モノクロームリリィとの日常   作:カサノリ

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今日は少し難産でした。恐竜も好きなんだー!!


4月17日「恐竜の日」

「太古のロマン、ね。私、昔のことは振り返らない主義なのだけど」

 

「でも、うちのPさんは。……やっぱりそういうのも好きなんだね」 

 

「ははは。当たり前だ」

 

 恐竜の日を迎えた今日。私たちはとある県の恐竜博物館へやってきていた。今週開催中の恐竜展、その模様を全国区のトレンド番組内で放映するというので、そのナビゲーターの仕事をいただいたのだ。

 

 二人が館内をめぐる様子を生中継し、最後には地元の子ども達と一緒に発掘体験。

 

 十代後半から二十代と若者が幅広く存在するウチのファン層。だが、せっかくならもっと広く、二人の魅力を知ってほしかった。子ども達が興味を示す恐竜紹介を行うことで低年齢層まで広く知ってもらおうというのが今回の企画の目的だ。

 

 そういうわけで、いつもの洒落た服は封印。奏と加蓮はさながら恐竜探検隊のような作業服に身を包んでいた。

 

 ライブや普段の華やかさとは正反対で、地味なベージュに安全帽、ロングパンツといった武骨な衣装だが、やはりというか、そんな格好でも二人の輝きは色あせていなかった。むしろ、いつもと違う様子が新鮮で魅力的でもあった。

 

 モノクロームリリィの探検隊。いいかもしれない。

 

 と、そんな言葉が頭をよぎるが、すぐにふるって消し去る。

 

 いやいや、そんな思考はあの同期と同じになってしまう。仕事となればついてきてくれるだろうが、コメディよりもクールを、汗と泥よりも可憐さを見たいというのが世間の、そして私自身の望みだった。

 

 さて、そろそろ放送開始時刻。中継なので、始まったら助け船は出せない。最後にいろいろと確認しておこう。

 

「加蓮は体調大丈夫か? 一応、日差し避けは用意されているし、気温も高くないだろうから安心だとは思っているのだけど」

 

「うん。今日は体調もばっちりだから、大丈夫だよ」

 

「それなら良いけれど、もし立ちくらみとかあったら、合図出してくれよ。生放送だからといっても、体のほうが大事だからな」

 

「もー。心配してくれるのは嬉しいけど、大丈夫、大丈夫」

 

「何かあったら私もフォローするから安心して。それに、加蓮はそこまで柔じゃないわよ」

 

 確かに、奏もいるし大丈夫だろう。

 

 昔のことを気にしてか、デビュー当初はやせ我慢して体調を崩しかけることもあった加蓮だが、最近はそんな無茶も鳴りを潜めていた。

 

 とはいっても、大切な担当だ。大丈夫だと信用していても、心配してしまうのは仕方ないとわかってほしい。だが、そう言うと加蓮も少し拗ねてしまうだろうから、そんな言葉は胸にしまっておく。

 

「分かった。それなら任せるよ」

 

 そう言うと、加蓮は小さく笑って、

 

「ありがと」

 

 小さくブイサイン。その笑顔と様子を見ると、私も気が落ち着いてくるのを感じた。

 

「そういえば、プロデューサーさん、発掘体験の時は何か発見したほうがいいのかしら? 学芸員さんの指示に従ったらいいって、ディレクターさん達は言っていたけれど」

 

 今日は、二人の新鮮な驚きの絵がほしいということで、発掘体験の部分は場所と道具のつかい方を指導されただけで詳しいディレクションがなかった。

 

「一応、ある程度までは発掘が進んだ場所を使うらしいから、やみくもに探すよりは見つかる可能性があるみたい。だけど、実際出てくるかは五分以下だろうな。何か見つからなかった時のために、事前に化石は用意してあるそうだ」

 

「仕込みを使わなかったのは、Pさんの案?」

 

「二人ともそういうの使わなくても、きっと見つけると思ってね。ちょっと苦手だろ? そういう仕込み」

 

「ふふ、それじゃあ、ご期待に応えるとしましょう」

 

 さあ、それそろオンエアだ。私はバックヤードに下がり、スタッフたちとカメラ越しの彼女たちを見る。

 

 服装は違うけれど、いつもと同じ。自然体でありながら、画面越しに人を魅了するアイドルの姿だ。

 

『今日も元気にセイハロー! みんなに今日のトレンドを紹介する、「トレ探」のコーナーがやって決ました。なんと、本日は素敵なゲストが! こちらの方たちです!!』

 

 と、アナウンサーの紹介に合わせて、入場。

 

『こんにちは。モノクロームリリィの北条加蓮と、』

 

『速水奏です。今日はよろしくね」

 

 朗らかな笑顔の加蓮と、少しセクシーにウィンクする奏。

 

 とても魅力的な表情に、私も心が熱くなる。

 

 少しばかり曲やイベントの紹介時間をもらった後、二人はアナウンサーと共に博物館の学芸員の案内で館内を巡っていく。日本で初公開となるモンゴルで発見された大型肉食恐竜の全身骨格、日本原産の首長竜。時には巨大なアンモナイトのレプリカを持ちあげてみたり。

 

 カメラが向けられているので少しは演技も入っているが、二人とも本当に楽しそうに館内を巡っている。それこそ、ここに立つ私でさえ楽しさが伝わってくるほどに。

 

 そうして、滞りなく中継は進み、最後は屋外の発掘現場へ。

 

 地元の小学生たちとの共同作業ということで、3年生の子供たちが30人ほど待機してた。係りの方の指導を受けつつ、小さなハンマーを使ったり、刷毛を使って周りを探ったり。

 

 一緒に作業をする小学生の様子を見てると、やはりというか、男女で反応が違っているのが面白い。どちらもはしゃぎがちなのは同じだが、加蓮の方には男の子が多め、で、奏の方は女の子が多い。かなり熱心に奏の顔を見つめては照れているような子もいる。

 

(奏、女性にも熱心なファンが多いからなあ)

 

 早速小さいファンたちを獲得した様子の二人。しばらく黙々と作業を進めるも化石というのはなかなか出てこない。さて、放送終了も近づいてきたから、判断をするか、と考えたとき、

 

「あら?」

 

 と奏が驚いたような声を上げた。

 

 

 

 放送終了後、着替えて作業の汚れを落とした二人と、私は合流し。控室でお茶を飲んでいた。

 

「にしても、ほんとに見つけるとは」

 

「ほんと、しかも二人ともなんて」

 

「ねー。私も驚いちゃった」

 

 奏と加蓮は二人とも、小さなサメの歯の化石を掘り当てた。しかもほとんど同じタイミングで。

 

 信じていたが、それでも改めて二人の運を引き寄せる力に驚かされる。おかげで子どもたちも大興奮、いい絵も取れてスタッフも満足げだった。

 

 その戦利品である小さな黒い化石を手に取って、二人と一緒に眺める。何千何万と昔のものなのに、形は欠け一つなく、きれいに光り輝いていた。

 

「そういえば、この化石はどうすればいいの?」

 

「ん? 館長さんが言うには、そんなに珍しいものでもないし記念にもっていっても良いそうだ」

 

「あら、太っ腹、でも……」

 

 アイドルに持っててもらったほうがサメも浮かばれますよ。なんて冗談めかして彼は言っていた。ただ、それを見つめる奏は少し考えこんでいるようで。

 

「どうした?」

 

「……大したことじゃないわ。ただ、死んでしまった命を掘り起こすのって、なんだか可哀そうな気がしてね。

 

 学術的な価値については理解しているし、研究者さん達の真剣も知っているから、的外れな感傷だと思うけれど。ちょっとだけ、ね」

 

「そっか、奏もか。私もね、見つけられたのは嬉しいけど、このサメも静かに眠っていたかったのかな、って思ったら、ちょっと可哀そうになってきちゃった」

 

 自分たちで掘り起こしたものだからだろうか。二人は遠い昔に生きたサメに思いを馳せているようだった。

 

 きっと、そういった個人の感想に正解も何もないのだろう。私は喜んで記念としてしまうだろうし、研究者はそれを広く役立てようとする。ただ、はるか昔のサメの、小さな歯であっても、その感情に思いを巡らせるのは、やさしい二人らしいと思った。

 

「じゃあ、こうするか」

 

 そんな二人の望みを形にするのが、私の仕事だ。

 

 

 

 

「ほんとPさん、ロマンチックなの好きだよね」

 

「ふふ、でも、うん。いい提案だわ」

 

 私たちは展望から海を眺める。博物館から少し車で移動した、海を臨む丘の上。

 

「いいだろ? 事前に調べていたのが功をそうした、ってな」

 

 少しは観光してもいいかと思って調べていた中にあった、絶景の海の景色。ゆるやかな暖かい風が私たちをなでていく。

 

 きれいな日本の海の姿が私たちの前に広がっていた。

 

「ここなら、サメの魂も浮かばれるだろ」

 

 えいっと二人から預かった化石を大遠投。ちょっと距離はあったけれど、これなら無事に水へと戻って行けただろう。

 

 それを遠くから眺め、三人でしばらく夕焼けが沈んでいく海を見つめる。見事な夕焼けと、ちょっとの達成感。奏も加蓮も、満足げだった。

 

「……サメの恩返しとか、ないかな?」

 

「えー。夜中にサメが訪ねてきたりしたら、怖いじゃない」

 

「サメが歩いてきたりしたら、それこそ映画みたいね」

 

 B級のな。

 

 ただ、大昔から生きて、足跡を残してくれた偉大なる大先輩だ。

 

(もしよければ、二人を見守ってやってくださいな、てね)

 

 二人が歴史に大きな足跡を残す、そんなアイドルとなるように。




モノクロームリリィのお仕事

奏と加蓮、二人とも、元々は人との付き合い方に悩んでいただけあって、お互いの気安い距離感がわかっている様子がデレステなどで描かれてきました。きっと、アイドル活動でも、お互いを何でもないように支えあって、そして高めあえる仲のいいユニットとなってくれるでしょう。

そんな二人の出会いの物語。きっと考えてみたら面白いと思えます。




さて、とうとう一週間を超えて八話目となりました。開始当初は無茶かな? 自分でも悩みましたが、皆様の支えがあって、書き続けることができています。これを二週間、三週間と伸ばし、目標の三十日に到達させていきたいと思います。

それでは明日も奏と加蓮に清き一票を!!
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