とあるゲーム機の(Vi○a)『…End~second~』というシリーズでは、攻略するまでに死んだ回数3回の内2回が塔の2階で死んでます。
「死ねぇ!」
俺の威勢のいい掛け声とともに、スライムの体は木っ端微塵に消し飛ぶ。
「ふぅ、やっぱり攻撃バフかかってると楽だな。」
「私出番なーい。」
イヴはともかく、遊撃手のレイは基本暇なくらいが丁度いい。なにか指示があった場合はともかく、攻撃する回数が多いというのはよろしくない。なぜなら、弓矢というのはダメージの致死性は薄いがヘイトは高い。それもそのはず、刺さっている間継続ダメージな上にチクチクとした痛みは誰もが嫌がるだろう。そんなこんなでヘイトコントロールがしにくいレイには戦局を見てもらう役割と補助を任せるぐらいが都合がいい。
『…End』は基本、少数対少数の方がいい。人が多ければこの狭い塔の中では動きにくい。だからこそ、俺とイヴで出来る限りトドメを指しておきたいのだ。
「素材とるからどいてー!」
レイはチートなのか種族特性なのか、適性がかなり多い。戦闘系は少ないが、(遠距離系と超近距離系)鑑定や鍛治系のいわゆる、生産・加工の適性が物凄いのだ。
「ん!レア出たーラッキー」
レアが出るのは、幸運値と『解体』や『生物学』などの勉強系のスキルが必要だ。彼女は努力することを苦と思わず、なおかつ努力で得られる経験値が人より高いのだろう。まぁ、その辺はゲーム的な仕様では無さそうだ。
言い忘れていたが鍛治は出来ても家事はてんでダメだった。イヴ曰く料理はゴミが出来上がるし洗濯は雑巾すら作れない。部屋の中身を全部買い換えようと思ってるのなら、掃除を任せてもいいらしい。そこまで行くとどんなだよ…。
そんなふうにレイにスライムの素材を剥ぎ取って貰っていると、ふとその手を止めこちらを一瞥する。
「なんか来る!」
「あ?……ぶっねぇ!」
「え?なんで……きゃぁ!」
(今何が起こった!?)
俺は当然ながら驚く。
(まて、落ち着いて状況を見ろ。いや、謎の声が来るはずだ。質問してもいい。とにかく、2人を落ち着かせて、且つ反撃体制を整えて、いや、逃げるべきか…)
それでもゲームらしく、ゲーム以上にありとあらゆることを考える。あのゲームは判断力と勇気を問われるゲームだ。そう、勇気を持って、天才であり英雄の父に少しでも追いつくために…
「今何が起きたか分かるか?」
2人とも首を横に振る。分からないということらしい。
〔貴方がつかの間の休息で体を休めていると、突如として飛来してきたナニカが現れる。そいつは、高速で飛来したあと、未だにこの場に燻っているような感触がする。この上ないプレッシャーに誰もが口を閉じていると、徐々にそいつの全容が明らかになる。〕
〔モンスター名:ガーゴイル
個体名:001(魔王による命名)〕
謎の声のステータスメッセージを、横目で見た後改めて敵の姿を確認する。
魔王?どういう事だよ…魔王が出るのは3DになるDSの第4シリーズ『…End~勇者と魔王の塔争奪戦~』だけだぞ?そんなマイナーなやつがこの世界にいるのか?(ほかのシリーズのボスないし、ラスボスは神様なことが多い。大抵のシリーズではボスは神様、ラスボスや隠しボスは父親か母親のどちらかになる。)
そして、魔王に攻撃出来るのは『勇者』のスキルを持っていなければならない。(まぁ、俺なら多分後でスキルを獲得出来るが…)
とどのつまり、このガーゴイルは魔王によって生み出されたモンスターというわけか。
「次は右!」
レイが突然叫んだので思わず言う通りにすると、イヴのすぐ右を、左手に持った剣で切り裂いた。もちろん、レイのおかげで、イヴにはなんのダメージをもない。俺じゃないなら言ってほしいな…。
「【インパクト】ッ!」
イヴは、避けてすぐに杖を構え、黒い翼めがけ魔法を放つ。
その衝撃の塊は確実にその青い背中を捉え、地面に激突させる。
「ナイス!イヴ。アーンド、レイ!GO!」
自分でもニュアンスが過ぎるだろうと言うような適当すぎる英語で大雑把な指示を出すと、レイは腕のボウガンを引き始める。
「虚技【ハンドアロー】」
レイの平坦な声と共にいくつかの矢もとい腕が飛んでいく。一部のスキルと言っても彼女にしかできない、
「【チェンジ:ランサー】」
腕の矢をうち終えたレイの後ろから追撃するようにスピード特化の一閃を叩き込む。どちらも近距離武器なのでそんなに酔わない。
「【ロックスピア】!」
ガーゴイルは水属性なので自然属性の技を使う。割と有効的な攻撃のようで、それなりに苦しんでいる。
しかし、魔王直属の部下なだけあって、一筋縄では行かない。
「グギュァ!」
なんと言っているかは分からないが意味不明な奇声をあげて、こちらに切りかかってくる。
「【チェンジ:ガーディアン】」
槍を放り投げてイヴの前に立つ。そのまま両腕を胸の前でクロスさせる。
ザシュッ!という肉が切られる音がするも、骨までは全く達していないようだ。ガーディアンの防御力パネェ!
「【ライトバインド】」
「【バインドアロー】」
2人の拘束系の技が2つとも綺麗に決まりガーゴイルの動きが一瞬止まる。ほんの少しだけ戦って分かったが、こいつには勝てない。だからこそ逃げよう!
「にげるぞ!」
俺が声をかけると、2人はさっきまで進もうとしていた方へ走ってゆく。よし!2人が逃げ切れたなら、俺も逃げられる。
「クエイフ様!【スピードダブルアップ】」
「あッ!ばか!一気に中級なんて使ったら!」
確かに速度は上がったが、ガーゴイルの要らないヘイトがかなり高まったらしく、わざわざ追いかけてまで襲ってくる。
しかし、そこからは防戦一方で、イヴの支援がなければとっくの昔に死んでいただろう。しかし、一方でイヴやレイが、いなければもう少し早く進んだのではと考えてしまう。
「クエイフ様…大丈夫ですか?」
イヴが心配そうに声をかけてくる。正直全く大丈夫では無いが、精一杯カッコつけてみる。
「たりめぇだろ!俺はここを知り尽くしてる。多少…こんなことがあっても、いつだって逆転できるさ!【スラッシュ】」
こまめに剣や槍を使い分けることにより、行動を読ませず避ける隙を与えない。ゲームではできない戦法だ。
「大いなる魔力よ、より集まり
「詠唱を全て言った魔法なので効果は長く続くと思います!」
それはありがたい。確かに攻撃を受ける度にガラスが砕けるような音がして、ダメージそのものは少ない。
「大いなる魔力よ、より集まり、その壁を厚くしたまえ【多重障壁】」
イヴはそこまで言うと、血反吐をぶちまける。
それもそのはず、確か障壁系の魔法は常に固定精神力マイナスだったはずだ。つまり、回復量と使用量のバランスが崩れたのだろう。
「そろそろやべぇ!」
レイはどこかで安全な場所を探しているのだろう。イヴは倒れたまま動かない。
これはまずい。非常にまずい。なぜって、多数戦ばかりの俺は一対一の技を使えないのだ。あるにはあるが効果が薄い。それに勇者以外のダメージは即時回復のようで、即死させるような方法はない。
絶体絶命だが…せめて2人だけでも危険のないようにしておきたい。
「クエイフ様、危ない!」
「ガァ!」
ガーゴイルの汚い叫び声とともに、イヴは俺を突き飛ばす。真っ直ぐに突き刺してくる剣はイヴの腹をぶち抜く。辺りに鮮血が撒き散らされガーゴイルの黒い皮膚は不気味な赤黒色に変わっていく。
ピコン
〔スキル『勇者』を獲得しました。全てのジョブが勇者用に変更されます。〕
スキル獲得の軽快な音が流れると同時に、俺は陳腐な勇気を爆発させる。
イヴは自分自身に長期回復魔法をかけていたようだ。効果の続く限りその人の体力を回復させる魔法だ。不幸中の幸い、後でハイヒールをかければ傷も残らないだろう。だが、それよりも、こいつを殺さなくてはならない。
地面がえぐれるほど強く踏み込み、ガーゴイルの肩口に斬り掛かる。
「ギシャア!」
イヴのものかガーゴイルのものかはたまた俺のものかわからない血があたりに飛び散る。一部は俺の頬をかすめ不快な生暖かさを感じさせるも、関係ない。
すると、背中に矢が刺さるよう痛みが走る。どうやら、アーチャーゴブリンのようだ。背中の矢を引き抜くとゴブリンめがけ投げる。気持ち悪い悲鳴をあげて死んだそいつには目もくれず、上空で肩を押さえるガーゴイルを睨みつける。
ドン!
と言う地面が割れる音を立てながら、俺はまっすぐ上に
天井に指を食い込ませながら、ガーゴイルに近づく。
首を軽くはねて、絶命させる。よし、これでいい。
やっと2人の…もとに…帰れる…。
〔スキル『勇者』の効果が失われました。〕
……To be continued
三千字…多すぎたな。今回も細くはなしです