仮面ライダーリバース 【完結済】   作:尉ヶ峰タスク

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第十三話 激突・後

 鉄道と並行し、湖へと伸びる道路。左手に太平洋、右手に二列の対向車線を臨む道を、リバースは黒いボディの愛車で、ただ一人ひた走る。

『他に走っている車が一台もない……やはりテンペストはこの先に!?』

 対向車線から逃げてくる車さえない状態に、リバースは先の状況を推し量り、ハンドルを握る手に力を込める。やがて道路を疾走するリバースの目に、行く手を阻む壁が飛び込んでくる。

「あれはッ!? ブルーローズのッ!?」

 横転した装甲車で作られたバリケードに、リバースは僅かに顔を上げる。しかし、すぐに愛車に体を密着させ、煙を上げるバリケードに向かって走る。するとバリケードの陰から、全身に包帯を巻いた歪な人間たちが飛び出してくる。

 水かきのある手や、羽毛や鉤爪を備えた四肢を包帯から覗かせて走り迫る怪人たち。

「クッ……! 邪魔はさせない!!」

 リバースは強く叫び、体を傾けてオーバーカムを倒し、正面から迫る鉤爪持ちをかわす。続いてその先で待ち構えていた水かき持ちを、切り返して避ける。そのまま高速蛇行で次々と怪人の合間を縫って突き進み、バリケードの目前へ抜ける。

「跳べッ! オーバーカムッ!!」

 そしてオーバーカムをジャンプ。バリケードの上に出る。その瞬間、バリケードの陰から飛び出した包帯怪人がコースを遮る。

「デイヤアアアアアアアッ!!」

 しかしリバースは、オーバーカムの前輪で、怪人がその身を使って作った壁をこじ開ける。

「ギエエ……ッ!?」

 怪人の苦悶の声を背に、道路へ降りるリバース。そして愛車のシート越しに伝わる衝撃を無視して、全速力で走らせる。

 

 ※ ※ ※

 

「ぬううんッ!!」

「ハッ!」

 近藤の巨大な拳を右のサイドステップで避け、伸びきった腕に両手を叩きつけて跳ぶミゼン。

 ミゼンは近藤の頭上を飛び越え、宙返りして着地する。その背後を狙い、細い剣を構えた南が迫る。

「もらったッ!」

「甘いッ!」

 南へ右の後ろ蹴りを浴びせ、同時にタイフーンライダーを右足のみ起動、蹴りの勢いを上乗せした烈風で南を押し返す。

「きゃあッ!?」

 ミゼンは後方へ飛ぶ南から、こちらへ向き直ろうとする近藤へ目を向け、風を纏った右足を振るう。

「ハアアッ!!」

 風を纏った蹴りを近藤の左腕、左肩へと叩きこむ。だがそれをものともせず、近藤は右拳を繰り出してくる。

「ぬううあああああッ!!」

「ハアアアアアッ!?」

 その拳に右足をぶつけ、その反動に乗って大きく飛び退くミゼン。距離を取り、風を解除して構え直すミゼンへ、近藤は丸太のような腕を下げ、感嘆の声を上げる。

「ふん……そんな体で、我ら二人を相手によくも持つものだ」

「体のことはお互い様だろう?それに私は、随分楽をさせてもらったから、な!!」

 ミゼンはそう言い放つと同時に踏み込み、右蹴りを突き出す。

「ハアアアアッ!?」

 近藤の分厚い胸板を撃った右足を引き、間髪いれずに左、右と蹴りを打ち込む。しかし、近藤はそれを受け止めながら、両腕でミゼンの足元を挟み込むように振る。

「ぬうあっ!」

「ハアッ!」

 とっさに両足を上げ、左右から迫る腕から逃れるミゼン。

「ヌンッ!!」

 そこから追いかけるようにかち上げてくる近藤の両腕。

「ハッ!!」

 しかしミゼンはそれを踏みつけ、その勢いを利用して空へ舞い上がる。

「レディ……スタート!」

 そして両踵を打ち合わせ、空中で身を翻すと、眼前に迫る毒々しい緑色の粘液弾をタイフーンライダーの風で蹴散らす。

「ハッ! ハッ! ハアッ!」

 そのまま断続的に放たれる粘液弾を蹴散らしながら、陽光を弾いて白く輝く湖面へ落ちて行く。そして両足を揃え、潮を含んだ湖水を弾きながら水面に立つ。

「ぬんッ!!」

 耳を叩いた近藤の声に、ミゼンは急いで水面を滑りだす。直後、ミゼンが着水した箇所が飛沫を上げて弾ける。水上を高速滑走するミゼンへ、近藤の拳圧砲と南の粘液弾が降り注ぐ。だが、ミゼンはそれらを次々と掻い潜り、水面を踏みきって南に向かって跳ぶ。

「ハアアアアッ!!」

「く……ッ!?」

 風を纏った蹴りを繰り出し飛び込むミゼン。それに対して、南は粘液弾を連射する。しかし、ミゼンはそれをものともせずに突っ込んでゆく。南はとっさに剣を前に出すが、ミゼンの蹴りはそれを圧し折る。

「きゃああっ!?」

 風を纏った蹴りで、南が悲鳴を上げて吹き飛ぶ。その反動を利用して再度宙を舞うミゼン。

「勝負ッ!!」

 そして気合の声と共に、空中でドライバーを右足に付け替えて展開する。

《Full Open》

 ミゼンはドライバーからの発声に続く暴風に乗り、竜巻となって近藤目がけ急降下する。

「この距離! 重いお前にかわせるかッ!!」

「ならば避けんッ!!」

 そう叫び、近藤は左掌をかざして、ミゼンのスピンキックを受け止める。回転の向きに沿って内側へ捻れていく左腕。やがて軋みと共に、ミゼンの回転が止まる。

「なッ!?」

「ぬううううんッ!!」

 驚きに息を呑むミゼン。そこへ近藤は右拳を振るう。直径40cm程の握り拳は、唸りを上げてミゼンの胴を撃つ。

「ぐ、は……ッ!?」

 背中へと突き抜けていく衝撃に、ミゼンは胸に詰まった空気を吐き出す。そして勢いのまま背中から地面に叩きつけられ、弾み、転がってゆく。

「ぐ……く……ッ!」

 全身が千切れ飛ばんばかりの激痛に、ミゼンは呻きながら腕を支えに顔を上げる。すると、ねじれた左腕を振り上げる近藤の姿が目に入る。

『ま、まずい……ッ! 片腕でもあれを喰らえば……ッ!?』

 今にも振るわれようとする腕から、立ち上がって逃がれようとするミゼン。だが、全身を襲う痛みに邪魔され、立ち損ねる。

「貧弱な能力をここまで技術で補った貴様には感心するが……我等を阻むには届かんッ!!」

 近藤がそう叫んだ瞬間、猛々しいエンジンの唸りが鳴り響いた。

 

 ※ ※ ※

 

「やらせるかあぁッ!!?」

 地に伏せ、止めを刺されようとしているミゼンの姿を空から見下ろし、リバースは雄叫びをあげてオーバーカムを突っ込ませる。

「健君ッ!?」

「来たか、仮面ライダーッ!?」

 ゴリラ怪人が怒号と共に顔を上げ、左腕の狙いをこちらに向けて竜巻を放つ。

『だが、加速ッ!!』

 真正面から迎え撃とうと迫る風の渦を見据え、リバースは迷わずスロットルを捻る。甲高い駆動音を上げてタイヤが輝き、竜巻の外側を螺旋状になぞるようにしてオーバーカムが走る。

「セイッ! イヤアアアアアアアッ!!」

 風に乗って走るオーバーカムから飛び降り、スピンからの急降下キックを繰り出すリバース。

「ぬんッ!」

 リバースのキックと怪人の振るった右の剛拳がぶつかり合う。

「くッ!?」

「ぬうッ!?」

 衝突の反動で離れる二人。リバースは膝を曲げて衝撃をバネに変え、怪人が構え直す前に懐へ踏み込む。

「セイッ! セイッ! イヤアッ!」

 脇腹への左の拳、右足のローキック、右のストレートを胸へ、次々と叩きこんでゆく。

「ぬ、ぐううっ!?」

「イヤアアアアアッ!!」

 呻き、たたらを踏む近藤の腹へ、リバースは右踵を打ち込む。

「ぬうおっ!?」

 怪人が僅かに後退した隙に、リバースはバク転を繰り返してミゼンの許へ下がる。

「茜さん、なんで俺に教えてくれなかったんです!?」

 ミゼンを助け起こしながら、僅かに不満を乗せた強い口調で尋ねるリバース。

「……すまない、健君。彼らとは、私の手で決着をつけたいと思って勝手をした……」

 ミゼンからの素直な謝意に、リバースは額を押さえ、深く息を吐きだしながら首を左右に振る。

「……いろいろ言いたいことはありましたけど、もういいです」

 リバースはそう言って、もう一度ため息をつく。そして一歩前に踏み出し、拳を握り締めていつもの構えを取る。その視線の先ではゴリラ怪人が腕を低く突き出して身構えていた。

「帰ったらウチで、割引なしで食べていってもらいますからね!」

 リバースのその言葉に、ミゼンは僅かな間を置いて小さく息を吐く。

「ふふっ……財布には痛いな……」

 ミゼンの言葉と共に、後ろへと下がる擦るような足音が鳴る。それに続き、前方のゴリラが口を開く。

「この短期間に随分と力をつけたものだな……仮面ライダーリバース……」

 どこか嬉しげな怪人に対し、リバースは構えを崩さぬまま言葉を返す。

「伊吹……健です」

 唐突に人間としての名を名乗るリバースに、怪人は僅かにあごを上げる。だが、すぐにあごを引いて口を開く。

「テンペストのリーダー……近藤隼人だ!」

 近藤の名乗りと同時に、リバースと近藤は弾かれたように踏み込む。

「ぬうあッ!」

 内側へ捻りながら迫る近藤の手。

「イヤアッ!?」

 リバースはそれを潜り、左肘を腹部へ突き刺す。衝突の衝撃に空気が揺れる。

「ぬんッ!」

 しかし近藤はそれを受け止めたまま、両腕を頭上へ振りかぶり、振り下ろす。

「くっ!?」

 リバースは横転して直撃を避け、横合から足元を狙って水面蹴りを放つ。だが、近藤の足は蹴りの当る前に地面を離れる。

「なにッ!?」

 それを目で追えば、叩きつけた腕の力で跳び、空中で前転する近藤の白い背中があった。

「ぬうあッ!?」

 近藤は重い音を立てて着地した直後、身を捻り、回転の勢いに乗せて右拳を繰り出す。暴風を纏って迫る拳に、とっさに両腕を組んで盾にするリバース。

「ぐうッ!?」

 衝撃が両腕に響いた瞬間、リバースは後ろへ飛んでダメージを殺す。だがそれでも、盾にした両腕には痺れが走る。痺れた両腕を払い、視界が開けると、近藤が左肩から突っ込んで来ていた。

「ぬんッ!!」

「セイヤアッ!!」

 迫る近藤のショルダータックルに、右蹴りを叩き込むリバース。衝突の衝撃が再び空気を震わせる。

「ぬ……ッ!?」

「ぐうう……ッ!?」

 ぶつかり合った姿勢のまま両者は睨みあう。競り合いながら、リバースが文字通り口を開く。

「何故……街を滅ぼそうとする!?」

 熱気と共に吐き出されたリバースの言葉に、近藤は左肩を押し込みながら応える。

「何故だと……ッ!? 貴様も知っているだろう!? この街に根差した毒花の根の深さを……ッ!!」

「くっ!?」

 半ば押し退けられる形で後ろに下がったリバースへ、近藤から追撃の右拳が迫る。

「もはや社長一人を殺したところで、この街が弄ばれ続けるのは変わらんッ!! 街もろとも滅ぼすしかないのだッ!!」

 迫る右拳と、それに続く左拳を左右のステップでかわすリバース。そして再度右拳が振るわれた直後に、右ストレートを左肩に叩きこむ。

「だからと言って、街もろとも滅ぼす理由になるかッ!」

 リバースは近藤の左腕への攻撃と、言葉を放ち続ける。

「ブルーローズの全てが悪ではないッ!! 家族を想い! 街を想い! 生きる人々がいる!!」

 そう続けるリバースの脳裏に、息子に向かって笑みを浮かべる金原大悟の姿がよぎる。

「そんな人たちも、罪なき人々も巻き込むことを俺は許さないッ!!」

 その叫びと共に、リバースの回し蹴りが近藤の胸を撃つ。しかしその足は近藤に抱え込まれる。

「なッ!?」

「それは残された時間のある貴様の理屈だッ!!」

 怒声と共に振るわれた右の拳が、足を取られたリバースを撃つ。

「ぐあッ!?」

 とっさに左腕を盾にしたものの、剛腕の一撃は防御を貫いてリバースの体を徹す。

「貴様には分かるまいッ!? 肉体を弄ばれ、迫る寿命の中、故郷を毒花の温床とするのに加担させられていた我々の悔しさがッ!!」

 激しい怒りの言葉を吐きながら、近藤はリバースの体を万力のような力で掴む。

「ぐああああああッ!!?」

「た、健君ッ!?」

 軋む体に苦悶の声を上げるリバース。その声に、ミゼンも声を上げる。

「残された僅かな時間で、弄ばれ、汚され続ける故郷を毒花から解放する……その手段に、故郷もろとも滅ぼすことを選んだ我々の思いが! 貴様に分かるかぁッ!!?」

 一際大きな怒声と共に、投げ飛ばされるリバース。

「がはっ……!?」

 背中から叩きつけられ、胸の中から空気が逃げ出す。

「街を滅ぼした悪名を背負っても、俺は奴らを滅ぼす……ッ!! 復讐のため、故郷を解放するためにッ!!」

 叫び、近藤は右、左、両手の順でドラミングし、両腕を頭上に掲げる。そして両腕を外側に捻り腰だめへ持っていく間に、リバースは痛む体に鞭を打って立ちあがる。

「なら……俺は、貴方達を殺した罪を背負って、これからも戦い続けるッ!! 多くの人々の生きる故郷と、その故郷で家族と共に過ごす、過去と今と未来のためにッ!!」

 脳裏をよぎる薫、亮子、そして茜の顔に、リバースは力を振り絞って叫び返し、ドライバーのバックルを右足へ取りつける。

《Full Open》

 そして溢れ出すエネルギーに包まれた右足を前に出し、跳ぶ。

「貴方がこの街を想って災いを振り撒くのなら、俺はッ! この街を想ってッ! それを叩き返すッ!!!」

 リバースは空中で身を翻して叫び、何人もの怪人を屠ってきた必殺の蹴りを繰り出す。それに対して、近藤は凄絶な笑みで応える。

「よォく言ったァッ!!」

 力の籠った叫びと共に、近藤も両腕に溜めこんだ螺旋の力を解き放つ。

「ヌッ!?」

 だがその瞬間、近藤の左腕に白い布が絡みつく。

「茜さんッ!?」

 キックの姿勢で急降下するリバースが、その布の持ち主の名を呼ぶ。

「今だッ! やれェッ!!」

 近藤の腕をマフラーで締め上げ、ミゼンが叫ぶ。

「ぐ、ぬううあああああああッ!!?」

 近藤はそれを引き千切って腕を振るう。

「イヤアアアアアアッ!!」

 だが、その腕が竜巻を生み出し切る前に、リバースの右足が近藤の右手の中心を射抜く。その一撃の反動を使い、リバースが垂直に跳び上がる。すると近藤の右腕に込められた力が暴発し、出鱈目に風を振りまいて捻れていく。

「ぬぐおッ!? ……だが! まだ俺の命には届いていないぞ! 伊吹健ッ!?」

 崩れた姿勢の中、残る左腕を空中のリバース目がけ振り上げようとする近藤。だが、リバースは足に付けたバックルを空中で再び展開する。

《Full Open》

「なんだとっ!?」

 全身から力を絞り出される感覚の中、リバースは開いたクラッシャーから熱を放つ。

「……二段ッ!!」

 光を纏い垂直に落ちるリバース。その右足が仰け反っていた近藤の胸に突き刺さる。

「ぬうううあああああああああああッ!?!」

 近藤の絶叫が響き渡る中、反動に乗って飛び退いたリバースは、地面に片膝と片手をついて着地する。

「ッ……ライダー……キック……ッ!」

 かすれ声での宣言の直後、近藤の胸から光が爆ぜる。

「ッ……ハッ……!?」

 衝撃が風となって拡散する中、リバースは全身を蝕む虚脱感と吐き気に負け、その場に両手をついてうなだれる。

「……健君」

 擦るような足音共に聞こえた声に視線を巡らせれば、ボロボロのマフラーを首に巻いたミゼンが、手を差し出していた。

「あ、茜さん……」

 その手を取り、肩を借りながら立ちあがるリバース。そして近藤の方へ視線を向ければ、そこには、大の字になって空を仰ぐ近藤の姿があった。

「……ッハ!」

 そこで不意に近藤が息を吐き出し、リバースとミゼンも釣られるように拳を持ち上げる。

「……見事ッ! ゴフッ……さすがは、仮面ライダーだ……! 伊吹、健」

 近藤の口から出た、咳込みながらの称賛に、リバースは持ち上げていた拳を下ろす。

「貴方も、強かった……俺一人では、勝てなかった……」

 言いながら、リバースはミゼンから体を離す。そしてスッと背筋を伸ばして右手を額に添え、敬礼を贈る。

「近藤ッ!!」

「リーダーッ!」

 そこで、南とトカゲ怪人が割って入り、倒れた近藤へ駆け寄る。

「……すまない、二人とも……俺の負けだ……残った時間は、好きに使え……」

 途切れ途切れの近藤の言葉に、南が首を横に振る。

「何をバカなことを……ッ!? 泥をすすってでも生きて戦えと、皆を導いてきたのはお前ではないかッ!?」

「……その通りだぜ、リーダー」

 その冷たい声と共に、鋭い爪が近藤の胸に突き刺さる。

「ぐッ!?」

「な……ッ!?」

 リバースとミゼンも驚きに声を上げる中、近藤に突き刺さった爪の持ち主、トカゲ怪人は爪を引き抜き、血の付いたそれを南へ突きつける。

「ど、どういうつもりだ……!?」

 眼前で光る爪を睨みながら、仲間の凶行を問いただす南。だが睨まれたトカゲ怪人は、無感動な冷たい目のまま口を開く。

「どういうつもりもなにも……俺はリーダーに言われたように生き延びるって話さ。ブルーローズに再改造してもらってね……そのために今日まであんたらの側に潜り込んでいたのさ……」

「お前……ッ!!」

 トカゲ怪人の物言いに、リバースはダメージも忘れて声を荒げる。そこへ、黒い影がトカゲ怪人の傍らに舞い降りる。

「ご苦労だった、リザード」

 不意に現れた影。鼻と口以外を蛇の頭部を模した黒と紫の仮面で覆い、漆黒のロングコートを靡かせる男は、低い声でトカゲ怪人を労う。

「……ヴァ、ヴァイパー……ッ!?」

 近藤がかすれ声で呼んだ男、ヴァイパーは倒れた近藤を一瞥して口を開く。

「感謝するぞ、近藤……お前たちのおかげで、アドバンスド・ヒューマン計画は予定以上に早く進行した……」

 そう言ってヴァイパーは、今度はリバースたちへ目を向ける。仮面の奥から感じる視線に、リバースは尻にツララを突っ込まれたような怖気を感じた。

「……初めての成功例01……お前とテンペストとの戦いは有意義なデータ収集になった……感謝するぞ」

「こ、の……ッ!」

 リバースはヴァイパーへ踏み込もうとするものの、蓄積していたダメージに再度膝をつく。

「健君!?」

 ミゼンに支えられながらも、リバースはヴァイパーから視線を外さず、睨み続ける。

「ふむ……これ以上、用済みの実験体を苦しませるのも忍びない……ここでまとめて始末するか」

 呟き、黒い革手袋に包まれた右手を振り上げるヴァイパー。その腕から黒と紫のエネルギーがスパークする。そのエネルギーの奔流にリバースは、固唾を呑む。

「……さらばだ」

 そしてヴァイパーの右手が振り下ろされる瞬間、その体に丸太のような腕が絡みつく。

「近藤……ッ!?」

「逃げろ! 南ッ!」

 ヴァイパーに組みついた近藤は、己の名を叫ぶ南を湖へ突き飛ばす。そして黒い雷に撃たれながら、リバースたち二人に顔を向ける。

「浜永の未来を頼む……仮面ライダー……リバースッ!!」

 そう言って近藤が口元に笑みを浮かべた瞬間、その顔が光を放って弾ける。

「こ、近藤ッ!?」

「逃げるぞ! 彼の意志を無駄にするなッ!」

 爆発の衝撃が周囲に走る中、リバースはミゼンに引かれる形で、この場から逃れる。同じ故郷を思う強敵(とも)の顔を脳裏に焼き付けて。

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