個性豊かな5人組が異世界最強!?   作:キバリン

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前回と比べる4倍ぐらいになってしまった…。

戦闘の描写ってこんな感じでいいんですかね…?


ありふれたトラップ

 現在、由良達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

 

 由良としては、ダン○ちのような陽気な入口やS○Oの様なモンスターが蔓延る入口を想像していたのだが、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控え、多大な死者を出さない措置だろう。 

 

 入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。まるでお祭り騒ぎだ。

 

 浅い階層の迷宮はいい稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したのだとか。入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているらしい。

 

 由良達は、お上りさん丸出しでキョロキョロしながらメルド団長の後をカルガモのヒナのように付いていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明りの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。

 

 一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。暫く何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天上の高さは七、八メートル位ありそうだ。

 

 と、その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

「アレはラットマン…」

 

 唐突に、ハジメが声を漏らす。

 

「ほう、良く勉強しているなハジメ。よし、光輝達が前に出ろ。あと、由良達もな。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれは確かにラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 自分よりも早く魔物の名前を言ったハジメに関心していると、その言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。

 

 灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが……二足歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。

 

 正面に立つ光輝達――特に前衛である雫の頬が引き攣っている。やはり、気持ち悪いらしい。

 

 間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎、一久、剛の五人で迎撃する。その間に、前衛と後衛の間に居た由良が、持ち前の敏捷を生かし、ラットマンの横の壁や足元の地面に複数回触れ背後に回っている。香織と特に親しい女子二人、メガネっ娘の中村恵里とロリ元気っ子の谷口鈴、真子と尚が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。二パーティーによる訓練通りの堅実なフォーメーションだ。

 

 光輝は純白に輝くバスタードソードを視認も難しい程の速度で振るって数体をまとめて葬っている。

 

 彼の持つその剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、お約束に漏れず名称は“聖剣”である。光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという“聖なる”というには実に嫌らしい性能を誇っている。

 

 龍太郎は、天職が空手部らしく“拳士”であることから籠手と脛当てを付けている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだという。龍太郎はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士のようだ。

 

 雫は、サムライガールらしく“剣士”の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員をして感嘆させるほどである。

 

 一久は天職の“守護者”らしく大盾を持ち動きやすいように軽めの鎧を着込んでいる。光輝達より最前線に立ちラットマンの攻撃を見事に受け止め、カウンターと言わんばかりにシールドバッシュを喰らわせていた。

 

 剛は天職の“剣聖”だが、“勇者”の光輝に劣らず、彼の持っている剣は“炎帝”である。火属性の性質が付与されており、斬った相手に火傷を負わせたり、体毛がある敵には傷口から火が回るという、何とも殺すという分野に適している能力である。その為か、屠ったラットマンは灰になり跡形もなかった。

 

 背後に回っていた当の由良はと言うと、地面へ手を付き「錬成」と声を出していた。すると、先程手を着いた場所から剣山の様に地面が先を尖らせて飛び出し、串刺しにしていた。

 

 ハジメ達が光輝達の戦いぶりに見蕩れていると、詠唱が響き渡った。

 

「聖なる大地よ、敵を縛り付け、その場に留めん、“重力制御”」

 

「「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ、“螺炎”」」」」

 

 五人同時に発動sita

重力制御により地面に這いつくばるラットマン達を螺旋状に渦巻く炎が吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。「キッーーー」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。

 

 気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。他の生徒の出番はなしである。どうやら、光輝達召喚組の戦力では一階層の敵は弱すぎるらしい。

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

 生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 メルド団長の言葉に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。

 

 そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。

 

 そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。現在の迷宮最高到達階層は六十五層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十層越え、二十層を越えれば十分に一流扱いだという。

 

 由良達は戦闘経験こそ少ないものの、全員がチート持ちなので割りかしあっさりと降りることができた。

 

 もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。

 

 この点、トラップ対策として、フェアスコープというものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。

 

 従って、由良達が素早く階層を下げられたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからだと言える。メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

 メルド団長のかけ声がよく響く。

 

 ここまで、ハジメは特に何もしていない。一応、由良達5人組や騎士団員が相手をして弱った魔物を相手に訓練したり、地面を錬成して落とし穴にはめて串刺しにしたりして、一匹だけ犬のような魔物を倒したが、それだけだ。

 

 由良の紹介で由良達のパーティーに加えてもらえたものの、あの5人みたいに突出したステータスも無かったので、騎士団員に守られながら後方で待機していただけである。何とも情けない限りだ。それでも、実戦での度重なる錬成の多用で魔力が上がっているのだから意味はある。魔力の上昇によりレベルも二つほど上がったのだから実戦訓練はためになるようだ。

 

(ただ、これじゃあ完全に寄生型プレイヤーだよね、はぁ~)

 

 再び、騎士団員が弱った魔物をハジメの方へ弾き飛ばしてきたので、溜息を吐きながら接近し、手を突いて地面を錬成。万一にも動けないようにして、魔物の腹部めがけて剣を突き出し串刺しにした。

 

(まぁ、なんか錬成の精度が徐々に上がっているし……地道に頑張ろう……)

 

 魔力回復薬を口に含みながら、額の汗を拭うハジメ。騎士団員達が感心したようにハジメを見ていることには気がついていない。

 

 実を言うと、騎士団員達もハジメにはもちろんの事、由良にさえ全く期待していなかった。しかし、先の由良の動きに感嘆し、もしやと所在無げに立ち尽くすハジメに魔物をけしかけてみたのだ。もちろん、弱らせて。

 

 騎士団員達としては、ハジメが碌に使えもしない剣で戦うと思っていた。ところが実際は、錬成を利用して確実に動きを封じてから、止めを刺すという騎士団員達も見たことがない戦法で確実に倒していくのだ。錬成師は鍛治職とイコールに考えられている。故に、錬成師が実戦で錬成を利用することなどあり得なかった。

 

 ハジメとしては、何もない自分の唯一の武器は錬成しかないと考えていたので、鉱物を操れるなら地面も操れるだろうと、図書館にいた時由良と話し合い情報を共有し鍛錬した結果なのだが、周りが派手に強いので一匹相手にするので精一杯の自分はやはり無能だと思い込んでいた。

 

 ちなみに本邦初公開である。王都郊外での実戦訓練で散々無様を晒した末、考え出した戦法だ。

 

 小休止に入り、ふと前方を見ると香織と目が合った。彼女はハジメの方を見て微笑んでいる。

 

 昨夜の“守る”という宣言通りに見守られているようで何となく気恥ずかしくなり目を逸らすハジメ。若干、香織が拗ねたような表情になる。それを横目で見ていた由良が玩具を見つけたような悪い笑みを零し、小声で話しかけた。

 

「ハジメ、こんな迷宮の中で白崎とラブコメとは、随分余裕だな?」

 

 からかうような口調に思わず顔を赤らめるハジメ。怒ったように由良に反論する。

 

「べ、別にラブコメなんてしてないよ!?それに、白崎さんが僕に気があるなんて思えないし…!?」

 

「この唐変木め」

 

「…鈍感男」

 

「これでは白崎さんが可哀想ですね…」

 

 一久、剛、真子と三者三葉に辛辣な言葉を並べる。「えぇ!?僕何かした!?」と言葉を零すと、今度は尚が暴露という地雷を設置していく。

 

「まぁでも、由良も大概だと思うけどね〜」

 

「…?なんの事だよ?」

 

「だって〜。さっきから八重樫さんも由良のこと見てるよ〜??」

 

「なにッ!?」

 

 尚の言葉を正直に受け止めバッと振り向くと、確かに雫がオレの方を見ていた。それも少し拗ねた顔で…。暫く見つめ合っていたが、雫の方から目を逸らされてしまった。

 

「ほう。由良お前、昨日何かあったな?」

 

「…な、なんの事だか、ワカラナイナー……」

 

「…とぼけても無駄だ、ネタは上がってる」

 

「昨日、僕達みてm」

 

 真子が言葉を言おうとすると慌てたように3人に口を抑え込まれる。その様子に、由良がふらりと立ち上がる。

 

「おい、お前らまさか」

 

「「「「見てない。由良が八重樫と二人っきりだったなんて見てない」」」」

 

「やっぱり見てたんじゃねーかー!」

 

 「ウガー!」っと由良が4人を問い詰め始める。そんな様子を見ていたハジメは、前の世界だったらこんなに笑う事も無かった楽しい喧騒に嬉しさを噛み締めていると、ふと視線を感じて思わず背筋を伸ばす。ねばつくような、負の感情がたっぷりと乗った不快な視線だ。今までも教室などで感じていた類の視線だが、それとは比べ物にならないくらい深く重い。

 

 その視線は今が初めてというわけではなかった。今日の朝から度々感じていたものだ。視線の主を探そうと視線を巡らせると途端に霧散する。朝から何度もそれを繰り返しており、ハジメはいい加減うんざりしていた。

 

(何なのかな……僕、何かしたかな? ……むしろ無能なりに頑張っている方だと思うんだけど……もしかしてそれが原因かな? 調子乗ってんじゃねぇぞ! 的な? ……はぁ~)

 

 深々と溜息を吐くハジメ。香織の言っていた嫌な予感というものを、ハジメもまた感じ始めていた。

 

 一行は二十層を探索する。

 

 迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。

 

 現在、四十七層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。トラップに引っかかる心配もないはずだった。

 

 二十層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一層への階段があるらしい。

 

 そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。一行は、若干、弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。

 

 すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

 メルド団長の忠告が飛ぶ。

 

 その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。

 

「よし…。ハジメ!あの魔物はなんだか答えてみろ!特徴も一緒にな!」

 

 この前のラットマンの出来事以来、メルド団長は魔物の名前、特徴を全てハジメに答えさせてきていた。それだけ、彼の勉強した知識を買っているのだろう。

 

「は、はい!アレはロックマウントです。二本の腕は剛腕だから注意かな」

 

「その通りだ!全員気をつけろよ!」

 

 メルド団長の声が響く。光輝達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で、一久が大盾で弾き返す。光輝と雫と剛が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 

 龍太郎と一久の二人壁、更には由良の錬成された土壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

 

 直後、

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

 部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

 

 体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

 

 まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 

 ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。

 

 香織達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。

 

 しかし、発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

 

 何と、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。香織も恵里も鈴も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。

 

「こらこら、戦闘中に何やってる!」

 

 慌ててメルド団長がダイブ中のロックマウントを切り捨てる。

 

 香織達は、「す、すいません!」と謝るものの相当気持ち悪かったらしく、まだ、顔が青褪めていた。

 

 そんな様子を見てキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊、我らが勇者天之河光輝である。

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

 どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて! と何とも微妙な点で怒りをあらわにする光輝。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。

 

「万翔羽ばたき、天へと…「馬鹿!こんな洞窟でそんな大技だして崩落でもしたらどうすんだよ!」」

 

躊躇なく技を繰り出そうとした光輝の詠唱を由良が止めに入る。それに対し、光輝は叫ぶ。

 

「何をするんだ由良くん!あの魔物は香織達に恐怖を与えたんだぞ!」

 

「アレは気持ち悪がってただけだ!現に団長が切り伏せてくれただろ!ここでお前の全力は危なすぎる、俺たちに任せろ!」

 

そう言い切ると、一久、剛、由良の三人がロックマウントの前に出る。

 

「よし、行くぞ二人とも」

 

「うい!」

 

「…了解」

 

 ロックマウントの剛腕を一久が大盾で防ぐ。その直後隙だらけの脇腹を剛が切り裂き、痛みに叫びよろけた所を一久がシールドバッシュを当てる。一久の後ろに隠れていた由良が錬成でロックマウントの頭上を陥没させ岩の雨を降らせ押し倒す。そのままロックマウントは顔から地面にキスをすると反撃する間もなく、その首を剛が切り落とした。

 

 その光景を見ていた光輝達。洗練された連携に、敵に何もさせることなく一方的に叩きのめした由良達に驚きを隠せずにいた。

 

 その中でもメルド団長と騎士団の一部の騎士は感心すると同時に疑念を覚える。この世界に来て間もない平和の国にいた子供の彼らが、なぜここまで戦えるのだろうかと。そんな彼らの疑念を知らない三人は意気揚々と戻ってくる。

 

「よっし!」

 

「ナイス盾役、一久」

 

「…由良も頭上の壁の瓦解は名案だったな」

 

 そう、三人が先の戦闘の感想を言いながら戻ってきた。彼らに対する光輝達からも歓声の声が上がっていた。

 

 パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

 

 そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。

 

「素敵……」

 

 香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。もっとも、雫と五人組、そしてあと一人だけは気がついていたが……

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 

 メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長! トラップです!」

 

「ッ!?」

 

 しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。

 

 檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。

 

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

 部屋の中に光が満ち、由良達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 由良達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 

 尻の痛みに呻き声を上げながら、ハジメは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達や由良達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

 どうやら、先の魔法陣は転移させるものだったらしい。現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。

 

 由良達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

 

 橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。由良達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 

 それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

 

 しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現しからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……

 

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

“まさか……ベヒモス……なのか……”

 

 

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