暗黒文花帖   作:ヲリア

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半年前に買ったPCのWindowsが起動しなくなりました。
BluetoothキーボードをiPadにつなげました。

前回のあらすじ
あや「一人はさみしいから人間やめて仲間になって❤️」
ゴン「やだ(確固たる意志)」
ジン「手合わせしたら親公認にしたるで(囮はもちろんジジイが行く)」
あや「うーんこの畜生」


Stage6(前). 観音さま猿田彦さま

「ようやく到着ですか。淑女を待たせるものではありませんよ」

「爺に山登りをさせるもんじゃないよ、お嬢さん」

ここはどこかの山奥深く。文に関して言えば時計なぞ持っているはずもなく、ただ太陽の位置からおおよその時間を推測する以外になかった。

 

「ふん、それにしては汗ひとつかいていないじゃないですか。直前までお迎えされたんじゃないですか?」

「安心せえ、人っ子一人この近くには寄り付かせん。それにいい運動になったよ」

標高約3kmにもおよぶ山の頂点に二人はいた。この山の麓では入山規制がかけられており、ハンター達による厳重な警備がなされていた。

ちなみに彼は麓で車から降りて1時間とかからず、切り立った崖をその足だけで登ってきた。

 

「こんなシャツ姿じゃこの山の上は、何もしないでいると少々寒すぎる。ウォーミングアップというやつじゃ」

「ところで先程から気になっていましたが、そちらの着物はどちらで?私の目には「心」と書いているように見えますが」

「お目が高いのうお嬢さん。これはジャポンという島国のお土産じゃ。なかなかイカしているじゃろう(こやつジャポン語を読めるか。母国語かあるいは習っていたか)」

「外の世界では漢字の意味がわからずともカッコいいという理由で着物をお土産に買っていくという話がありましたが・・・まあ悪くないですね」

モデルとしか思えないような顔付きの外国人がなんとも間抜けた日本語のシャツを着る姿は日本人としても失笑を隠せない。

 

「そうそう、申し遅れたが、ワシの名前はネテロじゃ。訳あって立場は明かせないが、以後よろしくたのむ」

「ご丁寧にどうも、ご存知かもしれませんが、私は文、射命丸文です。以後よしなに(都市部で聞いた話によれば、ネテロといえばアイザック=ネテロ、ハンター協会の会長じゃないですか。ジンめ、私が何も知らないとお思いですか)」

ジンがネテロに立場を明かさせなかったのは、その役職によってハンター協会の強さを知られたくなかったが故にだったが、結局のところ調べればわかること、申し訳程度の時間稼ぎにすぎない。

 

「私のことはジンからある程度のことは聞いていると思います。私の力についても。そこで、私がもともといた世界、幻想郷において、人間と妖怪のように力の差があるもの同士が勝敗を決める際の平和的決闘方法として、「弾幕ごっこ」があります。お爺さんには弾幕を打てないでしょうから、私からの弾幕を避けるだけになりますが・・・」

「一方的にお前の攻撃を避けるだけ、か?」

「そうです。細かい規則は今から説明しますが」

 

ヒュッと風切り音が聞こえた、否、聞こえるより前に、文の目の前に巨大な掌が現れた。

むしろ文は風切り音を聞いて、ようやくネテロの方から掌が突き出されたのだと認識できた。

 

「御託はいい。試合にそんなもったいぶった規則なんていらねえよ。さっさと来やがれ」

ネテロの背後には仏、千手観音のような多くの腕を持った黄金の像、『百式観音』があった。

その攻撃の速度は常人にはもはや認識することすらかなわない。

 

「いいでしょう。私に本気の勝負をしてほしいのなら、それにふさわしい力を示すことですね。さあ、手加減してあげるから、本気で掛かってきなさい!」

 

 

--------

 

 

文との試合の約束を取り付けたジンは、ハンター協会会長室に到着した。

 

「ジンじゃな。首尾はどうだった?」

ジンが文を追っている間、ネテロは何もしていなかったわけではない。

いつもの着物姿からは打って変わって、胸に「心」と書かれたTシャツを着て、ウォーミングアップにより程よく汗をかいた姿はまさに本調子といったところだ。

 

「手合わせしてもらうことを約束した。それなりに強いジジイを出すってな」

「それなり、か。ワシより強い奴がいたら会いたいもんじゃのー」

ネテロは武の神とまで呼ばれるほどの武芸者である。正面切って戦えば、暗殺しようとしても、勝てる相手はいない。

 

「一番つええって言った奴が負けちまったら後がねえからな」

「ふむ。・・・底は見えんかったか?」

「そう簡単には見えねえよ。だが、攻撃手段の一部と、やりようによってはヤバそうな持ち物を見せてもらった」

「ほう、なかなかやるもんじゃな」

ネテロ個人としては教えて欲しくなかった。ジンはこちらの情報を明かしてないであろう状態で、一方的に、他人から教えてもらうのは公平じゃない・・・なんて甘っちょろい理由ではない。

未知との戦いを楽しみたかっただけという、もっと子供染みた理由だ。

だが、ジンをして負けるかもしれないという判断、なによりもハンター協会会長としての立場が、聞かないという

行動をとらせなかっただけだ。

 

 

--------

 

 

岐符「天の八衢」

 

『俺が見たのは、まずは弾幕ってやつだ。文の力は念能力じゃないから正確なところはわからなかったが、だいたいこれぐらいのエネルギーの弾を数百個単位でばらまいてきた』

(なるほどの。たしかにこいつは弾幕と言える)

 

ネテロは背後の百式観音を消して避けに徹する。その弾幕一つ一つに込められた力はもちろんネテロにも見えなかったが、ジンの話が本当ならネテロどころか、ピンポイントメタな能力者以外には受けきれないだろう。

 

『しかもそいつはガキンチョ一人勧誘するために演出としてやった行為だ、全然本気じゃねえだろうな』

目の前に迫る弾に対してネテロは()()()左に避ける。これほど大量の弾幕を展開している上、弾そのものがぼんやりと光っている。必然的に互いの姿は見えなくなるため、その隙に乗じて背後から攻撃するのが最善だとネテロは判断した。

 

しかしそれは、弾幕ごっこにおいては最悪の手であった。

 

「!」

目の前にのみ展開されていると思っていた弾幕は、360度全てに発射されていた。素早く動いたが故に慣性を殺しきれず、左手にある弾幕に対して自ら突っ込んでしまう。

「流」によって左手にオーラを集めてガードすることに成功したが、その手には若干痺れがのこってしまう。

 

(なんつーエネルギー・・・相当オーラを持っていかれたわい。あと2発も喰らえばまともにガードできなくなりそうじゃ。ノーガードで当たっちまえば腕ごと持っていかれそうだしな)

「おやおや、当たってしまわれましたか。もうちょっと難易度を下げた方がよろしかったですかねぇ?」

「手加減やめさせてーんだ、そんなことさせっかよ。それに何すれば良いかもわかった」

 

再び文を中心に放射状に弾幕が展開される。

その密度は濃く、人一人がようやく潜り抜けられる程度。そして、ここに行けば弾幕が当たらないなんて安全地帯は存在しない。

ならば答えは一つ。

 

ネテロは目の前に迫る弾幕に対し、最小限の動きで、弾と弾の間に身体を入れるように動く。

常人であれば避けるだけでも苦労する雨の中を、何事もなく歩く。前に進んでいる以上、文との距離は縮まる。近づけば近づくほど射出される弾は速く、事故りやすいところをたやすくやってのけた。百式観音を使わない、格闘家としての間合いにまで詰めたネテロは、ひとっ飛びに文の方へ向かって蹴りを入れた。蹴る前に放たれた弾幕に当たらないように、残心も忘れない。

 

吹っ飛んだ文は空中で静止すると、周囲にある弾幕をかき消した。

「まだやるかい?」

「スペルカードはまだまだ残ってます。最後まで楽しんでくださいね」

文は懐から紙を取り出す。といってもこの紙自体に力はなく、ただ試合前にホイッスルを鳴らすような規則、儀礼的なものである。念能力で言う、制約に近い。

風神「風神木の葉隠れ」

 

「させるかよ」

アニメの変身シーンを潰すかのように、ネテロは再び飛びかかる。

 

「そういう速攻は対策済みなんです」

スペルカードを宣言するより前にネテロの攻撃は届いたが、先ほどと違って手応えはない。

そして、文の周りに吹雪のように弾幕が展開される。急速に曲がり、紋様を描くように。

このままでは取り囲まれると気付いたネテロは、ガリガリと弾幕にかするたびにオーラを削りながらすぐさま後ろに下がる。

 

(なんと厄介な・・・あのカードを掲げた瞬間から少しの間は攻撃が効きにくい、あるいは無力化しているのか。どうあっても弾幕を攻略せんことには始まらんようじゃな)

紅霧異変以降、勝負を速攻で終わらせず、弾幕を攻略することに重きをおくべく、少なくともパターンを一周するまでは攻撃がききづらくするという規則が設けられていた。

 

「この弾幕は私の周囲に展開されるもの。先ほどのように、そう簡単に打撃で攻略できるとは思わない事ですね」

弾幕が2週目に入った。

 

ならば、とネテロは文の、弾幕ごっこの思惑通りに攻略を始める。

まず周囲に紋様を描くように、目の前のネテロにとっては壁があるような感覚で展開される。

 

文はそう言ったものの、常に周囲に弾幕があるわけではなく、一定数放出された後は四方八方に飛び散っていく。狙うならそこしか無いが、飛び散った弾幕を避けた後の隙は一瞬。そこに身体を潜り込ませるのはどうしても無理だ。

 

だが、ネテロにとって、攻撃するだけなら一瞬あれば充分に過ぎる。

弾幕が3週目に入った時、ネテロは「円」によって弾幕の全体像を把握。弾幕が交差する事で生まれた網目状の隙間の中で最も大きい場所に移動し、限界まで前に出る事で、背後に充分なスペースを作る。

 

あとは心静かに、文との間に弾がなくなる瞬間を待つ。

 

 

(・・・今!)

ネテロの祈りは一瞬にして行われ、ネテロの念能力「百式観音」が背後に現れる。そしてネテロは空を切るように平手を振り下ろす。

 

百式観音 壱乃掌

 

ネテロの手の動きに追従するように背後の観音像もその掌の1つを振り下ろす。

手応えがなかった先ほどとは違い、文は地面に叩きつけられる。

頑丈な妖怪の身体とはいえ、流石に百式観音による攻撃はこたえたらしい。

整えられた髪の毛は乱れ、服には風圧で切れ目が入り、頭からは一すじの血を流しながら起き上がる。

 

「あなた、なかなか弾幕ごっこの才能ありますよ。だけどもうちょっと手加減してくれても」

「お嬢ちゃん、攻守交代といこうじゃないか」

「せめて賞賛の言葉だけでも聞く耳持っていただけませんかねぇ」

「お遊びの才能があるって言われたって嬉しかねえよ。んまあ褒めてくれるってんならもうちょっと派手に行こうじゃねえの、弾幕ごっこらしく、な」

顕現している観音像に再び攻撃の意思を伝えるべく、ネテロは構えた。

 

百式観音 九十九乃掌

 

観音像の持つすべての腕が、息もつかせぬ乱れ撃ちを始める。

多腕を操る関係上、その速度は先の壱乃掌より僅かに劣れども、総合的な威力、密度は遥かに増している。

弾幕ごっこと言うにはいささか暴力的であり、乱打なれど一切の無駄も避けさせる意思もない()()は、たとえ歴戦の少女であっても規則の範囲外ーーースキマとか夢想天生とかーーーの力を使わず、一切のミスなく凌ぐことは到底かなわないだろう。

 

しかし、通常の弾幕ごっこの規則の範囲外の力なら?

 

 

 

 

 

「攻守交代というのならせっかくなので」

そんな声が聞こえた気がする。

 

 

 

 

気付けば、百式観音の掌の一つが無くなっていた。

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