始めた。
「・・・・・・ぶっちゃけ部長が一番安全牌だ」
「「「「・・・え?」」」」
その場にいた四人の声が一つになった。
ものすごいアレなタイミングで初キスまで奉げ、その後勢いよく押しかけ女房したリアスが、なぜ安全牌?
「最初のタイミングで裸で添い寝するなんて真似をしでかした揚句、その後も裸で抱き枕にしたり混浴をOKしたせいか、イッセーの中で部長は「下僕に対するスキンシップでエロなことしてくれる人」ということで固定されている。ファーストキスの件すら本気で下僕に対する褒美と信じて疑わない」
・・・・・・トラウマがひどいことになっているから、ということにしておいてやろう。
「ゆえに部長はキャラ的にそういうイメージが固定されているのでアーシアちゃん以上に安全牌だ。それはもう間違いない」
自分でいって納得したのか、深くうなづく宮白になにも言えなかった。
とりあえず、イッセーのトラウマは重傷だということにした方がいいだろう。色んな意味で。
「まあ、そういうわけで俺としてはマジで当分そっとしておきたい。せっかく寿命が百倍近く増えたのに、今焦って付き合いが数カ月の相手とラブロマンスを始める必要はないと思うんだよアザゼル」
「まぁ、カウンセラーぐらい呼んでも罰は当たらんよなぁ」
悪魔の寿命は確かに長いわけだし、生き急ぐ必要はない。
あいつはしっかり相手と関係を深めてから恋仲になっていくタイプだろうし、少しぐらい時間がかかっても問題はないだろう。
そんな風に思った瞬間、宮白の姿がかき消えた。
と、思ったら一瞬で振り向いて土下座をしていただけだった。
「つぅわけで、何を焦っているのか知りませんが出あって数カ月の部長とイッセーをくっつけること前提で派手に動くのやめてくださいご両人!!」
あ、あーあーあーあー。なるほどなるほど。
こいつ、鬱憤晴らしに俺を利用しやがったな!?
主の両親に怒鳴るのはどう考えても問題がある。が、正直腹立たしくてたまらなかった。
そこで原因の一端である俺がいたので、容赦なくスケープゴートにしやがったなこいつ!!
まあ原因の一端は俺にあるし、今回は多めに見てやるとするか。
「どうか! どうかお願いします!!!!!」
ものすごい見事な土下座っぷりだ。交渉能力は洒落にならないとは思っていたが、まさかこんな方法もとれたとは。
「・・・色んな意味で将来が恐ろしい奴」
「ファックな話だが同感だ」
SIDE OUT
昨夜は本気で大変だった。
まさかああも急いでくっつける下準備を進めていたとは思わなかった。
まったく。婚約関係を破棄して男にベタ惚れしているのは確かに貴族社会的には問題だろうが、もとはといえば自分達が約束破ったのが原因だろうに。
おおかた、赤龍帝を入れちゃったら白龍皇がやってきて部長が大変だと思ったのだろう。それでライザーとさっさと籍入れて一緒にいさせれば切り抜けられるとか考えたのだろう。ライザー期待のルーキーだからヴァーリの規格外っぷり知らなかったら安心できそうだし。
仮にも貴族が自分から言った約束を反故するほどの心配ぶりだ。親バカとバカにするほどのことでもないだろう。
三大勢力の戦争を中断させるほどの大騒ぎを起こした二天龍。警戒するのは当然といってもいいだろう。というか、俺だってしてる。
そう、それは本気で警戒しなくてはいけない。
前回はイッセーを馬鹿にされ過ぎてついキレたが、本当ならそっちの方が好都合なはずだ。
ヴァーリ・ルシファーの思想はシンプル。強い奴と戦いたい。宿命のライバルの赤龍帝に強くなってほしい。
とてもわかりやすいバトルジャンキーであるが故に、何らかの形で放出口をつくってやれば操縦は結構容易だっただろう。出自が魔王の血族であることを考えれば、悪魔の駒を渡してレーティングゲームに参戦させるという荒業も可能性はあったはずだ。逆にそこを突かれたことで禍の団にとられているわけだが。
和平を申し込む前にヴァーリの制御のためのプランを用意してなかった、していたとしてもヴァーリ当人に伝えてなかったのはアザゼルのミスだな。
伝えてさえいればレーティングゲームというスポーツで発散させることができたのにもったいない。史上初となる安全かつ死人の出ない二天龍の決戦も狙えたはずだ。
・・・ドラゴンスレイヤーの開発は急務だな。何とかして作り出したいがどうしたものか。
聖杯戦争だけでも大変だが、そう考えるとそれ以外にも危険な出来事が多すぎるのは難点だ。
と、なれば嫌でもグレモリー眷属全員の強化は必須になるな。
・・・アザゼルはどういう方針で強化するつもりだろうか?
一応俺のトレーニングについては既に要望を入れているので問題ないとは思うが、他の方向性が非常に気になる。
短期間で一気に伸びるか、それが無理なら確実なパワーアップを要望したいところだ。
聖杯戦争のメインは俺とアーチャーがやるから良いとして、それでもある程度の戦闘能力が必須というからマジで面倒くさい。
「・・・ちょっと兵夜? 話を聞いていたのかしら?」
真剣に頭を悩ませていると、部長の声で思考が中断された。
「あ、すいません。今後のことを考えていたらつい」
「まったくもう。確かに聖杯戦争というのが規格外なのは分かっているけれど、だからこそ、楽しむ時は楽しまなきゃだめよ?」
部長が苦笑しながら俺をたしなめる。
確かにそうだった。
今は部長の案内でグレモリー家の城の幾つかを見て回る観光ツアーの真っ最中だ。
考えることは必要だ。だけど楽しむ所を楽しまないと人生やってられないだろうに。
いくらなんでも考え事が過ぎたな。こういうのはもっと、別の時間帯にやっておかないと気が滅入ってしまう。
すこしすっきりしてから考えればいいな。
と、そこまで考えてはたと気付いた。
部長、なぜかゴスロリ系の服を着ている。
「・・・・・・とてもいまさらなツッコミなのですが、その服装、部長の趣味とは違いますよね?」
「あら気づいてなかったの? これはアーチャーが・・・」
そう言って視線を向ける部長をおって、俺は横を向くと。
「アーシア。そう、その窓のあたりで腰掛けてくれないかしら?」
「こ、こうですか?」
同じくゴスロリ衣装のアーシアちゃんにポージングさせて、悦に浸っているアーチャーの姿があった。
「僅か数日でここまでの物を用意するとは驚いたわ。その熱意に負けたしイッセーも喜ぶと思って着てみたのよ、全員」
「お前はもうちょっと緊張感持てぇえええええ!!」
すいません俺の