仮面ライダーリバース 【完結済】   作:尉ヶ峰タスク

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第十話 その名はリバースライダー

 冷たい川風の吹く宮鼓川河川敷。シーズンしだいでは堤防の桜並木の花見客や、釣り人の集まるこの場所で、一組の男女が向き合っている。だが恋人同士の人目を憚った逢瀬というような色気のあるものではない。

「……と、いうことで昨夜は逃げられてしまいました」

 男の方、健の振るった左拳が、女の方、茜の掌にぶつかり空気を割る。ぶつかった反動で両者の手が離れる。直後、両者の放つ拳の甲がぶつかり合う。

「となると、また仕掛けてくるだろうね。目撃者の始末が目的だろうから」

「薫を通して警告してみましょうか」

 会話の最中も、両者の拳は止まらず、目にもとまらぬ速さでぶつかり合う。不意に一際大きな衝突音が響くや否や、二人は揃って拳を下げ、右蹴りをぶつける。

「そうだね。あと、私も護衛に付こうか?」

「いいんですか?」

 鏡映しに右脚を下げ、バックステップで離れる二人。続けて、ステップの勢いを吸って曲がった膝を解き放ち、茜が踏み込む。右の拳を上体を反らしてかわす健。そこを目がけ、左の掌底が続く。しかし健は体を右にずらしながら回転。その勢いに乗せた裏拳を返す。だが茜も身を屈めて、勢いに乗った拳を潜りぬけると、左肘を突き出す。その先端が健の鳩尾に突き刺さる直前に、両者の動きがピタリと止まる。

「ああ、時間は空いているからね」

 茜が肘を突き出した姿勢のまま頷くと、二人は揃って息を吐きだして肩の力を抜く。

「ハァ……フゥゥ……」

 目を閉じて呼吸を整える健の肩に、何かが触れる。それに目を開ければ、そこには唇に小さく笑みを浮かべた茜の顔があった。

「合わせるのが上手くなったね。やはり君は筋がいい」

 肩に置いた手を弾ませながらそう言う茜に、健は額を掻きながらの照れ笑いで答える。

「自分では、実感がないんですけど……護身術を教えてくれた父からは、やる気があるのかと叱られるばかりでしたから……」

 そんな健に、茜は一瞬意外そうに眼を見開く。だが、すぐに納得したように頷く。

「なるほど……守る者の為に何かと戦う。その覚悟の差、というわけかな」

 茜がそう言い終わるのに続いて、タイミングを見計らったかのように、健のポケットからメロディが鳴る。

「あ、すみません」

 茜に一言断りを入れ、健はトレーニングウェアのズボンから、黒地に緑のラインが入った携帯電話を取り出し、開く。

『薫から?』

 学校にいるはずの薫からの着信に、健は軽く首を傾げながら通話ボタンを押し、電話を顔に当てる。

「もしもし、薫?」

《お兄ちゃん。今、大丈夫?》

 電話越しの薫の問いに健は、ちらりと茜に視線を向ける。茜が頷いたのを確認して、健は口を開く。

「ああ、大丈夫だよ。なにかあったの?」

 健の促す声に、薫が電話越しに用件を口に出す。

《今日、新田さんが学校に来てないの》

「なんだって……!?」

 薫から告げられた言葉に、健は目元を引き締める。

《学校にも連絡が来てないらしいから、私からもかけてみたんだけど……繋がらなくて……》

「大丈夫だ、薫」

 薫のか細い声に、健はきっぱりと言い切る。そして険しい表情を僅かに緩めて、言葉を続ける。

「俺が文香ちゃんを捜しに行く」

 すると、確かに力を取り戻した薫の声が、電話越しに健の耳に届く。

《お兄ちゃん……うん、お願い……!》

「ああ、必ず無事に見つけ出す。任せてくれ」

 電話を頬に当てたまま頷く健。そして電源を切って折り畳むと、こちらを黙って見守っていた茜と顔を見合わせる。

「茜さん……」

 茜はそれに小さく顎を引いて頷く。

「分かっている。私は街の方を探してみるから、健君は……」

 茜が言い切るよりも早く、健も首を縦に振る。

「俺は、宮鼓川ダムに向かいます」

 

 ※ ※ ※

 

 宮鼓川ダムへ続く山道。オーバーカムに跨って走っていた健は、耳を叩く微かな銃声に、愛車を止める。メットのバイザーを上げ、周囲を見回していると、再び山の上の方から銃声が響く。

「ダムの方角だ……!」

 上流方向を見上げた健は、バイザーを下ろしてオーバーカムを再発進させる。

 宮鼓川ダムを視界に収めて走る健。その目に、人のようなものを掴んで飛ぶ大フクロウの背中が映る。

「アレはもしかして……ッ!?」

 健は改造人間としての視力を解放し、ジグザグに飛ぶフクロウ怪人の持つモノを確かめる。

「文香ちゃん!?」

 それはさながら、巣に運ばれる獲物のように掴まれた文香であった。その文香の制服に不意に風穴が開く。

「な……ッ!?」

 それを見て健は、弾かれるようにダムに目を向ける。そこから上がる断続的な銃声に、健は歯噛みしてスロットルを捻る。続けて取り出したリバースドライバーを腰に装着、上下反転させる。

「変身ッ!」

《Ride ON》

 身を包む光の渦を引き千切るようにして現れるリバース。その勢いのまま、フルスロットルのオーバーカムを駆り、ダムへと急ぐ。

 マズルフラッシュと銃声の瞬くダムの天辺、天端へと急ぐリバースの前から、二人組の警備員が走ってくる。

「金原さん! こっちッス! 早く!!」

「クッ! あの連中、ウチの社章を付けていたが……何者だ!?」

 片腕を三角巾で吊った仏頂面の大男と、その同僚を金原と呼んで先導する軽薄そうな青年。その彼らを三羽の化けフクロウと、銃弾を放つ黒尽くめの戦闘員が追い立てる。

「あの人たちは……!」

 追い立てられている見覚えのある二人組の姿を見て、リバースはオーバーカムごと跳ぶ。

「デイヤアアアアアアッ!!」

 空中で愛車からさらに跳ぶリバース。リバースはオーバーカムを避けた化けフクロウの一羽を蹴り落とし、二羽目を蹴り飛ばして三羽目にぶつける。そしてリバースの手から離れたオーバーカムは、勢いのままに横滑りになって戦闘員たちを真正面から撥ね飛ばす。

 リバースは宙返りして着地すると、警備員たちへ向かう銃弾を、伸ばした左腕と胸のプロテクターで受け止める。

「……あれって、まさか……」

 青年の呟きを背に受けながら、リバースは立ち上がろうとする戦闘員に向けて走り出す。

「セイッ! イヤァッ!」

 左拳の顔、腹への二連撃で一人を沈め、右側で立ち上がりかけていた戦闘員の胸を蹴る。そして左側から自身に向けられた銃身を左手で押し上げ、そのライフルの持ち主の腹に右拳を叩きこむ。

「はぁぁぁ……」

 戦闘員の鎮圧をすませたリバースは、クラッシャーを僅かに開き、深呼吸をするように排熱をする。そして音を立ててクラッシャーを閉じると、後ろにいる警備員の二人組へ振り返る。

「怪我はありませんか?」

 安否を問うリバースの言葉に、二人の警備員は言葉もなく、揃って首を縦に振る。その反応にリバースは小さく頷いて、傍らに倒れていたオーバーカムを起こす。

「待ってくれ!」

 不意に背中に投げかけられた言葉に、リバースは愛車を支えながら、上半身を捻って振り返る。そこには一歩踏み出した仏頂面の警備員、金原がいた。

「ダムの職員や一般人は避難させたが、少女が一人、テンペストの怪人に捕らわれている。だが、黒尽くめの連中は見境なしに発砲している。頼む! あの子を助けてくれッ!」

 そう言って頭を下げる金原に、リバースは頷く。

「そのつもりです。あなた方も早く避難してください」

 リバースはそう言って、オーバーカムのシートに跨る。

「なあもしかして、あんたが噂の、仮面ライダー……」

 青年の方から投げかけられた言葉に、リバースは愛車のハンドルを握ったまま首だけで振り返る。

「仮面ライダーリバース……そう名乗っています」

 そう言ってリバースは前を向き、唸りを上げるオーバーカムを発進させる。

 ダム湖を眼下に臨む天端へオーバーカムと跳び込むリバース。そして着地の反動でバウンドする車体を体全体で御し、空に向けて引き金を引き続ける戦闘員たちに向けて突っ込んでいく。

「銃を、撃つなあああッ!!」

 叫び声を上げて突撃するリバースに、戦闘員が視線を向ける。そのまま半分ほどをオーバーカムで撥ね、ダム湖に叩き落とす。

「ギィッ!?」

「ガッ!??」

 悲鳴と水音の鳴る中を横滑りにブレーキをかけるリバース。

「ふううッ!」

 リバースは強く息を吐き出し、そこから再度突撃をかけるべく切り返そうとする。しかしそこへ二羽の化けフクロウと銃弾が襲いかかる。

「ク……ッ!?」

 右腕で一羽の化けフクロウを掴み、銃弾への盾にする。

「ギエッ!?」

 うめき声を上げた化けフクロウを投げ捨て、オーバーカムのスロットルを捻る。コンクリート張りの地面に擦れる車体とプロテクターから火花を散らしながら、リバースは銃弾を掻い潜り戦闘員へ向かう。

「イィヤアアアアアアッ!!」

 気合の声と共に、リバースはオーバーカムを前輪のみ、逆立ちのような形で立ち上げる。そして地面より離れた後輪で戦闘員を薙ぎ払う。

「ギャアアッ!?」

「アガッ!?」

 空中に投げだされる戦闘員たちには目もくれず、リバースは振り回した後輪を着地させる。続けてその反動で前輪を跳ね上げ、追い縋ってきた化けフクロウを下から掬いあげる。

「ギエエッ!?!」

 奇声に続く爆音の中、リバースは空を見上げてフクロウ怪人と文香の姿を探す。すると爆煙の向こう側に、ダム湖の上空へ飛んでゆくフクロウ怪人の姿が見つかる。

 それにリバースは、オーバーカムを後輪で立たせたまま、機首を怪人の向かう方へ返し、スロットルを捻る。すると、オーバーカムの前輪と後輪が甲高い駆動音を上げて光を纏う。

「イィヤアッ!!」

 リバースの掛け声に続き、空を踏んで走りだすオーバーカム。そこへ四方八方から化けフクロウが取り囲もうと群がってくる。

「チッ!」

 突っ込んできた一羽を舌打ちと共に殴り落として、リバースはアクセルをかける。続いて右前方から迫る一羽をチョップで払い、左後方から追いすがる一羽を蹴り飛ばす。三つの爆音が続けて響く中、残りの化けフクロウが一斉に突っ込んでくる。だがリバースは、体をオーバーカムに密着させ、前方に開いた包囲網の穴を潜る。

 オーバーカムの唸りに続き、後方で大きな爆音が上がる。だがミラーを一瞥すれば、五羽が爆煙を潜りぬけて追い縋ってきている。顔を上げれば、上空でダム壁へ向かう怪人の姿が確認できる。

「ならばッ!」

 正面へ視線を戻したリバースは、一気にオーバーカムの車体を起こし、ウィリーの姿勢を取る。続けて重心を左に傾け、左回転しながら右足を外側へ突き出す。

「デイヤアアアアアッ!!?」

 気合の声と共に、黒と緑の竜巻と化すリバースとオーバーカム。そのまま突っ込んでくる化けフクロウを蹴散らし、渦を巻いて上昇する。そして、一旦空中走破モードを解除し、慣性に任せてフクロウ怪人の背中へ向けてオーバーカムの前輪を動かす。軸の重なった瞬間、リバースはアクセルを全開にして、再びオーバーカムに空を蹴らせる。

 怪人の背を追うリバースへ、前方から化けフクロウが次々と迎撃に飛来する。

「セイッ! セイッ! セイィヤアッ!!」

 左の連続パンチで迫り来る化けフクロウを叩き落とし、真直ぐに怪人の背中を目指すリバース。鳴り響く爆音を足元に受けながら、化けフクロウを残らずなぎ倒し、怪人の右隣へ並ぶ。

「追い付いたぞ! その子を返してもらうッ!」

 そして手を伸ばそうとした瞬間、怪人の嘴が歪む。

「ああ、返してやるともさ……」

 そう呟くや否や、怪人は足の爪で掴んでいた文香を、こちらへ投げつける。

「しまったッ!?」

 とっさに体を右に倒し、衝突を避ける。

「うおおおッ!?」

 そしてリバースは逆さになった状態から、空中へ投げ出された文香に向かって跳ぶ。文香の落下コースに右手を差し込み、その体を掴む。だが、文香の体に留まっていた化けフクロウに啄ばまれる。

「がッ!?」

 不意打ちに思わず手を放すリバース。その隙に化けフクロウは文香に密着し、両目と体を赤く輝かせる。

「ギィエアアッ!?」

 奇声を上げて膨らんでゆく化けフクロウ。

「させるかッ!!」

 叫ぶリバースは、左手で自爆寸前に膨張した化けフクロウを弾き飛ばす。だが、すでにダムの天端は目前に迫っている。

「おおおッ!?」

 再度伸ばした両腕で文香の体を掴み、しっかりと抱きかかえたリバースは両足を天端に向ける。

「グゥ……ッ!?」

 着地、そして衝撃。コンクリートに亀裂の走る中、リバースは文香を放すまいと抱え込む。

「……う、う……? え!? 仮面、ライダー……ッ!?」

 呻き声と共に腕の中で目を覚ました文香に、リバースは頷く。

「痛むところは無いかい?」

 リバースの穏やかな声音の問いかけに、文香はぎこちなく首を縦に振る。次の瞬間、その目が大きく見開かれる。文香の変化に反応するよりも早く、リバースの背中に衝撃が走る。

「ぐあ……ッ!?」

「きゃあああッ!?」

 背中から走る激痛に仰け反るリバース。その拍子に腕の中から転げ落ちる文香。そこを狙い、降りてくる怪人の爪との間に、リバースは背中を盾にして割り込む。

「グゥ……アアッ!?」

 痛みをこらえ、振り向きざまに右拳を振るう。だがその一撃は空を切る。顔を上げて怪人を追えば、すでに上空へ逃れている。

「ライダーッ!?」

 ボロボロになったであろう背中を見た文香の叫びに、リバースは両足を踏ん張り、首だけで振り向いて頷く。

「俺なら大丈夫だ……!」

 少女を勇気づけるよう、はっきりと答えるリバースへ、怪人の爪が高速で降ってくる。

「死ィねよやぁッ!!」

 だがリバースはその爪を左腕の装甲で滑らせ、足首を掴む。

「んなッ!?」

「イヤアアッ!?」

 そしてそのままコンクリート張りの地面へと叩きつける。

「イギエェッ!?!」

 奇声を上げる怪人。リバースはその足を放し、腹に右蹴りを打ち込む。

「デイィヤアッ!」

「グフェッ!?」

 もんどりうって転がってゆくフクロウ怪人を睨みつけ、リバースは文香との間を遮るようにして構える。うつ伏せに倒れたフクロウ怪人は腹を翼で抑えながら、両足に少しずつ力を込めて立ち上がる。

「畜生ッ……ダムを壊す準備を撮られた上に、小娘を始末ついでに利用してやろうかと思えばコレか……ッ!」

 憎々しげに呟く怪人の言葉に、リバースは思わず、拳を音が鳴るほどに握り固める。

「貴様ッ! この少女の命を奪うだけに飽き足らず、街に住む人々にまで理不尽な災いをッ!?」

 リバースの怒りの声に対し、怪人は両腕の翼を広げ、嘶く。

「街もろとも奴らを潰し、我等を襲った理不尽への復讐を成すッ! それが我々の悲願! 貴様に邪魔される筋合いなど無いわッ!?」

「貴様が復讐のために、無関係な人々を巻き込むというのなら、俺はそれをひっくり返すッ!! 俺は災いを押し返す者、仮面ライダーリバースッ!!」

 左腕で空を切り、構えをとるリバース。

「ほざけェッ!?」

 怪人が怒号と共に羽ばたき、地面すれすれにリバースへ迫る。

「セイヤァッ!」

 迫る怪人の頭部へ右のチョップを振り下ろす。だが、怪人は翼を小さく畳み、身を捻ってリバースの左側へ抜ける。

「クッ!?」

 それを追ってリバースは左足を軸に反時計回りに回転する。だが、すでに怪人の姿は無い。

「上かッ!?」

 リバースが顔を上げると、そこには翼を広げ、両の足爪を振り下ろすフクロウ怪人がいた。

「クッ!?」

 その爪を両腕で受け止めるリバース。しかしその刹那、リバースの足元から爆音と衝撃が巻き起こる。

「ぐああッ!?」

 両足を襲った熱と衝撃のダメージに、リバースは右膝をつく。

『やられたッ!? 上に注意を引いて、足を分身体で爆破……これじゃあ……』

 焼け焦げて煙を上げる両足を一瞥し、機動力とライダーキックを封じられた事を悟るリバース。

 そこへ再度怪人の蹴りが振り下ろされる。

「グッ!?」

 それは腕で押し返すものの、その勢いを利用した宙返りで背中に回りこまれ、一撃を受けてしまう。

「ガッ!?」

 そのダメージで怯んだ隙に、フクロウ怪人の追撃の爪が襲いかかる。さらに前後左右から急降下攻撃が絶え間なくリバースへ叩きこまれる。

「ぐわあああああッ!?!」

 右肩、左腿、左腕、頭、胸とリバースから次々に火花が散る中、怪人の哄笑が響き渡る。

「ははははははははッ! 手も足も出まい!? 今度こそッ!!」

 そこで一度ラッシュが途切れ、リバースは右手を突く。

「う……ぐッ!!」

 ダメージに崩れそうな体を支えて、空を見上げる。その先には止めの一撃の為に翼を広げて舞いあがる怪人の姿があった。

『奴の攻撃をかわすのはもう無理だ……だが、先手を打とうにもこの足では……どうする?』

 自身に問いかけながら、リバースは視線を落とす。その先には確かな「切り札」が残っていた。

「これでトドメだッ! 仮面ライダーッ!?」

 嘴を突き出し、錐揉み状に突っ込んでくるフクロウ怪人。リバースはそれを片目で見据えたままその場を動かない。そして、もはや衝突が避けられなくなったところで、リバースの右腕から声が響く。

《Full Open》

「なあっ!?」

 驚きの声を上げて突っ込んでくる怪人の顔を目がけ、リバースは全解放したエネルギーの渦巻く右拳を突き出す。

「デェイヤアアアアアアアアアアッ!!?」

 リバースの放ったパンチは、全力で急降下してきた怪人の顔面を、怪人自身の攻撃の勢いを上乗せして迎え撃つ。直後、フクロウ怪人の体が砕けた顔面を中心に、錐揉み回転の勢いのまま巻き込まれていく。そして拳を突き出したリバースの顎が開き、全身を巡る熱気を吐き出す。

「ライダー……パンチッ!!」

 クラッシャーが音を立てて閉まった次の瞬間、ねじれた怪人の体に光る亀裂が走り、爆発する。空気を震わす衝撃が駆け抜けると、リバースは再びその場に膝をつく。

「あ、ありがとうございました……仮面ライダー、リバース」

 呟き声で名を呼ばれたリバースは、その声の主、文香に顔を向けて親指を立てて見せる。すると、文香は慌ててカメラを構え、シャッターを切った。

 

 ※ ※ ※

 

 数日後、スカーレットジョーカーのテーブル席に、薫と文香が向かい合って座っている。鼻息の荒い文香と、それに呆れ半分の笑みを浮かべて応対する薫。そんな二人の少女の様子を、健はキッチンから微笑みながら眺めていた。

「いや、凄かったですよ、ホント!? 見てくださいよコレ!?」

 ジョーカーブレンドコーヒーを片手に、一枚の写真を差し出す文香。薫は写真を受け取ると、そこに写った人物を見て感心したように頷く。

「これが噂の仮面ライダーなのね……ボロボロなのに、なんとなく頼もしい」

 そんな薫の感想に、文香は目を輝かせて身を乗り出す。

「委員長もそう思いますか!? 街の盾! 人々の剣! 街に現れたヒーロー、リバースライダーッ!! うん、いい記事が書けそうですな!」

「リバースライダー……?」

 文香の口から出た名前に、薫は小首を傾げながら写真を返す。それを受け取って、文香は得意げな笑みを浮かべて頷く。

「仮面ライダーリバース、略してリバースライダー! 古い都市伝説に語られる仮面ライダーたちを参考に作った通称ですな」

 そこへ、健は二人の為に焼いたパンケーキを持って、テーブル席に歩み寄る。

「はい、どうぞ」

「ありがとう、兄さん」

「いやあ、すみません。この前もあんな所まで探しに来てもらっちゃいまして」

 正体を知られぬよう、リバースとして去った後、健として迎えに行ったことの礼を言われ、健は手を立ててパタパタと扇ぐように動かす。

「いいんだよ。薫に頼まれちゃ断れないし。じゃあ、ゆっくりしていってよ」

 そう言って、健は踵を返してキッチンへと歩を進める。

『あ、そうだ』

 その途中、健はふと思いついたことに振り返る。

「ヒーローの通称、いいんじゃないかな? 俺は気に入ったよ?」

 そして本心からの感想を、笑みと共に文香へ贈った。

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