モノクロームリリィとの日常   作:カサノリ

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今日はのんびり回。フレちゃん、けっこう書き手泣かせですね。でも、その分楽しかったです。雰囲気だせているといいのですが……。


4月15日「ヘリコプターの日」

「フンフンフン、とっても大好き~、フレコプター!!」

 

「ねえ、フレちゃん、そのいろいろなところに危ない歌は何かしら?」

 

 4月15日。LiPPSでのトークショーを終えた奏はユニットの仲間である宮本フレデリカさんと共に、馴染の喫茶店で優雅なティータイムと洒落こんでいた。私はその付き添いである。仲のよい友人二人の時間だ。私は邪魔をしないように少し離れて、静かに報告書を書いていた。

 

 店主が用意してくれた紅茶の華やかな香りを楽しみながら、少しリラックス。そこに著作権やら大きいものを敵にまわす自由すぎる歌声が響いていく。

 

 奏に尋ねられたフレデリカさんは、いつも通り楽しそうな顔で朗らかに頓珍漢なことを話していく。

 

「フレコプターだよ、奏ちゃん。知らないの? 世界の一大ムーブメント、南極でも大人気なんだから」

 

「南極の人口ってどれくらいなの?」

 

 んー、わかんない。と相変わらず雲をつかむような、柳のような、ともかくフレデリカなフレデリカさんだ。そんなフレデリカさんは、ちょいちょいと、指をまわして見せる。

 

 どうやらヘリコプターの真似らしい。

 

 個性的な面々がそろい、若者を中心に爆発的な人気を博しているLiPPS。奏はそこでリーダーを務めている。このユニットはトライアドプリムスと同様に事務所内でのコラボユニットだ。

 

 羽衣小町の塩見さん、レイジーレイジーの一之瀬さん、フレデリカさん。それにカリスマギャルとして絶大な支持を集める城ケ崎さん、と企画当初はこの濃い面子をどうやってまとめるつもりだ、と各々のP達と頭を抱えたものだ。

 

 今となっては杞憂に終わっているが、あの時期は各々のPがいろいろと心労で狂っていた。私もパフェの消費量が信条に反して週3になるほどに。そして、この喫茶店が二人にばれることとなったのだ。

 

 そんな話はともかくとして、明るいようでフレデリカさんは悩み事があるみたく、少しばかり頬を膨らませていた。

 

「それで? 今日は随分とフレコプターを推すのね」

 

「じつはね、プロデューサーがね、飛んで行っちゃったの、ヘリコプターで。でも行き先がわからないんだー。どーしよーってちょっぴりお悩み中」

 

「あらあら、相変わらずフレちゃんたちのPさんはアグレッシブ。あなたも見習ったら? 同期なんでしょ?」

 

 かしまし娘たちの楽しそうな様子を眺めながらノートパソコンで仕事を進めていた私は顔をあげる。

 

「あの人間離れしだした奴を見習ってみろ、君らも大変なことになるぞ。ヒマラヤに行きたいわけじゃないだろうに」

 

 あの変貌ぶりには一之瀬博士の人体実験説が疑われるのも仕方ないことだろう。

 

 にしてもヘリコプターとは、アイドル連れてないのなら撮影でもあるまいし。一体何をやっているのだろうか。

 

「それもそうね。一度くらい行ってみるのも悪くないけれど。幸子ちゃんみたいには上手くできないでしょうし。そういえば、フレちゃんは最近だとどこに行ったの?」

 

「ふっふっふ、知りたい? 実はね、ラピュタ!」

 

「ナスカ、な」

 

 地上絵と空中都市は全く別だ。

 

 学生組だから回数は多くないが、それでも月1回くらいは海外ロケを行っている。海外経験豊かな一之瀬さんと、見た目はフランス令嬢のフレデリカさんだから安心して許可だせる企画だが、時々巻き込まれる輿水さんには同情する。

 

(輿水さんのPとあいつは仲いいからなー)

 

 バラエティの神が舞い降りた、と神託を受けたかのように踊り狂っていた二人組はわが社のP業界でも異端の部類に入っていた。

 

「だからアイツいなかったのか、今日は」

 

 元々全員がそろう必要はないので、大がかりなライブでなければ担当のP達が2人ほど、責任者として同行するのが常だが、今日は城ケ崎さん担当と私の番だった。まさかヘリコプターに乗ってどこかへ行ったとは。

 

 置いていかれたフレデリカ嬢はご機嫌斜めのようで、ケーキを平らげると、今度はぐだーっと机の上にもたれかかる。

 

「お行儀が悪いわよ?」

 

「アタシもババババーって飛んでみたいなー。ほら、奏ちゃんの好きな映画みたいにね」

 

「……まだヘリ使ったことなかったのね。その方が驚きだわ」

 

「ヘリ……」

 

 単語が頭の中をぐるぐるとめぐっていく。奏と加蓮と、ヘリ。

 

「あら、プロデューサーさん、また何か思いついたの?」

 

「いや、ものすごくキメた衣装で、ビルの屋上とか、カッコよくないかなって。奏のイメージに合いそうだし」

 

 ヘリを使って、ビルの下から上へ向かって撮影するのだ。夜明けの光が奏を照らして、影が広がっていく。

 

 そんなイメージが出来上がっていった。

 

「わーお! いいね、それ!! 奏ちゃん、あれだよ、アレ! あんな感じがいいよ!!」

 

「せめて対象くらいは明言してほしいわ」

 

「そうだな! あれがいいな!!」

 

「Pさんまで……。悪ノリしてる?」

 

 いやいや、そんなことはない。おそらくフレデリカさんと私のフィーリングは一致している。そんな空気を感じるのだ。

 

 そう言うと奏は小さくため息をつき、呆れたような目を向ける。今日はフレデリカさんがかき回してくれているからか、少し優勢だ。珍しいこともある。

 

「奏はどうだ? ヘリ使ってやりたいこととか無いの?」

 

 奏にも尋ねてみると、そうね、と彼女は手を頬に当てて考えるように少し黙る。

 

「うん。プロデューサーさんの案、悪くないと思うわよ。最近は夜のイメージばかりだったし、今度は朝焼けなんて、面白そうじゃない」

 

 気にいったのか、奏はにっこりと微笑むと、小さく頷く。

 

「よかった! 気にいってくれたか!! よし、帰ったら企画の準備だな。これから忙しくなるぞ」

 

 そうと決まれば、あとは形にするだけだ。もっともっと磨き上げて、奏の最高の舞台にしないといけない。気合を入れて、店主特製ティーを勢いよく飲み干した。

 

「いーなー、いーなー奏ちゃん。お仕事たのしそー」

 

「楽しいのは否定しないけれど。これでも大変なのよ? Pさん、時々無茶なノリをしだすものだから、加蓮と一緒に困らせられることあるもの。フレちゃんこそ、お仕事楽しいでしょ?」

 

「もっちろんのロン! フレデリカちゃんがフレちゃんになるのはお仕事とあと、もう一つ大事な……なんだっけ? なんか忘れちゃったアレのおかげだもん!」

 

「ふふ、フレちゃんらしい。フレちゃんのプロデューサーさんも早く戻ってくるといいわね」

 

「そうそう、フレちゃんをほっといたプロデューサーはあとでフレちゃんの刑にしないと! 奏ちゃんとプロデューサーさんとのデートの時間も少なくしちゃったし、もーお仕置きだよ!」

 

「あら、これデートだったのかしら?」

 

「デートだよ。奏ちゃん、すごい楽しそうだったもん! 何となく!!」

 

 奏とフレデリカさんはそんなことを話しながらニコニコと。年頃の娘さんには笑顔が似あう。

 

 それは、灰色の青春を送った私にはとても美しく、尊いものに感じられる。そんな仲間と巡り合えたのなら、この世界にスカウトした甲斐もあったものだ。

 

 不意にスマホが震えだす。着信元を見ると、フレデリカさん達の担当で。

 

「なに? マグロ?! お前何やってんの!?」

 

 電話口でわめきたてる同期の頓狂な発言に愕然とさせられる。慌てて言われるがままにメモをとらされる私を尻目に、アイドル二人は最後に一口、紅茶を飲むと、笑いあう。

 

 奏はほんと困ったというような苦笑い、フレデリカさんは華やかな極彩色の笑顔。

 

「マグロ? ツナ? 缶? すごいねー。食べ放題かも!」

 

「……貴方のところ、本当に飽きそうにないわね」

 

「んー、奏ちゃんのとこも、同じじゃない?」

 

「……それもそう。ふふふ、ほんと、飽きない毎日だわ」

 

「そうだ! 今度は加蓮ちゃんと奏ちゃんも行こうよ! えっと、そうそうバミューダ!!」

 

「一体何を見に行くつもりよ。でも、そんな冒険も一度くらいはいいかもね。楽しみにしてるわ」

 

 奏はちょっと苦笑い。今日は珍しくからかわれなかったが、たまには困り顔を見れるというのも新鮮なものだった。




奏の友人関係。

自分とキャラが近い子も、意外に思える子も、とても交友関係が広いのが奏ですが、元々人間関係で悩みを持っていたんですよね。

そんな女の子がアイドルになって、目標となる大人や同年代の友達に囲まれているというのはとても尊いことだと思うのです。


投稿初めて1週間。皆さまのご感想、ご評価、ありがとうございます。拙作ではありますが少しでも奏と加蓮のことを知っていただけると幸いです。

今週も奏と加蓮に清き一票をよろしくお願いいたします!
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