ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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特訓、頑張ります!

 

 朝日が昇る中、俺はかなり早いペースでランニングを続けていた。

 

 特訓を開始して数週間、俺はこのハイペースランニングを一日たりとも欠かしたことはない。

 

 生命体の走りとは思えない速度で景色が流れる。空気の抵抗もスクーターで走っているときのようだ。足の高速移動はまるで自分の体じゃ無いかのよう。

 

 これは、体に強化魔術をかけているわけじゃない。魔術の修練を行う身である以上、そのための魔力は維持しなければならないので無駄なことはしない。

 

 加えていれば、この体を動かすのは非常に抵抗がある。

 

 正姫工業が試作中の軍用パワードスーツ。

 

 これらには戦闘用としての重装甲のタイプもあるが、それと同じぐらい単純な歩兵の活動を補佐するための、体格の変化も起こさないようなタイプが存在している。

 

 それをもとに調整を行い、逆に肉体の動きを阻害する特殊ギプスが俺の体には組み込まれている。

 

 アザゼルはこちらの肉体に大きすぎる負担が出ないようにトレーニングメニューを調整しているが、俺の場合は研究時間などを考慮に入れ、若干リスクは上がっているが、時間は短く密度の濃いトレーニングメニューに変更されている。

 

 朝の涼しい段階でこの激しいトレーニングを終わらせ、午後からは魔術のトレーニングを開始するのが俺のパターン。

 

 指導力はともかく驚異的な能力を持つ魔女の教えは俺にとって非常に有効で、必然的にその能力は確実に上昇している。

 

 加えて、その魔女の力によって俺の肉体は魔術的に改造を施している。

 

 呪術に対する耐性はもちろん宝石の粉末を利用した宝石魔術の組み合わせにより、頸動脈といった「スケールは小さいが損傷が致命的」な部位に集中特化した超高速自然治癒能力を発揮。再生のために周囲の細胞にすら影響を与えるため消耗と痛みが激しいが、ピンポイントで攻撃されて即死する事態だけは解除。アサシンのサーヴァントによるマスター殺害に対する備えは万全だ。

 

 肉体を変質させるイーヴィルピースの技術を組み込んだおかげでこの程度の体制は容易だ。治癒に魔術回路を組み込んだため今は俺だけの能力だが、将来的には味方側の魔術師全てにこれを使うことを目標としたい。

 

 まあ、レーティングゲーム等の試合に使うと反則じみているので、特殊術式によってレーティングゲームに置いての封印システムを構築済みだ。万が一の事態に備えて強制解除はできるが、その時はルールに抵触していることを知らせるようにできている。

 

 敵は最低でも6の英霊とその主。反則手段の一つや二つを使っても反論は無視すれば構わない。

 

 聖杯戦争という荒波を潜り抜け、俺は魔術師の立場安定という将来をかならず作り出す。

 

 等と考えている間に急カーブ。

 

 ただ走っているだけにもかかわらず、Gが結構かかるが無理やり押し切ってそのまま走る。

 

 何度も何度もやっていただけあり、だいぶ慣れた。まだ走りきったあとの疲労感は大きいが、特に嫌に思うほどのことではない。

 

 これで半分。後は呼吸を整えながら走ればいいだけで―

 

―その前に目の前の巨岩を横っ跳びでかわす。

 

 岩は道路に落ちることなく急停止するが、しかし直撃すればひびぐらい入りそうなほどの質量だ。

 

 そして俺は横っとびした勢いで湖の上に飛んでしまう。

 

 反対側から襲いかかって来たので仕方がないが、とりあえず翼を広げて宙に浮かぶ。

 

―その真上から、暴風が叩きつけられた。

 

 あまりの勢いに勢いよく水面へと加速する。

 

 風圧がすごすぎて抵抗できない。

 

 このまま水の中に叩き込まれたら、間違いなく動きが一瞬止まる。つか、あのギプスに防水機能はない。

 

 だが―

 

「甘い!!」

 

 俺は水面に『着地』する。

 

 水属性魔術の特訓を積んだ俺は、水に干渉することはスペシャリストだ。

 

 水の熱伝導率や水の中の熱そのものに干渉することで、水をしいて敷いてマグマの上を移動するということすら理論上は可能だろうし、液体窒素を水で包んで運ぶという難行もこなせるだろう。

 

 時間はかかるが接触した生命体の中の水分を操作してダメージを与えることもできるかもしれない。こんど組み技の類を練習してみよう。長時間密着できれば確実に勝てる決め技の完成だ。

 

 そんなこんなで両足を踏ん張って暴風の中を立ち上がり、俺は前方を睨む。

 

「やってくれるなお前ら。ここ数週間毎日襲撃されてたが、この辺りで仕掛けられたのは初めてだ」

 

 この辺りは良いターニングポイントなので、意識を切り替えられるから避けられていたはずだ。

 

 今回は、あえてそこを狙ったのだろう。狙われないという意識をついた不意打ちだった。

 

 鍛えられたことで精神面を強化されたから何とかなったが、修行する前の俺だったら喰らっていただろう。

 

 そして俺は睨みながら、軽く足の裏で水面をたたく。

 

「・・・防壁形成」

 

 瞬間、俺の背後で伸びあがった水の壁が、真後ろから潜行して仕掛けてきた拳を防いだ。

 

「甘かったな。今の俺ならそれぐらいわかる。・・・着地した瞬間にある程度の解析はしてたんだ」

 

 何度も何度も練習したかいがあった。

 

 これである程度意識した状況下での不意打ち対策は万全。完全に気を抜いた状態での不意打ちはどうしようもないが、こればっかりは練習できないので仕方がない。

 

 そういうわけで俺は息を吐くと。

 

「・・・つぅわけで練習終了。ご苦労さん、ナツミ」

 

「・・・息止めるの疲れたからもうしないからね! 今日のお昼はカレーにして! 鳥のがいい!!」

 

 ・・・不意打ちに対するトレーニング相手になってくれたナツミとハイタッチした。

 

「ベルと小雪も悪かったな。なんども付き合ってもらって・・・悪かった」

 

「まあ暇ですから。あなたのことは実質嫌いではありませんしね」

 

「ファックな難易度の手伝いだしな。まーこんなもんでいいならまたやってやるよ」

 

 岩が飛んできた方向から二人ものんびりとやってくる。

 

 ここ数日、なぜか毎度毎度俺のところ来てくれているのでついでに特訓に付き合ってもらっていた。

 

 いや正直マジで助かってる。魔術の強化そのものはアーチャーがいれば十分すぎるが、それ以外はあいつの専門外だ。体術と光力の扱いに置いて、それに長けている二人の存在はマジ力になった。

 

 そして魔術面でもちゃんと鍛錬は積んでいる。

 

 実戦を意識した特殊武装も多数開発済み。なんとか戦闘準備は整った。

 

「今夜はひと段落ついたしごちそうだ。思いっきり楽しんでくれ」

 

 冥界独自の食糧事情もある程度知識としては叩きこんである。それなりに美味い物を用意できる自信はある。

 

「せいぜい美味いメシを用意しろよ。・・・ま、まあ、ファックな出来だとしてもせっかく作ってくれたもんだからたんと喰うけどな」

 

「ミカエルさまに使えるものとして豪遊は避けてきた身の上ですが、今日は楽しみにさせてもらいますね」

 

 なんか顔を赤くする小雪と、誰が見ても見取れそうな笑顔で返すベルに頷いてから、俺はとりあえず道路の方に進もうとした。

 

 そんな俺の視界に、妙なものが映る。

 

 ・・・駒王学園のジャージに見えるんだが、なんでこんなところに?

 

「一応ここもグレモリー領だし、イッセーあたりが逃げ出して力尽きたとか言うんじゃないだろうな!?」

 

 正直な話可能性はありそうで怖い。

 

 真面目な話、イッセーのトレーニングはアーチャーをけしかけようかマジで迷うほどのレベルだった。

 

 伝説級のドラゴンに追いかけまわされるってどういうことだよ!? 殺す気か!?

 

 などとは思いながら近づくが、そこにいたのは全く予想外の人物。

 

「・・・あー。兵夜・・・くん、だー」

 

「ちょ、おま!? 久遠!?」

 

 なんで久遠がこんなところにいるんだよ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、敵と名前が被っているから自分で命名した飛行艇、ラージホーク(旧名レイヴン)の部屋に、アザゼルが来訪した。

 

 ・・・いや、敵と同じ名前というのも微妙な気分だったんだ。ちゃんと船体にもペンキで名前も書いた。

 

「・・・で? シトリーのところの転生者がなんでそんなところにぶっ倒れてたんだ?」

 

「長距離連続瞬動の特訓してたら、ペース配分間違えてぶっ倒れてたんだと」

 

 てんぷら盛り合わせをテーブルに置きながら、アザゼルに答えてためいきをついた。

 

 俺も大概ハードトレーニングしてるが、何をやってるんだあいつは。

 

 俺が見つけてなかったらそのまま藻屑となってたかもしれんなアイツ。

 

「まったく何考えてんだあの女は。・・・今、馬鹿をやってへし折れそうにならなくても、ちゃんと頑張れば十分伸びるだろうに」

 

「アザゼルにしたらファックな話だな。お前、基本的に特訓内容はローリスクだもんな」

 

 小雪がアザゼルのぼやきに納得しながら、酒をもってこっちにやってきた。

 

 さて、酒もつまみもできたし、特訓の半ばを過ぎた記念に宴会をするとしますか。

 

「よし。準備もできたし食っていいぞー」

 

「やたっ! いっただっきま~っす!!」

 

 俺が許可を出すと同時に、ナツミが勢いよくがっつき始めた。

 

「お・い・し~!! 兵夜やっぱり料理美味しいね! ボク幸せ!!」

 

「実質ここまでとは思いませんでした。それもこんなにたくさん用意してくださるだなんて、ありがとうございます」

 

 ナツミとベルが絶賛してくれるのがこそばゆい。

 

 必要な行動を上手にできればストレス解消にもなって金もかからないと考えて料理は勉強してきたが、やはり褒められるのは嬉しいもんだ。

 

「しっかしお前らもファックなまでに大変だな。せっかくの夏休みだってのに特訓三昧でろくに遊べねーなんてよ」

 

 てんぷらを酒で流し込みながら、小雪が俺に同情してくれる。

 

 いや、まあ確かにほとんど遊べてないのは事実だが、それは仕方がない。

 

「テロリストの大儀式に参加しちまったからには無理なのはわかってたからな。・・・嫌でも本格的にかかわらざるを得ない以上、多少の自由時間はあきらめるさ」

 

 実際そうだろう。

 

 ・・・俺が敵マスターなら真っ先にターゲットに狙う

 

 なんでこの特訓中に仕掛けられなかったのか不思議なぐらいだ。グレモリー領に匿われているような状況にでもなっているのだろうか。だとしたらこのまま領内にいた方が安全なのかもしれない。

 

「正直もう少しのんびりしてほしいぐらいだがな。なにが悲しくて戦力が多い時からガキ共を戦闘に投入しなきゃならねぇんだよ」

 

 勢いよく酒を飲み干しながら、アザゼルはそうぼやくが、サーヴァントを呼び出した手前そういうわけにもいかない。

 

 ・・・御三家の血を引く者として、フィフスの企みは断固阻止する。

 

 第一、それならそれでちょっと・・・なぁ

 

「そんなにのんびりしていいなら、朱乃さんと小猫ちゃんの指導は他になんかなかったのかよ。いや、方針としては理解できるけど」

 

「いや、こういうのは持ってる才能を伸ばすのが一番の近道だよ。大体、持って産まれたものを否定してもなんだろ」

 

 多少どうかと思ったが、さすがは年の功。あっさり切り返されてしまった。

 

「そーいや聞いてなかったが、アザゼルはどんな特訓方法したんだよ。てめーのことだからファックな指導はしてねーとはおもうけどよ」

 

「実質気になりますね。兵夜の特訓も特に目新しい指導はしてないみたいですし、どうなのでしょうか?」

 

 実戦経験豊富な小雪とベルが、興味津々でアザゼルに視線を向ける。

 

「え? え? ・・・アザゼルって先生やれるの? どんな教え方?」

 

 ナツミもよくわかってないみたいだが、興味がわいてきたのか食事の手を止めてアザゼルの方に視線を向けた。

 

「いや、大したことは指導してねぇよ?」

 

「いや、別の意味で大したことを1人に対してしたと思う」

 

 主にイッセーに対して。

 

 実際、はたから見たとしても結構すごいとは思う。

 

 部長は下手に過激なトレーニングなどはさせず、今の実力をまともなトレーニングで伸ばす方向。個人の力以上に「王」としての資質を強化するため、レーティングゲームの勉強の方を中心としている。

 

 木場と俺は禁手の延長。実際かなり強力な能力なので、持続時間が長ければ長いほど効果は発揮するだろう。俺もこのトレーニング中はしっかり鍛え上げ、とりあえず数日ぶっ続けで使えるレベルにはできている。

 

 ゼノヴィアはデュランダルの制御を中心に特訓。さらに、この休暇中ではできないと踏んだうえで、次善策も施している。

 

 アーシアちゃんは聖母の微笑の効果範囲の拡大。無差別一斉回復としての回復フィールドの形成と、個人を狙った長距離からの回復としての、回復オーラの射出の二つを訓練している。実際遠距離からの回復なんて悪質な嫌がらせといっても過言ではない。これはきわめて有効な戦術だろう。

 

 ギャスパーはとりあえず精神面から鍛える方針に決定された。・・・まあ、あの対人恐怖症は鍛える鍛えない以前の問題なので実に納得できる。

 

 イッセーは少しでも禁手にいたるべくハードトレーニング。伝説のドラゴンで現最上級悪魔のタンニーンとかいうドラゴンと、ワンツーマンで山一つ使って修行中だ。あいつ、死ぬんじゃなかろうか。

 

 で、朱乃さんと小猫ちゃんだ。

 

 この二人は方針が他と異なり、何でも使わないようにしている能力を素直に使うようにすることといわれてしまっている。

 

 朱乃さんの事情は知っているが、やはり小猫ちゃんもいろいろあったようだ。グレモリー眷属初期メンバーのバックボーンの厄介さに例外はなしということだな。

 

「なにを封印しているかは、気を使って言わないといてやるが、封印したままにするのはどう考えても問題だ。お前らだって、持ってるもん使ってるだろうが」

 

 アザゼルの言うとおり、確かに俺たちは持ってる能力を最大限に使っている。

 

 ベルや小雪はそれがあったからこそ腕利きのエージェントとして行動している。俺だって、魔術を運用して活動したからこそ、駒王町で相応の権力を振るえる立場になっているんだ。ナツミにもコカビエルと立ち向かえるだけの力があったわけだし、久遠だってその実力をシトリー眷属として最大限に生かしている。

 

 持っている物を活かしたからこそ、俺たちは戦いを切りぬいてこられたのは確かに事実だ。否定はしない。

 

「・・・だけどなアザゼル。少なくとも俺は、それ(持っている物)がきっかけで人生歪んだところだってあるんだぜ?」

 

 ・・・たぶんだけど、イッセーがいなければ俺はかなり人生間違えてただろう。

 

 イッセーがいるからこそ善性を持ったまま力を振るえる。いなければ、間違いなく俺は個人の利益のみを追求して、極悪な類になっていただろう。

 

 ナツミだって、前世の記憶と能力なんてものがあったから、自分の故郷を追い出されたんだ。それは決して否定できない。

 

「俺は嫌だぜ。・・・大事な先輩と後輩が、強くなる代わりに人格歪むだなんて、さすがにゴメンだ」

 

 人生を一歩間違えれば、俺たちはきっとフィフスみたいになっていたかもしれない。

 

 ・・・そこだけは、ちゃんと意識しなきゃいけないはずだ。

 

 二人が持っている力を使わないのは、それを使うのを心底嫌悪しているからだろう。使った結果たまったストレスで、人格が歪む可能性は間違いなくある。

 

 もしそれが突き抜けて、あの二人がはぐれになってしまったら・・・。

 

「・・・・・・心配するのはわかるがな、あんまり気にしなくても大丈夫だろ」

 

 考え込んでいた俺の頭に、アザゼルの手が乗せられた。

 

「オイそこのコレクター総督。俺はかなり真面目に話してんだぞ?」

 

「俺だって真面目だよ。大体お前がいい証拠だろうが。イッセーのおかげでとりあえず釣り合い取れてんだろ?」

 

 そのままグシグシと頭をなでられる。

 

 あのちょっとそこのオッサン? 俺中身30代! いい年こいてるんでそれやめてくれない!?

 

「リアスたちのとこにはイッセーがいる。・・・あいつはいい男だろ?」

 

「なんで疑問形だ当たり前だろう馬鹿じゃねえのお前いや確かにドスケベだけど」

 

「過剰に反応してんなオイ」

 

 当然のツッコミを入れたつもりなのだが、なぜかできの悪い息子をいたわる親のような顔でみられた。解せぬ。

 

「あいつはちゃんと信頼を築き上げてから本当の関係をつくるタイプだ。下手したら血を見るようなただのタラシとは一味違う。・・・アイツなら、朱乃を任せても大丈夫だろ」

 

「ちーとばかしスケベすぎるのがファックだがな。ま、ファックなだけの馬鹿よかマシだろ」

 

 うんうんと、アザゼルと小雪が頷きあう。

 

 ふむ、なかなかイッセーのことを評価しているじゃねえか

 

「まぁそりゃ当然だ。アイツが本来スペック高いのは当たり前だろう。俺の親友だぞ」

 

 最近は自分を磨く努力も忘れてないし、あれなら本当にハーレム王の一つや二つなれるだろう。ああ、半ば確信している。

 

「もちろん俺もスペック高いってことを証明して見せなきゃならないがな。・・・そういう意味じゃ本当に手伝ってくれて助かった。改めてありがとうな」

 

 なんかもう一度言った方がいいと思ったので、一度立ち上がると頭を下げる。

 

 本当に世話になった。おかげでだいぶ強くなったのが自分でもわかる。

 

 一人でも欠けていたら、ここまでの強さは手に入らなかっただろう。

 

 ベルは俺の格闘戦のトレーニング相手になって、動きで隙があるところなどを一から指導し直してくれた。

 

 小雪は先達として光力の扱いを丁寧に教えてくれた。光力に関しては悪魔側だと手がつけにくいので、これは本当に助かった。

 

 ナツミも、家事を手伝ったりしていろいろと支えてくれた。おかげで生活がだいぶ楽になっただろう。

 

「この手伝いの結果は必ず出す。生徒会とのレーティングゲームで、絶対に情けない姿は見せないと誓う」

 

 魔術の基本は等価交換。俺は魔術に携わったものとして、彼女たちの労力に見合った結果を必ず出して見せる。

 

「「「・・・・・・」」」

 

 頭を上げると、なぜか三人の顔が真っ赤になっていた。

 

「じ、実質・・・改めて言われるとアレですね。ちょっとカッコイイですね・・・はい」

 

 いや、自分のルックスはそれなりに正確に把握しているつもりだが、そこまで顔真っ赤にしなくても良いんじゃねえか、ベル?

 

「え、えへへへへ。・・・うん、どういたしましてぇ」

 

 おーい、ナツミ? てんぷら口からこぼれてるぞ。汚いからよくわからないけどにやけるのは後にしなさい。

 

「へっ。前から思ってたが、お前に手ー貸して正解だったな。その調子で行ってみな」

 

 激励ありがとうな小雪。・・・でも一番真っ赤なんだが?

 

「なるほどねぇ? 確かにイッセーの親友だなぁオイ」

 

 ・・・ものすごい妙な顔でこっちを見るなアザゼル。思わず光力を叩きつけたくなるだろ。

 

 なんだなんだ? なにがあった?

 

 思わぬ展開にちょっと戸惑う俺の背中に、ふと柔らかい感触が発生する。

 

「やっぱりいい男だねー。うんうん、キスしてあげよー」

 

 ついさっき聞いたばかりの声とともに、頬に唇の感触が。

 

「く、久遠!? お前起きてたのか!? いつから!?」

 

「んとねー。アザゼル先生が「持ってるもん使ってるだろうが」のあたりかなー」

 

 よし! 特に特訓内容は漏れてないな!?

 

「まー、会長の予想通り姫島先輩と塔城ちゃんは種族特性を使わせる方針みたいだけどねー」

 

 読まれてらっしゃる!?

 

「ま、助けてくれたし余計なことは聞かないよー。あ、お腹空いたからそれ食べていいー?」

 

 いうが早いか、久遠は答えも聞かずにてんぷらをつかみ・・・。

 

「・・・食べていいよねー?」

 

 ・・・誰もが見取れるような可愛い笑顔を浮かべやがった。

 

 まったく・・・。

 

 ま、いいか。

 

 


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