転生というものを知っているだろうか? 私は転生した。死因はFate/Prototype 蒼銀のフラグメンツにでてくる沙条愛歌という少女のSSを読んでいる途中で飛び出してきたトラックが突っ込んできたらしい。
目覚めた俺を出迎えたのは142cmくらいの麗しい少女で俺に抱き着いて頭を擦りつけてくる。
砂金の如く薄い綺麗な金髪に青い宝石のような瞳をしている。最初は妹かと思ったが、よくよく彼女の容姿をみれば沙条愛歌そっくりだった。
俺は身体が動かずにベッドに寝ている状態のようだ。そんな俺に彼女は手鏡を持ってきて俺の姿をみせてくれた。鏡に映ったのはアーサー・ペンドラゴン(プロトタイプ)の容姿だった。
よくよく沙条愛歌を見ればその瞳はまるでハートが移り込んでいるようで、俺に抱き着いて身体を擦りつけてくる。
「なんだこれは……説明してくれ」
「あなたはアーサーになったの」
「ちょっと待ってくれ」
「私、聖杯戦争で殺されかけた時に思ったの。アーサーが私の白馬の王子様にならないのなら、自分で作ってしまえばいいって」
「ちょっ!?」
「だから、別の世界に転換させて逃げて、新しい身体を作り直して、アーサーも私と同じ死んだ人から私を求めてくれる人を材料に作ったのよ」
「まじですか……」
「いやなの?」
「幾つか聞きたいのだが、いいか?」
「なに?」
「つまり、沙条愛歌は俺の嫁になると?」
「そうよ。私の身も心も好きにしていいの。それと愛歌でいいわ」
「よしっ!」
思わずなんとか動く両手でこちらから愛歌を抱きしめて彼女の匂いを嗅いでいく。半ゾンビだったら臭いかもしれないが、そんなことはなくてとてもいい匂いがした。
「ならいいわ」
「要望を伝えあうのは大事だから、そちらからしてほしいことや頼みは何かあるか?」
話し合いの結果、俺はニートになることが確定した。というのも、この世界は環境汚染が進み地表は荒れ空には常に霧がかかっているような中、国家を巨大複合企業が掌握し法律さえ思うがままにしたそうだ。
そして、巨大複合企業は完全環境都市アーコロジーを建て、荒れた地球を捨ててそこに逃げていった。
アーコロジーは企業の関係者らが住み、時には利益を求めアーコロジー間での戦争も勃発していた。
政府が機能しなくなっているため警察などの機能もほとんどが形骸化している。そのため、治安は最悪であり集団窃盗や電脳ハッカーなどが相次いでいる。
それに地表が荒れているため当然第一次産業は機能しておらず、自給自足の生活などは夢のまた夢とのこと。企業から何か言われようとも、自分がどれだけ疲れようとも仕事を辞める事だけはできず、やめたら最後、死ぬか犯罪者になるしかないのである。
どこかで聞いた話である。そんな場所に俺を出すことを拒否した愛歌は甲斐甲斐しく世話をしてくれる。まず食事はほぼ口移しだし、下の方も喜んでしてくれる。それでも頑張ってリハビリをしないといけない。
小さい幼女に介護されているという現状、人を雇えばどうだと言ってみたが、お金がないし絶対に嫌だという。今はどうやって稼いでいるかというと、水を魔術で生み出して売っているそうだ。汚染された環境では綺麗な水はそれだけで価値があるらしい。
「なあ、一つ思ったんだが……」
「なにかしら?」
「愛歌の魔術で空気の汚染を消すことはできるか?」
「できるわよ。汚染されている物質を転換すればいいだけだし」
「空気清浄機みたいなのを作れないか?」
「ちょっと待って」
愛歌が虚空を見詰めている。おそらく根源にアクセスしているのだろう。少しして持ってきたボードに設計図を書いていく。それから床に魔法陣を血で書いて置いてあったソファーを魔術で浮かせてそこにおく。
「何をするんだ?」
「錬金術よ。物質の転換ともいえるから私の魔術特性とあっているから」
愛歌が両手を叩くとソファーが光となって消えて、代わりに四角い機械がでてきた。それを一生懸命に運んでいって、窓際に設置して動かすと、空気が吸われて爽やか匂いをもつ空気になった。
「みてみてアーサーっ!」
「おーすごいな」
嬉しそうにしている愛歌を褒めて撫でてやると本当に嬉しそうにしてくれる。
「これを売れば金になりそうだな」
「そうね。頑張ってみるわ」
それから数ヶ月。俺が動けるようになる頃には生活が一変した。まず家がボロボロの一軒家が買った周りの土地ごと転換によって綺麗な高級住宅に作り替えられた。
作る時はブルーシートで覆ってやったのでちょくちょく作っているようにみえる。
さて、動けるようになってさらに数ヵ月が経つが、愛歌は相変わらず俺を外に出してくれないので、家の掃除や洗濯をしたりする。料理は愛歌がやるといって譲ってくれないからだ。
つまり、俺がやることは少しの家事と帰ってきた愛歌を労って愛し合うことだ。
まあ、アーサー・ペンドラゴンのスペックは正直言って化け物だ。というのも、この身体はアーサープロトタイプの容姿だが、中身は根源少女沙条愛歌の理想が詰め込まれたハイスペックボディーなのだ。本気を出せば素手で鉄が切れるほどだ。
一応、作られていた魔剣で剣術を練習したりもしている。なぜ魔剣かというと愛歌が聖剣なんて作れるはずがないからだ。そして何故剣がいるかといえば……
「死ねっ!」
「お前がな」
襲われるからだ。貧民街にできた大きな高級住宅に幼い少女と青年が二人だけで住んでいる。そのため相手にとっては恰好の獲物なのだろう。
庭に防衛装置を色々と組み込んでいるのですぐに排除はできるが、その前に俺の剣の訓練相手になってもらっている。他にも素材にされていたりするがな。
「さて、いい汗を掻いた」
魂を吸収した魔剣を鞘に仕舞ってから、リクライニングチェアに座って庭で優雅なひと時を過ごす。本を読みながら、周りの草木を鑑賞する。庭には空気清浄機に加えて綺麗な水の流れる水路や家庭菜園がある。
外に眼をやれば荒廃した廃墟と虚ろな瞳であるいている人達がみえる。
しかし、暇である。外には出られないし、本はもう読んでこの世界のことを知った。ここはオーバーロードの世界だ。つまりユグドラシルがある。ぜひプレイしてみたい。愛歌に頼んではある。
「ただいま」
「おかえり。早いね」
「アーサーに会いたかったから、お昼に帰ってきたの」
「そうか」
考えていると帰ってきた愛歌が抱き着いてキスを強請ってくるのでキスをする。そのまま深い口付けを交わしてから彼女を抱いて中に入る。
「空気清浄機の売り上げはどうだい?」
「順調よ。それに水質浄化装置も売り出したし、土地を購入したから農園を本格的にやるつもりよ」
「そうか。稼いでくれるのはいいが、無理はしないでくれ。むしろ俺も稼ぎに……」
「駄目よ。アーサーを外に出すなんて危険なことはできないわ。今日だってお昼までで13回も襲撃されたんだから……」
「わかったよ」
愛歌の売る道具は画期的で地球環境を再生させることすら夢ではない。つまり、莫大な利益を生み出すことが確定しているので富裕層から狙われている。しかし、そんな相手に根源少女である彼女が容赦するだろうか?
否。電子爆弾や爆弾などを逆に相手に送りつけることぐらい平気でやる。実際、一つのアーコロジーを毒ガスで蔓延させて狙ってきた連中もろとも壊している。どうやら、そのアーコロジーを格安で購入してきたらしい。
「それとアーサーに頼まれていたVR装置を買ってきたわ」
「ありがとう」
「それと子供ができたわ」
「本当か!」
「ええ、私とアーサーの子よ」
身体が動くようになってから毎日のようにしていれば子供ができるのは当然だ。これはかなり嬉しい。可愛い嫁に可愛い娘ができたのだから。
その日はユグドラシルのインストールだけしようとしたが、ユグドラシルはまだできていなかった。なので後は愛歌と過ごす。しばらくできなくなるとのことで、彼女から徹底的に求められたのだ。
次の日、食事を取って会社に出かけていく愛歌とキスをして見送ってから、俺は適当なゲームをプレイする。本当にニートである。
数年後、生まれた子供は順調に育っている。名前はアビゲイルにして愛称はアビーだ。
「お父様、お父様、買ってもらったのだわ!」
「おお、よかったね」
アビーは最新式のVRゲーム機を買ってもらったようだ。今日がユグドラシルの開始日なので親子三人でやるのだ。
「アーサー、やりましょう」
「わかった。最初は人間種にするか、異形種か亜人種か……」
「人がいいわ」
「アビーもそれがいいわ」
「ならそれでいくか」
俺達はキャラを作っていく。俺は戦士職の前衛で、愛歌が魔法職、アビーは召喚職の予定だ。
ログインした人の中で俺は妻である愛歌と娘であるアビーを探す。アビーは名前をアビーにしているし、俺はアーサー・ペンドラゴンにしてある。アーサーは取られたから仕方ない。
そんなことを考えていると、抱き着いてくる人がいた。振り向くと愛歌だったが……
「あっ、警告がきたわね。家族でも駄目なんて無粋ね」
「システム的にもできないようになっているからな。ちょっと聞いてみるか。アビーのためにも」
「ええ」
GMコールしてみると、リアルでの家族かどうかで書類を送ってくれたらいいらしいとのことだ。ただ、それでも手を繋いだり抱き着いたりはできるが、キスやそれ以上のことは無理らしい。子供に関してはリアルでお子様用フィルターを使って登録すれば大丈夫らしい。そちらはしておいたので大丈夫だ。
「お母様、お父様!」
ぽふっと抱き着いてきたアビーには警告がでていないようで、問題ないようだ。そんな訳でアビーを挟んで三人で手を繋げば問題ない。しかし、無茶苦茶視線が集まる。殆どが嫉妬の視線だ。
「最初はノービスね」
「ああ。それぞれの訓練所で転職するようだし、いってみるか」
「三人で別々にいくのが効率的だけれど……」
「いやよ。せっかくお父様とお母様と一緒にお出掛けなんだもの」
「そうね。じゃあ、三人でゆっくりと回りましょう」
「そうだな、いこうか」
三人でゆっくりと回る。愛歌も流石にゲームの中でなら許可をくれる。死んだとしてもレベルダウンですむからだ。そんなわけで戦士と召喚士、魔術師となってゲームを始めていく。