モノクロームリリィとの日常   作:カサノリ

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総選挙最終日まで323日な6月27日。

アイドル達は普段、どんな雑誌を読んでいるんでしょうね。

アイマスの世界をもっと覗いてみたいと、常々思っています。


6月27日「女性雑誌の日」

 アイドルのプロデュースという仕事をしていると、女性文化に触れることが多い。

 

 アイドルに似合った仕事を取るために、ファッションやコスメの流行を追うのは当たり前。奏も加蓮も、女性からも人気が高いアイドルだから、彼女達へ向けたイベント企画も多く、私は女性受けのよい企画を立てる必要がある。

 

 女性の世俗に疎いとあっては、不自由が出てしまうのだ。

 

 なので、立派なプロデューサーを目指す私も、リサーチは欠かさず行っているのだが――。

 

 性別という壁は確かに存在し、時に気まずい場面を生み出すこともあるのだ。からかうタイミングを狙っている彼女たちが傍にいれば、なおさらに。

 

 

 

「さて、最近の流行は――」

 

 営業周りを終えた午後。私は自分の机で雑誌を読んでいた。

 

 世間のサラリーマンに観られたら、ともすればサボっていると思われてしまう光景だが、これも立派な仕事。

 

 私が読んでいるのはティーンエイジャーを対象にしたファッション雑誌で、加蓮たちも愛読しているものだ。そして私にとっては、最新の流行を調べる教科書でもある。

 

 そんな雑誌の今月の特集はカフェ。インスタ映えする店の紹介から、タピオカに替わる流行スイーツ。うちの姫様二人も好きそうな内容だが、時にはネタも。大写しになっている、シンクのソースがかかったパフェは、胃の奥をキリキリとさせるものだった。

 

「……タバスコパフェは、ヤバいだろ」

 

 加蓮と奏も同じ雑誌を目にしているだろう。心の奥で、二人がこの店へと連れ出さないことを切に願う。こんなリアクションに困るパフェなんて、加蓮は特に面白がりそうだ。

 

『ねえ、パフェが大好きなPさん? このおいしそーなパフェ、一口食べてみない?』

 

 などと、にっこり悪魔の笑みを浮かべながら、真っ赤で刺激的なパフェを向けてくる絵が思い浮かんでしょうがない。その直後、机に突っ伏してぴくぴくしている私の姿も。この第六感が虫の知らせだと、思いたくなかった。

 

「……次行こ、次!」

 

 気を取り直して、ページをめくる。

 

 そこからは定番のシチュエーションに合わせたファッション特集。ネイルサロンとヘアサロン特集。あとは、まあ、ティーンが興味を持ちそうな恋愛と、関係の深め方。

 

 少しばかり過激な内容が入っているのにも慣れたが、これが昔から変わらない内容なのか、それとも最近の世代特有なのかは調べたいような、調べるのが怖いような。

 

 そうしてページを進めていき、

 

「アンケートコーナー、今月は『百年の恋も冷める彼氏の行動』なんだね」

 

「男にとっては、肩身が狭い話題だ……」

 

「けど、より良い関係でいたいなら、節度は気にしないといけないわよ?」

 

「……そりゃごもっとも。ところで、二人とも?」

 

「「なに?」」

 

「いつから?」

 

「さあ?」

 

「いつからでしょう?」

 

 真実を知るのが怖いので、私は無言を通した。いきなり背後から現れるというのは、心臓に悪いだけでなく、ある疑問も生じさせる。

 

 もしや、この部屋のどこかに隠し扉でもあるのではないか、そういう妄想。もしあるなら歓迎するし、使いたいぞ、ロマンだし。だから二人とも、早く秘密を教えてくれ。

 

「そうね……。貴方の机の引き出しの中、とか?」

 

「ド〇えもんか」

 

「それとも、Pさんの影の中?」

 

「どの映画の影響だよ?」

 

「小梅が見せてくれたホラー映画♪ 気づかれずに、背後に忍び寄っちゃうの……」

 

 言いつつ、奏が微笑みと共に、私の背に指を這わせたので、ゾクゾクと妙な震えが広がった。

 

 奏が雰囲気を作ると、本当に引きずり込まれそうだ。出会ってから随分と長く立つけど、よく無事でいるな私、と常々思う。

 

 そして、奏によって私の意識が割かれた瞬間に、加蓮が「えいっ」という可愛い声と共に私の手から雑誌をとりだし、奏と共に読み始めてしまった。何を思ってか、私へ聞こえるくらいの音読まで加えて。加蓮の甘い声がとろりと流れてくる。

 

「なになにー。彼氏の冷める行動、いち! 『束縛が激しい』」

 

「好きなお仕事を入れてくれる。お休みもほどほどで、オフも言えば合わせてくれるし……。そうね、大丈夫そう。

 二番目は、『金銭感覚が合わない』」

 

 ……ん?

 

「これも当てはまんないんじゃない? 食事はファミレスが多いから」

 

「私たちも高級志向はないし、相性いいわね」

 

「そうだねー。あ、でも、ライブの後とか、特別な時はオシャレなお店に連れて行ってくれるし、そこはポイント高いよ」

 

 まてまて。

 

 誰の話をしている。いや、分かるけど。

 

「三番目、『浮気』! うわー、これはやられたら怒るけど」

 

 そこでちらりと、加蓮が私の方を見て、

 

「……だいじょうぶ、じゃないかな?」

 

「そう、ね」

 

 なぜ今度は断言しない!

 

「この間、美優さんとお茶してたでしょ?」

 

「楓さんとも、飲み友達になったって聞くわよ?」

 

「美優さんは相談に乗ってただけだし! 高垣さん以外にも暴走婦警に川島さんもいたよ、その飲み会! っていうか、私の行動当てはめてるよな、やっぱり!! 彼氏じゃないのに!」

 

「でも、プロデューサーとアイドルって言ったら、恋人も同然でしょ?」

 

「普通の恋仲よりも親密かもしれないわね」

 

 ねー、とか、二人で顔を合わせながら笑わないの!

 

「毎日一緒にいて、買い物にも付き合ってくれて、食事も誘ってくれるし、水着もドレスも見たでしょ?」

 

「それで悩み相談にも真摯に乗ってくれるんだから、なんて素敵な彼氏♪」

 

「からかわない!」

 

「からかいじゃなかったら……どうするのかしら?」 

 

 奏が目を細めながら囁く言葉は、顔を背けて躱しておく。

 

 私は加蓮から雑誌を奪い返すと、机のロッカーへと放り込み、椅子に座ってため息を吐いた。随分と疲れて、体中から力が抜けてしまっている。

 

 そんな私の様子を見て、加蓮と奏は少しだけ労わるような苦笑を向けてくる。

 

「もー、ごめんごめん! ここまでにするから!」

 

「理想の彼氏って言うのは、あえて否定しないけどね」

 

「……ちなみに、その雑誌には理想の彼女とか乗ってないの?」

 

 私は読もうとして、加蓮に取られちゃったから。

 

 すると加蓮は自分のバッグからもう一冊、同じ雑誌を取り出してくる。

 

「もちろん載ってるけど……Pさん、気になる?」

 

「貴方の好みに、少しは合わせてあげるわよ? 私たちも」

 

「じゃあ、からかわない彼女をください」

 

「「それは無理!」」

 

 満面な笑顔で断言する二人へ、私は乾いた笑顔を浮かべるしかなかった。




今日も加蓮と奏の応援を、お願いいたします!!
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