…End   作:吉良吉影に憧れる者

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イグの洞窟のボスを倒します。


第26話

「えー、これから『ホブゴブリン』を倒す!特徴や弱点なんかの話をするからよく聞くように…」

ホブゴブリン─ゴブリンよりも大きな体をしており、武器を持たない。魔法は使わないが、その分通常攻撃などが強力。基本的にはゴブリンの強化版程度の強さであるが、油断は禁物。

「このくらいだけど質問は?」

イヴが首を振るのに対して、レイは手をあげる。

「【パラライズカッター】使える?」

「ああ、有効打になるだろうけど、多分当たらないと思うよ?」

なんで?と、問うような目をする彼女に、ホブゴブリンがなぜこの階層でボスと呼ばれるかを答える。

「ホブゴブリンは、パラライズ系の攻撃をする時に物凄いスピードで避けるんだ。まぁ、それを逆手にとった攻撃ができなくもないけど、かなり危ないね。」

そう、アイツは普段トロトロとした緩慢な動きにも関わらず、パラライズ系は全力で避けてくる。ゲームでなら、それを利用した攻撃ができなくもないが、イヴとレイでは、それを見切って攻撃することは難しいだろう。俺も目で見ている訳ではなく、ゲームでの動きをトレースしているだけなので、実際に避ける位置までは分からない。

「というわけで、タゲは取っておくから、安心して攻撃してくれて構わないが、パラライズ系は禁止ね」

この中の全員が一応麻痺攻撃を持っている。俺はジョブを変更出来るから言わずもがな、イヴは普通の魔法に【パラライズ】があるし、レイは『ハンター』なので持ってて当然。というか、何度か使ってる。

まぁ、それはそれとして早速ホブゴブリンを倒しに行きますか!

 

 

 

 

 

そこは、思わず顔をしかめてしまうような嫌な匂いと色に満ちていた。それもそうだ、ゲームの時でも()()で死んだらそのままなのだから…。ほかの異世界迷宮物と違って迷宮が飲み込んでくれる。なんてご都合じゃないんだ。となれば、その死臭や死体はいつまでもそこに残り続けるわけで…

〔鼻をつくような異臭によりパーティ全員の精神力が-2されました。〕

謎の声によって警告を受けるが、この手の精神力マイナスは自動回復ではないので、イヴにとって辛いものとなる。ただでさえただのウィザードのステータスしかないのに、魔法連発したら回復するまでの間が持たない。

ゲームはもうちょいステータス設定ぬるかったぞ?

「くさーい…」

レイの気持ち悪そうな声に重なるように、獣臭い雄叫びが聞こえる。

「チッ!結構近いな!イヴ…」

「はい!【フラッシュ】」

予め決めておいた作戦、目眩しだ。

だが、少しタイミングが早すぎる。俺の合図もイヴの魔法も焦りすぎだ。

イヴの放った光の球体はこちらに走ってくるホブゴブリンとはほんの少しズレた方向へ飛んでいく。

「【マジックキャンセル】」

「レイ、ありがとう!【フラッシュ】」

マジックキャンセル─普通は敵の魔法をキャンセルする魔法だが、味方に使った場合()()()()()()使()()()()()()()()()()

つまり、もう1回魔法を打てるというわけだ。

「視覚遮断しました!」

今度は無事に当たったようだ。

「【タウントスラッシュ】」

これで魔法分のヘイトは取ったはずだ。

しかし、流石にボスだけあって、なかなかに手強かった。

「おーい!手伝おうか?」

「いやー!大丈夫だ!【オーバーシールド】」

斧を背にした大男に声をかけられたが、それを断れるぐらいには余裕がある。ここで、無視したりすると余裕がないと判断されることも多い。というか、俺だったらそうする。

ああ、ちなみに、俺の『俺の場合そうする』というのはゲームではどういう選択をとったかという経験談に基づくものなのであしからず。

「支援かけといてやるよ!【ストレングス】」

「【シャドウ】」

さっきの大男と魔術師風の2人は俺に攻撃力上昇の魔法と自分達に隠密の魔法をかけると、先に進んでいった。

この塔では、1度でもボスを倒したことのある奴がパーティにいれば、ボスを倒さずに次の階層に行ける。それは、また別な危険を産むことになる。

たとえばカークスは俺達とパーティを組んでいるので、キュレーとパーティを組めば三階層に入れることになる。(当然犬死するだろうが)

まぁ、もちろんそうならないように2人に言っておかなければならないが…

「グギャア!」

俺の大剣が、ホブゴブリンにクリティカルヒットしたらしい。

「レイ!」

これだけ大きな隙ができれば、パラライズも当たるだろう。

「【セカンドパラライズカッター】」

レイはいつの間にか、両短剣術を取得していたようだ。

2本あればどっちかは当たるだろうということか?いやいや、甘いんだよ。

「グッルア!ルラア!」

ホブゴブリンの醜い怒鳴り声が響く。

「うそ!?これ避けるの?」

「前も言ったろ?この塔では刀を2本持った程度では強くなれないって!」

前に双剣を使った俺に、カッコイイと目をキラキラさせて言ったレイに向けて忠告した時のことだ。

『この塔で、刀を多く持つことは便利だし死を避ける要因になる。けど、2本持った程度じゃ、まだまだだ。それを扱い切れるようになれば、それが三本目になる。イヴもだぞ?刀じゃなけどな。』

二人とも納得していないような愛らしい表情を浮かべていたが、今ので納得しただろう。

「2本持ってても当てなきゃ意味が無い。」

「そう?じゃ、これなら?」

ホブゴブリンの後ろから攻撃し、それを避けられたレイは、その手を【変形】させたのであった。

「有り得ねぇ!」

当然、人間には曲がらない方向に曲がっている腕はホブゴブリンの背中に向かっている。

ホブゴブリンもこれは予想外だったようで、その表情は驚きと苦しみで歪んでいる。

麻痺はコイツらゴブリンにとって致命的だ。普通より効果時間が長い上、ダメージが倍になる。

「そんなの、俺も受けたくねぇな!【シールドハンマー】」

「私も無理。【デュアルヒートスラッシュ】」

デカい技+連続技、これは致命傷になりうるだろう。

「大技行きます!【ヘルファイア】!」

トドメを刺すために、残しておいた1発限りの大技。これを打ってしまうと全回復するまで魔法は打てない。当然ヒールもない。

「即時回復なんて名ばかりじゃねぇかよ!」

「すいません!」

いや…イヴに言った訳じゃないんだけど…。なんかごめん。

「ラストは貰い!」

ホブゴブリンの悲鳴も聞こえにくくなってきた。パラライズの効果が切れるのはもうそろそろだろう。

さっきの連続技を放った後は、イヴの大魔法に合わせるため通常攻撃に抑えておいたが、彼女にとっては我慢の限界だったらしい。俺に向けたヘイトを奪いさるかのように、大技をぶっぱなしてくる

「【デュアルクロス】!」

彼女の全てを切り裂くような斬撃によりホブゴブリンはズタズタになっていく。

あたりに血が飛び散り、視界が曇るのと反比例して、俺のテンションは最高潮に澄み渡っていく。

これで、三階層へ走り出せる!

アザトース研究所!難関であり、何度も死の瀬戸際に追い詰められた。そして、父の手がかりが遺されている重要な場所だ。

「待ってろよ…!アザトース」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャドモルスみた?あの顔…怖いねぇ。」

ホブゴブリンの心臓と脳の部分を的確に突き刺す黒々とした槍は、また、その影に入っていく。

魔王の高笑いと共に…

続く




次回!アザトース研究所にて、大冒険の予定
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