仮面ライダーリバース 【完結済】   作:尉ヶ峰タスク

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第六話 決意

「はあぁぁ……やれ、やれ……」

 黄金色の満月が輝く夜道。コンビニ袋を提げた、天然パーマに眼鏡の男が首に手を当てながら歩いている。

「牛乳買い忘れるなんてなぁ……ああ、ドジこいた」

 男は独り言を呟きながら、夜風に鼻をすする。そして不意に月光を隠した影を見上げて足を止める。

「またアパートが出来るんだっけか……ま、ここに住む人が、良き隣人でありますようにってね」

 男はおどけた調子で呟いて、建築中の建物から帰り道へ視線を戻す。すると前方に立ちつくす人影が見える。よくみれば、それはベスト型のボディアーマーを着たブルーローズの警備員であった。

「あ、どうも、夜分遅くまでごくろうさまです……」

 天パ眼鏡は独り言の気恥ずかしさに、へらへらとごまかし笑いを浮かべて、警備員の横を通り過ぎようとする。その瞬間、ごと……っと重たいものが落ちるような音がして、天パ眼鏡の足元に何かが転がる。

「ひぇ……っ!?」

 転がったのは異様に切断面のきれいな生首で、弾かれたように警備員の方を見れば、頭部のない人間の向こうに、三日月が浮かんでいた。しかし、すでに月は夜空で真円を描いているものが存在している。

「うわああああああっ!?」

 男が悲鳴を上げて駆けだそうと背を向ける。その瞬間、首に三日月が食い込み、夜の空へとボールのように撥ねあげた。

 

 ※ ※ ※

 

『……普段は自由に泳がせておいて、何らかの方法で主導権を奪えるようにね……』

 健はニンジンの皮を桂剥きにしながら、先日の茜の言葉を思い出していた。続いて、苦痛と共に身体の自由を奪われ、獣のようにミゼンへと襲いかかる自身の様を脳裏に浮かべて、眉をひそめる。

『私よりもさらに前……ブルーローズによって怪物に変えられた人間たちだな』

 そして、聞かされたテンペストの怪人の正体に手元が狂い、刃が左手の親指に食い込む。

「痛っつ!? ……はぁぁ……俺、何やってんだろうな……」

 血を滲ませながらも、目に見えて塞がっていく傷を眺めて、健は深々とため息を吐く。

「ちょっと、どうしたんだい? 早く消毒しないと!」

 背後から不意にかけられた亮子の声に、健は慌てて振り向き、傷の再生する左手を背中に隠す。

「あ、うん! ちょっと、ぼうっとしちゃってさ。じゃあ、すぐに消毒してくるから!」

 健は早口にそう言いながら、亮子に強張った笑みを向ける。そして、じりじりと横歩きと後ろ歩きを駆使して、この場から逃げるように立ち去る。

 健は亮子に隠れて、治りかけの切り傷を絆創膏で隠し終えると、急いで仕事に戻る。

『ああ……さっきのは良くないよなあ……絶対妙に思われたよ』

 傷を隠した時の亮子の訝しげな顔に、健は心中で後悔の念を深める。そのまま、どうにか無難に仕上げた料理を客の許へ運んでゆく。

《本日未明、浜永市北区永江町にて惨殺された男性の遺体が発見されました。被害者は鋭利な刃物で頭部を切り落とされており……》

 そこで不意に、店内のテレビで流れていた殺人事件のニュースが目に止まる。

「……近いな……いやな予感もするし、様子を……」

 そう言いかけて、健はテレビから目を反らして首を横に振る。

『……俺が行ったって茜さんの負担になるだけだ』

「……おまたせいたしました」

 心中で自嘲しながら、健は笑顔に努めて、料理を客の前に差し出した。

 

 ※ ※ ※

 

「……で、何をやってるんだ俺は……」

 僅かにかけた月と街灯に照らされながら、健は殺害現場の近くを歩いていた。

 周囲を見回しながら歩いていると、そこへ夜風が音を立てて通り抜ける。その冷たさに健は、思わず首をすくめ、ジャケットの前を掴む。

「寒っ! はあぁ……行かないって思いながら、結局こんなところまで歩いて来て……中途半端だよなぁ」

 出かけ際、呼びとめるように二つのライトを明滅させていたブルーローズ製の愛車を思い出し、健は顔の半分を覆うように右手をかぶせる。

「……ここで何をしている?」

 不意に投げかけられた低い声に、健は素早く身を翻して身構える。

「! ……あんたは……」

 そこにいたのは、以前、スカーレットジョーカーに聞き込みにやってきたブルーローズ警備員の仏頂面の方であった。

『怪人じゃあない。しかし、ブルーローズか……』

 相手が怪人ではなかったため、健は構えを緩める。だが、ブルーローズの社員ということで警戒心を緩めずに仏頂面の男と相対する。

 そんな健の様子に、仏頂面の男はあごに手を添えて、健の顔を見る。

「……確か、聞き込みに行った喫茶店の……」

 そう言って、あごを軽く引いて頷く。そして僅かに片眉を持ち上げて、再び口を開く。

「その様子からすると、この近くで起きた事件は知っているようだが……事情があってここを通ったのなら、早く離れたほうがいい。家族に心配をかけるべきではない」

『この人……俺のことを知らないのか……? 知らされていない社員がいる、あり得る話だが……』

 ブルーローズ社員でありながら、自分を一般人のように扱う警備員。その言葉から、健は目の前の仏頂面の男を、ブルーローズの社員としてではなく、一個人として見方を改めかけていた。

 未だ無言を徹す健に、仏頂面の男は軽く鼻からため息をつく。

「……職業柄、市民から嫌われるのには慣れている……信頼されていないのも分かっている。だが、この町の住民として、市民を危険にさらすつもりがないのは本当だ。早くここから離れてくれ」

 愛想は無いが、真っ直ぐな眼差しを添えた言葉に、健は眉間と口元を緩めて頷いた。

「時間を取らせてすみません。じゃあ、俺はこれで……」

 健はそう言って、警備員に会釈をして踵を返す。その瞬間、警備員の後ろに光るものが見え、健は変えかけた向きを強引に反転させ、警備員に体当たりする。

「ぐっ!? な、何を……ッ!?」

 健の行動に、警備員から抗議の声が上がる。しかしその直後に、甲高い振動音と共に、自分の首のあった場所を通り過ぎた光る刃に警備員は声をのむ。

「……て、テンペスト!? 報告にあった切り裂き魔か!」

 両手中指が変化した長大なノコギリ刃の鎌。脇の下に折り畳まれた細い腕。そして、巨大な複眼をもつ逆三角形の顔。カマキリを擬人化した細身の怪人は、ギチギチと顎を鳴らしながら言葉を吐き出す。

「フン! 何も知らぬクセに数ばかりの多い働きアリめ……!」

 そうカマキリ怪人が吐き捨てると、両中指の鎌が甲高い振動音を立てて発光し始める。

「拷問する意味もないので、せめてひと思いに首を撥ねてやるつもりだったが……邪魔が入ったな」

 そう呟いて健の方を見るが早いか、右の鎌を振り下ろしてくる。

「くっ!?」

 健はとっさに警備員を鎌の軌道から押しのけつつ、自身も横転して風切りと振動の音を伴った斬撃をかわす。

 一太刀目は間一髪、道路を掠って火花を散らすのみに終わったものの、息つく間もなく横薙ぎの刃が迫る。

「おおっ!?」

 首を下げて、刃を潜り抜ける健。しかし頭上からの振り下ろしが続く。

「くうっ!!」

 とっさに両手でカマキリ怪人の手首を叩き、振り下ろしの軌道を逸らしながら、健は横に転がって逃げる。そして片膝立ちになってジャケットにしまったリバースドライバーに手を伸ばす。が、掴む直前にその手を止める。

『ここで変身して暴走したら……』

 すぐ傍にいる警備員を始めとした、無関係な人々を巻き込むことへの躊躇いが、健の喉元に刃を引き寄せる。

「シャアアアアアッ!?」

「ッ!?」

 奇声と共に振るわれた刃は迷いなく健の喉笛へと迫る。しかし、刃の振動を感じるほどのところで怪人の鎌が止まる。

「は、早く……逃げろッ!!」

 歯を食いしばり、怪人の腕を両腕で抱えて止める警備員。

「アリがッ! しゃらくさい!!」

 だが、カマキリ怪人の肘を受け、電柱へ右腕から叩きつけられる。

「……う、ぐお……っ」

「ああっ!?」

 警備員はそのまま苦悶の声を絞り出して、道路に倒れる。健はそこへ駆け寄ろうと足を踏み出す。だが、二歩目を出す前に、再び鼻先に刃がつきつけられる。

「フン! どいつもこいつも、生意気に邪魔をしてくれる……どうせまとめて始末するんだ、焦るなよ?」

「グ……ッ!」

 嫌味な余裕を臭わせるカマキリ怪人の言葉に、健は歯噛みしめる。

「さあ、まずは貴様からだッ!!」

 その宣言に続いて鎌が再び振りかぶられる。そして、振り下ろされようとしたその瞬間、獣の咆哮にも似たエンジン音が鳴り響く。

「なにっ!?」

 その音に気を取られた一瞬の隙に、カマキリ怪人は突撃してきた黒い影に撥ね飛ばされる。

「ぬぐおッ!?」

 宙を舞う怪人を押しのけて、目の前に現れた者たちに、健は目をむく。

「茜さんッ!?」

「やあ、健君」

 それはマシン・オーバーカムに跨った茜であった。茜は健に軽く挨拶をすると、オーバーカムの車体に軽く手を弾ませながら、足を後方に伸ばしてシートから降りる。

「この子とは途中で一緒になってね。おかげで、どうにか間に合ったようだね」

 そう言いながら、茜は自身のドライバーを取り出し、体勢を整えていたカマキリ怪人に見せつけるようにして対峙する。

「それは……ッ!?」

「さて、と……これ以上お前に血を流させるわけにはいかないな」

 茜はそう言ってドライバーを腰に装着する。それを見て、カマキリ怪人は、ダメージを負った部位を押さえ、舌打ちと共に闇の中に姿をくらました。

「逃がすかッ!」

 逃げた怪人を追うために、腰のドライバーに手をかける茜。だが、その腕を健が止める。

「ここは……俺が行きます!」

 健ははっきりと告げると、茜の腕を掴むのとは逆の手で、しっかりと握りしめたリバースドライバーを取り出す。

『俺は何を躊躇っていたんだ……手を伸ばせば守れるはずの命も、家族の笑顔も手放すところだったじゃないか!? その上、結局茜さんの世話になって……』

 ぐったりと倒れ伏した警備員の背中を見て、健は眉間とドライバーを握る手に力を込める。

「私の体なら大丈夫。気持ちの整理がついてないなら無理はしない方がいい」

 力む健の姿を緊張と恐れによるものと思ったのか、茜は、静かだが温かみのある声をかけてくる。しかし健は、そんな茜の言葉にゆっくりと首を横に振る。

「大丈夫です……覚悟はできました」

 健は静かだがはっきりとした声音でそう告げて、茜の腕を掴んでいた手を放す。そしてリバースドライバーを腰に装着しながら、オーバーカムに向かって歩いていく。

「それに、せっかく変身せずに済ませたのなら、茜さんは温存しておくべきです」

 愛車のシートに跨りながら、健は茜の目を真直ぐに見つめて言う。すると茜は僅かに目を大きく開く。健はそれに頷くと、茜が何か言うよりも早く、腰のドライバーを上下反転させる。

「変身!」

《Ride ON》

 全身を光の渦が包むと同時に、健はオーバーカムのアクセルを噴かす。光の渦を突き破るようにして現れた、仮面ライダーリバースはその勢いのまま、カマキリ怪人の消えた方角へ突っ込んでゆく。

 

 ※ ※ ※

 

 光の尾を引くリバースを見送って、茜は自身のドライバーを取り外す。

「健君のあの目……感づかれてしまったか……」

 脳裏に浮かぶ、自分がまだ、戦闘を控えるべき状態にあることを見抜くかのような健の目に、茜は苦笑する。

「……あの様子なら、本当に覚悟は決まったのだろう。……ふふ、自分の見込みが当たるというのはなかなか嬉しいものだ」

 リバースの吸い込まれていった方向を、細めた目で眺める茜。そうして一点を見つめたまま外したドライバーを仕舞う。

「私の贈った、都市伝説に語られるヒーロー……その名をしっかり背負ってくれ、仮面ライダー・リバース」

 茜は静かに呟くと、上着のポケットからアンパンを取り出して咥えた。

 

 ※ ※ ※

 

 カマキリ怪人を追って、河原にバイクごと乗り込むリバース。オーバーカムの後輪で砂利を音を立てて削りながら停止すると、愛車のシートから降りる。そしてすでに構えていたカマキリ怪人と相対する。

「さあ、追いつめたぞ!」

「その声……さっきの若造か?」

 声色からリバースの正体を推し量った怪人は、再び両手の鎌を超速振動させ始める。

「ミゼンを倒すつもりだったが、貴様でも我々の敵には違いない……返り討ちにしてやろう!」

 そう言い終わるや否や、カマキリ怪人は一瞬でリバースの目の前に踏み込んでくる。

「なッ!?」

 反射的に身を引くリバース。だが、左前腕と顎部から甲高い摩擦音と火花が走る。

「さっきよりも速いッ!!?」

 変身前に戦った時以上に鋭く速い斬撃に、リバースは思わず声を上げる。そこへ更に鋭い右の一撃が振るわれる。

「ははは! さっきまでの遊びと同じと思うなッ!!」

 どうにか胸部装甲に滑らせて、深いダメージを避ける。しかし、続く左腕の鎌が顔面に迫る。

「くっ……!?」

 リバースは首を傾けて、直撃は避けたものの、頬から火花が飛び散る。

「どうしたどうした!? そらそらぁッ!?」

 左から迫る横薙ぎの刃を腕で止め、右上からの袈裟斬りは身を屈めて潜る。

「セエェアアッ!!」

 そこで刈り取るような右足の水面蹴りで反撃する。

「甘いわッ!」

 しかし、カマキリ怪人はその場で跳ねて蹴りを飛び越える。そして鎌を振り上げ、落下に任せる形で振り下ろしてくる。だがリバースは一回転して停止したまま、降りてくる怪人を睨み返して拳を固める。

「デェヤアアアッ!!」

 そして刃に切り裂かれるのにも構わず、拳を突き上げる。

「お、ぐはっ……!?」

 装甲の裂け目から飛び散る火花を纏って突き上げた右拳は、真直ぐにカマキリ怪人の鳩尾に刺さり、その体を宙に押し返す。

 背中から地面に倒れた怪人に、リバースは追撃をかけるべく踏み込む。

「デエヤアッ!!」

 肘を基点とした左裏拳を起き上がりかけのところへ繰り出す。

「ギィ……ッ!?」

 怪人の苦し紛れに出した腕にぶつかり、裏拳は止まる。そこへ怪人は反撃に中指を曲げ、鎌を畳むカマキリのように腕を挟もうとしてくる。リバースはすぐに左腕を滑らせてそれをかわすと、引いていた右腕を振り下ろす。

「セェアッ!!」

 怪人が横に転がったため、右拳は地面を揺るがし、打点を中心に亀裂を起すに終わった。リバースは拳から逃れた怪人を目で追い、がら空きになっていた脇腹に狙いを定めると、急ぎ拳を引いて、鋭い右回し蹴りを放つ。もはやガードは間に合わず、リバースの蹴りは間違いなく直撃コースに乗った。しかし、突如怪人の脇にあった腕が伸びて蹴りを阻む。

「!? しまったッ!!」

「かかったな!阿呆がッ!!」

 副腕に足を掴まれたリバースに、カマキリ怪人は鎌を交叉させて斬りかかる。

「ぐうあああああッ!!?」

 胸部装甲にX字を描くように火花が走り、今度はリバースが地面を転がる。仰向けになり、顎を引いて激痛の走る胸を見れば、火花を散らし続ける深々と刻まれたX字の傷があった。

「うっ、グウゥ……!」

 急いで立ち上がろうと砂利を掴む。だが激痛に襲われ、立ち上がることが出来ない。

「さんざん手こずらせてくれたな……トドメッ!!」

 音を立てて伸びて来る鋭い鎌。それをリバースはとっさに左手で掴む。

「なんだとッ!?」

「エエヤアアアッ!!」

 驚きの声が上がる中、鎌を握る手から火花を散るのも構わず、リバースは怪人を引き寄せる。そして引き寄せると同時に起き上がり、迫る怪人の顔面に頭突きを叩き込む。

「ぐわっ!?」

 声を上げて仰け反るカマキリの腹に蹴りを入れ、痛む体に鞭を打ってリバースは立ち上がる。

「ハァ……! ハァ……ッ!」

 煙を上げる左手を握りしめて、リバースは半ば足を引きずるようにして、カマキリ怪人にむかって歩く。

「ぐっ……ムッ!?」

 顔を押さえて後ずさるカマキリ怪人。そこで不意に、何か見つけたのか首を巡らせて明後日の方向へ跳ぶ。視界の外へ跳んで行ったそれをリバースは目で追う。

「なっ……!? 貴様ッ!?」

 再び怪人を視界に捉えると、その腕の中には刃を突きつけられた女性が収まっていた。

「た、助けて……死にたくない……」

「動くなよ若造。月並みなセリフだが、動けばこの女の命は無いと思え」

 か細い声で命乞いをする女性を抱えたまま、怪人はゆっくりとリバースへ歩み寄ってくる。無関係の人を盾にされ、リバースは両拳を軋むほどに握り固める。

「クッ……卑怯な……!!」

 怒りと悔しさを込めたリバースの言葉に、カマキリ怪人は大きく首を傾げて、空いている右の鎌を構える。

「フン……ッ! テロという手段を選んだ時点で、復讐のために手段を選ぶことなど止めたわ! どんな手を使おうが、最終的にィ! 勝てば良かろうなのだぁあああッ!!」

 その言葉と共に振るわれた鎌が、リバースの装甲を火花を散らして切り裂く。

「グゥアッ!?」

 わざと浅く、嬲るように繰り返される斬撃を、リバースはただじっと耐える。左腿、右腕、左肩と、次々と切り裂かれていく。だが、リバースはその赤く大きな目を怪人から外さず、じっと睨み続ける。そんなリバースの様子に、怪人は苛立ったように右の鎌を振り回す。

「チッ……いい加減うっとおしい! 死ねええいッ!!」

 そしてリバースへ止めを刺すべく、怪人が大きく鎌を振り被る。

「今だッ!!」

 同時に人質への注意がそれた隙を逃さず、リバースは怪人の人質を押さえる手の手首を捻り上げる。

「ウギ……ッ!?」

 そして人質の体を包むようにして怪人との間に押し込むと、そのまま左肩から怪人の胸にぶちあたる。

「デエヤアアッ!?」

「おごお!?」

 衝撃で後ろへ下がるカマキリ怪人。そこへ女性を逃がして反転したリバースが踏み込む。

「セイ! セイッ! セイィヤアアアアッ!!」

 左、右の拳を胸に打ち込み、続けて右足を軸にした左後ろ回し蹴りを胸に打ち込んで蹴り飛ばす。

「ウグオオッ!?」

 着地と同時に膝をついたカマキリ怪人を見据えて、リバースはドライバーのバックルを外す。

「人々を傷つけ、命を奪った貴様の行い……俺が押し返すッ!!」

 そして手に取ったバックルを右足に取り付ける。

《Full Open》

 展開したバックルからエネルギーが溢れ出し、右足を包むように渦巻く。そのエネルギーと全身のバネに乗り、リバースは怪人目がけて跳ぶ。

「う、おおおッ!?」

 胸を押さえながら足をもつれさせるカマキリ怪人へ、リバースは光の渦巻く右足を突き出して真直ぐに突っ込んでいく。

「デエエイヤアアアアアアアアアアアアッ!!?」

 気合の声を纏い、カマキリ怪人の胸部に突き刺さるライダーキック。怪人の背中が爆ぜ、宙返りして着地したリバースの姿が風穴の向こうに見える。

「お、ぐ……ち、ちくしょおがあああああッ!!?」

 怪人の苦悶の絶叫の中、リバースは展開した頭部クラッシャーから、全身を駆け巡る熱を解放する。

「ライダー……キックッ!!」

 放熱を終えたクラッシャーが音を立てて閉まる。その直後、風穴から全身にひび割れの広がった怪人の肉体が爆発四散する。

 爆風に飛ばされた砂利や小石を浴び、周囲を見回すリバース。そして、いつの間に追い付いたのか、堤防の上からこちらに手を挙げる茜の姿を見つける。それを見てリバースは安堵の息をついてドライバーを外す。

 血まみれの健は尻もちをつくように、その場に腰を落とす。そのまま、口元に笑みを浮かべ、右手を挙げて茜に応える。そして明るく自分を照らす月を見上げ、笑みを浮かべたまま深く息を吐き出した。

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