ソフィアと二人で暮らすことになった。時々バイロンが来て気にかけてくれる。ソフィアはその度にめちゃくちゃ緊張してた。バイロンの前だとソフィアは固まりがちだと思う。
ふと両親とかはいないのかと聞いたらソフィアは俯いて首を横に振った。
今日の朝食はソフィアが個人的な趣味で育てているという花のジャムを添えたパンと魚のスープだ。適当に魚や野菜を煮込んで塩を入れているだけなのだというけど、適当でこれが作れるのは才能だと思う。
「ソフィアの料理って美味しいよな」
「ありがとう」
「料理とか掃除とか、そういうの好きなのか?」
するとソフィアは恥ずかしそうに固まった。
「……えっと、その」
「家庭的で良いと思う」
ソフィアはえっ、という顔で見上げてきた。
「弱くて情けないとか言わないんだね」
「なんだよそれ、そんな事言う奴いるのかよ」
「……この国だとあまり好かれないんだ、わたしみたいな弱い女は」
その時、誰かが家に来た。
「バイロンさんだ。……今行きます」
ソフィアの雰囲気が変わった気がした。一瞬だけ冷たくなった気がして、でもすぐ気のせいだと気づく。
「ソフィア?」
「どうしたのお兄ちゃん」
「何でもない」
「やあ二人とも。ここでの生活は慣れたかい」
「少しずつ」
「それは良かった。今日は君たちのこれからについて話したいんだ」
これから。ちょっとワクワクする。
「わかった」
「改めて自己紹介しよう。私はアレックス・バイロン。戦いはまあできないこともないが本業は研究者だ」
バイロンは髪を弄りながら話す。
「『ポータル』。簡単に言えば瞬間移動できる扉の研究さ」
「瞬間移動?」
「私達が『宝の浜』と呼んでいる場所がそうだ。魚が流れ着いていただろう?」
「ああ、皆で魚食べたの美味しかったな」
バイロンは楽しそうに色々説明してくれた。
ポータルは基本的にそこにあるものであって自由な場所に移動させられるものではない。だからバイロンはこの場所に村を作った、らしい。
「よく見つけられたなポータル」
「実は私、特殊体質でね。魔力が見えるんだよ」
「へえ……俺はどんな感じに見える?」
「白だね。他者を癒し守る色彩。ノクサスでは珍しいタイプだ。君ほどの守り手はこの国で初めて見たよ」
「他はどんな色が多いんだ?」
「赤と黒かな。攻撃的な魔術が多数派だね」
将来的に俺たちに旅をしてほしいとバイロンは言った。ポータルがちゃんと動いているかどうか確かめるためだって。
「そうだ。万が一にも浜に人間が流れ着いてきたら必ず私の所に連れてくるように。必ずだ。……約束してくれるね?」
「あ、うん。約束」
バイロンは一瞬ソフィアを見て、それから俺を見た。
「良い心がけだ」
人なんてそう簡単に流れてくるものじゃないだろ、なんて思ってた。でも、その時は思ったよりずっと早く訪れた。