Zelos - the Dreamer   作:Moa

6 / 51
花畑の乙女

「ゼロス、この男は他に何か言ってなかったかい?」

「……これで全部」

 バイロンはソフィアを一瞬見てからゼロスに視線を戻す。

「それならいいんだ」

 

 バイロンは拘束した男から話を聞きだすといい、ソフィアはそこに同行した。

 向かう直前、ソフィアはゼロスの頭を撫でて言う。

「おやすみ、お兄ちゃん」

 

 

***

 

 息を吸い込むと、穏やかな自然を感じることができる。花畑だ。ピンク色が一面に広がっている。

 どうやらソフィアが育てていたものと同じだ。

 

 花畑を見回すと、長い黒髪の女が座っていた。そういえば前にも彼女の夢を見たような。

 

 夢の乙女はゼロスに気づくと走ってきた。

「ふふっ……また会えた」

 乙女は嬉しげにゼロスを見つめる。

「そうだな」

「ゼロス! その、少し話さないか」

「良いけど」

 

 適当に花畑に座る。

「じゃあさ、まず名前教えてほしいんだけど」

「は?」

 乙女は驚いている様子だった。

「だから名前だよ」

「――――」

 乙女は口を開く。が、聞こえない。

「ごめんもう一回」

「――――」

 同じだ。何度聞いても。

 

 5回目くらいで乙女は流石に怒った。

「からかうのもいい加減にしないか!」

「本当に聞こえないんだって」

 地面に文字を書くのも試したが何故かゼロスには理解ができない。でも、他の文字は読める。だが、時々意味が理解できないものもある。

「これはわかるか」

「名前の部分だけわからない」

「じゃあこれは」

「『ゼロス、お前は私の』まで。ここで途切れてる」

 

「……伝えられない? それなら別の話をしようか。何か。ゼロス……その、綺麗だろ? あ、ほら、花の話」

「そうだな」

 花を見せる乙女にゼロスは同意する。

「……この花って珍しいんじゃないのか」

「何を言ってるんだ、どこにでも咲いているじゃないか」

 乙女は意味がわからないとでも言いたげに答える。

「術師の薬にもなるしな」

「そうなんだ」

「苦いが効果的なんだ、これ」

 

 

 その時、空が文字通り割れた。割れ目の間には果てのない漆黒が広がっている。

 

 舞い上がる風。花畑の一角が地面ごとえぐり取られ空へと吸い取られる。足を取られゼロスは空中に浮かび上がる。割れ目の黒へとまっすぐゼロスは引き寄せられる。

「掴まれ」

 夢の乙女は手を伸ばす。

「ゼロスっ……!」

 乙女は表情を歪めながらゼロスへと届こうともがく。指先が一瞬触れ合い引き離される。ほんのわずかな差が2人を阻んだ。

 

 地上から遠ざかる。涙を浮かべる乙女がただこちらに手を伸ばし続ける。ゼロスも手を伸ばしているが風は非情に2人を遠ざけていく。

 

 

 

***

 

 ベッドの上で目を覚ます。眠っていたようだ。

 

 扉の開く音。捕らえた例の男から話を聞き出し、バイロン達が戻ってきた。

 

「どうだった?」

 起き上がろうとするゼロスをバイロンが静止する。

「無理に起きなくていい。……アイオニアから流れてきた人間だ。全部終わったし彼個人から危険を得ることはもうないよ」

 お言葉に甘えて仰向けになったまま話を聞く。

「ん、良かった」

 

「ゼロス、ソフィアと共に旅に出てくれ」

「えっと……なんだって?」

「旅だよ、2人で。身体を癒してからでいいが早急に」

「ごめんもう少し詳しく説明してくれない?」

 

 死ぬまでに研究を完成させたい。ポータルの動作を確認したい。彼はそのようなことを言っていた。浜から男が流れてきて、焦っているように見えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。