モノクロームリリィとの日常   作:カサノリ

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最終日ー!!!


5月15日「家族の日」

 時がたつのはなんて早いのか。

 

 去年も考えていた気がするが……。今年の一大行事を終えた私は、日記を見ながら改めてそう感じていた。

 

 ほんとに、一年なんてあっという間だ。

 

 二人にからかわれながら、この日記を書き始めた日のことも、しっかりと覚えているのに、日付を見たらもうすぐ一年なんて。

 

 そんな私の意識とは別に、日記は何か月分にも積み重なっていて、確かな時間の流れを教えてくれる。それをカチカチとクリックしながら振り返っていくと、

 

「書いてる内容は……」

 

「からかわれてる話ばっかりだね……」

 

「そりゃあ、毎日一緒にいるんだからね」

 

 後ろから覗き込んでくる加蓮がそう言うので、私は思わず笑ってしまった。自分の文章ながら愉快な日常だけど、からかい上手な二人と一緒ならこうもなろう。

 

 それに、変わらない日常だって大切だ。

 

 一年は早いと思えるくらい、加蓮と奏は成長をしてきた。目標を定めて、夢へ向かって。

 

 けれど、帰る場所もない冒険の旅は、道に迷うものともなりがちだ。来た道も分からなければ、進む道も見つけられないのだから。

 

 二人がどれだけ先に進もうと、こうしてからかい、からかわれる楽しい日常は、戻る場所としてあって欲しい。

 

(からかわれやすい私の性分も役には立つもんだ)

 

 彼女と出逢ってから、からかいをどうにかしようとしてないあたり、言葉でなんと言おうと本心はわかりきったもの。奏じゃないけど、語らぬ方がいいこともある。

 

 そんな変わらない日常に想いを馳せていると、奏が私たちへと声をかけてくる。

 

「二人とも。準備できたからこっちに来てちょうだい」

 

 顔を上げるとそこでは、奏がお茶の用意をしてくれていた。新田さんがお土産にくれた、海外の上等なものだということで、ちょうど良いから開けてもらったのだ。机の上にはほかにも、簡単なケーキやら、お菓子やら。

 

 いつものティータームというには豪華な内容なのは、今日という日だからだろう。

 

 私は日記を閉じて、加蓮と一緒に奏の方へ。ソファに座り、紅茶のカップを手に取ると、すぅっと華やかな香りが広がる。ローズティ―とは、オシャレで面白い。

 

 一仕事を終えた後の飲み物は、どうしてこんなにおいしいのだろうか。

 

 美味しいお茶を飲んで、体から力を抜いた私たちは、それぞれの恰好に笑いながら会話を始めた。

 

「一か月、長かったねー」

 

「みんなだけじゃなく、世間も雰囲気が違うのが面白かったわね。毎日一喜一憂して」

 

「お祭り騒ぎがほんと好きだよなー」

 

 改めてしみじみと。

 

 今日は総選挙最終日だ。一か月の長きにわたった第9回シンデレラガール総選挙も終了。私たちも、最後の票を投じて、こうして部屋へと戻ってきた。

 

 このあとは、例年通りに事務所を挙げたお疲れ様パーティーもあるのだが、それは数時間先。それまでの間、こうして私たちだけの簡単な打ち上げを開いている。

 

 大規模なパーティーだと、中々のんびりと感想を話し合う機会も作れないので、このくらいの穏やかな時間も必要だろうと、誰ともなく言い出したのだ。

 

 ケーキやフルーツをつまみながら。私たちを取り巻く空気は、先の総選挙が嘘のようにゆっくり。

 

「忙しかったけど、楽しかったよね……」

 

「ライブをしたり、イベントで全国を跳びまわったり」

 

「レッスンもハードだけど、充実してて」

 

「あと、事務所内でも毎日、何かしらの騒動が起こっていたわね」

 

 記憶に残るだけでも、『セクシーデリバリー vs 棟方さん』とか、『フライングエクステ』とか、『城ヶ崎姉妹の乱』とか、『ギャル専務誕生事件』なんて、何故あんなことが起こったのかも分からない。

 

 それらを一つ一つ挙げていく中、奏は悪戯笑顔を加蓮へと向け、

 

「加蓮の第二次写真合戦も、大騒動だったけど?」

 

 なんて、中盤を彩った加蓮の一騒動を話題に出した。

 

 すると加蓮は視線を遠くへと向けながら零すように言う。

 

「あれは忘れて欲しいんだけどなー」

 

「こらこら、なんか酷い目に遭ったと言いたげだが、一番の被害者は私だぞ」

 

 第一次の時も大概だったが、第二次は輪をかけて酷かった。

 

 その騒動だけでなく、こうして語りながら、あれやこれやと記憶が鮮明になっていく。とかくこの事務所は愉快で、いろんなことが起こり、飽きることがない。もちろん思い出すのは、愉快で漫画みたいな日常だけでもなくて……。

 

 話が一息ついたところで、私は一息を吐いた。

 

「……ほんと、この一年、みんな無事に過ごせてよかったよ」

 

 愉快で楽しい記憶の裏で、加蓮と奏の努力の毎日があった。

 

 ライブに、写真集に、握手会に、料理番組に出たり。それら、大の大人でも緊張して、しり込みしてしまう舞台を前にしても、アイドル二人はいつも果敢に挑んで成長してきた。

 

 それら全てを、大きなけがも病気もなく過ごしてくれたことがなにより嬉しい。

 

「あら、こんなに早くしんみりしてしまっていいの?」

 

「結果発表もまだなのに」

 

「……そりゃ結果が出るのも待ち遠しいけど、ね」

 

 加蓮がトップを狙える位置にいたり、プロデューサーとして気にならないわけがない。ただ、それとは別に、二人の安心と安全の方が大事だ。

 

 そう言うと、加蓮も奏も、くすくすと優しく笑いだしてしまった。

 

「ほんと、この人は!」

 

「まあ、らしいっていったら、らしいけど、ね」

 

「なんだい急に?」

 

「別に? アイドルがアイドルなら、PさんもPさんだなって」

 

 加蓮は明るく言うと、小さなケーキを美味しそうに食べる。私が言うのもなんだけれど、これからトップアイドルになろうかという時には、普通な女の子の笑顔を浮かべて。

 

「もちろん、トップは狙っていくし、夢は絶対叶える」

 

「けれど、それが全てではないし、選挙だけがお仕事じゃないものね」

 

 加蓮と奏はきらめくアイドルだ。

 

 偶像となることを選んだ、強くて可憐な女の子だ。

 

 だが、そんな彼女たちも一人の人間。アイドルが全てではなく、仕事だけが全てではない。全てであっては、いけない。

 

「これからも毎日、レッスンして」

 

「お仕事して」

 

「買い物したり」

 

「お菓子を食べたり」

 

「それから……」

 

「貴方をからかったり♪」

 

 けれど、二人は心配ないだろう。

 

 加蓮も奏も、仕事だけじゃなく、こうして笑顔を見せて、友達に囲まれている。こうして、からかったり、からかわれたりの日常も変わらずに帰る場所として残っていく。

 

 たとえ、誰がトップに立とうとも。

 

 二人はそこで顔を見合わせ、私の言葉を待つよう。期待されるなら、ちょっとした〆の言葉を言うとしよう。

 

「それじゃあ、二人とも」

 

「うん」

 

「ええ」

 

「総選挙はひとまずおしまいだけど、これからも……」

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

 これからも加蓮と奏の日常は続いていく。アイドルとしてステージで舞い踊って、女子高生として日常をにぎやかに楽しんで、そんな彼女たちの変わらない日常が。




第9回シンデレラガール総選挙、お疲れ様でした!!

今年は毎日更新もなんとかできて、個人としても選挙を楽しむことができました!!

モノクロームリリィはいいぞー!!
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