「あったわカズマ! このクエストよ!」
「ん? なになに……ってアホか! 黄金の竜とか勝てるわけないだろ!」
「でもこのクエスト報酬金が1000万エリスもあるのよ!?」
「それで死んだら元も子もないだろうが!」
と、ギルド内で言い争いをする二人。
なんであら度ってるのかと言うと……見てもらっている通り、アクアさんがお金に目が眩みまくってるのが原因だ。
「まったくカズマは貧弱ね……」
「おいお前それは聞きづてならないな。じゃあお前一人で行って来いよ俺は家に帰る」
「あああああ! ごめんなさいカズマあああああ!」
なんか……夫婦喧嘩みたいだな。口に出したら殺されるから言わないけどさ
「ったく……もうちょっと簡単な奴にしろよ」
「しょうがないわね……」
と、また掲示板に目を向けるアクアさん。
……低い難易度の奴がいいな……さっきのやばそうなやつとか絶対死ぬから……。
「じゃあこれにしましょう!」
「ん? なになに……ってアホか! 前これに行って死んだだろうが!」
「大丈夫よ、今は冬将軍はいないから……」
「は? じゃあ雪精もいないんじゃないか?」
……なに言ってるのかわからない。専門用語が多すぎる。
「なあ六花、何言ってるのか分か……あれ?
」
六花さっきまで隣に居たのに……と思って周りを見渡すと。
「違う。ここをこうすれば最強になる」
「おお! さすが六花です! その調子で爆裂魔法を……」
めぐみんさんと盛り上がっていた。
本当に仲良くなったんだなあの二人。よかったよかった。
そんなことを考えていると。
「決めたわ! これにしましょう!」
「あ、決まったんですね」
と、アクアさんが近づいてきて。
「今回行くクエストは……」
「クエストは……?」
「ずばり! 雪精討伐よ!」
おおお! ……って。
「すいません、雪精ってなんですか?」
「倒すと冬が半日短くなると言われてるモンスターよ」
「そんなのがいるんですね」
「しかも! 一匹十万エリスなのよ!」
「十万エリス……?」
やばい、この世界のお金の基準が分からない……。
と、カズマが。
「一エリス一円だ」
「ということは……えええええええ!?」
「ふふふ……驚いたようね」
「すごいじゃないですか! ……いやでも、そんなに報酬が高いのって敵がとてつもなく強いとか……」
「それがこの雪精、超弱いのよ」
「弱いんですか?」
「カエルよりも弱いわ」
「よわっ!」
「まあそう言うことで、初心者にはいいクエストなんだよ。欠点と言ったら、雪精がいるのは雪山だから寒いのと、あとはあいつがいることだな」
「……あいつってなに?」
「まあ今は気にしなくていいぞ。それよりもさっさと行こうぜ、日が暮れたら大変なことになるからな」
「あ、ああ……」
“あいつ”が気になりながらも、カズマに同意する。
……なんか、さっきまではワクワクしてたけど一気に緊張が押し寄せてきた……。
どうしよう、なにもできないかもしれない……。
よほど緊張が顔に出ていたのか、ダクネスさんが近づいてきて。
「まあそんなに緊張するな。初めてなんだ、私たちに任せておけばいいさ」
「あ、ありがとうございます」
ダクネスさん、優しいな。……やばい、ますますダクネスさんが分からなくなってきた……。
ドMの変態で攻撃が当たらないクルセイダーで優しいってどうやって理解すればいいんだ……。
ま、まあそれは後で考えるとして。
「六花行くぞー」
「ふふふ……我が力の錆にしてくれる……」
力の錆ってどういうことなんだ……と、戸惑いつつ。
初めてのクエストに向けて、俺は出発したのであった。
疲れた……結構歩いた……。
山を登るのがこんなにきついことだとは……。
いや、それはまだましかもしれない。だってここ……。
「めっちゃ寒いいいいい!」
「ふ、ふふ、この程度の冷気、邪王真眼なら簡単に抑えることができる……」
「い、いいいんですよ六花、私も寒いですから……」
「な、なんか今日一段と寒いな……」
「そうか? 前来た時と変わらないと思うが」
「体力がバカ高いクルセイダーと俺達を一緒にするな。あとお前はドMなんだから少し寒いくらいは気持ちいいんだろうがこの変態が」
「ふふ……カズマもだいぶ言葉遣いが分かってきたようだな……」
ダクネスさんがまたドMを発動させてるけど気にしないでおこう。
と、そんなことを考えているとカズマが。
「お、いたぞ」
カズマが指をさした方向を見ると。
なんかふわふわした白いのがいた。
「あれが雪精だ」
「これが……雪精」
なんか可愛い……これがモンスターなんて信じられないんだけど。
「さ、行くぞー」
と、小刀を取り出したカズマ。
「とりゃあ!」
と、雪精に刀を振り下ろす。本当に弱いんだな、一撃で倒れた。
「よし、俺も……」
よく狙いを定めて……。
「はあああ!」
と、右手を前に突き出す。すると。
予想以上の炎が出た。
「ちょ! 勇太やりすぎ!」
「あああ! ごめんごめん!」
焦りながら炎の調節をする。かっこ悪い……。
「ふ、ふう……」
でも、一応モンスターは倒せた! これが初ってわけじゃないけど、正式に倒したのはこれが初めてだしいいよね。うん。
「我が力を喰らうがいい!」
と、隣で六花が手を振り下ろす。すると、
「な、なんだあれ……」
「我が邪王真眼にかかればたやすい事よ」
なにか刃のようなものが飛んで行って、雪精を倒した。すごい。かっこいい。
「私も負けてられませんよ! 行きますよ……!」
と、めぐみんさんが杖を構えて詠唱を始める。
「あんまり近いとこにするなよー!」
「分かっていますよ! 行きますよ……!」
と、遠くにいる数匹の雪精を魔法陣が取り囲む。
「わが爆裂魔法の錆にしてくれるわ! エクスプロージョン!!!」
途端に、とてつもない爆風が襲う。
前もだったけど、やっぱりとんでもないな爆裂魔法。こんなのに当たったらひとたまりもない……。
「ふっ……永遠に眠れ、紅蓮に包まれて……」
魔法が終わった途端に、決め台詞を言ってぼふっと雪の上に倒れるめぐみんさん。
倒れるとすぐにめぐみんさんを仰向けにして雪精討伐に戻るカズマ。
なんか手馴れてるな……多分だけど、こんなこと前にもたくさんあったんだろうな。
そんなこんなで、俺達がしばらく雪精を狩っていると。
「そろそろ帰るかー」
と、カズマ。
「そうだな、みんなたくさん狩っただろう」
「俺も初クエストにしてはいい結果だったんじゃないかな?」
「邪王真眼の力を遺憾なく発揮できた」
「ふふふ……久しぶりに爆裂魔法の使い甲斐がありました……」
「私も雪精をたくさん捕まえられたわ!」
なんかアクアさんだけおかしかったような気がするけど……満場一致で満足したということで。
「んじゃ帰るか」
今日は帰ることになった。
うん、自分で言ったらあれだけど、なかなかいい結果だったと思う。
「初クエストにしてはなかなかのもんだったぞ」
「あ、ありがとう」
カズマがこう言ってくれるんなら大丈夫だったってことだよな。よかった、普通にできて……。
だけど。問題はここからだった。
みんなで和気藹々と話をしながら下山しようとした直後。
それは起こった。
「うわっ……なんか急に風が強くなったな」
「そうだな……って、あれ?」
奥になにか見えるんだけど……。
「あのー、あれはなんでしょうか?」
「? あれってなんですか?」
「ほら、奥に見えるなんか大きいの」
「ああ、あれは冬しょ……冬将軍!?」
「なっ!? おいアクア! 今日は冬将軍が出ないんじゃなかったのかよ!?」
「お、おかしいわ……だって今朝……」
「ああもう! どうすんだよこれ!?」
「どうしようもなにも、逃げるしかないですよ!」
「冬将軍の一撃……どんなものなんだろうか」
「なにドM発揮させてんだアホ!」
ふ、冬将軍ってなんなんだ……? 俺と六花だけいまいち理解が追いついてないんだけど……。
「なあカズマ、冬将軍ってなんなんだ?」
「え!? ああ、二人は知らないんだったな」
と、神妙な面持ちで。
「冬将軍はな……雪精たちの長で、ギルドからの懸賞金がかかってるほど強いモンスターで……」
もうやばい気しかしない単語を並べたあとに、カズマが言ったことは。
「そして、俺を殺しやがったやつだ」
…………どうやら。
このクエストの裏が、分かったような気がします……。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
投稿が一日遅れてしまい、申し訳ありません。
次回はきちんと投稿できるように頑張りますので、どうかご容赦下さい…。
それでは、次回も読んで頂ければ幸いです。