私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!   作:みかづき

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第1章・イキキル 前編①

「あぁ?動機だぁ?何、ふざけたこと言ってんだ、てめーは!?」

「ぷぷぷ、それは、見てからのお楽しみ!視聴覚室にレッツゴー♪」

 

詰め寄ろうとする大和田君を前に、

モノクマは、笑いを堪えながら、床下へと消えていった。

場を静寂が支配する。

私達が監禁されてから、およそ一週間を過ぎた、今日。

とうとう、モノクマ側から、アクションを起こしてきたのだ。

 

一体、何が起きるの…?

 

そんな私の心を共有するかのように、誰もが口を開くことなく、

ただ、その場に立ち尽くしていた。

 

「行きましょう。ここで黙っていても仕方ないじゃない」

 

最初に発言し、動いたのは、霧切さんだった。

視聴覚室に向かって、ひとり歩き始めた。

 

「そ、その通りだ!みんな、視聴覚室に行こう!」

 

霧切さんの声で、我に返ったのか、石丸君が声を上げ、みんなもその声に従う。

こうして、私達、16人、全員が視聴覚室に移動することとなった。

 

 

 

◆  ◆  ◆

 

 

 

視聴覚室につくと、ドアはすでに開かれていた。

モノクマか、先に行った霧切さんが、開いたのだろう。

 

「いまさら、こんな所に何があるってんだよ…て、オイ、何かあったぞ!?」

「机の上に、ダンボールがあるな」

「何だろうね、さくらちゃん?」

 

最初に部屋に入った桑ナントカ君が、大げさに自分で自分にツッコミを入れた。

どうやら、何かあったようだ。

それが何であったかは、大神さんと朝日奈さんの発言の後、すぐにそれを目にした。

 

「やっと、来たようね」

 

ダンボールが置かれた机のすぐ側に霧切さんが立っていた。

 

「霧切さん…それは?」

「さあ、何かしらね…?でも、おそらく…」

 

不安そうに問いかえる苗木に対して、彼女は目を合わせることなく、

ダンボールに手を入れた。

 

「これを見れば、分かるかもしれないわね」

 

彼女の手には、DVDが入ったケースが握られていた。

そのケースには「霧切響子様」と書かれた白いラベルが貼られていた。

 

「ククク、どうやら、その中に、モノクマが言うところの『動機』とやらが入っているらしいな」

 

十神白夜が、肩を震わしながら静かに笑った。

 

「何!?そーだったのか!?」

「察しろ…アホ」

 

十神君の発言に石丸君が驚愕し、大和田君が、それを見て汗を流す。

 

「ヌヌヌ…確かに、この視聴覚室なら、そのDVDの中身が見れますな」

 

山田君が汗をながしながら、メガネがをかけ直す。

 

「な、何があるのかなぁ、こわいよぉ…」

 

不二咲さんが、生まれたての子鹿のように震えている。

相変わらずこの子は、可愛いな。

 

「で、では、みんなで一緒に見ましょうか…?それでいいですよね?」

「うふふ、どうやら、それ以外の選択はなさそうですわね」

 

舞園さんの提案に、セレスさんが同意した。

確かに、この流れでは、それ以外の選択はなさそうだ。

モノクマの言う「動機」とやらも、十神君が言うように、そのDVDの中に

入っているはずだ。

ケースに名前がついているということは、DVDはそれぞれ別の内容である可能性が高い。

どんな内容かは、とりあえず見て、後で各自が発表することになるだろう。

 

私達は、ダンボールから、自分の名前が書いてあるDVDを取り出し、

席に座り、その内容を見始めた。いや、正確には、私以外のみんなが…。

 

「あ、あれ、わ、私の分がないんですけど…」

 

最後に並んでいた私は、ダンボールの中が空であることに気づき焦る。

 

(何これ?イジメ…?イジメなの…!?)

 

あのクマ野郎なら、今までのことを考えれば十分その可能性がある。

しかし、この状況では、さすがに、その可能性は薄い。

なにやら、今回は、シリアスモードだった。

多分、本当に、入れ忘れたのだろう。

だから、待っていれば、あのくそクマが、ここにやってきて…

 

そんなことを思って、ふと視線を下にやると、床に白いDVDがケースに入れられず

剥き出しの状態で落ちているのを発見した。うん、イジメでした。

そのDVDには、直接マジックで、

 

「喪子!?チ…!(舌打ち)」

 

と書かれていた。

 

ああ、そうか、「もこっち」を当て字にしたのか…。

何だろうね、これ。ああ、合コンで喪てない女子が来て、驚き、舌打ちした…てことかな?

うん、もう…アイツ、殺していいよね?

 

冷静な殺意を胸に私は、DVDを拾い、席についた。

殺そうにも、ヌイグルミの方を殺っても仕方ない。

もしかしたら、このDVDの中に、奴の正体のヒントがあるかもしれない。

そんなことを考えながら、私は、再生のボタンを押した。

 

 

 

 

◆  ◆  ◆

 

 

 

画面はいきなり砂嵐から始まった。

オイオイ、ここでも嫌がらせかよ・・と思った次の瞬間、

画面には4人の男女を映し出した。

 

「ヤホ~もこっち!」

「智子、元気してる?」

「智子、こっちは、元気だぞ」

「…。」

 

私はその人達を知っていた。

知らないはずはない。間違うはずはない。

 

「優ちゃん…!お父さん…!お母さん…!ついでに…智貴!」

 

そこには、私の友達の成瀬 優が。

そして、家族が…お父さんとお母さんと、ついでに弟の智貴がいた。

 

「みんな…!」

 

私は思わずモニターを触ってしまった。

私達が監禁されてから…家族と離れてから、まだ一週間くらいなはずなのに、

彼らの存在がひどく懐かしく感じられた。

今日まで、とりあえず何もなく、生活は送ることはできたが、

現在、私達は、モノクマを操る犯罪者に自由を奪われていた。

その環境の中、やはり、普通に生活することなどできるわけがなかった。

知らず知らずの内に、不安や恐怖がその身を削っていたのだ。

久しぶりの家族と友達の元気な姿を目の前にして、緊張が緩み、私の瞳に涙が自然と

溢れていた。

 

「智子…あなたが希望ヶ峰学園に選ばれるなんて…夢みたいだわ。頑張ってね」

「自分の娘として誇りに思うぞ。まぁ、でも…無理はしすぎないようにな」

「もこっち~!見てる~!?本当に凄いよ!頑張ってね~!!」

「まぁ…喪女だけどね…」

 

(て、てめ~智貴。余計なことを言うんじゃねえ…!)

 

お母さんとお父さんが私の希望ヶ峰学園の入学を祝い、優ちゃんもそれに同調してくれている中で、弟の智貴が残酷な現実を呟き、微妙な空気が流れたことは、モニターを通して伝わってきた。

その場に私がいたのなら、飛び蹴りなり、何かの報復にでるに違いない。

そんなことを考えると、ふと笑ってしまった。

 

智貴…変わってないな。

 

いつもなら激昂しているところだが、今は嬉しくすら感じられた。

変わらぬ弟の反応は、私の日常そのものだった。

彼らの座っているソファと背景から、そこが自宅のリビングだとわかった。

ほんの一週間ほど前、私は、そこで胡坐をかきながら、テレビを見ていたのだ。

 

「智子、あなたに寮生活なんて無理だと思ってたけど、ちゃんと生活できてるみたいで、

お母さん、嬉しいです」

「ちゃんと、ご飯は食べてるのか?いつでも帰ってこいよ」

 

(イヤイヤ、判断早いって…!まだ一週間かそこらしか経ってねーし)

 

両親の早合点に私は苦笑いした。

おそらく、遅くても3日以内に逃げ帰ってくると予想したのだろう。

まあ、現実には、逃げ帰ることができない状況なんですが…。

 

「もこっち、休みになったら、帰ってきてね!そして、遊ぼうよ!」

 

画面の中の優ちゃんが手を振る。

 

(優ちゃん…)

 

私のただ一人の友達。

中学で出会った彼女は、今も変わらぬ笑顔を私に向けてくれる。

 

優ちゃん。

いつかの優ちゃんの言葉が近頃よく頭に浮かびます。

お前の為に友達があるんじゃねぇ、友達のためにお前がいるんだ。

ここでは、誰も私に言葉をかけてくれません。

 

そんな某バスケ漫画の改変台詞が頭を過ぎった。

うん、早く会いたいよ。

 

「ほら、智貴も何か言いなさい!」

「ハハハ、何を恥ずかしがっているんだ」

「いや、そんなんじゃねーし」

 

両親に促されて、そっぽを向いていた智貴は少し恥ずかしそうに、こちらを見る。

 

「まぁ、元気にやってれば、それでいいんじゃねーの?」

 

(ハハハ…智貴のやつ…)

 

どこまで行っても、智貴は智貴だった。

あの出発の日に見せた表情と何も変わっていない。

 

そう、何も変わって…いや…何かが違う。

 

私は、モニターを食い入るように見つめた。

 

(あれ?コイツ…身長伸びてね?)

 

いや、明らかに、間違いなく、智貴の身長は伸びていた。

それは、中学三年生というより、高校生の大人びた体型に成長していた。

髪も少し伸びていた。これまたモテそうな雰囲気を出していた。

 

(男子の成長期って凄いな…!)

 

いや、マジで絶句しました。

スタンドで言えば、成長AAといった感じかな?

わずかな期間でここまで成長するとは。まさか、私と離れたのがきっかけか?

寂しさがきっかけ?シスコンなの?やっぱりシスコンだったの?

 

それに、優ちゃん…また一段と可愛くなってる。

私の希望ヶ峰学園騒動でしばらく会っていなかったが、彼女も変わっていた。

身長ではなく、女らしさに磨きがかかっていた。

さらに、可愛くなってる。乳袋もあんなに…ぐぎぎぎ。

 

家族と友達の変化と不変。

それを目の当たりにして、感傷に浸っていた私は、あることに気づいた瞬間、絶句した。

 

(え…この映像は、誰が撮ってるの…?)

 

希望ヶ峰学園の職員だろうか?

でも、今は、私達の誘拐騒動でそれどころではないはず。

じゃあ…これを撮っているヤツは…!

 

―――ゾクリ

 

悪寒が走った。

奴だ…モノクマを操っている奴だ!

 

「み、みんな!逃げて―――」

 

私がモニターに向かって叫んだ瞬間、画面は真っ暗になった。

そして、次の瞬間、別の映像がモニターに映しだされた。

 

「ヒ…ッ!」

 

私は、小さい悲鳴を上げた。

そこに映し出されていたのは、無残に破壊された私の家のリビングだった。

窓は破られ、ソファは引きちぎられていた。

そして、また、別の映像が映し出された。

 

「て、天の助…!」

 

それは、私の部屋だった。

それがわかったのは、私の愛用のヌイグルミである「天の助」があったからだ。

ゲーセンにおいて、他人の努力を利用する、所謂「こじきプレイ」で獲得した

巨大な人型人形の天の助。

それが、無残にも、バラバラに引き裂かれた。

それだけではない。

私の命ともいえるパソコンは完全に破壊されていた。

乙女ゲーや秘蔵フォルダは全滅していると思って間違いない。

だが、この状況において、そんなものは少しも気にはなかった。

 

優ちゃんは…お母さんは、お父さんは…智貴はどうなったの?

 

それだけが、唯一の心配だった。

その時、あの声が聞こえてきた。憎たらしいあの声が…!

 

「希望ヶ峰学園に入学した黒木智子さん…そんな彼女を応援していたご家族とご友人のみなさん。どうやら…そのご家族とご友人の身に何かあったようですね?

では、ここで問題です!

このご家族とご友人の身に何があったのでしょうかっ!?」

 

その直後、画面は真っ暗になり、文字が浮かび上がる。

 

 

  

     正解発表は“卒業”の後で!

 

 

(あ、あわわわ…)

 

私は、思わず立ち上がってしまった。

 

(ど、どうして、みんなが…?)

 

恐怖と混乱で頭の中が嵐のようだ。まるで考えが浮かばない。

身体の震えが止まらなかった。

モノクマは…黒幕は、警察に捕まるどころか、その網を掻い潜り、

私の家族にまで手を出したのだ。

 

私は、口を押さえる。

悲鳴を抑えることができそうになかったからだ。

いや、この場においては、それが自然だ。

この映像を前に、悲鳴を上げることは何ら恥ではない。

そうだ。

ここは、逆に思い切り悲鳴を上げよう。

漫画やアニメの“ヒロイン”のように、大声を上げて。

 

私は手を離し、力いっぱい悲鳴を―――

 

 

「い、嫌~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!」

 

(え…?)

 

私は、その悲鳴の方向を見た。

そこにいたのは、本物の“ヒロイン”。

超高校級の“アイドル”舞園さやかさんだった。

 

「舞園さん!?」

 

その声に反応し、苗木も立ち上がる。

 

「嫌、なんで!?どうして!早く、出ないと…いや…嫌~~~~~~~ッ!!」

 

舞園さんは、顔を真っ青にして、ガタガタと震えながら、

自分の身体を守るかのように抱きしめながら、走り出し、視聴覚室を出た。

 

「ま、舞園さん、待って!」

 

その後を苗木が追いかける。

何も言わず、全員がその後を追いかける。

 

「どうしてこんなことになっちゃったの…?殺すとか、殺されてるとか…もう耐えられない!出してよ!ここから私を出してよ!」

 

「落ち着くんだ、舞園さん!」

 

廊下に出ると、二人がいた。

舞園さんは、錯乱状態になっており、苗木は彼女の手を掴み、必死で説得している。

 

「嫌、離して!」

「みんなで協力すれば、脱出できるよ!」

「嘘よ!」

「もしかしたら、その前に助けが来るかもしれない」

「助けなんて…来ないじゃないッ!!」

「…僕が君をここから出してみせる!どんなことをしても、絶対に、絶対にだ!!」

「う、うう苗木君…う、うわああああああああ~~~~ん」

 

苗木の説得で、彼女は大粒の涙を流し、苗木に抱きついた。

 

「大丈夫…大丈夫だから」

 

苗木は優しく彼女の肩に手をかけた。

 

(グギギギ…!)

 

その光景を目の当たりにして、完全にモブ化した私は、心の中で血の涙を流した。

悲鳴…ただ当たり前の行動すら、本物のヒロインに奪われてしまった。

その上でこんな光景を見せつけられるなんて…。

本来、同じモブであるはずの苗木は、彼女の心の支えとなっていた。

苗木の分際で、その言葉、その表情は、まるで主人公のように格好よかった。

 

羨ましい…。

 

正直、そう思ってしまった。

私も彼女のように、言葉をかけて貰いたかった。抱きしめられたかった。

だが、現実は厳しい。

私の横には苗木の代わりに…

 

「ねぇねぇ、さっき叫ぼうとしてなかった?ヒロインぶろうとしてなかった?」

 

いつの間にか現れたモノクマが、ツンツンと私の頬をニヤけながら、ついていた。

 

(ク、クソが…)

 

コイツを殴れば、爆発しかねない。

それに、図星だったこともあり、今はこの屈辱に耐えるしかなかった。

 

「え…本当!?本当に、ヒロインぶろうとしてたの!?」

 

それを聞きつけて、盾子ちゃんが顔を紅潮させながら、走ってきた。

本当に嬉しそうに。

 

(なんで、お前はモノクマ側に加担してんだよ!?お前も被害者だろ!?)

 

どんだけ私の失態が嬉しいんだよ、このクソ女は!?

 

「あなたは何者なの…?どうしてこんなことをするの?あなたは私達に何をさせたいの?」

 

霧切さんは、モノクマに向かって射抜くような目をして、問いかける。

モノクマは、私から離れると、笑いを堪えながら、答えた。

 

「オマイラにさせたいこと…ああ、それはね…“絶望”それだけだよ!」

 

その回答に、そして地獄の底から響くようなその声に、私達は絶句した。

私は、以前、厨房でその答えを聞いてはいるが、再び身体が震えた。

 

「てめ~~~俺のチームの仲間に何しやがったんだ!?」

 

モノクマに向かって、大和田君が走り出した。

モノクマは、それを見て、笑いながら、床下へと消えていった。

 

「クソが!クソ!」

 

モノクマが消えた床を何度も蹴りながら、大和田君は叫ぶ。

そして最後に、静寂と恐怖だけがその場に残った。

 

 

 

 

◆  ◆  ◆

 

 

 

結局、その後、各自が何を見たのかを話し合うことはなかった。

 

「…言いたくないわ」

 

霧切さんを筆頭に、誰も自分から話す者はおらず、会議もすぐに解散となった。

私は、その日、碌に眠ることはできなかった。

家族と優ちゃん、そして、破壊された部屋の映像が頭を過ぎり、浅い眠りを繰り返した。

朝食には、なんとか参加したが、午後には、眠気がピークに達し、少しだけ昼寝しようとしたら、このザマだ。時計は、9時を過ぎていた。

 

私は、夜時間の前に、厨房にくだものを取りに行くことにした。

厨房には、果物が豊富にある。

何故に果物かというと、夜中に食べても太らないというダイエット本の基本を信じている

というくらいしか理由がない。

みかんやりんご程度なら、部屋に持ち帰って食べても問題はなさそうだし。

 

「あ、智子ちゃんだ!こんばんは」

「うぬ…黒木か、元気か?」

「ど、どうもです」

 

食堂には、朝日奈さんと大神さんがいた。

二人はどうやら、食後のお茶をしているようだ。

しかし、この二人は本当に仲がいい。完全に親友に見える。

まあ、大神さんの性別を知らなければ、彼氏彼女に見えるが…。

 

彼女達に挨拶をかわし、私は厨房へと足を踏み入れた。

そこには、先客がいた。

綺麗な黒い髪。完璧なプロポーション。

後姿からでも、彼女が絶世の美女だとわかる。

 

そこにいたのは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――舞園さやかさんだった。

 

 




いよいよ本編へ・・・


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