私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!   作:みかづき

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イマワノキワ 大和田紋土/不二咲千尋

 

・・・こんな時になって昔のことを思い出しやがる。

 

ありゃ確か、全国制覇間近となった時に、その地域を支配していた族との決着戦だったか。

乱戦の中、後ろからナイフでブッ刺されたことがあった。

俺はナイフで刺した野郎を裏拳でブッ飛ばし、そのまま喧嘩を続けた。

クソ痛てえの我慢しながらよぉ。

我ながら無茶苦茶だったぜ、あの頃はな・・・。

 

ナイフで刺された時に感じたのは、“痛え”じゃねえ、“熱い”だった。

ああ、まるで、傷口から火が吹き出たみてえな感覚だった。

今は、その逆だ。

まるで全身を無数のナイフで刺され続けてるみてーだ。

 

モノクマに単車に乗せられた俺は、

ケージの中のわけのわからねー装置の中を爆走《はしり》続けた。

まるでハムスターの遊び道具みてーな装置の中、ぐるぐる、グルグルと。

クソが!目が廻って仕方がねー。

だが、あのクソ野郎の“おしおき”とやらが、そんな甘いはずがねーんだ。

そんなことを考えていた時にあの爆発が起こった。

 

(・・・クソ野郎が・・・上等・・・じゃねーか)

 

爆発の直後、俺の全身は炎に包まれた。

クソが・・・!これが今回の処刑かよ。

所謂、“火炙りの刑”ってやつか。やってくれるじゃねーか!

隣の県との喧嘩の時に、

火炎瓶投げられた時があったが、アレが当たってたら、こうなってたわけか。

クソ痛てえ。

ズキズキと全身、ナイフでメッタ刺しにされてるみてーだ。

炎で何も見えやしねえ。

こりゃ、もう無理だな。

今から火を消してたとしても、どんな名医が手術したって助かりゃしねー。

 

確かに・・・“絶望”だ。

 

もう助からなねーなら・・・希望がねーなら、いっそのこと、気絶できればどんなに楽かと思う。

この地獄みてーな痛みから逃れられるなら、全てをかなぐり捨て、泣き叫びたい衝動に駆られる。

 

だけど・・・よぉ・・・

 

 

 

 

(それだけは・・・できねーな・・・!)

 

 

 

 

もし気絶しちまったら・・・無意識の内に俺は叫んじまうかもしれねえ。

情けねー悲鳴をあげちまうかもしれねえ。

それだけは・・・できねえ!

 

あのクソ野郎の・・・モノクマの言葉を思い出す。

 

“絶望の悲鳴”

 

それがヤツの狙いだ。

そのために野郎はこの処刑方法を選んだんだ。

俺に、絶望の悲鳴を上げさせるために・・・それを兄弟に聞かせるために。

 

兄弟のことを思い出す。

最後の最後まで自分を信じてくれた親友《ダチ》の顔を・・・

 

 

“大丈夫・・・最後まで付き合うさ。気にするな!僕達、友達だろ!”

 

 

絶望の中、そう言って笑った石丸清多夏のあの痺れるような笑顔を思い出す。

 

 

兄弟は・・・“強え男”だ。

 

だから、俺が死んで・・・死ぬほど落ち込んだとしても・・・

必ず立ち直り、前に進んでくれる・・・そういう男だ。

 

だけどよぉ・・・もし、俺が悲鳴をあげたら・・・ほんの少しでも声を上げちまったら・・・

それを、兄弟が聞いたなら・・・

きっと、それが兄弟の耳に残っちまって・・・ずっと残って・・・兄弟を生涯苦しめちまう。

 

兄弟は・・・優しいヤツだからな・・・。

 

 

 

 

(だからよぉ・・・それだけは死んでもさせねえ!)

 

 

 

 

地獄の業火に焼かれながら、歯を食いしばり前を睨む。

 

結局・・・モノクマを操る黒幕の正体はわからず終いだった。

野郎が、何者で、何を企んでるのかわからなかった。

 

・・・まあ構いやしねえ。野郎とはすぐ会えるからよ。

地獄でゆっくりとその面の下、拝ましてもらうぜ・・・・!

先に逝って待っててやんよ。

 

ああ、テメーの破滅はすぐそこだ。

テメーなんかが、兄弟に勝てるはずがねーんだ。

 

 

今・・・はっきり確信したぜ・・・!

 

 

黒幕・・・テメーは―――

 

 

 

 

 

 

”大したヤツじゃねーんだよ!!”

 

 

 

 

 

・・・だから、テメー如きが兄弟に・・・アイツらに勝てるはずがねーんだ!

 

へへへ・・・わけがわからねーだろ。

俺が何を言ってるのか・・・まるで理解できねーだろ。

そうさ・・・テメーなんざがわかるわけがねーんだ。

今頃、モニター越しで馬鹿面下げて嗤ってるテメー如きじゃ一生かけてもわかるはずがねえ。

 

・・・最後に大サービスだ・・・教えておいてやるぜ。

 

耳かっぽじってよーく聞け!クソ馬鹿野郎ッ!!

 

 

 

いいか・・・!

 

 

 

俺は今―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ”これっぽっちも“絶望”なんかしてねーんだよッ!!”

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・自分でも驚いてるぜ・・・今、こんな気持ちでいられるなんてな。

 

真実を暴露されることに怯えていた俺が・・・

 

裁判中、本当は内心ビビッてガタガタ震えていた俺が・・・

 

全てを諦めて絶望して・・・自暴自棄になっていた俺が、今・・・こんな気持ちでいられるなんてな。

 

 

 

 

 ありがとよ・・・黒木。 

 

 

 

 

お前が剥き出しの憎しみを・・・

ありのままの怒りをぶつけてくれたから、俺はやっと気づくことができた。

 

自分が何をしたのか・・・

どれだけ取り返しのつかねーことをしちまったかをあの時に、腹の底から理解した。

 

もしお前がそうしてくれなかったら、

自暴自棄になっていた俺は今頃、泣きながら、情けねー悲鳴を上げてただろうぜ。

 

だから・・・ありがとな、チビ女。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ありがとよ・・・不二咲。

 

 

 

 

お前が俺を“強い”と言ってくれたから・・・

俺に憧れている・・・そう言ってくれたから、俺は絶望《いま》を耐えることができた。

 

なあ、不二咲・・・

お前みてーな“強え男”が憧れた男はきっと、

 

 

親友《ダチ》のためなら、どんな絶望相手だって体を張って立ち向かえる男なんだろ・・・?

 

 

もう二度とお前に会うことはできねえけどよぉ・・・

 

天国《そこ》から見ていてくれよ!

 

 

 

 

俺の・・・最後の爆走《はしり》をよ・・・!

  

  

 

 

のた打ち回る舌を噛み潰し、血を飲み込む。

激痛も絶望も全て気合で押し殺し、ただ死ぬのを待つ。

 

不思議な感覚だった。

何1つ・・・恐ろしくなかった。怖いものなど何もなかった。

 

腹の底から・・・理解できたからだ。

 

 

“希望は・・・絶望なんかに絶対に負けねー!”

 

 

そのことを魂に刻み込むことができたから。

 

 

ああ・・・だからよぉ、この抗いもこの思いも決して無駄じゃねーんだ・・・。

それは、いつの日か兄弟に・・・アイツらに・・・希望へと繋がることがあるかもしれねぇ・・・。

 

それで・・・十分だ。

俺にはそれだけで・・・十分・・・だ。

 

 

いつしか・・・痛みも・・・熱も・・・感じなくなっていた。

もう何も・・・自分の体の存在すら・・・何も感じなかった。

光が・・・見える。

いつの間にか・・・光の道を爆走っていた。

進み続けるうちに、光と自分の意識が少しずつ混ざっていくような感覚に囚われる。

この世界から自分が消えることを実感する。

 

(そうか・・・これが・・・“死”ってやつか・・・)

 

この世界から消える覚悟はとうに出来ていた。

 

だけど・・・もし、“未練”ってやつがあるなら・・・それは・・・

 

(あれ・・・は?)

 

光の道の先に誰かがいた。

単車に乗った誰かが確かにいる。

その背中に、どんどん近づいていく。

 

改造単車に跨ったその男の背中には・・・

気合の入った白い“特攻服”には

 

あの刺繍があった―――

 

 

 

 

  “暮威慈畏大亜紋土”

  

 

 

 

(あ、兄貴・・・)

 

見間違えるはずはなかった。

あれは、兄貴だ。

 

 

超高校級の“総長”大和田大亜

 

 

俺の兄貴だ・・・。

 

光の道の先を爆走っていたのは、死んだ兄貴の大亜だった。

 

兄貴は俺を庇って死んだ。

俺に“漢の約束”を残して・・・。

 

 

 

“お前は仲間を守れる漢になれ・・・約束だぞ”

 

 

 

俺はその約束を守るため、兄貴の死を利用し、今まで爆走ってきた。

 

(だけどよぉ、兄貴・・・やっぱ、ダメだったわ。俺は・・・アンタにはなれなかった)

 

黒幕に真実が暴露され、族《チーム》は近いうちに崩壊するだろう。

 

 

ただ1つ・・・悔いがあるとしたら・・・それだけだ。それだけは悔いが残る。

 

 

(すまねぇな・・・兄貴)

 

 

俺は、アンタの代わりにはなれなかった。

そんな器じゃ・・・なかったんだ。

 

目の前の背中を見つめる。死ぬほど憧れたその背中を。

 

結局・・・俺はその背中に追いつくことはできなかった。

アンタと肩を並べることはできなかった・・・。

 

 

 

 

(“漢の約束”・・・守ることができなかったよ)

 

 

 

 

「・・・馬鹿野郎!紋土」

 

兄貴の声が聞こえた。

 

懐かしい声だった。

 

ああ、いくらでも罵ってくれ。

いくらでも、恨み言は聞いてやる。

 

 

俺は・・・仲間を・・・族《チーム》を守れな・・・

 

 

「俺は言ったよなぁ・・・?」

 

「え・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “小せえことは気にするな・・・!”

 

 

 

 

 

 

 

「俺はそう言ったはずだぜ・・・?」

 

「あ、兄貴・・・」

 

振り向き兄貴は笑った。

懐かしい・・・笑顔だった。

 

 

「でもよぉ・・・兄貴、俺は――」

「それに・・・お前は約束を守ったじゃねーか」

 

「・・・?」

 

「お前は確かに・・・取り返しのつかねーことをしちまった。でもよぉ・・・」

 

 

 

お前・・・最後に・・・なれたじゃねーか。

 

 

最後の最後に・・・なることができたじゃねーか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “仲間を・・・親友《ダチ》を・・・

体を張って守れる漢によぉ・・・!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カッコよかったぜ、紋土。俺が・・・誇りに思うほどにな」

 

「あ、兄貴・・・!」

 

「さあ、逝こうぜ、紋土。希望はきっと・・・お前の親友《ダチ》達が継いでくれるさ」

 

 

光の中を兄貴と一緒に爆走《はし》る。

肩を並べて爆走《はし》る。

 

全てが・・・光と一体になっていく。

 

その最中・・・あの記憶が・・・失われた2年間の思い出が流れ込む。

 

誰もが羨む最高のクラス。

石丸と不二咲と三人で笑い合った2年間

 

 

記憶を失っても・・・

 

たとえ、それが来世だろうが・・・

 

何度だって巡り会い、親友《ダチ》になり、笑い合う。

 

ああ、そうだ・・・ぜ。

 

 

 

「石丸・・・不二咲・・・俺達は・・・きっと・・・」

 

 

 

 

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知らない天井・・・。

 

 

 

 

ここは・・・どこ・・・なの?

 

 

意識がぼんやりする・・・一体ここはどこなのだろう・・・

 

 

 

更衣・・・室・・・?

 

 

 

ああ・・・そうか・・・

 

 

僕は・・・トレーニングのため・・・に・・・ここに・・・きた・・・んだ。

 

 

大・・・和田・・・君と・・・一緒に・・・それで・・・

 

 

 

ああ・・・そう・・・だ

 

 

思い・・・出した・・・

 

 

 

 

 

 

僕はずっと怖かったんだぁ。

小さい頃、“女の子みたい・・・”そういじめられた僕は・・・女の子になった。

女の子ならいじめられないから・・・。

 

僕は・・・逃げ出したんだ。

現実から・・・自分の弱さから逃げたんだ。

 

それからは・・・僕は心のどこかで・・・ずっと怯えていた。

 

いつか・・・真実が暴かれてしまうことを。

昔の自分に戻ってしまうことを。

自分の弱さと・・・向き合うことを。

 

いつか必ず来るその日に・・・ずっと怯えていたんだ。

 

 

僕はプログラムが好きだった。

パパがプログラマーだったから・・・家には勉強できる資料がたくさんあった。

ただ、プログラムを作ることが楽しかった。自分で作るのが楽しかった。

ただ、それだけだったんだ。

でも、ある日、パパにそれが見つかって、パパは僕には才能があるって・・・

周りにいろいろな人が集まってきて・・・僕は与えられた仕事がただ楽しくて・・・

 

それからしばらくして・・・超高校級の“プログラマー”と呼ばれるようになったんだ。

 

僕は・・・嬉しかった。

大好きなプログラムで認められて・・・

こんな僕でも、みんなの役に立つことができるから・・・

もう僕は弱くなんかない・・・!そう思えたから・・・。

 

 

でも・・・

 

僕はまた・・・あの頃に戻ってしまった。

 

コロシアイ学園が始まって・・・舞園さんと江ノ島さんが殺され・・・桑田君が処刑された時・・・

 

僕は・・・戻ってしまった。

 

何もできなかった頃の僕に。

現実から逃げて女の子になった僕に。

いつも真実に怯えていたあの頃の僕に。

 

僕は戻ってしまった・・・弱い自分に。

 

モノクマと黒幕が支配するこの絶望の世界では、僕は何もできない。

ただ、怯えて泣くことしかできなかった。

 

 

 

僕は結局・・・変わることなんかできなかった・・・強くなんか・・・なれないんだ。

 

 

・・・そう絶望し、泣いていた時に・・・僕は君と出会ったんだ。

 

 

入学初日に苗木君と一緒に遅れてきた君に。

ちょっと影が薄く、名前も知らない君に。

その才能が何の役に立つか、イマイチよくわからない君に。

 

 

そんな時に・・・僕は君と出会ったんだ。

 

 

君は、絶望し、泣くことしかできない僕を抱き締めてくれた。

モノクマの前に立ち、僕を守ろうとしてくれた。

 

僕より小さい・・・本物の女の子なのに。

 

 

君は僕に言ったよね・・・?

 

家族や友達や・・・大切な人達を守りたいって・・・

そのために・・・自分の出来ることを頑張るって・・・

 

・・・僕も同じだよ。君と同じだよ・・・!

 

僕も家族を守りたい。

クラスメイトのみんなを・・・君を守りたいんだ・・・!

 

僕なんかと友達になってくれた君を。

絶望の中・・・希望をくれた君を・・・僕は守りたいんだ!

 

 

僕も同じだよ。きっと、僕にできることがあるんだ・・・!

このPCなら・・・僕のプログラムの才能を生かすことができる!

アルターエゴを作ることができる!

それがもしかしたら・・・みんなを助けるきっかけになるかもしれない・・・!

 

 

僕は嬉しかった。

すごく・・・すごく嬉しかったんだ。

こんな僕でも、みんなの役に立つことができる・・・

絶望と・・・戦うことができるんだって・・・希望は・・・あるんだって。

 

 

僕は・・・変わるんだ・・・僕は・・・僕なりに強く・・・なれるんだ。

君が・・・教えてくれたんだよ。

 

 

だからね・・・モノクマが真実を暴露すると言った時・・・少しだけ怖かったけど・・・

それでも・・・もうあの頃の僕はいなかった。

 

 

真実から逃げて・・・泣いているだけの僕は・・・もういなくなっていたんだ。

 

 

 

だからね・・・僕は決めたよ。

 

 

 

 

(モノクマが真実を暴露する前に・・・自分から真実を話すよ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ああ、そうだ。

 

・・・そして・・・僕は・・・大和田・・・君を・・・トレーニングに・・・誘った・・・んだ。

 

ずっと、憧れて・・・いたから・・・

 

大和田・・・君みたいに・・・強く・・・なりたい・・・から

 

だから・・・一番最初に・・・僕の・・・真実を聞いてもらおうと・・・思ったんだぁ

 

 

 

 僕も・・・大和田君の持つ強さに・・・ほんの少しでも近づきたい・・・んだ。

 

 

 

そして・・・僕は・・・倒れてしまったんだね・・・。

 

アルターエゴを完成させるために・・・徹夜で頑張っていたから・・・

 

 

 

・・・大和田君が・・・何か言っている。

 

泣きそうな顔で・・・何か叫んでいる。

 

・・・ゴメンね・・・大和田君・・・心配・・・させちゃって・・・

 

大丈夫・・・だから・・・ただ少し・・・眠い・・・だけだから・・・

 

それ・・・だけ・・・なんだ・・・だから・・・そんなに・・・心配しな・・・い・・・で。

 

僕は・・・今、とても・・・嬉しいんだ。

 

勇気を持って・・・大和田君に・・・話すことが・・・できたから。

真実と・・・向き合うことが・・・できたから。

 

 

 

僕は・・・変わることができたんだ。

 

 

 

ありがとう・・もこっち。

 

 

まだ少し怖いけど・・・僕は真実をみんなに話すよ。

みんなに話す前に・・・君に真実を話すよ。

 

あの時、君がくれた言葉を今度は僕が言うよ!

 

 

 

 

 

だからね・・・もこっち。

 

 

 

 

 

 

”本当”の僕ともう一度―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  “友達”になってください!

 

 

 

 

 

 

 







【あとがき】

■2年間描けなかった100%救済の物語

イマワノキワを描くにあたって、
不二咲に関しては、当初からある程度構想できていましたが、大和田は無理でした。
はじめは正直、何を書いていいのかすらわからず、
不二咲のみを書こうかとも思いました。
大和田に関しては、
原作では自分と兄貴とのことだけを考え、
不二咲と石丸のことを考えなかった点に不満があり、
正直、あまり描きたくない気持ちもありました。

ただ、この希望の物語を描くにあたって、なんとか救済したい・・・!

という気持ちもあり、筆が遅い中、何とか救えないかと2年間、思い続けた結果、
ある日、この話を思いつきました。当時の感覚的には降りてきた・・・!感じですw
大亜の話の部分です。そのために“漢の約束”を原作とは違うものに捏造しました。


石丸のため地獄の業火を耐えることができるのは、
誰よりも根性がある超高校級の“暴走族”である大和田しかできないことであり、
それを支えたのが、原作では、殺人のきっかけになった不二咲の言葉だった。
“漢の約束”を果たせなかったことを嘆く大和田に、
兄の大亜は約束は果たされたことを告げ、
最後は憧れていた兄貴と肩を並べて爆走(はし)る。


短い話ですが、私ができる全てを詰め込みました。
恐らく、自分が今後、これを超える救済を描くことはないな・・・と思える内容です。

不二咲に関しても、もこっちとの友情の中、
自分の弱さを克服し、大和田に殺されたことに気づかず、
最後まで希望の中にいました。
特に、最後の言葉は、2章の2話を描いた時から、描こうと思っていました。
こちらもやはり100%救済の物語です。


この話を読んだ後、2章の学級裁判あたりから読み直してみてください。

大和田や不二咲が抱いた希望に比べて
黒幕が「ちっぽけ」な存在に思えてくるのは私だけではないのではないでしょうか?
大和田は、「大したヤツじゃない」といい、セレスは「三下」と断言しますが、
この時期の黒幕に関してはたぶん外れていない指摘だと思います。

苗木が未だ超高校級の“希望”に覚醒していないと同じように、
黒幕も本当の意味で、超高校級の“絶望”になり得ていない・・・というのが現状でしょう。
というか・・・そう描いています。

2章を描いていた時は、絶望嗤う希望なき物語となる・・・考えていましたが、
結果として黒幕にとっての希望なき物語となりました。

描ききることで、そのことに気づくことができたのが、なにより面白かったです。




■今後

2章、完全に完結しました。凄く嬉しいです。
忙しくて、全然、創作の時間がとれないです。
バランスとりたいので転職も考えています。
そんな状況なので、ペースは遅いです。ごめんなさい。

早く書けるのであれば、残姉の「イマワノキワ・絶望の劣等生」を描きたかったです。

妹様との圧倒的な絶望の才能の差の中、苦しみながら、
それでも姉としてほんの少しだけ背伸びして
一緒に歩いていきたい戦刃むくろの戦いと挫折と救済の物語(全3話)

うん・・・今年、終わってしまうw

よって、次話から第3章を描きたいと思います。
ペースは遅いですが、暇なときにでも見て下さい! 

ではまた

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