鬼の一人旅   作:波美

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次回からオリ主の珍道中が始まります。目次というか、こんな話を原作キャラと絡めながら書いていきたいな……なんていう願望。
捏造と妄想と救済メインです。


白鬼の剣士

白鬼の剣士、と呼ばれる男がいる。

 

何時頃その名が広まったのかも、その男が一体何者なのかも、そもそも存在するのかどうかも不確かな存在。にも関わらず、ここ数十年の間に伝説さながらに語られてきた名だ。

 

白髪であることから老人であるとも言われ、

巌のような巨体の凛々しい姿から青年であると言われ、

血のように紅い瞳から化物だとも言われ、

鬼の面を側頭部にひっかけていることから本性は鬼であるとも言われ、

 

青年とも老人とも果ては人外とも言われ、その全貌は全く掴めない。

 

………いや、ひとつだけ正解が紛れている。彼の人は正しく鬼…人ならざるものである。真実が明かされることはないだろうが。

何故こんなにも白鬼の剣士の話が出回っているのか……それは偏に彼の御仁が成し遂げたと言われる偉業が、人伝に伝わり口の端に上り語られてきたからだ。

 

曰く、王国と帝国の合戦時には一兵士として鬼神もかくやと言わんばかりに大立ち回りし、帝国兵を圧倒したとか。

曰く、幾百とも幾千とも言われる魔物の軍団をたった一人で切り伏せ、街を救ったとか。

曰く、カッツェ平原で生まれた未知の騎士アンデットを倒し、ワーカーや冒険者を窮地から救ったとか。

曰く、アダマンタイト級冒険者ですら倒すのが難しい魔物…ギガントバジリスクやドラゴンを倒したとか。

曰く、………。

 

中には流石に作り話じゃ…噂を助長させるために盛られただの言われるものもあるが、それでも尚人々の口に上る彼の人の偉業は正しく勇者や英雄と呼ばれるに相応しいものであった。

当の本人は何故ここまで話に尾鰭所か背鰭や胸鰭までつくような事態になってしまったのかと、検討もつかず頭を抱えているが。

 

そんな男の知らない所で、後に有名となる彼の友人や親しい者達は、またひとつ彼の行いを語る。

 

「彼ほど剣の腕前に長けた武人を、私は知らない。一度でいいから白星を勝ち取りたいものだが、中々……」

ーー今や王国戦士長として名を馳せる男は苦笑いを零す。

 

「ガゼフもそうだが、さらにその先のあの男を倒す為、俺は剣を振るい続けるだけさ」

ーー彼から貰い受けた刀を腰に、再戦を望む剣士は諦める事なく剣を磨く。

 

「彼は正しく英雄…いいえ、勇者よ。本人はただの旅人だなんて言ってるけどね」

ーー英雄の残した武器を手にする白雪の乙女は、可笑しそうに笑いながら彼を讃えた。

 

「あの人は私を地獄から救ってくれました。たった一人の家族にも出会わせてくれて……本当に、感謝してもしきれないくらいです」

ーー今の明るさからは想像もできない暗い影を背負っていた少女は、あの日出会えた幸運に感謝した。

 

「あの人は、何だかんだ言って困ってる人を見捨てられない。強くて、優しい人。あの人に救われて、私も妹達も今を笑って生きている」

ーー1度は手放した夢を再び歩きながら、彼への恩を返す為に少女は今日も師の元で魔法の勉学に励む。

 

「頭は最高の漢さ!この俺が言うんだから間違いねぇ。ザリュースの奴は師であり架け橋として部族を救ってくれた御人……て言ってたかな?まぁ、要するに強ぇ御人だ!ガハハッ」

ーー力こそ全てだと語る蜥蜴の異業種は、惚れた雌の事を語るが如く彼の事を熱く語った。

 

「彼は……そうだね、孤独な鬼…かな。殉教者のように罪を背負い、償いながら時間に流されるように生きる……憐れな鬼だ。いつの日か、彼が許される日が来る事を祈ってるよ」

ーー彼の友人である白銀の龍は、目を伏せてそう静かに語った。

 

 

 

これは、そんな男の五十余年にも及ぶ長い長い旅路の中の、ほんの一端の話である。




「どうしてこうなった」
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