「まだ痛い......」
その日の夜、夕飯を食べ終えた真琴は、自室で大学の課題を進めていた。
ただ手を動かしてはいるが、いかんせん菜々香に殴られた頬が痛くて中々集中出来ていない様子である。
「これは菜々香に責任をとってもらうしか......」
そう言いながらスマホを取り出して菜々香の番号を探していると、不意に手元からスマホが消えた。
犯人が誰かを察した真琴は、やれやれといった表情で後ろに体を向けた。
「巴、もうノックをしろとは言わないから、せめて一言欲しい」
「今更だ。それに兄貴だって、よくアタシの部屋に勝手に入ってくるだろ?」
「それは.........着替え中の巴にバッタリっていうのも狙って「よしクソ兄貴、覚悟しろ」......冗談だって」
拳を構えた巴を宥めつつ、スマホを返してもらう。
そして妹が部屋にいるのにも関わらずに菜々香に電話を掛けた。聞かれて困るような内容はL〇NEを使うので、あまり気にしたことは無い。
「もしもし菜々香?明日て......い出のレポートを見せてくれると嬉しいなって言おうとしただけじゃないか.........」
「また切られたのか?」
真琴が机に突っ伏して項垂れるその横で、いつの間にかベッドに腰掛けていた巴がニヤリとした顔で聞いてくる。
「どうしよう、講義前までに出せって言われてるのに......」
「しょっぱなの授業なのか。そりゃきつそうだ」
「手伝ってくれたりとかは......」
「高校生に大学の宿題を手伝わせるなよ。そもそも、早目に終わらせなかった兄貴が悪い」
そう言いながら、真琴のベッドの上で横になった巴は、真琴の方を向きながらさらにニヤニヤと笑みを浮かべる。
まるで、兄が困っている姿を楽しむように。
真琴が必死に打開策を練っていると、勢いよく部屋の扉が開かれた。
開いたドアから顔を覗かせるのは2人目の妹である'あこ'。巴の1つ下で、俺の4つ下、紫色の長めの髪の毛が特徴である。
「お兄ちゃん、お願いがあるの!」
「あこ、お願いだからノックを......いや何でもない。それで、どうしたの?」
「数学の宿題を手伝って欲しいなって!」
そう言いながら、あこは真琴にプリントの束を見せてきた。
ざっと見た感じ20枚ぐらいあるであろうそれと、机の上で開かれたデスクトップPCに映るレポート作成画面を見比べた真琴は、すぐさまPCをスリープモードにした。
「よし、あこの宿題を片付けよう」
「正気か兄貴!?自分のはどうするんだよ!」
「......明日菜々香に土下座する」
「プライドは無いのか!?あこのはアタシが手伝うから、兄貴は自分のやれって!」
己の課題より妹を優先しようとする兄を正気に戻すべく、彼の両肩を掴み遠慮なく揺らしながら説得をする巴。
真琴はそんな巴の手に優しく自分の手を重ねると、穏やかな表情でこう言った。
「僕は妹が笑顔でいてくれるなら、何を犠牲にしたっていい。そう思ってる。それに、可愛い妹のために身を削るのは兄の役目さ」
「この兄貴、もう駄目だ........」
駄目兄の説得に失敗した巴は、その場に膝から崩れ落ちてしまった。
真琴があこの手伝いに行った数分後、自室に戻っていた巴は、ベットに寝転びながらある人物と電話をしていた。
「度々すみません、兄貴のせいで負担を掛けてしまって.........はい、本当にすみません、宜しくお願いします。では、失礼します」
電話を終えた巴は、今から迷惑を掛けてしまう先輩と、その先輩の行動源ともなっている幼馴染みに申し訳ない気持ちでいっぱいとなった。
次の日、ある大学で1人の女子学生に奴隷の様に扱われる1人の男子学生が目撃され、その数時間後には、ある喫茶店で何者かに揉みくちゃにされてグッタリとした様子の女子高生が目撃された。
お・ま・け
~某日、とある大学~
「真琴、私お腹すいたんだけど」
「お言葉ですが菜々香様、貴方様は既に朝食をお召し上がりになっておられます。これ以上の余分なカロリー摂取は無駄なお肉を.........あぁー!菜々香様、お待ち下さい!その手に持ったレポートを破り捨てようとしないでください!」
「ねぇ真琴。これ、私が徹夜で作ったのよ?アンタの癖を考えながら手直しするの大変だったんだからね?アンタがそんなひねくれた事言うんだったら、ホントに破り捨ててもいいんだけど?」
「申し訳ございません菜々香様!このワタクシ、既に身も......こ、心も......うっ......貴方様に...ぐぅ......!」
「そこは無理しなくていいわよ!てか、身も心もって気持ち悪いんだけど......。とにかく、これから一週間は私の言う事を素直に聞く。いいわね?」
「くっ!なんて可愛げのない女......あぁー!菜々香様っ!申し訳ございませんでしたぁ!!!」
お・ま・け・2
~某日、とある喫茶店~
「ねぇ蘭ちゃん聞いてよ~、真琴の奴がホントにどうしようもなくてさぁ......」
「.........。」
「巴ちゃんやあこちゃんに甘すぎるというか、自分の欲望に正直すぎるというか」
「.........。」
「ね~え~、蘭ちゃんも何か喋ってよ~。私とお話しよー?あ、もしかして私の膝の上は緊張するとか?もうっ!可愛いなぁー!!」
「.........(誰の差し金かは分からないけど、真琴の奴、今度会ったらとにかくぶっ殺す!)。」
次回はあこちゃんメインで行こうかなと思っておりまふ。
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