私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!   作:みかづき

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イマワノキワ セレスティア・ルーデンベルク 前編

ええ、謝りません。山田君、石丸君。

わたくしは謝りません。

わたくしは…貴方方を殺したことを決して謝りません。

 

もし今更謝ってしまったら…

それこそわたくしが凡人のように後悔し泣き喚き謝罪をしてしまったら…

 

超高校級の才能がそんな凡人に奪われ消えたことになってしまう。

そんなくだらない奴に殺されたことになる。

貴方方の死が意味のないものになってしまう…から。

ええ、謝りません。

謝ってたまるものですか。

 

超高校級の貴方方を殺したわたくしは超高校級でなければならない。

ギャンブルに生き、ギャンブルに死ぬ…全てをギャンブルに捧げ、そこに後悔など一切ない。

野望のため、己が命と超高校級のクラスメイト全ての命を賭けたギャンブルの狂人。

それがわたくしです。

超高校級の”ギャンブラー”セレスティア・ルーデンベルクですわ。

だから…わたくしは謝りません。

ええ、謝りません。謝りませんとも。

 

処刑人の格好をしたモノクマが足元の藁に火をつける。

瞬く間に火が燃え広がり足に燃え移る。

 

(ぎぃッ!!)

 

直後、獣に嚙みつかれたような錯覚に囚われた。

 

(熱ッ!!痛い!痛い!痛い!)

 

歯を食いしばり、叫び声を上げそうになるのを必死に堪えた。

一秒がやたら長く感じた。まだ始まってわずか数秒しかたっていないのに。

燃える足先がかたちを変えていくのを感じる。

白く美しい肌はもう二度と戻ることはない。

覚悟はしていた。

いつだってしていた…はずだった。

だがそんなものは目の前の現実の前に脆くも崩れそうになっていた。

恐怖が…絶望が全身を犯していく。

 

死んでいった彼らのために、最後の最後まで気高く美しいギャンブラーであれ

 

…そんな誓いをかなぐり捨て叫び出したい衝動に駆られた。

叫び声をあげたかった。

泣き喚き許しを請いたかった。

恐らくショック死してこの地獄を知らなかったであろう大和田君が羨ましかった。

 

(痛いッ!助けて!助けてくださいまし!なんでもします!なんでもしますからぁ!)

 

モノクマが命じるならばそれこそ裸で全身を嘗め回しても構わなかった。

この苦痛から逃れられるならば、全てを投げ捨てても構わない…と心の底から思った。

 

その光景を見るまでは。

 

(…やれやれ、ですわ)

 

わたくしを見つめる者がいた。

こんなわたくしを信じる者がいた。

ただ捨て駒として利用するつもりだった。

クラスの皆と一緒に犠牲にすると決めた。

名前も知らなかったクラスメイト。

凡人のくせに…

何の才能もないくせに…

ただ一人わたくしの本心を見抜きギャンブルに勝ってみせた。

あの子が…わたくしを見ている。

必死な眼差しで。

凡人と罵倒したあの子がわたくしを見ている。

弱虫のくせに。

わたくしの最後を決して見逃すまいと必死に。

きっと彼女の目にはわたくしは宗教画の人物のように美しく映っているのでしょう。

 

(本当に…迷惑な方ですわ)

 

そんな目で見られたら言えないじゃないですか。

弱音なんて…吐けないじゃないですか。

あれだけ高らかに超高校級の才能を誇っておきながら、凡人のように泣き叫ぶなんて…

 

 

 このセレスティア・ルーデンベルクが…できるわけねーだろーがッ!!

 

 

奥歯が割れるほど強く噛みしめる。

全ての苦痛を噛みしめ笑う。

午後の紅茶を飲みほした後のように。

笑う。

超高校級の誇りのために。

笑う。

こんなわたくしを信じる馬鹿で可愛いあの子のために。

その最後まで笑ってみせる。

わたくしがわたくしであるために。

 

熱と煙で頭がクラクラする。

視界がグニャグニャと歪み、意識が遠のき始めた。

今までの人生の様々なことが頭を過る。

その中にあるはずのないものが通り過ぎた。

それは決してありえない記憶。

クラスメイト達とのコロシアイではない本当の学園生活。

こんなものが見えてくるとは、いよいよか。

周りの音も聞こえなくなってすぐに視界がブラックアウトした。

 

(わたく…し…は)

 

 

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わたくしは…一体、何をしていたのでしょうか?

 

夢見心地の中、わたくしはどこかの廊下を歩いていました。

 

 


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