どちらにせよあと少しのお付き合い、是非ともよろしくお願いします!
「菜々花~、お腹空いた」
「はいはい、あと少しで出来るから」
「菜々花~、テレビのリモコン何処?」
「テーブルの上にあるわよ」
「菜々花~、課題見せて」
「嫌よ。てか、まだ私だって終わってないんだから、アンタはその後」
「菜々花~、トイレど「うっさいわね!今ご飯作ってんの!静かに待てないなら、アンタの分無しにしてやってもいいんだけど!!?」そ、そんなに怒んなくても・・・」
とある家、菜々花の家の中から怒号が外へと響く。幸いお隣さんは家を留守にしているため苦情が来ることは無いが、怒られた真琴は、しょんぼりとした様子でテーブルに突っ伏した。
トントンと子気味良い包丁の音を聞きながら、向こうは大丈夫だろうかと思い、真琴はスマホを取り出した。画面にはL〇INEの通知が表示されており、アプリを開くと2人から連絡が来ていることが分かった。
一人は巴で、もう一人はあこである。巴はRoseliaのメンバーは仲良くやっているといった趣旨の内容を送っており、あこの方はメンバーとの写真付きで現状報告だった。
写真は複数枚送られており、一枚目は食事風景、二枚目はリビングでくつろぐ様子、三枚目はパジャマ姿で寝床を用意している写真で、カメラ目線でリサと紗夜が恥ずかしさからかテンパっているのが分かる。
「皆仲良くやっているようで何より」
送られてきた写真を保存して返事を返すと、スマホをしまって台所の方へと視線を動かす。真剣な表情で料理を作る菜々花。それを見つめる真琴。その視線に気づいた菜々花は、彼に怪訝な顔を向けた。
「あんまりジロジロ見ないで」
「あぁ、ごめんごめん。何作ってるのか気になっちゃって」
真琴の見たところ野菜や牛乳を用意していたあたり、シチューでも作っているのだろうかと思っていた。
「グラタンよ、グラタン。アンタ好きでしょ?」
「・・・・・・僕がグラタン好きなの、よく知ってるね」
真琴が驚いた顔をすると、菜々花はムッとした表情となった。
「アンタ覚えてないの?」
「え?何が?」
「はぁ、どうせそんなこったろうと思った・・・」
呆れたような顔をする菜々花に、意味が分からないと首を傾ける真琴。だが彼女の機嫌をさらに悪くしてしまったと思った真琴は、ご飯が出来るまで大人しく大学の課題を進めるのだった。
「はいお待たせ。熱いから気を付けてね」
「おぉ・・・」
目の前に置かれた出来立てのグラタンに、自然と頬が緩む。香ばしいチーズの香りと、グツグツという音がさらに食欲をそそる。両手を合わして二人で「いただきます」と言い、スプーンで一口すくい頬張る。
「・・・っ!!」
「いきなり頬張るからでしょうが・・・」
今日何度目かも分からない溜息をついた菜々花は、冷蔵庫から氷を取り出して手のひらに数個乗せると、そのまま真琴へと近づいて口の中に一つ放り込んだ。
「ふぉんほはふへはい(今度は冷たい)!」
「しばらくそれ舐めてなさい。ったく、子供じゃないんだから。はむっ・・・あつっ!」
「ななはもほほもひゃん(菜々花も子供じゃん)」
「う、うるさい・・・もう一個突っ込むわよ!」
多少のやり取りを交えつつ、グラタンを食べ進める二人。終始笑顔で食べ進める真琴を、作った本人である菜々花は多少照れながら見ていたが、真琴は気づいていなかった。
「ごちそうさまー。美味しかったぁ!」
「久々にグラタン作ったけど、案外何とかなるものね」
「菜々花グラタン作ったことあるんだ?」
「ほんとに何も覚えてないの?」
またも菜々花に問われるが、真琴はほんとに覚えていないらしかった。
「はぁ・・・もういいわよ。先にお風呂入ってるから、覗かないでよ?」
菜々花は覇気のない様子で真琴にそう告げると、そのまま脱衣所の方に向かってしまった。
「う~ん、菜々花はどうしたんだろ?」
心当たりのない真琴はどうしたものかと必死に考えるも、やはり記憶に無いことはどうしようもなかった。
「そうだ、巴なら何か知ってるかもしれない」
ふと頼れる妹の存在を思い出すと、すぐさまスマホを取り出してL〇INEを開く。既に来ていた内容にすぐさま返事をし、巴に菜々花とグラタンについて知ってることは無いかと聞く。送ってから数秒後に既読が付き、返事を待っていると何故か巴から電話がかかってきた。
「もしもし巴、どうしたの?」
「どうしたの?じゃないぞ兄貴!もしかして忘れたのか?!」
どうやら、巴は何か知っているらしい。
「う~ん、不甲斐ないけど全く・・・」
「兄貴が忘れてるってことは、菜々花さん気落ちしてるだろうなぁ・・・」
「巴ってエスパー?」
「兄貴はちょっと黙ってろ。いいか?兄貴と菜々花さんがまだ高1のとき、一度家に来て菜々花さんが夕飯を作ってくれた時があったんだよ。その日あこは学校行事かなんかでいなかったけど、そのとき菜々花さんが作ってくれたのが、グラタンなんだよ」
真琴は巴から聞かされる昔話に、何かが思い出せそうな、引っ掛かったような感覚を感じた。
「実は菜々花さん、その時から兄貴の好物がグラタンだって気づいてたみたいなんだよ。アタシとあこは菜々花さんに言ってないし、父さんと母さんも言ってないってさ」
「・・・もしかして菜々花もエスパー?」
「んで、まぁ、その時のグラタンは・・・・・・菜々花さんには悪いけど、お世辞にも美味しいとは言えなかったんだ。だけど、兄さんは美味しい美味しいって言って、ペロリと食べたんだよ」
「僕、その後体調崩してたりしなかった?」
大好物を食べたのにも関わらずにその記憶が無い事に違和感を感じていたが、真琴自体が物覚えの良い方ではないため、妙に納得していた。
「ピンピンしてたさ。しかも食べた後すぐ、菜々花さんのグラタンがまた食べたいって言ってさ、正気を疑ったけど、菜々花さんは凄く嬉しそうだったぞ?」
「あー、何か思い出してきた気がする・・・」
「ま、後は菜々花さんに直接聞いてくれ。アタシ今日はつぐの家に泊るから、もう行くな」
「え、待って、お兄ちゃんそれ今初めて聞い・・・・・・切れちゃった」
逃げるように電話を切られた真琴は、切られた理由が菜々花にアフグロメンバーでのお泊り会がバレないようにだと自分に言い聞かせた。
「とりあえず、菜々花に話を聞いてみよう」
思い立ったが吉日。いつものように菜々花と話をしようと脱衣所のドアを開ける。すると・・・・・・
「え?」
「あっ・・・」
これまたタイミングぴったり。丁度菜々花が風呂から上がり、脱衣所に出てきていたのだ。しかもタオルは脱衣所にあるため、体を隠すものは一切存在しない。つまりは裸なのだ。
「えーっと・・・は、早かったね?」
「女子らしく長風呂じゃなくて悪かったわね・・・!」
怒りなのか羞恥からなのか、顔を真っ赤に染め上げた菜々花は、近くにあったタオルで前を隠し、大きく息を吸い込んだ。
「さっさと戻りなさい!!!」
「はい!」
「ま、アンタが理由も無しに命を捨てるような愚か者だとは思ってないわよ。なんか用があったんでしょ?」
「うん・・・・・・ところで、なんでこの状態?」
風呂から出た菜々花はリビングで体育座りをしていた真琴を自室へ強制連行し、なぜか四つん這いにさせてその上に座っていた。
「一回やってみたかったのよ。何か文句でもあるの?」
「重い・・・痛い!菜々花駄目、首は駄目!!」
「はぁ、アンタは余計な一言を言わないと気が済まないの?」
「だって、文句あるのかって菜々花が・・・ごめんなさい何でもないです」
反抗しようとした真琴だが、再び首に手が置かれたことにより、その意思をすぐさま改めた。
「で、用は何だったの?」
「実はグラタンの件で・・・」
「・・・聞いてあげる」
「思い出したというか、教えてもらったというか・・・菜々花が前にグラタン作ってくれて、それをたくさん食べたのは思い出した」
真琴は記憶を辿るように話を始めた。
「味はあんまり覚えてないんだけど、とにかく菜々花の作ったグラタンを食べるのが嬉しかったのも覚えてる」
「・・・・・・」
「食べてすぐにソファで寝ちゃって・・・よく分かんなかったけど、菜々花が僕の頭を撫でてた気がする」
「っ?そ、そんなところまで思い出さなくていいから!!」
恥ずかしい過去でも掘り返されたのか、慌てた菜々花は再び顔を赤くし、今度は真琴の頭をポカポカと殴り始めた。
「ちょ、バランス崩れる!菜々花ストップ!」
「もうこれ以上思い出すな!忘れろぉ~!!!」
宇田川家ではRoseliaが、羽沢家ではAftergrowがそれぞれが楽しく騒ぐ中、こちらでも楽しく?騒ぎが始まった。
~3年前~
「お腹一杯・・・・・・」
「あんなに食べるからだろ、兄さん」
「だって、美味しかったんだもん。巴もおかわりすればよかったのに」
「ア、アタシはほら、食べると体に出ちゃうから・・・」
「豚骨醤油ラーメンが好きな人の言葉だとは思えないね」
「うっ・・・と、とにかくアタシは部屋に戻るからな!そんなとこで寝て風邪ひいても知らないぞ!!」
「巴・・・行っちゃったか。分かってるけど・・・とにかく眠い・・・・・・すぅ・・・すぅ」
「ふぅ、洗い物終わったー・・・って真琴?こんなところで寝てたら風邪ひくでしょ。起ーきーなーさい!」
「うぅ・・すぅ」
「はぁ、食べ過ぎなのよ。巴ちゃんの反応で察しちゃったけど、あんまり美味しくなかったのに・・・一番早く食べておかわりもして、しかもまた食べたいって・・・はぁ、昔っからアンタは人をその気にさせて。何で私を振ったのよ・・・・・・」
気持ちよく眠る真琴の頭を撫でながら、菜々花は悲しいような、それでも何か期待するような複雑な表情をしていた。
最近菜々花回が多いような気がしてます。次回はちゃんと姉妹を絡ませていきますので!!
ではまた!
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