「あの…?」
何度もジョブを変えてその副作用により情けなく気絶していた俺は、綺麗な湖のように澄んだ声によって起こされる。美女のモーニングコールにしては最上級すぎるが、いかんせん起きる場所が宜しくないようだが…。
「あ、えっと。気が付きましたか?
誰だよ美女のモーニングコールとか言ったやつ。これだとメイドのモーニングコールじゃねぇか。
そんなふうに余裕ぶってふざけたことを考えられるのも束の間、次第に冷静な判断が出来るようになり体も起こせるレベルまで回復する。
「あー。えっと、さっき助けた…?」
「イヴです。家名はありません。」
イヴと名乗った少女は、奴隷が着るような麻でできた布切れを纏い、いわゆる女の子座りをしている。痩せているだなんていえば聞こえはいいがどう考えても栄養失調気味である皮膚の色と肉の付き方をしている。さらに元々綺麗な金色だったであろう長髪は、汚れと血でくすんで見える。
そして、その長い髪から少しだけ見える尖った耳を見ればエルフであることが伺えるが、それよりも気になったのは、エルフであることではない。
「もしかして、奴隷?」
一目見た時からその結論には至っていたが、ゲームには殆ど奴隷のことが絡むことは無いし、ストーリーでほんの少しだけ出て一切でなくなる。強いて言うなら、ジョジョ三部に出てくる『アン』みたいな感じだ。
我ながらすげぇわかりにくい例え。
「はい。そうです。そして今のご主人様は貴方様です。」
なぜ?と、目で尋ねると伝わったようで、
「元々私とさっき助けていただいたもう1人、『レイ』は、同じご主人様に買われました。さっき死んでいた中の1人です。ですが仲間割れになり、3人で揉めていたのが急に一人分静かになった辺りでゴブリン達の襲撃を受けました。私とレイは、盾替わりに使われそうになりましたが、その前に2人とも死んでしまって…。私はレイを守るために、戦っていました。そこで、ご主人様が私たちを助けてくれたんです。なので…その…お礼というか、なんというか」
「あ、いや!人を助けるのは俺の中では当然のことだし、お礼で奴隷になるってのは重すぎるよ!」
「?何を仰ってるんですか?前の主人は殺されているので、その主人を殺したご主人様に私とレイは仕えなきゃいけないんですよ?なので、お礼と言ってはなんですが…夜伽を…」
ツッコミ所が多すぎるので1番突っ込みたいところから、
「俺が人殺しみたいな言い方するな!ゴブリンは殺したが、お前らの主人は殺してないはずだぞ?」
「いえいえ、だからご主人様はそのゴブリンを殺したんじゃないですか。」
まさかの奴隷ルールはモンスターにも通用するらしい。
詳しく説明してもらう。それをざっくりまとめたものがこちら↓
最初の主人(ゴブリンに殺される)→ゴブリン(仮にAとする)→ゴブリンAをイヴが殺す。その場合イヴが奴隷なので同じ種族のゴブリン(仮にBと呼ぶ)に2人の所有権が移る。→ゴブリンBないしC、D、E、F…を俺が殺す。
よって、奴隷イヴと同じく奴隷レイを所有しているのは俺ことクエイフ。
なるほど状況は理解した、なら次のツッコミどころにいくとしよう。
「僕は奴隷を無理矢理犯してまで童貞を捨てたいとは思わない!やるなら双方合意の上で愛を持った方がいい!」
思わず一人称がぶれるぐらいの綺麗事だが、俺はレイプ物はあまり好きじゃない。
そして大きな声を出してしまったせいで、スライムがよってくる。イヴの魔法に合わせて、2回を程切りつけるとパタンと動かなくなる。
「えっと、レイって子はどこ?とりあえず、家に行ってゆっくり話そう。」
俺がイヴに言うと、彼女は口笛のようなものを吹く。
虎のように驚くスピードで何かが近づく。この子が噂のレイちゃんらしい。やはり痩せこけた体つきにイヴと比べてある一点もこぢんまりとしている。(イヴが大きい方だとしても、レイが小さい方であるのは間違いない。)さらに、普通の人なら耳があるであろう場所は、髪で覆われているので見にくいが、まぁ、耳はないのだろう。なぜなら、茶髪に赤い絵の具を垂らしたような綺麗な赤茶色の髪から犬や狐のような耳がちょこんと見えている。イヴがかなりの長髪に対し彼女は首元ぐらいまでしかない。
耳と目付きを見る限り彼女は獣人のようで、その辺が奴隷になったことに関係してそうだ。(まぁイヴの話を聞く限りそれが原因と断定できるが)
これでも俺はついさっきまで気絶していたのだ。1度戻ってその時に詳しい話を聞くとするか。
続く
9話に行く前にこの3人の紹介でもしようと思ってます。