X-Zog     作:鯛焼きマン

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自分、まともなラブコメとか今まで書いたこと無いのでそこは留意してくれると嬉しいです。

あと『ハイスクール・フリート』劇場版新作アニメーション制作決定おめでとうございます!(執筆途中に発表されててビビった)


温故知新 前編

 日本領海内、深海10000m。

 有人深海調査艇『しんかい10000』の三人の乗組員達は目に映った光景に息を飲んだ。

 

「ほ、本当にあったんだ・・・・・・海底遺跡っ!」

 

 乗組員の一人が感嘆の声をあげる。

 

「やりましたね! 神風(かみかぜ)博士!」

 

 続いて高揚を隠せていない自身の助手を神風博士と呼ばれた男が窘める。

 

「喜ぶのはまだ早い。この遺跡から文化的資料を持ち帰り、海面に戻るまで気を抜くな。結果が伴わなければ今まで費やしてきた全てが無駄になるんだぞ?」

 

 壮年の男である神風博士こと神風ケイタロウは流石の年の功か、世紀の大発見を目の前にしてなお冷静だった。

 

 だが、興奮する若い二人を責められる者はいまい。

 ここは深海10000mの闇の世界。

 人の手など干渉しえない未開の領域。

 しかして、それは存在していた。

 損傷、崩壊こそ激しいが間違いなくそれらは人工物。しかも建造物だった。

 一見、古代ギリシアの宮殿に似た造りに見えるが柱の模様、門扉の僅かな形状が違う。

 

「まるで神話のアトランティスのようだ・・・・・・」

 

 強大な軍事力と技術力、豊富な資源を持ちながらも神の怒りに触れて沈められた幻想の大陸。

 彼らが目にしているものを一言で言い表すのにぴったりの比喩だった。

 

 後にこの場所は栄光へと続く世界、人類の輝ける未来(あした)の道標となるように、

 『支えるもの』という意味の『atlas』、

 『優美なるもの』という意味の『gallant』、

 『未知の可能性』という希望の『X』を掛け合わせ、『Atlant-X(アトラントクス)』と命名された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・そして忌むべき遺産として封印される地となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして10年後。7月24日。

 横須賀。さかくら総本家。

 

 横須賀女子海洋学校は夏休みに入っていた。

 

「こんにちはー!」

「いらっしゃいませー!」

 

 夏休みに親戚の家が営んでいる和菓子屋でバイトをしていた晴風・主計科炊事委員の杵崎ほまれ・あかねの双子姉妹、同じくバイト中の炊事委員の伊良子美甘(ミカン)の三人のもとに、

 同艦・機関科機関員の若狭麗緒(レオ)・伊勢桜良(サクラ)・駿河留奈(ルナ)・広田(ソラ)のウワサ大好き四人組が来ていた。

 

 噂話と同じくらい麻雀も好きな四人は店があるビルの上階の雀荘に暇さえあれば通っているので、炊事委員の三人とは意外とよく会う間柄だったりする。

 

「あっルナ、遅かったじゃない」

「ごめんごめ~ん」

 

 厳密には今回はルナは少し遅れて来て、杵崎姉妹の姉・ほまれは今店の奥で仕込みを手伝っている。

 

「ねぇルナ、それどうしたの?」

 

 レオが指摘したのは、待ち合わせに遅刻したルナの手に握られていたリンゴだった。

 

「ああコレ? いや~、実は寝坊して慌てて寮出たんだよね。それで朝食食べ損ねたから、ここ来る途中で超お腹空いてさ~。そしたらたまたま擦れ違ったジャケットが似合う水上オートバイ(スキッパー)乗りの若い男の人がくれたんだ~」

 

 そう呑気に言って美味しそうにリンゴを齧るルナ。

 

「いやいや知らない人から貰ったもの平然と食べるとか・・・・・・」

「ルナってよく今まで誘拐とかされなかったよね」

「お菓子あげるからこっちおいで的なベタな手に引っ掛かりそうで不安だわ」

「べ、別にお菓子貰ってもついていかないから大丈夫だしっ!」

 

 四人組がそう言い合っている間に食べ終わっていた。

 

「ジャケットが似合うスキッパー乗りの若い男の人? うーん、もしかして・・・・・・」

「あっちゃん心当たりがあるの?」

 

 意外な反応をしたあかねにミカンが訊ねる。

 

「ここら辺でスキッパーを乗りまわすジャケットが似合う人と言えばケイちゃん、みたいなところあるし多分そうかも」

「誰それ?」

「えぇーと、言って良いのかなぁ・・・・・・? ほら、赤道祭の時お姉ちゃんがメールした」

「ん? ・・・・・・ああ! 実習前に告白した幼馴染!」

「マジで!? ねぇねぇ、どんな人なの!?」

「詳しく」

「う、うん」

 

 二人の会話にウワサ好きの四人組も食いついたことであかねは引っ込みがつかなくなった。

 

 

 

 

 

「本名、神風ケイスケ。杵崎姉妹や他の親しい友人からはケイちゃんの愛称で呼ばれている。

 空手・柔道・剣道を幼少期から父に教え込まれて育ち、中学では水泳で県代表選手に選ばれた。高校では男子器械体操の地方選手権出場し、今年入学した大学で早くもスキッパーのレーサーとして才覚を見せ将来を有望視されている。

 だけど当の本人は船医になって世界中の七つの青い海を渡ることが夢で、現在は京都の医大に在籍中と・・・・・・まるで設定を詰めるだけ詰め込んだみたいな文武両道の完璧超人ね」

 

 あかねが語った話の中でとりあえず経歴だけをソラが説明口調で纏める。

 

「なり染めが保育園に入った時に珍しい双子ってことで年上の子達にからかわれていたところを助けてもらった、か・・・・・・いいな~、まさしく王道ラブコメって感じで!」

「現実はとんだ寝取られ展開だけどね」

「oh・・・・・・」

 

 ガールズトークの定番である恋バナに(ドラマ好きというのもあって)テンションが上がるミカンだったが、レオの言葉で現実に引き戻される。

 

「なんていうかそのエピソードといい、ルナのリンゴといい、優しい人っぽいよね」

 

 ミカン・機関員四人の中で『ケイちゃん』とやらのイメージが、少女漫画に出てきそうなお人好しの爽やかな男前になった。

 そこで思い出したレオがルナの方を振り返る。

 

「そういえば本人かは確証ないけど、ルナは一応直に会ったばっかじゃん。どんな人だったの?」

「どんなって言われても二・三言話しただけだし・・・・・・リンゴくれたから良い人じゃない?」

 

 他機関員の三人から溜息が漏れる。

 

「この子はホント」

「花より団子を体現したような子ね」

「そ、そう? えへへ」

「褒めてない褒めてない」

 

 おそらく『花より団子』の意味が分かってないルナにソラがツッコミを入れる。

 四人で集まると大体ルナが天然でボケ、ソラがそれにツッコミという流れが出来る。そこに時々レオが愚痴り、サクラが色っぽい雰囲気を出す、といった感じがこのウワサ大好き四人組の平常運転だ。

 

「で、結局あれからどうなったのよ? なんか修羅場的なのとか起きた?」

 

 四人の中で特に噂話に目が無いレオが再びあかねに言い寄る。

 

「ううん。ケイちゃんは京都の大学にいるし、私達も海洋実習関連のゴタゴタがあって忙しかったからそのまま・・・・・・」

「男の方は新しい女とよろしくしていると」

「ソラ、その言い方は流石に生々しすぎるよ・・・・・・」

 

 ソラの身も蓋も無い言い方をサクラが窘める。

 

「あれ? じゃあなんでこっちにいるの?」

「夏休みだから帰郷してきたんじゃない?」

 

 サクラの疑問に双子の片方が答えた。

 それはあかねではなかった。

 

「あ・・・・・・お姉ちゃん」

「い」「う」「お」「え」

「いや、これは、その・・・・・・」

 

 顔が青ざめるあかねと息の微妙に合わない(あと少しで動揺の声が綺麗にあ行の続きになっていた)四人組。

 そしてなんとかフォローしようとするが後の言葉が続かないミカン。

 そんな彼女らに対して店の奥から出てきた杵崎ほまれは鉄仮面のように揺るがない柔らかな笑顔を向ける。

 

「あはは、怒ってないから大丈夫だよみんな」

 

 こう見えて、ほまれは意外と恨みっぽい性格だったりする。

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、いい加減機嫌直してよぉ・・・・・・」

「だから怒ってないって何度も言ってるでしょ」

 

(ど、どうしよう・・・・・・)

 

 機関科の四人組が(逃げ)帰り、双子に挟まれたミカンは途轍もなく気まずい気分を味わっていた。

 

「・・・・・・あぁ! そういえば私、店長さんからお使い頼まれてるんだった~!」

(えっ!? あっちゃん!?)

 

 双子の妹・あかねが唐突に用事を思い出す。

 彼女は忘れっぽい性格なのだ。他意は無い・・・・・・たぶん。

 

「ということでお姉ちゃん、ミカンちゃん。店番お願いね!」

(ええっ!? もしかしてこのほっちゃんと二人きりにするつもり!?)

 

 戦慄するミカンを他所に、あかねは有無を言わせず店から駆け出した。

 あかねがいなくなり、さっきよりもさらに気まずい空気が漂い始める。

 

「ねぇ、ミカンちゃんもやっぱり気になるの? ケイちゃんのこと」

「えええっ!? あ、うん・・・・・・はっ!」

 

 とっさに聞かれて反射的に肯定してしまったミカン。さらに焦る。

 しかし今回はそれで良かったようだ。

 

「誰かに聞いてもらった方がスッキリするってこともあると思うから・・・・・・いいかな? ミカンちゃん」

「ど、どうぞ」

 

 いいえ、とは言えなかった。

 

 

 

 

 

‐―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 それは私、杵崎ほまれが横須賀海洋女子学校に入学する前のお話。

 

「ようっ、ほっちゃん。ひさしぶり」

「こんにちは、ケイちゃん。あれ? ひさしぶりって、この前店に来たの二日前じゃなかったっけ?」

「えっ? そ、そうだったか?」

 

 ケイちゃんは私達姉妹が保育園に通っていた頃からの付き合いで、三歳年上のお兄さんである。

 小学校を卒業して以来、外で会うことは少なくなったけどケイちゃんとケイちゃんにとって唯一の肉親であるお父さんがどっちも甘味好きってことで、和菓子を買いに来るついでに世間話をする仲として関係は続いていた。

 ・・・・・・結構頻繁に和菓子買いに来るけどそんなに食べて太らないのか、と疑問に思って太らない秘訣をそれとなく聞いてみたら「毎日父さんから文武のスパルタを受けていると、自然とここに足を運んでしまうのさ」と返ってきた。

 結局、健康的に痩せるには運動するしかないようである。

 それから私がジョギングを日課にしたのはそんなケイちゃんの影響もあってのことだ。

 

 閑話休題。話を戻すね。

 

 その日、ケイちゃんは少し様子が変だった。

 双子で顔が瓜二つな私達を一発で見分けるのはいつものことだけど、なんというか挙動不審? っていうのは失礼だけど・・・・・・やっぱり少し変だった。

 

「もう、あっちゃんじゃないんだから忘れないでよー?」

「ははは、ごめんごめん」

 

 店に入っても商品を見るでもなく上の空で、落ち着かない感じだった。

 近所でも有名な厳しいお父さんに鍛えられたことで身に付いた、普段の堂々した佇まいがどこかへ飛んでいた。

 

「? 今日はどうしたの? お茶なら出すけど」

 

 疑問に思った私が聞くと、ケイちゃんは目を泳がせながら何度も咳払いした後ゆっくりと口を開いた。

 

「あー、えー、と、そうそうほっちゃん今度の日曜、空いてるか?」

「え? どうして?」

 

 私が首を傾げると、ケイちゃんはポケットから少し皺の入ったチケットを取り出した。

 

「実はさ、この前できたばかりの水族館のペアチケット友達に貰ったんだが、期限が丁度今度の日曜までなんだ。だから、さ・・・・・・な?」

「? 私達(姉妹)にくれるの? え~、もったいないよ~」

 

 二人ともブルーマーメイドを目指して勉強している身ではあるが、海洋生物にはそこまで興味が無かった。

 むしろミカンちゃんの方が(料理に使う食材という視点で)魚に興味があるくらいだ。

 

 だから断ると、ケイちゃんは一瞬ポカンっとした後、慌てて捲し立てた。

 

「・・・・・・い、いや、あっちゃんは今、新作ゲームの攻略で忙しんじゃないか?」

「あ、そういえばそんなこと言ってたなー」

 

 とある友達に少し早い誕生日プレゼントとして貰ったらしい。ずるい。

 しかし何故か、誰から貰ったかは教えてくれなかった。

 教えないことが友達との約束、らしい。

 

「だからさ・・・・・・一緒に行こう、ほっちゃん」

 

 その言葉が出るまでケイちゃんは何度も深呼吸をしていた。

 調子が悪いのかな?

 

「いやいやケイちゃんは高校にいっぱい友達いるんだし、その中の誰かと行ったら良いと思うよ? ほら、それにその方がチケットあげた友達も喜ぶよ! きっと!」

 

 調子が悪いのにさっきから立ちっぱなしできつくないだろうか?

 椅子、出した方が良いのかな?

 あれ? なんかさっきチケット出した方と逆の方のポケットから紙? メモ? みたいなの取り出して・・・・・・あ、見ないで戻した。

 なんだったんだろう?

 

「い、い、いや、これペアチケットだし、クラスメイトの誰かとだけ行ったら不公平? に、なるんじゃないか? それなら小さい頃から付き合いのあるほっちゃんと行ったら、なんかあれして、公平? セーフ? ・・・・・・みたいな?」

「そう? そこまで言うなら良いけど・・・・・・」

 

 私と行っても魚とか詳しくないからあまり面白くないと思うけど、何故かケイちゃんが顔真っ赤にしてプルプル震えだしてちょっと目が潤んでる? (故郷にいる仲間のことを思い出す特攻前の兵士のような顔)みたいになってきたから、まず話を終わらしてケイちゃんを病院に連れていくためとりあえず了承した。

 

 と思っていたら、話が終わるとケイちゃんはすっかりいつものケイちゃんに戻っていた。

 何だか心なしか普段より元気なぐらい?

 

 私は一度了承した手前、反故にするのも不義理だし、偶には店で話すだけじゃなくて二人でどっか行くのも良いかな? 海洋学校の合格発表も昨日終わって無事合格だったし、入学式まで店の手伝いばっかりじゃなくて折角だし外へ遊びに行こうかな? という軽い気持ちでケイちゃんと水族館に行くことにした。

 

 そして私は当日の日曜日、そんな軽い気持ちでケイちゃんの気持ちに答えたことを後悔することになった。

 

 

 

 

 

‐―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「うん、話の腰を折って悪いけどちょっといい?」

「アッハイ」

 

 話す前まではビクビクしていたミカンだったが、話している内に形成は逆転していた。

 ミカンは呆れ、ほまれは羞恥に顔を染めている。

 

「えっ、なに鈍感主人公・・・・・・じゃなくてヒロインみたいなことしてるの?」

「確かに改めて思い返すと・・・・・・なにやってるんだろ、私」

 

 ミカンはケイちゃんとやらの苦労が思い病まれた。

 結末を知っていると尚更に。

 

「ケイちゃんって思い立ったが吉日みたいな直情的でストレートな性格だと思っていたから、恋愛事であそこまで奥手になるとは思わなくて・・・・・・」

「それは言い訳?」

 

 ミカンの目は座っていた。

 

「う・・・・・・つ、続き、良い?」

「どうぞ」

 

 

 

 

 

‐―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 日曜日、当日・・・・・・と言っても、話は飛んで夕方。

 魚の知識なんてなかった私だけど、そこは流石ケイちゃん、水槽ごとにどんな種類の生物がいてそれぞれがどんな名前なのか、私が気になった生物がどういう生態をしているかを簡潔にわかりやすく説明してくれた。

 純粋に楽しめただけじゃなくて、水族館に行く前より少しだけ賢くなれた気もする。

 

 イルカのショーを見ていたら水飛沫が私達の席まで飛んできて、服が濡れて私の上着が透けちゃったハプニングはあったけど、それはケイちゃんが(全力で目を逸らしながら)自分のジャケットをすぐに羽織らせてくれたから大丈夫だった。

 でもいざ服を着てみるとブカブカで・・・・・・そうか、もうケイちゃんも大人の男の人なんだなって思っちゃった。

 昔は同じくらいの背丈だったけど、随分大きくなっててびっくり。

 ちょっと寂しい気持ちになった。

 

 ともあれ、色々なことが知れた一日だった。

 

「また行こうね! 水族館!」

「お、おう・・・・・・」

 

 振り返るとケイちゃんは浮かない顔をしていた。

 どうしたんだろう? ・・・・・・やっぱり私と行っても楽しくなかったのかな。

 

「ほっちゃん。ちょっと寄りたい所があるんだが、いいか?」

「? うん、いいけど・・・・・・」

 

 ケイちゃんについていった先にあったのは展望台だった。

 頂上まで結構長い道のりだった気がするけど、

 

 私が今度作ろうと思っている新作和菓子の話とか、

 あっちゃんが洋菓子作りで失敗しちゃった時の話とか、

 ケイちゃんが昔、武術の特訓でお父さんに(しご)かれて泣きべそ掻いたけど、それでも頑張ったことでお父さんに褒められたことが嬉しかった時の話とか、

 

 そんな世間話をしている内に頂上に着いていた。

 

「わぁ、綺麗・・・・・・」

 

 夕暮れに染まる街。

 黄昏に照らされた海。

 沈んでいく赤色の太陽。

 夕陽で静かに燃える世界。

 

 感動が自然と口から零れた。

 感無量とはこのことか。

 こんなに心動かされたのはひさしぶりだった。

 

 私の耳に、ケイちゃんが大きく深呼吸した音が聞こえた。

 

「夕陽がなんで赤いか、知ってるか?」

 

 どうしたの? ケイちゃん。急にそんな真面目な顔して・・・・・・。

 

「それは赤が、他のどの色よりも遠くへ届く色だからだ。そんな夕陽のような赤が、俺は好きだ」

 

 うん、赤色が好きなことは・・・・・・知ってるけど。

 

「そして・・・・・・俺にとって君は、夕陽の赤だった。どれだけ遠くにいても君は俺の瞳に映るんだ」

「え」

 

 え?

 

「・・・・・・つ、つまり、俺は京都の大学に行ってしまうし、君は横須賀の海洋学校に入るだろうけど、その前にこの気持ちを伝えたかった」

 

 え? え?

 

「神風ケイスケは、杵崎ほまれさんのことが、一人の女性として好きです。付き合ってください」

 

 え? 待ってそれってどういう意味・・・・・・いやそういう意味なんだろうけど・・・・・・え、でも心の準備が。

 

「遠距離恋愛になってしまうが・・・・・・俺じゃ、駄目かな?」

 

 そっと、ケイちゃんが私の手を掴む。

 女の子のそれとは違う、男らしいゴツゴツした手。

 

 頑張る人の手だ。

 多才の裏には、それを芽吹かせた弛まぬ努力がある。

 

 優しい人の手だ。

 いくら腕っぷしが強くても、いつだって話し合いで解決しようとするのが彼らしい。

 

 強い人の手だ。

 強さは強さでも暴力で相手を打ち倒す強さではなく、相手の拳を掌で受け止めて諭そうとする強さ。

 

 ケイちゃんは私達姉妹にとって頼れるお兄さんのような人だった。

 どんなに離れても、ずっとそんな関係が続くって信じていた。

 でも、ケイちゃんは私のことを・・・・・・。

 

 なら、私は? 私はケイちゃんのことをどう思っているの?

 

「わ、わたしは・・・・・・」

 

 私は?

 

「ごっ・・・・・・」

「え?」

 

 顔の紅潮に反して、私の頭は真っ白になった。

 

「ごめんなさいっ!」

「――――――――――――――」

 

 私は何も考えられず、その場から一目散に逃げだした。

 

 

 

 

 

‐―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「そんな歯の浮くような告白して、逃げられた暁には・・・・・・私なら死ねるかなー」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 なんということでしょう。

 今時珍しい王道ラブコメが、一つのボタンの掛け違いでご覧の有様である。

 ひどい。

 

「ねぇ、ほっちゃん。その告白の後、本当に何も音沙汰なしだったの?」

「・・・・・・実はメールが一通だけきてたんだけど」

「うん」

「やっぱりどう返事していいかわからなくて・・・・・・」

「・・・・・・もしかして返信してなかったの?」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・ほっちゃん。ちょっと厳しいこと言うけどいい?」

「・・・・・・はい」

「告白して、その後メール無視されたら・・・・・・誰だってフラれたと思うよ」

「だよね・・・・・・」

 

 ひどい。それしか言う言葉が見つからない。

 

 

 

 

 

 ほまれの恋バナ()が語り終わり二人は一段落していた。

 しかし、随分長話をしていたはずだったのに、未だあかねは店に帰ってこない。

 

「あっちゃん、遅いね」

「うん。いつもの仕入れ先なら往復に30分もかからないはずなのに」

 

 ほまれが時計を見ると1時間が経過していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。横須賀にある港の一つ。

 海難事故に遭い沈没していた漁船の引き上げ作業が行われていた。

 

 スキッパーを船着き場に停めて、それを眺める一人の青年。

 

「あ、リンゴの人」

「ん? 君はさっきの・・・・・・」

 

 そこに機関員の四人組が偶然通りがかった。

 

「え!? もしかしてこの人が!?」

「?」

 

 もしや噂のケイちゃんか? と沸き立つルナ以外の三人。

 その奇妙な様子に青年は首を傾げる。

 

「あの、さっきはありがとうごさいます。えーと・・・・・・」

 

 ルナは先ほどのリンゴの礼を言う。

 待ち合わせに遅刻していて急いでいたため、ちゃんと面と向かって礼を言えていなかったのだ。

 

「神風ケイスケだ。そんなに年も違わないから無理に敬語使わなくてもいいぞ。リンゴの方も丁度、八百屋のおじさんがサービスしてくれて貰い過ぎてしまったものだからさ。ただせっかく育ち盛りなんだから三食しっかり食べないとな。じゃないと立派な大人になれないぞ?」

 

 青年をどう呼称していいか迷っていたルナに青年・神風ケイスケがフォローを入れる。

 ついでになんかお父さんみたいなことを言う。

 

「そ、それ本当!?」

 

 その言葉に、何気に自身の幼児体形を気にしているルナは驚愕する。

 

「いやそこまで過剰に反応しなくていいから・・・・・・って、やっぱり!?」

「? さっきから何の話なんだ? 不都合がなければ教えてくれるか?」

 

 レオ達はケイスケに事情を説明した。

 

「なるほど、ほっちゃん達の同級生か。横須賀女子の制服着てるし、おかしくないか」

 

 事情を知って納得し、スッキリとした笑顔を浮かべるケイスケ。

 それを見て、四人組は円陣を組んで秘密のガールズトークを始める。

 

(なんか思ってたイメージとは違うよね)

(もっと気取ってる性格だと思ってた)

(むしろフレンドリーで取っつき易い感じ)

(だから言ったじゃん。リンゴくれたから良い人だって)

 

 以上、秘密のガールズトーク終わり。

 

 

 

 

 

「ところで、ここで何してるんですか?」

 

 ソラの問いにケイスケは話すべきか少し考え込んでから答える。

 

「・・・・・・最近、横須賀近海で漁船や貨物船が転覆する事故が多発してるのは知ってるか? ちょっとそのことを個人的に調べているんだ」

「転覆事故?」

「ルナ知らないの?」

 

 サクラがルナに説明する。

 事故は横須賀の近海で起きており、その被害は小さな漁船から大きな貿易船まで幅広い。

 巻き込まれた乗組員達は全員が死亡または行方不明となっている。

 事故に遭った乗組員の最後の通信から『前触れもなく突然起きた渦潮』が原因である可能性が高いらしいが、目下ブルーマーメイドら海上安全整備局が調査中とのこと。

 

 そんな海難事故がもう5件も起きている。

 

「へー、やっぱり医者を目指している身として人命に関わる事故は気になりますか?」

 

 レオが少し砕けた丁寧語でケイスケに聞く。

 敬語で話さなくてもいいと言ったが、敬語の方が話しやすい人には強要しない柔軟さをケイスケは持っていた。

 

「医者どうこうっていうより、昔から父さんに言いつけられてきたからな。『真の強さというのは人を打ち倒す力ではない。人を受け止める力だ。人の命を受け止められる男になれ』ってな・・・・・・素人だから何もできない、しないことと、どうせ無駄だから無視するっていうことは違うと思うんだ」

「おおー、深い言葉ですね」

「んー? どういうこと?」

「まったくこの子は・・・・・・」

 

 相変わらず難しい話についていけてないルナにレオが呆れる。

 

「ふーんっ、別にいいよーだ」

 

 その扱いにルナも不貞腐れる。

 そんな彼女をケイスケは腰を落とし目線を合わせて元気づける。

 

「今わからなくても大丈夫さ。人に感謝してお礼を言える君なら、いつかわかる日がくるはずだ」

「そう・・・・・・かな?」

「そうだ。きっと必ず」

 

 だからその優しさを忘れないでね、と言って彼は微笑んだ。

 自信と慈愛を含んだ明るい笑みだった。

 

 

 

 

 

「そうだ。君達に一つ聞きたいことがあるんだが・・・・・・ほっちゃん達、元気だった?」

「まあ、一応は元気ですかね?」

「そうだね。風邪とかひいてるわけじゃなさそうだし」

 

 別れ際に聞かれた質問にソラとサクラが当たり障りのない返答をする。

 

「そうか・・・・・・よかった。教えてくれて、ありがとう」

 

 その返答に心から安心したように息を吐くケイスケに「大袈裟な人だな」と心の中で思いつつ「あの姉妹のことを本当に大切に思っているんだな」と四人は実感した。

 だからこそ疑問が湧く。

 

「自分で会いに行かないんですか? さっき(最初の事情説明の時)も言いましたけど、二人とも今日はお店にいますよ?」

「それは・・・・・・ほら、俺のこと聞いたならあの話も聞いてると思うが、今は会いに行き辛くてね」

「ああ~、ですよね~・・・・・・」

 

 そのケイスケの答えに四人組は納得した。

 確かに下手に期間が空いて余計に会い辛いのもあるだろう。

 

「そうですね~、もうカンカンって感じでしたよ~? だから会うなら早めに会いに行った方がいいですよ~?」

「ええ!? そりゃ余計に会い辛いなぁ~・・・・・・」

 

 ちょっと悪戯心が入ったレオの忠告にケイスケは苦笑いを浮かべた。

 

 そしてケイスケと別れた機関員四人組。

 

「独特の雰囲気の人だったねー」

「屈託のない笑顔を浮かべながらもどこか大人っぽい? ミステリアスなオーラ出してたよね」

「でも、やっぱりいい人だったじゃん」

「ほまれさん、有料物件逃しちゃったわね」

 

 彼の第一印象は予想と外れていたが、概ね悪くない印象だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほまれ達のクラスメイトであるらしい女子高生四人組と別れたケイスケは調査の結果を整理していた。

 

(全ての事件を入念に調べてみたが、やはり船そのものや潮の流れに異常はない。事故が起きた場所も離れていて環境に共通点が無いし、そもそもどの海域も鳴門海峡のように渦潮が起こりやすい場所じゃなかった。当時の気象情報を洗ってもおかしな所はない・・・・・・()()()()()()()()()

 

 結果、この一連の事件に何かの意図が、誰かの意思が介在している可能性を見出した。

 

 その時、300m先を横切る一隻のプレジャーボートが見えた。

 おそらく個人が所有しているものだと思われた。

 

(? 誰かが中で眠っている? あの子は・・・・・・あっちゃん!?)

 

 意外な人物の発見にケイスケは驚愕した。

 さっきの四人組の話が真実だとすれば、今日は姉妹両方とも彼女らの親戚が経営する店にいるはずだ。

 それを差し置いても異常な事態だった。

 ボートはまっすぐに沖へと進んでいる。

 

 ケイスケは急いで自身のスキッパーに跨った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・・・・あれ? ここは?)

 

 あかねは海を走るボート特有の揺れで目が覚めた。

 辺りを見渡すとどうやら彼女は小窓が付いたプレジャーボートの中にいるらしい。

 起き上がろうとしたが手足を縛られていて動けない。

 

(たしかお使いの途中で・・・・・・)

 

 曖昧な記憶を辿ろうとした時、船室の扉が開いた。

 黒服の男がそこから入ってきた。

 

「起きていたか『杵崎ほまれ』よ」

「あの、私は妹のあかね・・・・・・」

「どっちでもいい。貴様には我々『機関』の目的のための礎になってもらう」

「え?」

 

 あかねは訳がわからなかった。

 

 何故自分は縛られてこんな所にいるのか。

 自分を拉致した者達の目的は何なのか。

 自分はこれからどうなってしまうのか。

 どうして自分がこんな目に遭っているのか。

 

 恐怖より混乱が先行して、思考が停止。

 唐突過ぎて現実味がない。

 何となく危険な状況であることは理解しているのに、どうしようもない現実を認めたくない。

 それは人の本能的に不快感を避けるため逃避である防衛機制の一種だった。

 

 現状を打破しようとする発想自体が封じられていた。

 

 その時、外の騒がしさが耳に入った。

 

 

 

「そこのボート止まれぇ―――――!」

 

 

 

「この声・・・・・・ケイちゃん!?」

 

 聞き覚えのある声で我に返るあかね。

 黒服は外にいた部下を一人呼び寄せる。 

 

「何事だ?」

「一隻のスキッパーが我々のボートを追ってきています」

「そうか・・・・・・まぁいい、これだけ陸から離れていれば目撃者もいないだろう。さっさと撃ち殺せ」

 

 黒服は海に煙草の吸殻を捨てるような感覚で殺人を命令した。

 

「・・・・・・えっ!?」

(ジィ)―――――ッ!」

 

 残酷な命令に戦慄するあかねだが、黒服の部下は合掌するような敬礼をしてすぐさま命令を実行した。

 

「や、やめッ―――――」

 

 黒服達を止めようとするあかねだったが、サイレンサー付きの拳銃の掃射が無慈悲にスキッパーの船体を貫き、乗っていたケイスケも海に落ちた。

 

「あ・・・・・・そ、んな・・・・・・」

 

 あかねは自分の心がガラガラと音を立てて崩れていくのを感じた。

 人一人の命がこうもあっさり奪われることが信じられなかった。

 しかも幼い時から自分達姉妹を助けてくれた人、優しくて品行方正な人がこんな理不尽な死に方をするなんて。

 もしかしたら自分を助けるために・・・・・・。

 

「死体を確認しろ」

「「「(ジィ)―――――ッ!」」」

 

 命令を受けた黒服の部下三人は機械の如く統率された動きで作業を行う。

 あかねには彼らが心の無いロボットに見えた。

 

「隊長! 男の死体が見つかりません!」

「何だと? よく探せ! 海上安全整備局の船に発見されたら厄介なことになる! そうなれば私達は役立たずのレッテルを貼られ、ネプチューン様に処刑されるぞ!」

「「(ジィ)―――――ッ!」」

 

 部下の報告に憤った黒服は自らも外へ出て海上を見渡す。

 

「ん? 一人返事がないぞ? どうし―――――」

 

 違和感に気付いた黒服は、振り返った所を強烈なアッパーカットを食らって吹き飛ぶ。

 そこにいたのは、拳銃の掃射を受けて死んだはずのケイスケだった。

 

「お、お前っ! いつの間に船の上に!?」

「たった今だ!」

 

 残った二人の部下は慌てて手に持っていた拳銃をケイスケに撃つ。

 

「そんなものが俺に効くかッ!」

 

 だが()()()()()()()()()()()ケイスケは止まらない。

 彼が身に付けているものは市販のズボンにシャツ。目立つものといえば羽織っているジャケットぐらいで、防弾チョッキを着ているようには見えない。

 どころか、額などの明らかに生身の部分に銃弾が当たっても()()()()()()()()()()()がして傷一つ付かない。

 

「まさか! お前が神風ケイスケ!?」

 

 銃弾が効かないことを理解し、接近されたことで今度はナイフを手に襲いかかる部下達だったが、段持ちの空手・柔道の使い手と同等の実力であるケイスケの技に次々と薙ぎ倒されていく。

 

「ぎゃぁあああああアアアアァァァ―――――!!」

 

 倒された黒服とその部下達は断末魔をあげる。

 その体は風化した石のようになっていき、ボロボロと崩れ落ちた。

 

「ひっ!」

 

 自分を誘拐した者達の壮絶な最期にあかねの顔から血の気が失せた。

 そして自分が助かったことを知って落ち着き、落ち着いたせいで逆に恐怖が湧き上がって震えが止まらない。

 

 それを心配してケイスケが彼女に声をかける。

 

「大丈夫か、あっちゃ「違う!」

 

 それを、あかねは拒絶した。

 あかねの中のケイスケと、目の前で黒服達を殺したケイスケは別人にしか見えなかった。

 

 自分の知るケイスケは人を殺すような人じゃない、という気持ち。

 目の前の非現実的な光景を受け入れられない、という気持ち。

 こんな悪夢のような現実を否定したい、という気持ち。

 

 混ぜこぜになった気持ちは収拾がつかなくなっていた。

 

 度重なる異常事態で頭がおかしくなりそうだった彼女は、先ほど頭に浮かんだ言葉をそのままケイスケにぶつけてしまう。

 

「あなたは、ケイちゃんじゃない! あなたは・・・・・・あなたはロボットよ!」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 彼女に非はない。

 彼女は普通の少女だ。

 少し特殊な非日常を体験したとしても、人の根幹はそう変わらない。

 

 むしろ非日常で心の根幹が変わる、というのは良い事とは限らない。

 

 非日常に押しつぶされてもう二度と日常に帰れないくらいに壊れてしまう可能性だってある。

 日常の中でも麻薬の禁断症状のように常にトラウマとして憑き纏い、一生克服できない者だっている。

 

「・・・・・・ごめんな、あっちゃん。怖い思いをさせてしまって」

 

 それを理解し、ケイスケは彼女を安心させるために笑った。

 嬉しさと哀しさを内包した、痛々しい笑顔だった。

 

「あ・・・・・・」

 

 それを見てあかねは正気に戻る。

 目の前のケイスケと自分の知る優しいケイスケが重なる。

 彼女の心から安堵と罪悪感が溢れ、涙になって零れる。

 

「ごめん・・・・・・ごめんなさい、ケイちゃん・・・・・・」

「いいんだ。俺は・・・・・・神風ケイスケは死んだんだ」

「え?」

 

 今度は、ケイスケが彼女を突き放した。

 あかねが衝撃を受けている内に彼女を拘束していた縄を解く。

 

「だからもう忘れてくれ・・・・・・忘れて、君達だけでも・・・・・・穏やかに生きてくれ」

 

 ケイスケはそう言って背を向けた。

 

(そう、俺はもう人間ではない・・・・・・人間であった神風ケイスケは死んだのだから・・・・・・)

 

 ケイスケは三か月前のあの日。自らの運命を決めた日のことを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4月10日。神風家兼、神風ケイタロウ個人研究所。

 

「突然帰ってきて早々どこへ行く気だケイスケ」

「どこへだって? 横須賀女子海洋学校と海上安全整備局に直談判しに行くに決まってるじゃないか」

 

 大学の休日に京都から飛んで帰ってきたケイスケ。

 風の噂で、横須賀女子海洋学校に所属する武蔵含む複数の航洋直接教育艦が民間船・教官艦等を攻撃したことを聞いた。

 その事件で乗員している学生らに反乱の嫌疑がかかり、海上安全整備局が追跡中とのこと。

 

 ケイスケはその話に違和感を感じた。

 

(多数の学生が国家に反逆? 別行動をしている複数の艦が示し合わせたかのように同時期に? メリットも動機も無いのに? そんなのありえないだろ。何よりほっちゃんとあっちゃんはそんなことするはずない!)

 

 彼は、幼馴染が不当な罪で追われていると知って黙っているような薄情な男であるつもりはなかった。

 表面上こそ興奮を抑えているがその実、怒り心頭だ。

 

「例の学生の反乱のことで、か」

 

 だが父・ケイタロウはいつも通り冷静沈着だった。

 

「なに他人事みたいに言ってるんだ父さん! 杵崎さんは父さんの友人だろ? 学会を追い出された時に背負わされた借金の返済を手伝ってもらったりして世話にもなっただろ!?」

「やはり杵崎の娘さん達のためか。フラれた女のためにいい恰好しようとするとは、随分な軟派者になったな」

 

 見透かしたような父の冷淡な物言いに、ケイスケは沸き上がる激情を拳に変え・・・・・・握り締めたまま静かに下ろす。

 

「やめろ! ・・・・・・やめてくれ、俺は父さんことを嫌いになりたくない」

「いいかケイスケ。お前は女にかまけている暇などないのだ。お前も近いうちに知ることになる。日本の、いや人類の存亡に関わる敵のことをっ!」

 

 ケイスケの目が疑心と悲嘆に曇る。

 

「・・・・・・10年前からいつもそうだ。そうやって妄言を垂れて・・・・・・父さんは母さんが死んで、学会を追い出されてからおかしくなってしまったんだ!」

「待て! ケイスケ!」

 

 父の静止の言葉も聞かず、ケイスケは家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 ケイスケが家に戻る頃には日が暮れていた。 

 

「くっ・・・・・・あのわからず屋どもめ」

 

 ケイスケは宣言通り両者に直談判しに行った。

 しかし案の定と言うべきか、正面から突撃したため警備員に叩き出されたのだ。

 むしろ国家権力(警察組織)を召喚されなかっただけ恩情だろう。

 ケイスケもそれはわかっていたが、それはそれとしてまともに取り合おうともしない態度に義憤を募らせていた。

 

「父さん?」

 

 しかし家の中を覗いて異変に気付く。

 もう逢魔時(おうまがどき)だというのに部屋に明かりが点いていないのだ。

 

(地下の研究所にいるのかな?)

 

 そう思ってリビングの電気を点けた。

 テーブルにもたれかかるように、血塗れのケイタロウが倒れていた。

 ケイスケは父のもとに急いだ。

 

「父さんッ!」

「うぅ・・・・・・ケイ・・・・・・スケ・・・・・・逃げ・・・・・・」

 

 肩を揺らすとケイタロウは辛うじて意識があった。

 しかし彼が発した警告の声にケイスケの安堵は消える。

 

「ふっふっふっふっふ・・・・・・」

 

 その時、リビングの電球が明滅を始め、暗い隣室の先から不穏な笑い声が木霊した。

 闇の中からダークスーツを着た怪しい男が現れた。

 

「誰だ貴様は!?」

「私の正体が気になるか? ならば見せてやろう」

 

 男は被っていた黒帽子を脱ぎ顔を隠す。

 次の瞬間、笛のような形状の二対の角が生えた怪物に姿を変えた。

 

「ば、化物め! 貴様が父さんを・・・・・・食らえ!」

 

 ケイスケは人型の怪物に度肝を抜かれるが、すぐさま心の中で自分を叱咤して近くにあった金属製の電気スタンドを手に、怪物へ勇猛果敢に立ち向かった。

 

「フンっ、勇気と無謀を履き違えた愚か者めが」

「な!?」

 

 だが、その打撃に怪物は痛みすら感じない。

 どころか防がれた金属製の棒は、怪物の手で粘土のように容易に捻じ曲げられた。

 

「我々『GOD機関』に逆らった罰だ。死ね」

「がっ―――――」

 

 捻じ曲げた電気スタンドを適当に投げ捨てた怪物は、突き出した貫手でケイスケの腹を貫いた。

 怪物が手を引き抜くと、ケイスケの腹から致死量の血液と内蔵の残骸が零れ落ちた。

 

「神風親子の抹殺を完了。我ら偉大なるGODの勧誘を断り、あまつさえ情報を流そうした当然の報いだ」

 

 無線で仲間に報告を終えた怪物は二人の死体を生ゴミを見るような目で一瞥し、神風家を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケイ、スケ・・・・・・っ!」

 

 そして怪物が去った後、ケイタロウが文字通り最期の力を振り絞って立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・はっ!」

 

 ケイスケが目覚めると、彼は神風家地下にある秘密の研究所にいた。

 

(俺は・・・・・・生きているのか?)

 

 先ほど彼は腹を貫かれて死んだはずである。

 彼自身その時味わった痛みを超えた熱と、腹の熱と反比例するように全身が急速に冷えていく不気味な感覚を覚えていた。

 

 何故か上半身だけ裸だが、身に付けているズボンや床に落ちている上着にはべっとりと血が付着しており、やはり夢ではなかったことを理解する。

 しかし腹には傷跡すらなく、代わりに腕や首筋などに空の点滴(?)に繋がったチューブが刺さっている。

 

 チューブを引き抜き、手術台のようなベットから起き上がったケイスケは、自分を治療してくれたであろう父の姿を探す。

 

「父さん・・・・・・」

 

 父はすぐに見つかった。

 しかし緊急脱出用カプセルの中に入った死体という形で。

 胸の前で手を組んで眠るように目を閉じている所から、自身の意思であえてここを死に場所に選んだのだろう。

 仮の棺に堂々と横たわる姿は普段の厳格な彼を思い出させ、その穏やかな死に顔は彼の本性である優しさを反映しているようだった。

 

(ん? これはボイスレコーダー?)

 

 傍にあった机の上に見覚えの無いボイスレコーダーを発見した。

 気になって再生ボタンを押す。

 録音されていたのは父の声だった。

 

『ケイスケ、まずお前に謝らないといけないことがある・・・・・・お前は一度死んだ。そして今、もう人間ではない』

「なんだって!?」

 

 衝撃の告白にケイスケの息が詰まる。

 しかしあくまで録音音声でしかない父の独白は、動揺するケイスケに構わず続く。

 

『お前は、私が9年前に発見した海底遺跡・Atlant-Xを調べるうちに見つけた人体改造の術によって蘇り、改造人間・X-Zog(カイゾーグ)となったのだ』

 

 それはケイタロウが学会を追放された原因である、出鱈目論文での話のはずだった。

 

『人間の死体に特殊な薬液を血液の代わりに入れ、蘇らせる技術・・・・・・最初はエジプトのミイラのような死者を葬るためのただの儀式だと予想していた。だが違った。試しにモルモット使って行った実験で、実際に蘇生が成功してしまったのだ』

 

 独白はあくまで単調な口調で進むが、所々で後悔や自責の念が混じっていた。

 

『世紀の大発見。人類の夢である不老不死の術だと研究チームは沸き上がった。私も当時は浮かされていた・・・・・・母さんを蘇らせることはできなくても、母さんのように若くして亡くなる人を減らせる。それがあの人への供養になると思っていた』

 

 父は母を愛していた。

 父は子を愛していた。

 それだけだったのに。

 

『だが、違ったのだ。それは蘇生法などではなかった。人間を兵器に変える悪魔の術だったのだ・・・・・・それでも私は、人であった者が人を殺す・・・・・・兵器としての運用などしたくはなかった』

 

 深海開発用改造人間・X-Zog。その名は、未知という意味を持つ『X』、

 領域を区分けする・確保するという意味のzoningからnin(人)を除いて『zog』、

 合わせて『人では踏み込めない未知の領域を切り拓く者』という願い

 

 例え悪魔の術だとしても、ケイタロウはせめてそれを人類の未来のために役立てたかった。

 

『しかし私は研究チームから外され、学会からも追放された。出鱈目なインキチ論文を書いた異端者としてな』

 

 父・ケイタロウは裏切られた。

 しかも研究チームで最も信頼していた二人、一緒に海底遺跡を発見した仲間に裏切られたのだった。

 

『このままではカイゾーグ技術が悪用されてしまう、そう何度も警告したが誰も耳を傾けてはくれなかった・・・・・・』

「・・・・・・・・・・・・」

 

 ケイスケは父の遺した言葉を無言で、噛み締めて聞いていた。

 

『カイゾーグになった者は()()()の身体能力の強化以外に、()()することで何かしらの《物》の特性を得る。それは施術された者のパーソナリティによって差異が生まれ、程度はあるが皮膚組織の変質や体内で特殊な物質の生成機関の形成などが起こる。

 そんなのオカルトだと思ってしまう気持ちはわかる。私も、ただの被験体のモルモットが火炎を吐くところをこの目で見るまでこれっぽっちも信じてなかった』

 

 脳に流れる電気信号もしくは概念存在である思念からエネルギーを生みだし、質量保存の法則を完全無視して物質化して定着・維持させる。

 三次元の法則を捻じ曲げる、現代科学の型から完全に逸脱した超技術。

 これを聞いただけでも、かの海底遺跡がどれだけ魅力的で、どれだけ危険であるかがわかった。

 

『剛健な心身を持つ者でなくては改造には耐えられず改造後に間もなく精神が破綻、体が崩壊してしまう。ケイスケ・・・・・・お前なら大丈夫だろう。これは研究者としては希望的観測にも程があるが、父親としての私は確信している・・・・・・どっちにしろ失格だな。我が子を確証の無い実験に使う親など・・・・・・私もできることなら使いたくはなかった。だがお前を蘇らせ、そして人類の未来(あした)を守るためには必要だったのだ』

 

 それは父の叫びだった。

 

 後悔があった。

 自責があった。

 愛情があった。

 だがしかし、だからこそやらねばならなかった。

 

『お前がこの録音を聴いている時、おそらく私はもうこの世にいないのだろう。さらばだ、息子よ・・・・・・』

 

 突如、研究所の設備が稼働してカプセルが射出される。

 それにケイスケが反応する間もなくカプセルは海中に放り出され、自爆。

 

 自身の死体がカイゾーグ技術で利用されたり、また自身の死を息子が引き摺らないようにするため、死んだ父の存在が生きている息子の足を引っ張らないための処置だった。

 

『私の研究室にある机の引き出しの中に、研究チームから外される前に私が秘密裏に作っておいた深海開発用の装備が入っている。カイゾーグ専用の装備・『X-Rider(Xライダー)』だ。

 ・・・・・・さあ! 往くのだ! カイゾーグ・神風ケイスケ! 最早お前の体はお前のものであって、お前だけのものではないのだ! その力で人類の未来を守ってくれ! ・・・・・・それが不甲斐ない父の、最後の願いだ。そして―――――――』

 

 その最後の一言でレコーダーの録音は終わっていた。

 おそらくいつかこんな日が来ることを予想して、遺書代わりに用意していたのだろう。

 

「・・・・・・わかったよ、父さん」

 

 ケイスケは悲痛な心情で頷いた。

 

 父は一人で孤独に戦っていたのだ。

 ケイスケはそれに最後まで気付いてあげられなかった。

 あろうことか他の理解ない人達と同じように父を罵倒してしまった。

 実の息子である彼だけでも信じてやれば、父は救われていたかもしれないのに。

 そのまま自身の非を謝ることもできずに父と永遠の別れを迎えてしまった。

 

 録音通り机の引き出しを開けるとケイタロウが遺した、カイゾーグ技術同様に遺跡の技術で作られたカイゾーグとしての力を十全に引き出す装備。そして宿敵・GOD機関について彼が調べたファイルが入っていた。

 

 GOD機関。

 正式名称は『Government Of Darkness(ガバメント・オブ・ダークネス)』。

 全ての発端は、アメリカを含むヨーロッパの国々を巻き込んだ『欧州動乱』。

 休戦後も、講和に多大な労力と時間を費やしたヨーロッパ大陸諸国は軒並み疲弊したままだった。

 そんな諸国の暗部同士が水面下で手を組み、アメリカ・イギリスに次いで国際社会で大きな力を持ちつつある小さな島国・日本を牽制してその勢いを潰えさせるために結成された秘密結社。

 日本転覆のために多くのスパイ・秘密工作員を日本に送り込み、その最中にカイゾーグ技術研究チームの一部と内通し、その技術を得た。

 現在の日本では、カイゾーグ技術を基にした改造人間達で結成された工作員が多数暗躍している。

 

「おそらくは(くだん)の横須賀女子海洋学校の学生の不可解な反乱にも関与している可能性あり、だと?」

 

 もしかしたらほまれやあかね、もっと多くの人がGODの魔の手にかかってしまうかもしれない。

 

「俺・・・・・・戦うよ、父さん。例え一人になったとしても」

 

 

 

 

 

 それから約二週間後。地図に載ってない無人島の浜辺。

 

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」

「クソぉ・・・・・・おのれぇ、Xライダーっ・・・・・・!」

 

 ケイスケは・・・・・・否、カイゾーグ・XライダーはGOD機関の秘密基地の一つの突き止め、壊滅させた。

 そしてそこで作戦指揮を執っていた、父の仇でもある識別名(コードネーム) Ran-shin(乱神) Panic(パニック)を追いつめていた。

 

 パニックは、想定外の海底火山により海底から実験艦が露出したために西之島新島近海で秘密裏に回収する手筈になっていた『RATt』と呼ばれる実験動物が保菌・媒介し、感染すると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()特異なウイルスを、潜り込ませていた工作員によって『さるしま』乗組員に不慮の事故と見せかけて感染させた。

 

 そして不戦の象徴たるブルーマーメイドの養成学校・横須賀女子海洋学校の生徒・教師に民間人を攻撃させて社会的・政治的な混乱を引き起こし、それらの対応に追われる日本領海の治安を守る海上安全整備局の信用を失墜。

 次に感染者が操る艦を港に突っ込ませて感染者を増やし、人々を暴徒に変える『一億人総殺人鬼計画』を実行しようとしていたのだ。

 

「罪の無い人々を苦しめるGOD! 俺が貴様達の野望を止める!」

「フンっ、罪の無い人々、だと? Xライダー・神風ケイスケよ。本当にそうなのか? 世の中には何も知らず、のうのうと生きてるだけで罪である奴らがいるのだぞ?」

「・・・・・・なんだと?」

 

 パニックの怨霊のような声にXライダーは怪訝な態度で問い返す。

 

「奴らは、何も知らないのだ・・・・・・自分達の()()()()がどれほど尊いものであるかを、それを望んでも手に入れられずそのまま畜生のようにくたばるしかない者達がいるということを・・・・・・ッ!」

 

 パニックの言葉はまさしく虐げられた者達の呪詛だった。

 

「私は確かにお前の父親を始め、多くの人間をこの手で葬ってきた。だからといってお前に私を殺す権利があると思っているのか? 私を殺せばお前も、私達と同じ呪われた人生を歩むことになるのだぞ? わかっているのか?」

 

 人間が人間を殺せば殺人となる。

 怪物が人間を殺せば虐殺となる。

 人間が怪物を殺せば英雄となる。

 

 だとすれば、怪物が同じ怪物を殺せばどうなるか?

 

「・・・・・・覚悟の上だ」

「フンっ、そうか・・・・・・ならば死ね! Xライダー!!」

 

 パニックが頭部の二対の魔笛を共鳴させて、常人なら数秒で発狂する怪音波を放つ。

 だがXライダーは動じない。

 

 彼の体には、胸に秘めた誓い()と確かな衝動(怒り)が響いている。

 

 それは呪いの魔笛などに掻き消されるものではなかった。

 

「うおおおおおおおおおおおお―――――――!!」

 

 鳴り止まぬ衝動を歌に変えるようにXライダーは咆哮をあげ、空高く飛び上がった。

 それは海原に広がる嘆きの叫びであり、運命(さだめ)の産声だった。

 

 

 

 

 

 その日、カイゾーグ(怪物)カイゾーグ(怪物)を殺した。

 神風ケイスケは殺人者(怪物殺し)となった。

 

 

 

 

 

 パニックを斃し、一人海岸で腰を下ろしているケイスケのスマホにメールが一通送られてきた。

 こんな辺境の島にも電波が届いたことに妙な感慨を覚えつつもメールを開く。

 杵崎ほまれ、からだった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 ケイスケは振り返る。

 

 それまで眼前にあった青々とした水の海とは対照的な、視界を赤く染める火の海が広がっている。

 地面にはさっきまでGOD工作員だった者達の残骸である風化した石のようなものが至るところに転がっている。

 パニックは、パニック自身の自爆装置で跡形もなく消えている。

 

 彼がその手で作り出した惨状だった。

 彼がこれから積み上げていく惨劇の一部でしかなかった。

 彼はこの光景を生涯、忘れることはないだろう。

 

 ケイスケは視線をスマホに戻す。

 小さく微笑んで、返信を打つ。

 

 

 

『ごめん。ほかに好きな子ができたんだ』

 

 

 

 A Smooth Sea Never Made a Skillful Sailor.(穏やかな海はよい船乗りを育てない)

 

 海に生き、

 海を守り、

 彼は独りぼっちで、海を往く。

 

 それが―――――――。

 

 

 

 

 




つまり、GODのせいで日本がピンチ!





ケイちゃんのプロフィール

名前:神風ケイスケ

愛称:ケイちゃん
所属:京都海洋大学 医学部1年→元・京都海洋大学 医学部1年(new data)
役職:深海開発用改造人間・X-Zog(new data)
趣味・特技:スキッパーの運転、空手・柔道・剣道などの各種武術
好きな食べ物:和菓子、冷えた緑茶
嫌いな食べ物:激辛料理、熱々の食べ物
得意科目:理系分野全般
苦手な科目:家庭科(料理)
好きな言葉:人間到る処青山あり(世の中は広く、死んで骨を埋める場所ぐらいどこにでもあるのだから、大望を成し遂げるためにならどこにでも行って、大いに活躍するべきであるということ)
性格・特徴:ナイーブな所があるが粘り強く、泣き虫だが正義感が強い。
誕生日:7月25日(獅子座)→4月10日(new data)
出身地:神奈川県横須賀市→神風ケイタロウ個人研究所(new data)
身長:178㎝
血液型:A型→不明(new data)
資格・実績:丙種二級小型水上免許(中型スキッパー免許)、中学・水泳で県代表選手、高校・男子器械体操の地方選手権出場、大学・スキッパーのレーサーとして有望視されていた、怪物殺し(new data)
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