レイに案内され入った小部屋にはずっしりとした雰囲気を醸し出す宝箱らしい宝箱があった。念の為宝箱付近で待機していたイヴも連れて部屋を出ようとする。しかし、何も起きない。イグの洞窟でそんなことが起きるとは思えないがミミックの可能性も捨てきれない。
「二人とも外出てくれ。」
アーチャーになろうとしたが、レイはボウガンを持っていたんだった。
「威力抑えて打ってみて。」
「はい!」
元気な返事とともにボウガンの矢が宝箱に弾かれる。塔の中にある本物の宝箱は破壊不能なので、攻撃を加えることが出来ない。そして、レイの攻撃は弾かれた。つまりあれは本物だ。
「開けるよ。」
特に鍵などはかかっておらず、すんなりと開く。鍵を開けられるようなスキルはないので鍵がかかっていたら面倒だった。
「クエイフ様、中身何?」
完全に敬語をなくし形ばかりの敬称をつけるレイに苦笑いを浮かべながら、入っていたものを見せる。
「魔核と魔石、回復薬ですかね。」
魔核は高く売れるし魔石は魔法使いにとっては便利なものだ。どっちもあって困ることは無い。
─魔核と魔石の詳細は後書きで─
「レイ、バックの中に入れておいてくれ。」
「はーい。」
レイに魔核と魔石を渡して、バックに入れてもらう。いくらでも入るし重さもなくなるので負担にならない。
「あの、奴隷に荷物をまるっきり預けるのはどうなのでしょう?」
「あ!ごめん別に2人を奴隷扱いして働かせてるわけじゃないんだ。言い訳がましいけど役割分担みたいなものだよ。」
確かに立場的にも性別的にも褒められたことではない。しかし、俺があのバックを持てば肩がぶっ壊れると思う。たしか既に結構な荷物が入っているはずだからな。
「いえ、そういう訳ではなくて…クエイフ様の荷物を持ち逃げする可能性もありますよね?お財布もここに入っていますし…」
そう言ってバックを指さす彼女の手はとても美しかった。…なんだか吉良吉影みたいなことを言ったが、気にしないでほしい。
「そんなことしないって信じてるし、いちいち仲間を疑えるような余裕はないよ。この塔はそういう場所なんだよ。裏切られるのはそいつの油断。でも、信じないのもある種の油断ってわけだよ。」
何度もくどいほど言うが、俺は10年以上前からこの塔を知っていた。何度もこんなふうになったらと妄想した。その度に両親を見つけて喜ぶ自分がいたんだ。新しいシリーズが出るたびにお金を貯めて、買ってプレイして新しい設定やモンスター、技に、一喜一憂して馬鹿みたいにはしゃいだんだ。
「奴隷とか主人とか男とか女とかじゃないんだよ。知ってるやつは勝てる。知ってることは強さだ。知らないことは罪であり詰みだ。だから、2人を信じてるし裏切られても対処出来るようにしてる。もちろん、それを感じさせないのもプロの技ってやつなんだけどね。」
イヴはわからないとでも言いたげな表情をする。少し眉間にシワがよっている程度では彼女の魅力は失われなさそうだ。
「どうしてクエイフ様は、私たちに勝てると言えるんですか?」
「2人は知らないでしょ?俺の強さも、自分たちの弱さも、何も知らない。」
アルティメット?チート?そんなの知るか。俺なら2人まとめて相手できる。簡単に逃げ切れるし簡単に殺せてしまう。不意をつかれるようなことはない。決して、絶対だ。
〔あなたのカッコつけたセリフを遮るように、敵が現れる。その影の大きさからしてゴブリンのようだ。〕
別にかっこつけたわけじゃないのに…
「話は終わり、敵が来てる。」
ゴブリンが、イヴの魔法の範囲に入った瞬間、俺は敵に突っ込む。敵は当然、咄嗟の反撃をしようとしてくるが、俺はむしろそれを待っていた。
「イヴ!」
「はい!【ストーン】」
彼女が魔法で作り出した石の塊を蹴り俺が突っ込む方向を変える。ゴブリンからみて、右側で受け身をとっていると、それにつられこちらを見てくるゴブリン
「『…End』規則その1、いつでも全ての敵を目に写すべし!」
「なお、その2はない模様。【パラライズアロー】」
レイの放った矢は、ゴブリンの後頭部に刺さり体の自由を奪っていく。
「ナイス、レイ!あと、その2以降もきちんと用意してあるからね?」
まさか自分が教えたネタに突っ込むことがあろうとは…
「そろそろ休憩しようか。」
「いえ、そんな暇を与えてくれはしないらしいです。」
「みたいだね…」
ドヤ顔で小さな胸を張っているレイは置いといて、イヴと俺が見たのは、スライムの群れだった。ざっと数えても20はいそうで、お互いに混ざりあわないのか不思議だ。
「逃げますか?」
「いや、逃げない。こんな状況は『…End』らしいっちゃ、らしいけどな。」
寄ってきたスライムを【スラッシュ】で牽制しつつ、イヴに全体魔法を打たせるための時間を稼ぐ。
「レイ!もう少し下がれ!スラ・ストライクならそこは攻撃範囲だ。」
〔スライムは今までにないほど自分の体を引き伸ばす。そのタメの長い攻撃はどうやら【スラ・ストライク】のようだ。〕
「今使ったのどのスライムだ?わかんねぇ!」
どいつもこいつも無駄に体を引き伸ばし誰を斬っても、敵の技をキャンセル出来たという謎の声の案内は聞こえない。
メキメキッ!
そして、そのまま敵の攻撃を避けることも出来ずに、もろに食らってしまう。
…かと思われた。
「【ダメージバリア】!」
ガッシャン!パラパラ……
粉のように光が舞っている。その正体は彼女の魔法だ。確か防御魔法だったはず。レイの矢が敵を射抜かんと近づく宙ぶらりんでおかしな態勢のスライムはどう足掻いても避けられないだろう。
時間がとても遅い。走馬灯というかどうかは分からないがとにかくノロノロと時間が進む。矢の動きがゆっくりと見える。
「【スラッシュ】」
ほんの少しだけ体を捻ったスライムにトドメを指す。レイの矢は最初からその動きを読んでいたかの様に曲がりスライムを絶命させる。
「【フレイムバーン】」
中級の全体火属性魔法をイヴが唱え、スライムたちは燃えさかり死んでゆく。
生き残っていたやつもプルプル震えるばかりで、無残にも殺されていく。
そういえば、ゲームではスライムの行動パターンはこれで全部見たことになるのか。
体当たりとプルプル震えるとスラ・ストライクの3つだけなので、(一応言っておくと逃げるがあるが…)全てこの世界の実行動を見たことになる。つまり、それだけ戦闘経験があり、それなりに長くこの塔に潜ったことになるな。
と、考え耽っていると新スキルと、新ジョブを解放したと謎の声の案内が聞こえる。
〔新スキル【槍術】の取得条件を満たしました。【拳術】【斧術】【銃術】【鎌術】【短剣術】も同じく取得条件を満たしました。各ジョブに就けるようになりました。〕
〔チートによる新スキル【スライム】を獲得しました。よって、新ジョブ【スライム】を解放しました。〕
は?なんだって!?
続く
魔石─魔力を増幅させ、魔法の効果を高める。魔法による精神力減少を肩代わりしてくれる効果もある。
魔核─モンスターの心臓。魔法生物は心臓と脳がないものが多く、魔核が入っていることが多い。魔核は普通の生物を魔法生物に、物質を魔法物質に変える力を持つ。
魔力─魔法をどの程度操作出来るか、その力。魔法とは変換の力である。火が起こせるのは、自分の魔力と引き換えに熱エネルギーを得ているためである。
その他質問あれば、いつでもどうぞ!
やっとチートがチートらしくなってきたところで、次回はそのへんの説明ですかね。