私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!   作:みかづき

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第1章・自由時間5時限目

一週間です。

私達が監禁されてから、もう一週間が経ちました。

一週間ですよ!みなさん!

ここは○○県なんですか?

事件が起こらなければ動かない○○県警で有名な○○県なのでしょうか?

○ ○県警のみなさん~事件は今、起きていますよ~。

まさに今、まさに現場で起こってますよ。

 

「ハア…」

 

私はため息を吐きながら、先ほど書いたメモ帳を破り捨てた。

正直、あんなことを書いても憂さ晴らしにもなりはしない。

いや、それどころか、逆にストレスが溜まった気がする。

警察は何をやっているのだろうか?

国の希望とも言うべき私達、超高校級の新入生が誘拐されたとなれば、

それこそ、今年の一大ニュースだ。

連日、ワイドショーで、この話題は持ちきりだろうし、

即日、捜査本部が設置され、警視庁の威信をかけた捜査が開始されるはずだ。

そして、今頃には、モノクマを操る黒幕の部屋に、完全武装した警察の特殊部隊が

雪崩れ込み、奴をボッコボコのグッチャグチャにして、生放送のフラッシュライトの中、

毛布を被った私が救助されている…はずだった。

 

「ぐぬぬ…」

 

だが、現実はどうだ。

救助されているはずの私は、今も監禁されている建物の個室で毛布を被っている。

なんだ、これは!?

警察は何をやっているんだ!

ここは○○県なんですか?

事件が起こらなければ動かない○○県警で有名な○○県なのでしょうか?

ハ、いかん…!

何やらループしているぞ!

落ち着け、私!まだ、慌てる時間じゃない。

いや、慌てろよ、私!頑張れよ、○○県警!

ヤバい…!もう何言ってるか、自分でもよくわからなくなってきた。

仕方がない。

落ち着くために、ここはひとつ、この一週間の出来事を振り返ってみよう。

 

 

◆  ◆  ◆

 

まずは、捜査の現状から話していこうと思う。

すでに知っていると思うけど、私達は、この建物から脱出するための脱出口を

捜査していた。これは、モノクマが作った校則とやらにもおいても、許可されている行動のため、私達は、はじめの数日間を、まさに全力で捜査した。

その結果は―――

 

うん…参りました。お手上げです。

 

いや~予想以上にスゴイね、あの黒幕の奴は。

普通はどんな建物でも、何処かしこに、出られそうな所があるはずなんだけど、

この建物の1Fはまさに完全な密室だ。

私達は、それこそ、洗濯機の裏側から、天井まであらゆる箇所を、押したり引いたりしてみたが、ダメだった。

床には、あのクマ野郎が飛び出して来るであろう排出口のような場所をいくつか見つけたが(大体、部屋に一つ割合で存在している)これを開けるには、何か特殊な器具が必要のようだ。そんなものなど、この1Fには存在しない。また、これをこじ開けたからといって、

外に出られるとは思えない。

その結論を一つの答えとして、私達の大半は、自力での脱出を諦めてしまい、

私のように部屋に篭りがちとなっているようだ。彼女、一人を除いて。

 

彼女…霧切響子さんは、今も一人、黙々と捜査を続けているようだ。

彼女は、よほど早急に外に出たい理由があるのだろうか?

いや、あれは、外に出たいというより、ただ、純粋に捜査している…ように感じられる。

不思議な人だ。

私は、一時期、これは希望ヶ峰学園が仕掛けた試験であると考えており、

彼女は、学園が送り込んできたスパイのような存在だと疑っていたことがある。

それも、彼女のこの不思議な印象がそうさせたのだと、今は思う。

そうか…全部、彼女が悪いのか。

うん、何か、肩の荷が下りた気がしてきた。近況報告もそう悪くないものだな。

 

では、このまま、人間関係について話していこうか。

と、言っても、あれだ。

たかが数日で人間関係が劇的に変わることはそうはない。

相変わらず、全体においては、良くも悪くもないといった状況だ。

ただ、個々のケースで気になることがある。

 

大和田君と石丸君だ。

最近、大和田君と石丸君の喧嘩をよく目にする。

いや、正確には、大和田君と十神君のニアミスを石丸君が止めに入り、

そのまま、今度は、大和田君と石丸君がもめるパターンなのだが、

これはこれで、結構激しい怒鳴りあいに発展し、正直、見ている私が怖いくらいだ。

この前なんて、大神さんが仲裁に入らなければ、殴り合いになりかねなかったほどだ。

このまま、ヒートアップして行ったら、彼らの中から、最初の殺人が起きるのでは

ないかとすら思ってしまう。恐ろしや、恐ろしや。

でも、まあ、結局のところ他人事だから、私の知ったことではないけどね。

 

え?お前の状況はどうなってる?て。

うん…まあ、あれかな。話すのはあまり、気乗りしないから。

正直、碌なことがなかったし…。

え?どうしても聞きたい?

しょうがないな…じゃあ、少しだけ…

 

 

◆  ◆  ◆

 

ケース① 葉隠康比呂

 

 

「よう、智子っち!久しぶりだべ!」

 

それは、私が洗濯物を回収し、ランドリー室から出ようとした時のことだった。

私と入れ違いに入ってきたドレッドヘアーの長身の名は、葉隠康比呂。

超高校級の“占い師”である。

 

(智子っちとか、懐かしいな…オイ)

 

私は、突然、彼に話しかけられたことよりも「智子っち」という言葉に驚いてしまった。

それもそうだ。

「智子っち」とは、私の最初のあだ名なのだから。

親友の優ちゃんが、突如、私をそう呼び始め、時が経つ内に、そのあだ名は、

智子っち → もこっち とポケモン並みの進化を遂げたのだ。

あだ名に関しては、あのクマ野郎の件もあり、過敏になっていたのだろう。

だから、まさかこの状況における原型との再会に私は驚きを隠せなかった。

まさか、コイツも私の過去を…!?

 

「ん?どうしたんだ、智子っち?固まったりして」

 

葉隠君は、満面の笑顔で話し続ける。

ああ、そういえば、この人、苗木のことも「苗木っち」とか呼んだな。

もしかして、名前とか苗字に「っち」をつけて呼ぶのが癖になってるだけじゃないのだろうか。ならば、そこまで警戒することはないかもしれない。

しかし、葉隠君。惜しかったな。あと少しで正解だったのに。

 

「お、おお久しぶりです。じ、じゃあこれで」

 

でも、話すことは特になかったので、私は挨拶して部屋を出ようとした。

 

「ちょっと待つべ、智子っち!」

 

だが、そうはならなかった。葉隠君に呼び止められてしまった。

 

「ここであったのも、何かの縁を感じるな。酒でも酌み交わしながら、レムリア大陸とレムリア文明について熱く語り合うべ!」

 

(何、訳のわかんねーこと言ってんだ、コイツは…)

 

何を言っているのか本当にわからなかった。

コイツの両親は南アメリカの少数部族か何かなのか?

 

「で、でも、あ、あの、お酒はちょっと…」

 

よし、ここは法律を盾にして断ろう。

私達、高校生の年齢では、飲酒は法律で禁止されて―――

 

「ああ、大丈夫だべ。俺、20歳だし」

「3留かよ!?」

 

私は、思わずツッコミを入れてしまった。

ダブりなんてもんじゃねーぞ!?

もはや、完全に大人じゃないか!私の時もそうだが、いい加減にしろ、希望ヶ峰学園!

詐欺じゃん!超高校級の占い師という肩書き、完全に詐欺じゃん!

 

「ん?そうか、智子っちは酒はダメなのか。残念だべ。

ならば、ここは親睦を深めることも兼ねて、俺の占いを披露してやるべ!」

 

驚愕する私を尻目に、葉隠君は、ひとり勝手に話を進めていく。

 

「占い…?」

「おう!俺の占いは3割の確率で当たる!」

 

葉隠君は、自信満々に宣言した。

それに対して、私は何とも言えない渋い表情を浮かべた。

 

(3割かぁ…リアクションしにくいな)

 

「本来なら、1回10万円のところを、今回は、同級生のよしみで、特別価格…9万円で

占ってやるべ」

「高い!明らかに高けーよ!」

 

この件に関しては、何も考えることなく、即座に身体が動いた。

完全にぼったくりじゃねーか!しかも、特別価格が1万しか値引きされてない!?

何、考えているんだ、この鳥頭は!?

 

「何!?超高校級の占い師が占ってやるんだから、これくらいは格安だべ!

天気だろうが、選挙の結果だろうが、3割の確率で当たるんだぞ!」

 

私のリアクションに葉隠君は、憤慨する。

 

「よーし、じゃあ試しに、智子っちの未来を占ってやるべ」

 

話の流れで、なにやら、占ってもらうことになってしまった。

葉隠君は、懐から水晶玉を取り出した。

水晶玉…それは、占い師のマストアイテム。

水晶玉は、青く輝き、その表面に、私の顔が歪んで映る。

 

おお、ちょっと、本格的になってき―――

 

「邪魔だな、これ」

 

そう言って、葉隠君は、水晶玉を洗濯機の上に、無造作に置いた。

 

「使わねーのかよ!?」

「俺の占いは、直感で行う」

 

葉隠君は、額に手を置き、瞼を閉じた。

何なの?マジで、何なのこの人?

ツッコミが追いつかないんですけど…。

 

「むむ、見えたべ!こ…これは!?」

 

その時だった。

額に手を置き、沈黙していた葉隠君がカッと目を開いた。

おお、どうやら、何か見えたようだ。

 

「智子っち…落ち着いて聞くべ」

「う、うん…」

 

突如、雰囲気を変え、真面目な顔で私を見つめる葉隠君。

その雰囲気に呑まれ、私の緊張が急激に高まっていく。

 

「智子っちは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――俺の子供を産むべ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌だ~~~~~~~ッ!!」

 

ズッコけて、地面に頭から突き刺さるのを寸前で堪えた私は、起き上がる反動を最大限に利用しながら、全力で絶叫した。

 

嫌だ!絶対に嫌だぞ!

私の未来?子供?この鳥頭との?

何でそんな事になった!?

3割の確率で?

いや…嘘だ!絶対に嘘だ!

じゃあ、これは、何?告白?

もしかして、これは葉隠からの告白なの?

それでも嫌だ~~~~~!

ストレート過ぎる!直進過ぎる!もっと、遠まわしで来て下さい!

 

「いや…嫌だろうが、何だろうが、これは3割の確率で現実になることだべ…」

 

葉隠君は、真面目な顔でそう語った。

こ、怖い…!怖すぎるッ!!

 

「それと、智子っちは、苗木っちの子供も産むことになるべ」

「ふざけんなーーー!?」

 

混乱の中、更なる爆弾の投下に、私は再度、絶叫した。

 

なんでそこで、苗木の奴が出てくる!?

100000歩譲って、私が、目の前の鳥頭と将来、結婚して、子供を授かったとしよう。

そこまでは、わかる。

認めたくないが、自由恋愛において、誰もが歩む道だ。

だが、そこで、何で苗木の存在が出てくる!?

何故、私が苗木の子供も産んでいる!?

おかしいだろ!

不倫なのか?

私が、不貞を働いたのか!?

何をしているんだ!3割の確率での私!?

ちょっと悲しそうな顔でこっちを見るな、葉隠!

 

「あ、それと十神っちの子供も産むべ」

「いいかげんにしろーーーーーー!!!」

 

もはや、それ以外に言葉が出ない。

私は、最後の力を振り絞り声を上げた。

 

もはや、ビッチを通り越して完全に製造機じゃねーか!

産む機械と言ってもいいよ!

どんだけ、男に飢えてるんだよ、私は!?

さすがの私でも、これは有り得んは!

こんな占い、当たってたまるか!

こんなのは、全部デタラメだ!

インチキだ!詐欺だ!八百長だ!

 

「バカにすんな!」

 

激怒した私は、洗濯物が入ったかごを乱暴に掴み、ランドリー室から出ようと、

足を前に踏み出した。

 

「あ、待ってくれ、智子っち!」

 

だが、葉隠が、慌てて、その行く手を阻んだ。

なんだ?いまさら、謝っても、もう遅―――

 

「10万円」

「…は?」

 

「お試しだから、割引価格は適用なしだべ」

 

あまりのことに目が点となった私に向かって、葉隠は、満面の笑顔で手を差し出す。

 

「なななな、な何を言って!?あ、ああれは、アンタが勝手に!?」

「振込みは、ここから出た後でいいべ。ああ、念のために、この紙に住所と電話番号を書いて欲しいべ」

「え、な、ちょっと、え、あの、え、でも、そんな!?」

「ほらほら、ゴメンで済んだら、警察はいらないべ。さあ、ここに早く書くべ」

 

激しく困惑する私に、葉隠は、笑顔で紙を押し付けてくる。

顔は、笑っているが、目は笑っていなかった。

こ、怖い…!

 

 

その後、なんやかんやで20分ほど押し問答をした末、

私は、半泣きしながら、偽の住所と電話番号を紙に書くことで

ようやく、葉隠から解放された。

 

「まいどだべ」

 

葉隠は、上機嫌に鼻歌を歌いながら、ランドリー室から出て行った。

あまりにも上機嫌になったためか、当初の目的が洗濯しに来たということを

忘れてしまっているようだ。

洗濯機の上に、あの水晶玉が、置き忘れている。

 

「葉隠…お前は、私の“殺害ターゲットランキング”のトップにランクインしたからな…!」

 

今度ふざけたことをやったら、あの水晶玉を破壊してやる…!

 

そう誓いをたて、私は、涙を拭いながら、ランドリー室を後にした。

 

 






ゲーム購入者のみが知るBAD・ENDネタです。
まあ、もこっちがそうなるかは、作者もわかりませんw

すいません。
自由時間をなんとか、終わらそうと思ったのですが、字数で切りました。

次回は、腐川、十神、残姉 → 本編に入りたいと思います。
明日も書くので、もしかしたら、明日、投稿できるかもしれません。
できなかったら、ごめんなさい。

それと、パソコンの調子がかなりおかしいことになっているので、
修理に出すかもです。

いろいろフラグ立ててしまったので、今のうち言っておきます。

今年はお疲れ様でした。よろしければ来年もよろしくお願いします。

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