それぞれの役割を確認し終えて、『…End』内を探索する。別にトントン拍子で登ってもいいのだが、せっかくだから楽しみたいと思うゲーマー根性だ。
ゲームはターン制だったのに対し、こちらは当然そうではない。よって、移動や行動さえも新しく戦法として考えなくてはいけない。今までは、この技使ったらジョブ変えてこの技でハメコンボ…みたいな単純さだったが、今では敵の行動をトレースして、イヴとレイの動きも見なくてはいけない。まぁ、実際どうなるかは分からないのだが…。
〔あなたが油断しながら歩いていると、空気がひんやりとし、薄気味悪い水音が近づいてくる。〕
油断なんてしてないと言いたいところだが、塔の中で考え事をしているなんて、普通はありえないのだろう。ゲームでさえ、油断したりすると即ゲームオーバーが有り得るウルトラハードゲームだったわけだし…。
「イヴ、レイ、アクアスライムだ。割と近いぞ。これはすぐ来るな…。」
「分かりました!私が盾になりますね。」
そう言うやいなや、イヴは俺の前に立ち、身を固くする。そして、見立て通り数秒後には腐りきり濁ったような青色が俺達を見つけ攻撃態勢を取る。
「イヴ下がれ!」
今更言っても遅いだろう。しかし、それはソードマンの素早さの話だ。
瞬間で、ソードマンからアーチャーに切り替えて、彼女をだき寄せる。そのまま、レイの方に放り投げる。もしかしたら擦り傷を負うかもしれないが、そこまで配慮できるような余裕はない。
改めてアクアスライムの方を向くと、もう間近に来ていた。攻撃までのスピードから言って、ただの体当たりだとは思うが、それでも避けきれるわけが無い。
アーチャーにしたのはある意味失敗だった。近距離攻撃はない上防御力も低い。更には体力もソードマンより低いのだ。このジョブはある程度レベルを上げてからじゃないと使いにくいのを忘れていた。
これならウィザードにしておけば良かった。ソードマンよりは早いし防御力もそれなりだ。体力はソードマンと同じ程度はある。それに、すぐに反撃出来ただろう。
目をつぶり来るはずの衝撃に備え身を引き締めるも、思考だけが進み後悔ばかりして、実際の攻撃が来ない。
「ふぅ、間に合った…」
そんな声を聞き、うっすらと目を開けると腕がズタズタになっているレイと倒れ込んでいるイヴ。そして、レイのものと思われる白骨化した腕がいくつも刺さっているアクアスライムがいた。
〔瀕死のそいつは、勝てないと悟ったのか、自分の体を引きずるようにして逃げようとする。〕
謎の声の補足を聞きつつ、剣をそいつに突き立てる。どさくさに紛れてソードマンに戻ってみたが未だに
「クエイフ様大丈夫…ですか?」
来ていないとか言ったけどやっぱ無理
「おはようございます。」
「おはようイヴ。今何時?」
「クエイフ様が眠ってから10分ほど経ちました。」
起きて周り見渡すとズタズタだったはずのレイの腕は治っており、酔いによる不快感も無くなっていた。
〔レベルが上がりました。奴隷:イヴのレベルが上がりました。奴隷:レイのレベルが上がりました。〕
レベルアップメッセージを聞き、なんとなく嬉しくなる。早いかどうかは分からないがこれでレベル3だ。
さて、探索を続けよう。
「その前にお説教だ。」
「はい…、お手柔らかにお願いします。」
「クエイフ様、罰なら私も受けるから、手加減してください…。」
俺は1度溜息をつき、イヴのお説教を始める。
「イヴ、俺はきちんと作戦を立てて、動きを指示しただろう。何故俺を庇おうとした?」
「それは…その…そうするのが奴隷の役目ですから…。」
「その役目とやらは主人の命令を無視してまですることだったか?実際俺はよりピンチに立たされていたぞ?確かにイヴは強いかもしれない。けど、俺はこの塔を知り尽くしている。プロなんだ。アクアスライムごとき、1人でも勝てる自信がある。けど、3人で連携した方がダメージも少ないし、効率もいい。だからそうしようって言ったんだ。次からは、魔法で俺を庇ってくれ。いいね?あと、回復魔法かけてくれてありがとう。」
そう言って彼女の頭を撫でる。まぁ、イヴだって、悪意があってやったわけじゃない。悪意があったのはそれを強制させた前の主人達だ。
「次にレイ。ありがとう。イヴを投げた時咄嗟に抱えてくれただろ?大きな怪我をしなくてよかった。それと、アクアスライムに攻撃してくれただろ。まぁ、自分の腕を矢の代わりにするのは構わないけど痛くないの?」
「痛くない…。本物じゃないなら、切り離すのも簡単。トカゲと同じ…です。」
トカゲ居るのかこの世界。
「そう、まぁ念の為インベントリの中にある食玉で燃料補給しとけよ?」
「もうした。…しました。」
「ふふっ。別に敬語じゃなくてもいいよ?」
そう言って彼女の頭を撫でる。
「改めて言うけど、俺はこの塔をクリアしなきゃいけない。でも、一人でやったんなら時間がかかりすぎる。」
ここで不可能とは言わない。だって出来るもん。伊達に12年もゲームやってないよ。
「でも、3人でやればもっと早い。俺が2人を守って、イヴが弱らせて、レイがトドメを差す。この役割は絶対だし誰が欠けても成立しない。イヴには回復と魔法支援も務めてもらうし、レイはアイテムを残らず回収してくれ。俺は2人が安心してサポートしたり採集したり出来るようその他雑務を引き受けよう。」
ここで俺は1度言葉を区切る。
「3人で、『…End』をクリアしよう!」
これは、俺とイヴとレイとの冒険譚で、恋物語で、フィクションだ。でも、確かにそこにある。だいたいそんな話
続く
なんか最終話みたいな雰囲気…いやいや、全然終わりじゃないけど?
途中出てきた食玉というのはレイの肉体変形を行うのに必要なエネルギーを詰め込んだ食料です。命名はクエイフ