年齢:二十二歳
職業:探偵
備考:貧乏
犬山 信保
年齢:十六歳
職業:高校生
備考:わんこ系女子
あなたの傍にいるだけで
「あー・・・暇だ、暇すぎてやばい。俺まともに仕事したのっていつだ・・・?」
指を折って数えるが、全ての指を使い果たした時点で数えるのをやめた、こんなことしても客が来るわけでもねえしなにより虚しい。
今日も我が九重探偵事務所は閑古鳥すら鳴くのをためらうレベルで人が来ない。俺の一族というより、俺の祖父の代の九重探偵事務所はそらもう毎日毎日忙しく、暇なときなどないと子どもの頃からよく親父から聞かされ、その親父もたまに警察から協力を要請されるなどどこのドラマの主人公ですかというレベルだが、その息子の俺の代になった途端この様だ。誰に言い訳するわけでもないが、断じて俺が悪いわけじゃない、俺の祖父はとてつもなく頭がよく、事件現場を見ただけで真実を見極めるというアホみたいな知力を持っていて、俺の親父は一般人よりは頭がいいが、それ以上に身体能力が異常で探偵というよりむしろボディガードに近かった。
じゃあその人らの血を引いている俺はというと、至って普通の凡人だ。どこぞの名探偵のような知能も持っていなければ。スーパーマンみたいな身体能力を持っているわけではない。つまり、俺が悪いのではなく、先代の二人が異常なのだ。
まあそんなわけで、俺の事務所には誰も来ない。
「春兄! 遊びにきたよー!」
――たった一人の例外を除いて。
「・・・俺いつも言ってるよな、扉はゆっくり開けろって、まじでぶっ壊れるからやめてくれ」
「はーい!」
元気な返事をしながら目の前のアホは勢いよく扉を閉める。こいつ話聞いてんのか。
「ていうかお前毎日来んじゃねえよ・・・もしかすると依頼の話とかしてるかもしんねえだろ」
「え、お客さん来たの?」
「・・・もうかれこれ二週間ぐらい来てない気がする」
「気がするじゃなくて来てないんでしょ」
「はっきり言うんじゃねえよ悲しくなってくるだろ・・・」
「大丈夫だよ春兄! 私の胸に飛び込んでおいで!」
「絶対やだ」
「ガーン!」
目の前でめそめそとか言いながら泣いた振りをしているこいつは、世界アホオリンピックチャンピョンのアホにして、俺の唯一の”収入源”である犬山 信保である。
こいつはなんか犬山一族とかいうよくはしらんが金持ちの一人娘で、金銭感覚がぶっ壊れてる、どれくらいぶっ壊れてるかというと、前に遊園地に二人で遊びに行った時に「私の家の遊園地の方が楽しいね」とかほざき、俺はてっきりこいつんちが遊園地でも経営してんのかと思ったら敷地内に遊園地がありました。何でも子どもの時に家に遊園地が欲しくて建ててもらったそうだ、しかも最初のうちにちょっと遊んだだけですぐ飽きるという無駄遣いっぷり、まさしく真性のアホにして真性の金持ちだ。ちなみに遊園地の名前は「しほちゃんランド」らしい。
なんで俺みたいなやつがこいつとこうして喋っているのかというと、俺の父親はボディガードの仕事がメインだと話したが、その仕事でこいつの親と知り合い、意気投合し、家族ぐるみで付き合うようになり、何故かこいつが俺に懐いたので、今現在まで関係が続いている、こいつの親も下手な奴に信保の世話を任せるぐらいなら俺に任せた方が安心だと何と給料まで出してもらっている、正直この人たちがいなければ俺は飢え死にしてました。ていうかむしろこんな探偵事務所引き継がなくても普通に生活レベルの給料もらってます。まあたまに変な頼みごとされることもあるけど、追加で金もらえるし、断る理由もないから引き受けている。
「ぐぬぬ・・・春兄はさあ、いつになったら私にデレてくれるのさ!」
「一生デレることはねえから安心しろ」
「安心できないよ! 春兄が私のことを甘やかしてくれないから私は昼は眠れず、夜はぐっすりという生活を送らなければいけないんだよ!?」
「むしろ俺が甘やかしたら昼はぐっすり夜は眠れずの生活を送るのかよ、絶対に甘やかさねえ」
「そ、それは言葉のまやってやつで・・・!」
「誰だよまや、あやだこのアホ」
「うう・・・春兄がいじめる・・・」
ちょっと涙目になってこちらを睨みつけてくる信保、まずいな、やりすぎたか? こいつに見捨てられたら俺はホームレスコースまっしぐらなのでそれだけは避けたいんだがな・・・仕方ない、俺の教育方針は針と鞭なのだが、ちょっとぐらいのアメをあげるのも別にやぶさかではない。
「ふう、落ち着いて聞いてくれ、信保」
「何さ・・・」
「俺はな、別にお前をいじめてるわけではないんだ」
「でも、私のことアホって言ったりたまに『おーい、犬・・・山信保!』とか言って犬と言い間違えたりするじゃん!」
「ふむ・・・」
こいつ以外と覚えてるな、驚いた、こいつにも記憶という概念はあったのか。
「・・・まず、前者だが、お前は両親に甘やかされて過ごしているな?」
「別に普通だもん・・・」
「家に遊園地建てるのは普通って言わねえんだよ。それでな、お前の両親はお前を甘やかす、その代わり俺はお前に厳しく接する、飴と鞭という言葉はお前も知ってるな? つまり、これはいじめてるんじゃなくてお前を愛しての行動なのだよ」
「・・・本当?」
「うんうん本当本当」
「・・・私のこと愛してる?」
「うん愛してる愛してる、大好き大好き」
「えへへ・・・じゃあ、私をお嫁さんにしたい?」
「それはちょっと・・・」
「なんでさ!」
「あーはいはい分かりました、分かりましたよ、結婚したいでーす、お嫁さんにしたいでーす」
「・・・なんか適当だけど、まあ分かったよ、アホっていう件については納得してあげる」
「ありがとな、信保」
こいつがアホで助かった。こいつ適当に愛してるとか大好きとか言っておけばすぐに機嫌が良くなるからな。
「でも、犬って呼ぶのは納得できないよ!」
「それは、あれだよ、ほら・・・」
「何さ」
「・・・ほら、ね? 賢いお前なら分かるだろ?」
「流石にそんなんじゃごまかされないからね!?」
「っち」
「舌打ちしたなー!」
くそ、これについてはぶっちゃけ言い訳不可能に近い、だってこいつ犬にしか見えないんだもん、俺にはこいつの頭と下半身に犬耳としっぽが生えてるようにしか見えないんだもん。
「・・・まあ、とりあえずこれについては置いておいて」
「置かない!」
「わかった、わかったから、これについては後でじっくり話し合おうではないか信保ちゃん、ほら、時計を見たまえ、もうお昼だよ? 今日は信保ちゃんの希望を何でも聞いちゃうよー!」
「本当!?」
「ほんとほんと」
「じゃあねじゃあね、オムライスがいい! 勿論私の分にはケチャップでハート書いてね!」
「はいはい、じゃあ俺は作ってくるから、適当に待っててくれ」
「はーい!」
ふう・・・何とかなった。どうせ時間が経てば忘れるだろうし、これで大丈夫だろ。とりあえず、オムライスだけじゃあれだし適当にデザートでも作ってやるか。
「・・・行ったかな? むふふ・・・」
春兄が見えなくなったのを確認してから、私はさっきまで春兄が座ってた椅子に座る、まだちょっと春兄の体温が残ってて温かい。
「うぇへへー・・・」
そして、そのまま春兄がいつも椅子にかけているコートを取り、そのままコートに頭を擦り付ける。
「はー・・・春兄の匂い、やっぱりいいなあ・・・」
春兄は一年中このコートを着ている。春兄が言うには春兄は冷え性らしい、だけど私は知ってる。このコートは私がちっちゃい頃春兄の誕生日の時にプレゼントしたものだ、その頃の私にしては珍しく、ただもらったお小遣いではなく、お手伝いさんの仕事を手伝って、そのご褒美としてもらったお小遣いをちょっとずつ貯めて買ったもので、表情には出さなかったが、春兄はすごく嬉しそうだった、それ以来私は毎年そうしてためたお小遣いで春兄にプレゼントを買ってあげている。ちょっと大変だけど、あの表情を見れるぐらいならむしろ安いぐらいだ。
「ふぅ・・・」
しばらく堪能した後、私は自分のポケットからスマホを取り出して、イヤホンを私の耳とスマホに差し昨日作ったばかりの音声データを再生する。
『信保、お前を愛してる。結婚しよう』
「むふふふ・・・」
春兄は多分気づいてないんだろうけど、愛してるだの大好きだの、結婚しようとか二日に一回ぐらいのペースで言ってる。本音ではないことは私も理解しているが、やはり嬉しい。それに加え春兄の口説き文句は意外と豊富で、こうしたものを作るのに大変助かっているからだ。
「・・・」
多分、私の両親にこの音声データを聞かせれば、私の両親は政略結婚とかは全くと行っていいレベルで興味がなく、むしろ春兄と私を結婚させようと企んでいるからすぐにでも春兄との結婚式の計画を練り、進めるだろう。恐らく、春兄にバレないまま。春兄にはきっともう逃げられないレベルまで追い詰められてからやっとその事実を伝えられるだろう、春兄は賢いから、最初は困惑するだろうけどすぐに状況を理解して、結婚を受け入れてくれるだろう。でもそれは私が望むものではない、春兄にはちゃんと私を好きになって欲しい。
それで、もし私ではなく、ほかの人を好きになって、その人と結婚しても後悔はしない、私は、春兄に幸せになって欲しいのだ。
だけど、もし、その未来が来てしまうなら、今までみたいな関係ではなくていい、たまにしゃべってくれるだけでいい、一年に一回ちらと春兄の姿を見るだけでもいい、だから、だから。
「・・・春兄の・・・」
あなたの傍にいたという事実を忘れないでください。
あなたの傍に私がいたという事実をあなたが忘れないだけで私は幸せです。
「・・・うー、ダメダメ、こんなくらいことばっか考えるのは私らしくない! そう! 私の魅力で春兄をメロメロにするのだ!」
「誰の魅力で誰をメロメロにするって?」
「うひゃー!?」
いつの間にか目の前には両手にオムライスが乗った皿を持った春兄が立っていた。
「お前何ぼそぼそ言ってたんだ?キッチンまで聞こえてきてたけど」
「え、こ、声に出てたの!?」
「ああ、内容までは流石に聞こえなかったが、ていうかお前俺のコート持ってなにやってんの?」
「あ、あはは! 何でもないよ! そんなことより、オムライスオムライス!」
「はいはい、ちなみにデザートでパンケーキあるぞー」
「本当!?」
私は急いでスマホの電源を切り、ポケットに突っ込んで立ち上がって春兄に駆け寄り。
「パンケーキ! パンケー・・・おうわぁ!?」
勢いよく躓く、あ、これ痛いやつだ。仕方がないのでくるべき衝撃に備えて目をつむって待つが、いつまでたっても衝撃は訪れない。
「・・・あれ?」
私が目を開けると、目の前には、片足をこちらに差し出し、片足で立ってる春兄の姿があった。
「お、ま、え、はー! 何度そこで転んだら学習すんだよ!? 怪我でもしたらどうする気だ!」
「ご、ごめん・・・」
どうやら、私が躓いた瞬間にこちらに足を差し出し、私が転ばないよう支えていたようだ、両手にオムライスの乗った皿を持って、片足は私の重みでかなり辛いと思うのだが、全然揺れる素振りすら見せないあたり相変わらず春兄の身体能力は高いみたいだ。
「謝る前にとりあえず俺の足を放せ・・・流石に辛いから・・・」
「あ、はーい」
「たく・・・もうちょっと落ち着けよ、お前もう高校生だろ?」
「えへへ」
「なに笑ってんだよ・・・ほら、適当にソファーに座れ、飯にするぞー」
「はーい! じゃあ私春兄の膝の上ね!」
「よーし分かった、犬用食器出してやるから床に座ってろ」
「なんでさ!? ていうかなんで犬用食器なんて持ってるの!」
「お前用に決まってんだろ?」
「嬉しくないよ!」
「全く・・・ほら、隣なら空いてるから座れ」
「うん!」
なんやかんや言って春兄はだいぶ私に甘い。多分春兄もこのことについては自覚はないと思う。
「テレビでもつけるかー・・・」
「何かやってるかなあ」
「適当に見て、いいもんなかったら消すか」
「はーい」
テレビをつける、そこにはちょうど、この前誘拐された女の子に関してのニュースがやっていた。
「あー・・・この子、今どうしてるんだろうね、無事ならいいんだけど・・・」
「誘拐されてる時点で無事ではねえよ、飯のときに見るもんでもねえし、変えるぞ」
春兄がチャンネルを変えようとすると、テレビに手紙が表示される、何でも犯人が自分の居場所についての暗号文を警察に送りつけてきたらしい。
「・・・ぜんっぜんわかんない、適当に考えてるんじゃないかなあこれ・・・ねえ春兄・・・春兄?」
「・・・信保、お前先飯食ってろ、俺行くところがあるから」
そう言って春兄は立ち上がって、コートを着て玄関に向かう。
「え、ちょ、どこ行くの!?」
「なにって、あの暗号文に示されてる場所」
「え、わかったの!?」
「ああ、簡単だろ、あんなん」
「いや、普通解けないと思うんだけど・・・」
「それはお前がアホなだけだ」
「えー・・・」
流石にこれについては私は悪くないと思う、これで私がアホだったら世界中の人全員アホだよ。まあ春兄だから仕方ないところあるけど・・・。
「でも、危ないよ?」
「大丈夫大丈夫、護身術は親父に習ったし、なんなら真剣白刃取りとか出来るし、爆発物の取り扱いについてもばっちり」
「はぁ・・・」
「じゃあ、ちょいと行ってくるわ!」
そういい、春兄は扉を勢いよく開け、暗号文で示された場所とやらに向かうまあ多分夕飯前には帰ってくるでしょ。それにしても・・・
「やっぱり、春兄のおじいさんとかお父さんと比べても、春兄が一番異常だよね・・・」
まあ、春兄の超人ぶりは今に始まったことじゃないけどさ、私はまたソファに座り、オムライスを食べ始める。
「・・・あ、こっちハートマーク書いてないから春兄のじゃん・・・まあいっか、両方食べちゃお」
相変わらず春兄は料理がうまいなあ・・・あの人何かできないこととかあるのかな・・・ないだろうなあ・・・
九重 春人
年齢:二十二歳
職業:探偵
備考:(器用)貧乏 祖父と父のいいとこ取り
何か書いてたら5000文字超えてしまった・・・しかもくっそ見づらい、まあ自分の妄想を書きなぐっただけだから仕方ないね(開き直り)
ちなみに九重探偵事務所に客が来ない理由ですが、信保の両親と九重の父が依頼を仕分け、父ができそうなら父が、春人にしかできなさそうなら春人に頼みごとという形で依頼を頼んでます。理由は春人がまだ若いためです、多分三十くらいになったら自分で依頼を仕分けするようになります。
最初は春人は三十二とかの予定でしたが、この設定を思いついたため急遽二十二歳になってもらいました、勢いって怖い。
とりあえず言いたいことはこういうアホの子だけど考えてることはちゃんと考えてる子は大好物です。