私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!   作:みかづき

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イマワノキワ セレスティア・ルーデンベルク 中編

(…暑いですわ)

 

まだ初夏だというのに茹だるような暑さの中、わたくしは廊下を歩いていました。

熱い...。

昨今、地球温暖化が叫ばれて久しいですが、これはちょっと異常ですわ。

そう、例えるならばまるで地獄の業火で焙られているかのようでした。

あまりの暑さに前後不覚になり何がなにやらわからなくなります。

自分がどこかの廊下を歩いていることだけはかろうじてわかった。

汗が凄い...。

服の中でまるで滝のように流れているのを感じる。

教室に帰ったらお化粧直しをしなければなりません。

…教室…?

ああ、そうですわ。

わたくしは教室に戻る途中だったのでした。

わたくしは…希望ヶ峰学園に…

まだ意識がはっきりしない中、ぼやける視界に人影が映る。

誰かが前から歩いてくる。

近づくに連れ、輪郭が徐々に露わになってくる人影”達”。

 

その正体を認識した瞬間、わたくしははっきりと意識を取り戻しました。

 

 

(3、3Zコンビ――――ッ!!?)

 

 

思わず声を出しそうになってしまいました。

こんなインパクトの強いあだ名をもった方々が近づいてきたらそりゃあ目が覚めますわ。

ああ、そうですわ。

わたくしは希望ヶ峰学園に入学したのでした。

入学し早数ヵ月たつというのに、わたくしは何を言っているのでしょうか。

全てはこの暑さのせいですわ。

内心取り乱していたのを気づかれないように”コホン”と咳をし、すまし顔で歩を進める。

そう、わたくしは優雅で華麗な超高校級の”ギャンブラー”!

取り乱すことなどあってはならない。

特にクラスの方々にそんな姿を見せるわけにはいきませんわ。

前方にチラリと視線を向ける。

3Zコンビはこちらに気にすることなく話しながら歩いてくる。

 

(それにしても3Zコンビって…)

 

確かその由来は”絶望的に臭い!・絶望的に汚い!・絶望的に気持ち悪い!”…でしたか?

そんなあだ名をつけられた日にはその相手をぶっ〇してしまいそうになりますが、

その相手が実の妹の超高校級の”ギャル”であったならば、いっそう救いがない気持ちになります。

3Zコンビの長身の方…戦刃さんに目を向ける。

 

戦刃むくろ…超高校級の”軍人”

 

軍人というわたくしと同じ人の闇に関わる職業。

血と泥に塗れるその才能が3Zの由来だろうか。

だが、その長身でスレンダーな体形と涼やかな顔立ちはモデルと紹介されても違和感がない。

その歩みは一切の無駄がなく、どこか獲物を駆る女豹を想起させた。

なにより顔はそばかすを除けば妹である超高校級の”ギャル”と瓜二つ。

一般的に考えれば、彼女はこの限りなく罵倒に近いあだ名とはかけ離れた存在である。

美人にブスと言うようなものだ。

きっと姉妹のみで通じる悪口のようなものなのかもしれませんね。

 

(…それに臭い・汚い・気持ち悪いのは、どちらかと言えばこちらの方ですわ)

 

3Zコンビの小さい方に視線を移す。

どこかムカつく顔で笑う彼女…

 

(超高校級の”喪女”黒…くろ…えーと何でしたっけ?)

 

マジで思い出せない。

まあ、いいですわ。どうせ深く関わることはないでしょうし。

 

「でさぁ~その後に…」

 

近づくに連れ彼女達の会話が耳に入ってくる。

黒なんとかさんが得意げに何かを話し、それを戦刃さんが聞いていた。

その光景を目の当たりにして、わたくしは微笑を崩すことなく歩き続けた。

 

内心は取り乱しながら。

 

(どうして!?なに普通に話してるんですか、貴方方はッ!?)

 

入学当初の二人のことを思い出す。

捕獲された獣のような表情で周りを警戒する戦刃さんと白目を剥いてプルプル震えていた黒なんとかさん。

この二人のコミュ障ぶりに正直安堵したものだ。

コイツらに友達作りで後れをとることはない…と。

それがどうだろう。

コミュ障のはずの彼女達がまるで普通の女子高生のように語らいながら歩いてくる。

それに比べわたくしは…誰とも…う、うう、ウォオオオオーーーーーーーーッ!!

危ない…声が出そうになりましたわ。

え?隣の席の方?ああ、あれは人外なので。

 

「…ていう話なんだよ。どう?面白かったでしょ?」

「ヤダ~もこっち、ウケる~」

 

黒なんとかさんの問いに戦刃さんはそう応じた。

その様子は本当にそこいらの女子高生のようだった。

あの戦刃さんが、だ。

 

「お、それならバッチリじゃん!タイミングも完璧!もう本物の女子高生だよ!」

「やった!ありがとう!」

 

無表情で誰も寄せ付けないオーラを放っていた彼女が…

研ぎ澄まされたナイフのようだった戦刃さんが嬉しそうに答えた。

 

「でも本音を言うと、話自体はクッソつまらなかったけどね…それも絶望するほどに」

「え、マジ…!?」

「あ、今のその顔は本当に面白い!」

「テメー!!」

「アハハ」

 

(・・・ッ!)

 

彼女達との交差際、わたくしは思わず足を止めてしまいました。

 

「ところでチャラ男のヤツがさぁ~」

「え、チャラ男って?」

「あ、桑田君のこと」

 

何かを話しながら遠ざかっていく彼女達を思わず振り返りそうになりながら、

わたくしはその場にしばらく佇んでいました。

 

(…そうですか)

 

今のわたくしはきっと、目を大きく見開いていることでしょう。

 

 

(貴方は…そんな風に笑うのですね)

 

 

 

 

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