オリジナルの方もあるからね……
2´
静音から謎の質問をされてから2日後の昼下がりに学校に私宛の電話が一本入った。
電話の主は橙子師だった。
「鮮花、お前の兄が誘拐された。学校には私から連絡しておいた。今すぐここに来い。お前も大変だろうが……」
そこから先はもう覚えていない。気がついたら寮の自分の部屋にいた。昔みたいに記憶を取られていた訳では無い。ただ自分が恋愛的な意味で愛している兄が誘拐された、という知らせにただただ呆然としていた。
確かに学校には兄が誘拐された事は連絡が入っていた。学校側の対応は事件が落ち着くまでの外泊を許可する、という特例中の特例だった。その対応に私は少し驚きつつ伽藍の堂へと向かった。
「待っていたよ鮮花。よく来たね。なんか茶菓子でも出せればいいんだがそんな暇もなくてね。まぁ座ってくれ。」
「いいんです。お心遣いありがとうございます。」
「さて、早速だが状況を説明しよう。
まず犯人はこの頃のご時世から言って例の連続誘拐犯だろう。」
「連続誘拐犯は聞いたことがあります。」
私の学校である礼園女学院は世間と隔離されている空間だ。最近の情勢も全く知らない。だがそんな礼園でもまことしやかに囁かれているのがこの連続誘拐犯の話だ。なんでも毎回犯行に及ぶ時顔が違う、なんて話も聞く。
「ふむ、なら話は早い。礼園はそういう話からは隔離された空間だ。そんな礼園でも話題になるとは誘拐犯もなかなかやり手だな。
話を元に戻そう。この連続誘拐犯は毎回上下白色の服を着た違う人間が犯行を行う。恐らくは洗脳といった辺りで誘拐した人間を操作しているのだろう。お前の兄もいつ洗脳されるか分からない。
鮮花、お前には魔術の心得がある。相手は短時間で大量の人間を洗脳している。相手にも魔術の心得があるか、魔術師と関連があるかのどちらがだろう。魔術の秘匿に関しては恐らく大丈夫だ。一応念には念を入れて深夜にここへ向かえ。恐らく誘拐犯のアジトはここら辺だ。」
橙子師は机の上にある地図を指さした。指の先は昼でも気味が悪くあまり誰も通りたがらない地域だ。
「分かりました。兄を必ず助け出します。」
こうして兄奪還作戦は始まった。
その日の深夜、私は橙子師の指定した場所に行った。
昼ですら気味の悪い地域だが深夜となるともっと気味が悪い。寒気すらしてくる。結界でも貼っているのだろうか。
ある程度その地域を巡回していると呆然と一点を見つめている上下白色の服を着た女性を見つけた。上下白色の服を着ているということは敵なのだろうが明らかにおかしい。
「大丈夫ですか?どうかしましたか?」
つい声をかけてしまった。
「え、え?あれ、私ここで何をしていたんだろう……」
その人は自分の置かれていた状況に混乱しているようだ。
「もしかしたら誘拐されていたことも忘れていますか?」
「ゆ、誘拐!?実はここ最近の記憶があまりなくて……」
どうやら洗脳されていたということで間違い無いだろう。ただそれにしても不自然だ。まるで急に洗脳が解けたような、そんな言動だ。
警察に連絡したかったが高校生の私がこの時間に外に出ていることがバレてしまったら恐らくは補導される。それは色々とまずいので私はその人をとりあえずはまだ明るい繁華街まで案内した。
今日はもう遅いしこの女性の件といい色々バタバタしてしまってかなりエネルギーを使ってしまった。
兄を助けようとして自分が捕まっては元も子もないので戦術的撤退をすることにした。
幸いにも誘拐犯に対する手がかりは多く手に入った。明日の昼また橙子師と作戦会議をしよう。
そんな事を考えながら鮮花は家へと帰って行った。
今回は鮮花の話でした。
次回から2日目です。