「クソ!なんで、イグに
男は随分と血にまみれており、話している言葉もどことなく怒号や失望が含まれている。片手には斧を引きずるように持って入るが、ぶら下げている程度のようだ。
「ヒェ!たすけ…まってー!あ……」
男の後ろでは甲高い女の悲鳴が上がっている。そして、その悲鳴もすぐに途切れては、皮膚が裂けて骨がへし折られる音となる。
「なんで…!なんでこ、ここに!どうして…」
「さぁ?どーしてだろーねー」
最初の男の声とはまた違った男の声が聞こえる。それは、どちらかと言うと少年のものであることが伺える。変声期を迎えてすぐのあまり顔つきとあっていない鈍くほのかに甲高い声だ。
顔つきと言っても、その少年はフードをかぶっており、その素顔を伺うことは出来ない。しかし、それでも滲み出るような悪意、殺意、敵意は逃げ惑う男を精神的に追い詰める。
「なんで…なんで、なんでなんでなんで!どう…して…こんな…所に…!『魔王』がッ…くるんだよ!」
「おやおや…僕の正体に気付くとはね…。いや、これだけステータスが高ければ、当然か…」
走っていたはずの男は体の上半分が無くなっており、少年の影から伸びる
「魔王様…あまり派手にやらないでくださいよ。創造神にバレてしまいます。」
「はっはー、神が神を恐れるとはねー。かたや勇者を呼び寄せ、かたや魔王に仕える影となる。なんて不思議なんだろうね。神って存在は…」
すると、《影》と呼ばれた
「勘違いするなよ小僧…私が仕えているのはあくまで破壊神様出会って貴様ではない。『魔王』のスキルを持っているとはいえ、パターン19660130のただの人間風情が…」
己の体よりも、黒黒しくまた、毒々しい物言いにも魔王は動じることなく、少年のような(事実少年であるが)あどけない笑みを浮かべる。
「僕を殺すことは出来ないんだろう?勇者じゃないと魔王は倒せない。まるで、『…End』の通りだね。」
心底うんざりとした様子で、影はまた、魔王の影の中に入っていく。
「とにかく、あまり騒ぎを起こさないでください。
「ああ、分かってるよ。自称影と死を司る神─シャドモルス」
「自称ではない。最近破壊神様に任命され新しく作られた神だ。」
少年はつまらなそうに返事をすると、自分の影と同化しようとするシャドモルスを踏みつける。しかし、一瞬早く消えてしまったやつに攻撃を加えることはなく、乾いた大きな笑い声を上げるだけだった。
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時は遡り二時間ほど前─
「今日は、新しい連携とお互いの行動を踏まえた上での行動を心がけてもらう。」
誰も彼もが勝手気ままにがむしゃらに戦っていたのでは楽な戦闘も疲労を溜めてしまうことになる。イグをクリアするまで潜っている予定の俺たちとしては、出来る限り疲労やストレスが薄い状態で戦いたい。
そして、実際に『…End』に入ってからのことである。
「そろそろ1階が終わる。2階からは新しいタイプの敵が出るからそこら辺の情報整理をしていこう。」
「質問!」
レイが元気よく手を挙げて質問してくる。ふわりと揺れた赤髪がとても綺麗だ。
「なんで前よりこんなに短いの?」
前にこの塔に潜った時は大体8時間以上も潜っていたのだが、今回は1時間半ほどで2階に続く階段の下にいる。
それはなぜなら、前よりかなりショートカットをしたのだ。これは『…End』をやりこんでいれば当然わかることでありゲームの塔の中では結構な数の近道がある。
「でもこれらの近道は大抵危険なところが多いから、イグの洞窟、それも1階層でしか使わないと思ってくれ。他に質問は…?」
2人を見るが特になさそうなので、話を進める。
「アーチャーゴブリンは、鈍いし攻撃力も低い。けど、状態異常系の矢を撃ってくるし、遠距離だから俺は処理出来ない。魔法耐性が低いからイヴよろしく!」
今度はイヴが元気のいい返事をした。その返事を聞き、ゴブリンメイジの説明に移ろうとすると、初老を目前とした感じで体の半分以上が機械で出来ている男が突然話しかけてきた。
「おやおや、元気な返事ですね…」
その老人は老人らしからぬキリッとした立ち姿でこちらを見ている。
「あなたは…?」
俺は彼が誰だか分かっていたが、イヴとレイは、誰だか分からないようだ。
「これは失礼…えーでは自己紹介をさせていただきますかね…。」
「私はメルク、ありとあらゆるものを買取、ありとあらゆるものを売りさばく。塔専属商人メルクと呼んでください。」
俺はゲーム内で
彼は『…End』内で荒稼ぎする凄腕商人だ。質は悪いが、大抵のものが彼から買うことが出来る。
まぁ、特になにかがあったわけでもなく、いくつかの回復薬を買って、ついでに売っていた装備を見ただけだった。
続く
次回予告!
『…End』の2階、それは今まで天狗になっていたヤツらの鼻をへし折り、痛い目を見せるための『…End内で最も死亡率が高い場所』と名高い死の領域で生き残ることは出来るのか…乞うご期待!
捕捉は特になしです!