ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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大王子息、大物です!

 

 若手悪魔の中でも、今年は相応に有望な悪魔が育っているらしい。

 

 例えば、我らがリアス・グレモリーは魔王ルシファーの妹だ。そしてそれは魔王レヴィアタンの妹である生徒会長にも該当する。

 

 加えて、同世代に残る魔王であるベルゼブブとアスモデウスの家族にも同世代がいるとかなんとか。

 

 さらに、魔王以外の有力者である大王バアルと大公アガレスの後継者も同世代だとか。

 

 つまり、元悪魔有力者の親族がそろいもそろって同世代なわけである。

 

 非常に長命なはずの悪魔の業界でありながら、これはどう突っ込めばいいのかわからない。

 

 で、そういうわけで何でも集まりがあるらしい。

 

 当然、眷属もお供として馳せ参じることになる。

 

 で、エレベーターを登った先に出てきたのです、が。

 

「久しぶりだなリアス。そこにいるのがお前の眷属か。・・・良い目をしている」

 

 ガタイのいい青年が、こっちに向かってやってきていた。

 

 後ろに何人もの悪魔が付いてきているところから考えて、彼は若手悪魔の一人ということだろう。

 

「久しぶりね、サイラオーグ」

 

 部長も笑顔で握手を交わす。

 

 さすがの俺でも見てわかるほどの実力者だろう。親父を含めて権力者を見てきた目だからこそわかるが、相当器をもった大人物だ。

 

「紹介するわ。彼はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主で、私の母方の従兄弟でもあるの」

 

 部長の親族ってわけか。

 

 言われてみれば、どこかサーゼクスさまに似た雰囲気を見せているな。

 

 しかしつまりサーゼクスさまはパイプだけでいうなら大王ともつながりがあるということか。

 

 親族のつながりによる政治的なパイプは計り知れない。彼が魔王陣営のリーダー格になっているのも当然のことと言える。

 

 まあ、それは大王側にも言えるわけだからややこしいことになりそうだが。

 

 いくら変化しなければいけないとはいえ、変化する動きって言うのは当然保守派の出現が出てくるからな。

 

 徹底抗戦そのものは旧魔王派が泥をひっかぶってくれた形になっただろう。だが、適度に見切りをつけてある程度の妥協をする類は存在する。そういう手合いは間違いなく元政権にとっての反対派閥として動いているはずだ。

 

 悪魔業界は絶対に政治方面でややこしいだろう。今後のことを考えると間違いなく俺は関わることになるだろうし、既に憂鬱だ。

 

「始めてみる顔も何人かいるな。・・・特に兵藤一誠と宮白兵夜にはあってみたかった」

 

 サイラオーグ・バアルはやけに好意的な表情を俺とイッセーに向けてくる。

 

 あら? やけに好印象だな。

 

「ど、どうも。俺達ってそんなに気になりますか?」

 

「次期大王に興味を持っていただけるとは恐縮です」

 

 イッセーはどもりながらだったが、俺は何とか冷静な対応をとれた。

 

 ・・・うん、イッセーは今後の会話とかでしゃべらせないようにしよう。ただの一般人が貴族社会に関わればもめごとが起こる可能性は非常にでかい。

 

「リアスとライザー・フェニックスのレーティングゲームを見る機会があってな。二人とも見事な戦いぶりだった」

 

 感慨深そうにそう言ってくれるサイラオーグ・バアル。

 

 なるほど。俺は結局失敗したからちょっとびっくりだが、イッセーの逆転劇はそりゃあ興味も引くだろう。

 

 転生したてな上、ろくに戦ったこともない下級悪魔が若手のエリートを打倒したんだ。当然目立つ。

 

「さらに堕天使コカビエルの迎撃に、和平会談における活躍といい、お前たち二人の活躍は一部では伝説レベルだ。意識するのも当然だろう」

 

 サイラオーグ・バアルの言葉に、言われてみれば納得してしまった。

 

 俺の活躍は魔術関連の知識(ポジションの違い)によるものだから偉そうなことは言えないが、しかし結果だけ見れば大活躍ではある。

 

 結果的に撃破は失敗したが、上級悪魔の期待のルーキーを追い込んだ。とどめはイッセーの力を借りたが、最上級堕天使の仕掛けた儀式を無効化した。会話している間に小雪が来たおかげで何とかなったとはいえ、テロリストによる首脳陣暗殺を食い止めた。

 

 自分でいうのもなんだが、決定打は他に譲っているが、俺って意外と大活躍?

 

「アーシアの時もフリードを一人で倒してるし、宮白って実はグレモリー眷属のエースじゃないか?」

 

「イッセーくんがそれ言う? 一番いいところを持っていってるのはイッセーくんじゃないか」

 

 イッセーと木場が後ろでこそこそ離しているが、そういう木場も聖剣使い(フリード)倒したりライザーの眷属を半分以上倒してるからな? 人のこといえないぞお前。

 

 まあ、悪魔になってから愉快で平和な毎日と、尋常じゃない危険な日々が交互にやってきているからなぁ。色んな意味で注目を集めても全くおかしくない。

 

 ―どぉおおおおおん

 

「・・・・・・しっかしすごい体ですね? 俺も体術の心得はあるからある程度わかりますが、生半可な鍛え方ではここまでのものにはできないでしょう」

 

「・・・・・・ん? まあな。あいにく俺にはそれしかなかったが、今では胸を張って言えるほどには思っている」

 

 俺の賛辞に、サイラオーグさんはちょっと言い淀んだ。

 

 ふむ。部長の親族となれば強大な魔力もあるだろうからな。あえて体術を選んだことでいろいろといわれたこともあるのかもしれん。

 

 間違いなく人に自慢できるそれだろうからお返しも兼ねて褒めてみたが、うかつにつついちゃいけないところを刺激したか?

 

「あー! 兵夜くんだー!!」

 

 考えていた瞬間に、後ろから思いっきり抱きしめられる。

 

 この口調は考えるまでもない、久遠だ。

 

「ちょっと待て! 上流階級の会合になに暴走してんだ久遠!!」

 

「いや、会話からその辺マイルドに対応してくれそうだと判断しましたー」

 

 確かにそんな感じはするけれども!!

 

「・・・あなたのその判断力はエクスカリバーの一件で理解していますが、心臓に悪いので控えなさい」

 

 さらに後方から、ためいき混じりに会長が生徒会をひきつれてやってきた。

 

 シトリー眷属が一番最後か。性格的に真っ先に来そうだと思ったんだが以外だな。

 

―どっかぁあああああああん!

 

「しっかし会合に呼ばれたのに、うち半分が廊下で合流だなんて面白いですねー。あ、私はソーナ様の兵士な桜花久遠といいます―。どなたか知りませんが以後お見知りおきをー」

 

「・・・ほう、不思議なものだな」

 

 丁寧に頭を下げる久遠を見て、サイラオーグ・バアルは不思議そうに目を細めた。

 

 確かに口調的に不思議な感じはするが、そこまではっきりいうほどだろうか。

 

 と、思ったが、サイラオーグ・バアルの気になった点は全く違ったものだった。

 

「動きに隙がないように見えて、どこかぎこちない。・・・武術の修練を長い間開けていたのか? 本来の実力を発揮できてないように思えるが」

 

『・・・え?』

 

 その発言に、オカルト研究部の声がシンクロした。

 

 驚いたことに、生徒会はあまり驚いていなかった。ソーナ会長にいたってはむしろ当然とばかりに平然としている。

 

「お、お言葉ですが、冗談ですよね? 彼女、単純な剣技なら僕やゼノヴィアを上回ってますよ?」

 

「ああ、模擬戦をしたが本気を出されたら終始優勢に立ちまわられてしまった。・・・間違いなく同年代の剣士で一番強い」

 

 木場とゼノヴィアはいつの間にやら本格的に手合わせをしていたみたいで、特に驚いていた。

 

 確かに、コカビエルの時も単独で奴を空に打ち上げるようなまねもやっていた。そもそも前世で戦闘経験があるみたいだし、今の段階では経験年数に圧倒的な開きがある。今の段階で上回ってなければ明らかにおかしい。

 

 ましてや、彼女は剣道部を大躍進させるほどの活躍を行ってきた超実力者だ。そんな彼女が『実力を発揮できていない』?

 

 正直サイラオーグ・バアルの正気を疑うレベルでびっくりしたが、久遠はちょっと悲しげに笑いながら頷いた。

 

「・・・会長にであってから少しずつリハビリしてたんですけどねー。ぶっちゃけまだまだ要特訓ですー」

 

 マジかよ。

 

 こいつ前世じゃどんだけ強かったんだ?

 

 正直気になったが、さすがにそれは深入りしすぎだろう。

 

 俺とこいつは同類(転生者)だ。そして俺はこいつの魔法使いの従者とかいう感じらしい。ついでにいればキスまでした仲である。

 

 だが、そこまでだ。

 

 俺の絶対はイッセーで、久遠の絶対は会長だろう。

 

 踏み込んではいけない。

 

―どっごぉおおおおおおおおおおおおおおおおん!

 

 そう考えたので、さっきからあえて無視していた事実を刺激することで話をそらそう。

 

「そういえば、さっきからドッカンバッカン爆音轟いてますけど、いったい何があったんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか大変なことになった。

 

 あの後、サイラオーグさんがグラシャラボラス家の次期当主を一撃で沈めたりした。

 

 その後の会合もひと悶着あったが、問題は最後だ。

 

 なぜかソーナ会長たちとレーティングゲームをすることになったんだよなぁ。

 

 いや、別に嫌だってわけじゃない。

 

 将来的にレーティングゲームで対戦することは分かってたし、ちょっと驚いたけど桜花さんと戦うのは望む所だ。

 

 あの人には、球技大会の練習の時にいきなり仕掛けられたこともある。

 

 あの時は二対一で結構遊ばれてた感じがする。戦ってた時はわからないけど、コカビエルとの戦いを見てたらそう感じたんだ。

 

 それに、サイラオーグさんのいっていたことも気になる。

 

 あの人は、前世の実力を全然発揮できてない。

 

 宮白が昔からすぐ近くにいて、しかもその努力を見てきたから、てっきり桜花さんとかもガキの頃から鍛えてたんだとばっかり思ってた。

 

 あいつ、俺と会う前から徹底的に自分を鍛えてたからなぁ。そのおかげでアーシアを助けに行くときも一人でフリードにさらに敵がいた状態で倒しちゃったからなぁ。たぶん、戦い方じゃあオカルト研究部でも一二を争うんじゃないか?

 

 そんな宮白より上手にケルベロスを片付けていった桜花さんが、全然実力を発揮できていないとか、正直本当に驚く。

 

 あの人の本当の実力っていったいどれぐらいなんだろう?

 

 もしかしてヴァーリより強かったりするんだろうか? 割と本気で気になる。

 

「実際どんぐらい強いんだろうなぁ。どう思う、宮白?」

 

「正直実感したくないな。レーティングゲーム勝てなくなったら大変だろ」

 

 宮白は本を片手にそういいきった。

 

 ちなみに他のメンバーはほかのメンバーで時間を過ごしている。俺と宮白はなんか付き合いが長かったのでこうやってつるんでいるわけだ。

 

 ぶっちゃけパラパラめくっている風にしか見えないが、宮白は速読を習得している。頭に叩き込むだけなら、これで十分把握できるのだ。

 

 こいつ本当にスペック高い。つくづく思うが俺の親友は破格だ。

 

「お前何読んでんの?」

 

「悪魔文字についてのハウトゥー本に決まってるだろ。・・・今後の政治的活動を考えると必須だ必須」

 

「え、マジで? どれぐらい把握してるの?」

 

「とりあえず最低限な部分は何とか。・・・何とか基礎的なところまではこの休暇中に習得しないと」

 

 素早く他の本をさらに取り出しながら、宮白は真剣に内容を頭に叩き込んでいる。

 

 俺も頑張って文字の練習したけど、こいつも何気に頑張ってるよなぁ。

 

 悪魔の業界は変革の真っ最中。その波に乗って先に進もうと、宮白は本当に頑張っている。

 

 だけど・・・。

 

「・・・・・・上手く、いくのか?」

 

「今日の会合のことか?」

 

 宮白は本当に鋭い。

 

 あの会合はなんだかんだでうまくいったと思うが、どうも俺は首をかしげたくなることがあった。

 

 最終的に部長達が夢を語ることになったのだが、ソーナ会長の夢だけがいい顔されなかったんだ。

 

 下級悪魔や中級悪魔でも通える、レーティングゲームの学校をつくること。

 

 俺は素晴らしい夢だと思うし、変化しなきゃいけない悪魔の業界にとってもいい夢だと思う。

 

 だけど、セラフォルーさま達一部を除いて、会合で俺たちを見に来た悪魔の方々は冷たい反応だった。

 

「なあ、悪魔って変わらなきゃならないんだよな?」

 

「・・・・・・まあ、俺は聞いたとたんにそういう可能性を想定してたけどな。会長だって予想済みだと思うぞ? ほら、あの人頭いいじゃん」

 

 宮白は一回本を閉じて、酒を転送するとそのまま立ちあがった。

 

「なにごとも、変化が起きるときはそれに反する動きがあるもんだ。率先して潰そうとする動きだってあるが、その辺は旧魔王派として行動して追放されてるからこそのあの程度だろう」

 

 今日の勉強は終わらせる気になったのか、酒をあおりながら宮白は窓まで歩く。

 

「現状に満足している者は、変化に対して抵抗があるのは当然だ。当然、反対意見は出てくるだろう」

 

 なるほど。俺もハーレム状態になったとして「それやめろ」だなんて言われてうんとはいわない。

 

 相変わらず宮白は分かりやすい。

 

「幸い、悪魔側は旧魔王派という都合のいい敵がいたからそれを追放したことで一通りはおさまった」

 

 あのカテレアとかいう奴だっけ。アザゼル先生にぼこられたけど、キャスターのせいで助かった女か。

 

「だが、それは徹底抗戦以外の案を考えない過激派だ。あいにく世の中はそう簡単に二分されない」

 

 宮白は酒の瓶をさらに転送していくと、まるでそれがパターンの一つといわんばかりに置いて行く。

 

「戦争時における徴兵のように、あくまでこの行動を「悪魔が態勢を整えるためのその場しのぎ」として認識するものだっている」

 

 さらにいろいろな種類の酒を置いていく。

 

「仕方ないから変化は認めるが、最小限で抑えたい。間を取って変化そのものは認めるが、ある程度落ち着いたら制限を設けるというのもある」

 

 いくつか酒をおいて、宮白はためいきをついた。

 

「そういう連中にとって、貴族社会の持続は当然必須だから、『貴族のやり方』じゃない方法はできる限り避けたいと考えるのは当然なことだ」

 

 なるほど。悪魔の駒自体をよく思っていないから、そのための制度を整えるのは避けたいってことか。

 

 変わるのはいいけど後で戻したいかぁ。俺、そんなこと考えもつかなかった。

 

 やっぱ宮白は頭いいな。

 

「お前が上級悪魔になってハーレムを目指すなら、政治分野に長けたやつを紹介してもらえ。・・・方針を決めるのはともかく、細かい設定はサポート必須だろ」

 

「う・・・その通りです」

 

 反論できない!

 

 バカな俺にはそんな細かいところまで頭回りそうにない!! 

 

 俺の弱点は色んな意味でバカなところか! メガネをかけた秘書風お姉さんとか探さなきゃいけないのね! 前途多難!!

 

 つーか宮白を眷属に入れるってのどうだ? こんだけ頭良けりゃ何とかなりそう!

 

「・・・いっそ宮白が俺の眷属になってくれない?」

 

「ゴメン無理」

 

 バッサリ断られた!

 

 畜生! 親友なんだからもうちょっと考えてくれよ! マジな話お前いれば済む話じゃん! 良い思いさせて見せるからさぁ!?

 

 マジ泣きしそうな俺の顔を見ながら、宮白は何かに気付いたのかポンと手を打った。

 

「・・・ああ、お前勘違いしてるぞ?」

 

「へ? なんだよ? 一生部長の下僕でいたいとかそういう理由―」

 

「いや、そうじゃなくてだな・・・」

 

 宮白は俺の方に向き直ると、胸を張って不敵な笑顔を浮かべた。

 

「俺も独立目指す気なんだよ。・・・つぅか絶対条件」

 


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