「ん......んぅ...」
私はぼやけた視界でゆっくりと目を開けると白い天井が視界に映し出される。私はベッドの上で寝かされていた。周りにはクリーム色のカーテンが掛かっている。起き上がろうとするも体が酷く痛んで動けず、私はふと視線を自分の足の方へと向けた。ベッドの脇に両腕を枕代わりにこちらに顔を向けて寝ている銀髪の女性がそこには居た。
その顔はいつもの美しさは陰り、涙の跡が見えた。
「ぁ......ゅ.....きぃ....」
私は声を出そうとするも掠れて上手く出せない。体も節々が痛んでピキピキ鳴っている。最愛の人が目の前にいるのに、手が届かない。
私が四苦八苦しているとその人はゆっくりと目を覚ました。
「んん.......ふあぁ...」
小さなあくびをして目を擦るその姿はまるで小動物のようでとても可愛らしい。
「おはよぅ...羽沢さ...ん.....、え...!?」
私の顔を見ると眠気が一気に覚めたのかキョトンとした顔になる。そして彼女は私をぎゅっと抱きしめた。
「よかった...!もう目を覚まさないかと心配で....!」
その声で顔を見なくても涙を流しているのが分かった。私はそんな友希那の頭をそっと撫でてあげる。友希那の相変わらず甘い柑橘系のシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。それだけでも私は安心感を持てた。
それからしばらくしてお医者さんから私が数週間寝ていたことや友希那が毎日のように看病に来てくれていたこと等を聞いた。
そしてお母さんとお父さんも私の目が覚めたことを聞いたらすぐに来てくれた。お母さんは特に心配してくれてたみたいで私を見るとすぐに泣き出してしまった。
そして更に1週間ほど経って私は外出許可が降りた。声は出ないしまだ上手く歩けないけどだいぶ体を動かすことはできるようになった。
久しぶりに我が家へと帰ると蘭ちゃんたちが来ていた。みんな嬉しそうに私の所へと駆け寄ってきてくれた。
いつものように窓際の端の席で私が居ない間の学校でのことを話した。
話しも終えて私は病院へと戻った。ひまりちゃんが早く退院できるようにと手作りのお守りをくれた。形がちょっと変だが嬉しい。
病室に戻って30分くらい経った頃に友希那はまた来てくれた。
「羽沢さん、体の方は大丈夫だった?」
私はうんうんと笑顔で頷いた。それを見て友希那もふふっと笑った。
「なら良かったわ。あまりはしゃぎすぎないようにね」
友希那は微笑みながら私の頭を撫でる。それだけで嬉しくて顔のニヤけが止まらない。今日は色々な話を友希那にしてあげたかった。いっぱい話したいことはあるけど声が出ない今は我慢だ。
それから私と友希那は面会終了時間まで静かに2人の時間を過ごした。
こんな日が約2週間ほど続いた。リハビリも順調で声も少しずつ出せるようになった。
蘭ちゃん達も毎日来てくれて練習も無事に再開したようだ。ライブは私が退院して戻ったらやると言ってくれた。
Roseliaの方も活動を再開したらしくあこちゃんが嬉しそうにはしゃいでいた。
そして入院して2ヶ月が経った夏休みも終わる8月29日に、私は無事に退院した。
なんかね、自分でも微妙だなって思った