みかんが紫京院ひびき率いる天才チームに引き抜かれ数日。我は……いや、モノローグで着飾る必要もないか、私は1度もプリパラに行こうとすらしなかった
「はぁ……」
私は時々予知夢を見る。でも、それで起こった結果は夢の真逆を行くことが半分くらいあって無視はできなかった。だからそれをママに貰った分厚いノートに全部したためる。それがいわゆる預言書というやつだ。
幸運なことに、今は良い事ばかり起きているけれど、いつ、どこで、何か悪いことが起こるかもしれない
予知夢が悪夢ばかりだから、いつからか自分が「悪魔」なんじゃないかと思い始めた。これが私が今悪魔キャラをやっている最大の理由だ。それで、いつの間にかあとに引けなくなったけど。保育園時代の悪魔役?まぁアレも理由の一つといえばそうなるけど、その動機がこれってことで。
「うぅ……お゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ」
今日見たやつは過去最大に辛かったな。思わず吐いてしまうほどに
嫌だよ、みかん。お願いだから
私を、嫌いだなんて言わないで
プリパスが鳴る。相手は……らぁら?
「良かった繋がった!……大丈夫?」
「何のことかさっぱりである」
「だって……」
言いたいことはわかる。何日もプリパラはおろか学校にすら通わず、引きこもっているのだから。みかんとの今後を憂い寝ることすら出来ずの私は、らぁらには醜く映っただろう
「今日、ひびきさんたちセレパラ歌劇団の公演があるよ。今回はみかんちゃんが主役だって」
「……やはりみかんはミカエルであったな。日に日にすごいところが見えてくる。さすが我が眷属!はっはっはー!」
腰に手を当てて高笑い。だってこれが皆が知る私だから
「あろまちゃん、一緒に見ようよ」
優しいよね、らぁらは
「済まぬならぁらよ。我はこれより預言書の校正をせねばならぬ。我の代わりに応援してやってくれ」
「かしこまっ!」
……行くか
もう1枚のプリチケ、「めると」は悪魔キャラに疲れたら使うといいと赤井めが兄ぃに頂いたものだ。めるととしてプリパラにいる間は、素の自分でいられる。これを使うのはプリパラポリスにみかんが行った時以来だ
……また、みかん、か
「おーいめると!ひっさしぶりー!」
「ドロシーちゃん?」
「今からセレパラ歌劇団のステージがあるんだよ。一緒に見ようぜ」
「う、うん」
演目は何とかっていうバンドの人気楽曲をミュージカルにアレンジしたもの。子供の頃一緒に冒険したみかんが演じるヒロインが魔王の呪いで眠りにつく。紫京院ひびき演じる主人公は呪解するために1人きりで冒険する、という内容だ
みかんはただ眠るだけ。それだけなのに紫京院ひびきの喜怒哀楽に合わせるかのように同様の雰囲気を演出している。因みにそふぃは旅の道中出てくる行商人、シオンはラスボス、ファルルはその側近という役回り。完成度は高かった
ふと、自分がらぁらに言ったことが頭をよぎる。みかんの凄いところが日に日に見えてくる。天才と呼ばれるのも頷ける
クライマックス。無事に目を覚ましたみかんが紫京院ひびきと手を携えキスを交わすシーンなのだと本能的に理解した
「……ごめんドロシーちゃん。私ちょっと先に帰るね」
「ん?オッケー」
見るのが辛い。帰るだなんて嘘をついてプリパラの端っこへ逃げる。縮こまっているとなぜか涙が溢れ出した
「探したぞーめると。やっぱ帰るって嘘だったんだ」
「ドロシー……ちゃん?どうして?」
「その気持ち悪い喋り方やめろよ。お前、あろまなんだろ?」
「……」
なんでバレてるんだろう
「わかりやすすぎなんだよ。劇中、みかんばっか見てただろ。それに加えてラストシーンで逃げた。最初はみかんのファンだと思ったけど、それにしちゃ様子がおかしくて、めが兄ぃに脅して聞いたらあろまだって教えられたんだよ」
「だからって、私を追いかける理由になってないよ」
「らぁらのヤツに頼まれたんだ。あろまがいつ壊れてもおかしくない。だから、力になってやってくれって」
「らぁら……」
「『めると』があろまなのはボクとめが兄ぃしか知らない。だから……何があったか話してくれよ。お前の力になりたいんだ」
「……ドロシーが男だったら惚れてた」
「るっせ」
私は結局全部話した。預言書のネタばらしに始まり彼女が成長するならと天才チームに行くことを後押ししたこと、それを今になって後悔して寂しく思っていること
そして、「あろまなんか大嫌い」と夢で言われたこと
嗚咽混じりに喋る私の話をドロシーは邪魔することなく聞いてくれた。全部話したら頭を撫でながら抱きしめてくれた。その優しさに甘えるように彼女の腕の中で大泣きした
きっと私はキスシーンと夢の内容をリンクさせてしまったのだと思う。そして「みかんがいない」という寂しさが如実に出て、私は今泣いている
「ボク、ここで待ってるからさ、『あろま』として入り直してよ。『あろま』に言いたいことがあるから」
自分で言うのも気恥しいが、人気アイドルが数日振りにプリパラへ帰ってきたということで、場は騒然としていた。何をしていたのかと聞かれまくったが地獄へ行っていたとか色々言って、人を待たせているからとそそくさとドロシーの元へ
「待ってたぞーあろま!……前置きとかどうでもいいだろうから早速本題に入るね。あろま、お前みかんのことが好きなんだろ」
「当然だ。アロマゲドンの仲間として、親友として、みかんのことは好いておる」
「違う違う、恋愛対象として好きなんでしょ」
「へ?」
「なななな何を言い出すのだ!おぬし莫迦なのか!?」
「だってそうでもなきゃキスシーンで逃げたりしないぜ?」
「ぐぬぬ」
「じゃあアレだ、証拠見せてよ。そんな目で見てないって証拠」
「え?ってちょ、ドロシー!やめるのだ!」
首筋を食み、そのまま下へ、鎖骨へとドロシーの舌が下っていく。これ以上はなんというか倫理的にアウトな気がする
「ねぇ、ボクとセフレになろうよ。いつでもどこでも気持ちよくしてあげるよ?」
耳元で猫なで声で囁く
「ボクと愛し合おうよ」
私なんかより、ずっと悪魔だ。ドロシーの顔を力いっぱい引っ叩く
「……このことは謝らんぞ」
「いいって。ボクもやりすぎた。だから早く行けよ」
「往くぞ、ガァルル!」
「ガァル!」
「……やっぱボク、ヒール役は苦手だな」
暴れ回るガァルルの力を借りてセレパラの控え室、白玉みかんの表札がある部屋へ。ノックするのに少し勇気が必要だった
ドロシーに肉体関係を迫られた時、私は「みかん、助けて」と祈った。ドロシーの目付け役でもあるシオンやレオナ、ウサギではなく。あるいはガァルルでもなく、みかんが真っ先に浮かんだ。その意味を確かめるために、私は来た
ドアをノックすると、「はーい!」といつも通り元気な声が帰ってきた
「入るぞ」
高そうなお菓子を頬張るみかんが私を視認すると、それを放り捨て駆け寄り私を力いっぱい抱きしめた
「お、おい!離せ!苦しいではないか!」
「やーなのー!ずっと心配だったのー!!」
抱きしめる力が余計にこもる。心から心配して、やっと会えたというのが伝わってくる。だったら尚更私は本心で向き合わなきゃね
「私は大丈夫。だから離して?……話があるの」
高慢で高飛車な「悪魔」はここにはいない。いるのは「黒須あろま」だ。それに気付いたのかちゃんと離してくれた
「ここ数日、ずっとみかんのこと考えてた。私とみかんの違いとか、そんな所から」
ありがとう、ドロシー。貴女のおかげで本心に気付けた
「私、みかんのことが好き。何より一番好き」
「?それはみかんも一緒なの!」
「違うッ!違うの!」
今度は私から抱きしめ、そしてキスを交わす。恐らく紫京院ひびきのものと思われる知らない香水の匂いがして少し胸が痛む
当然のことながら、みかんは驚き反射的に私を引き剥がした
「私の『好き』はこういう意味!……だから気持ち悪がられるかもって……怖くて……」
みかんは私を責めることなく話を聞いてくれている
「あの日からみかんの凄いところが日に日に見えてきた。でもそれはただ憧れみたいなだけだった筈なのに、それだけじゃ説明できない感情があることに気付いたの。それがさっきのキス……そっちの意味での好きって気持ち」
「……やっぱり、一緒なの」
「え?」
「劇でひびきさんにキスされた時、正直気持ち悪いのと同時に寂しかった。でもあろまにされたら嬉しくて幸せだったの」
「それって…」
「うん。あろまのことが好きってこと。だから、こっちこそ──」
言い終える前にもう一度口付けを交わす。これが私の答えだ
「みかんよ、これからは恋人として我が隣に居てくれるか?」
「もちろんなの!」
恋人としては初めてとなるキス。胸いっぱいに広がる幸福を、私はきっと忘れない
────
あるところに、それはそれは泣き虫な悪魔の女の子がおりました。その子を見かけた神様の友達が「どうしたの?」と声をかけると、「天使の友達が遠くへ行ってしまった」と答えました
すると神様の友達は自分を犠牲にして『天使の友達』に会うきっかけを作りました
泣き虫な悪魔は怪獣と一緒にその子の元へ赴き本心を伝えました。「貴女のことを愛している」と
天使は笑って「私も同じ気持ちだよ」と答えました
そうして2人は怪獣と一緒にいつまでも幸せに過ごしたそうな。めでたしめでたし
────
「あろま、起きるガァル!」
「ん?……ああ、寝ていたのか」
さっきの予知夢は……私達のことと仮定すれば結末以外は叶ってるな。ということは──
「今日は神アイドルグランプリにエントリーする日ガァル!」
「あろま、早く行くなの!」
「わかっておる、片付けたらすぐ行くから先に行っておれ!」
「了解ガァル!みかん、行こう!」
今後に少し胸を膨らませながら二人のあとを追う。これは、ガァルマゲドンが正式にチームとして認められる、ほんの数時間前の物語だ