それぞれの夢   作:羽沢ちゅぐみ

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みなさんはたい焼きは尻尾から食べる派ですか?それとも頭からですか?もしくは背びれ?お腹って人もいます?

自分は尻尾の付け根からです


虚空の歌姫

12月24日、クリスマスイブ。

朝起きると私は携帯で時間を確認する。8:19、学校があれば飛び起きていただろうが既に冬休みに入っているのでそのまま布団にまた手を入れる。ひんやりとした空気で冷たくなった手がぽかぽかと暖められ、眠気が私を微睡みの中に誘い込んでいく。

 

_...を.......ら.....い...

 

 

 

10:37

再び私は目を覚ました。携帯が点滅している。誰かから電話だが出る気にはならない。今は一人がいい...いや、これまでも1人だった、そしてこれからも私は孤独だ。だって私は孤高の歌姫なのだから。

 

 

_私......げ.....いで

 

 

 

12:00

ぼーっと窓の外を眺めていたらいつの間にか昼になっていた。何も考えていなかったせいかもしれないが時間が経つのは早くて遅い。携帯はずっと鳴りっぱなしだ、もう放っといてほしい。私はおもむろに携帯の電源を切った。

 

 

 

 

私は坂道を駆け上がる。巴やひまり、氷川先輩達がずっと携帯を鳴らしていたのに一向に出る気配がない。業を煮やした私は怒りを抑え今井先輩に教えて貰った家へと向かっている。今一度電話をかけてみるが電池が切れているのか機械的な声が聞こえただけだった。

「っっっっ!!!!」

歯を食いしばって走る。沸沸と沸き起こる怒りを必死に抑えるが彼女の、私のライバルの腑抜けた顔面を1発ぶん殴ってやらないと気は済まなそうだ。

 

ようやく目的地が見えてきた。私は家の前まで来ると深呼吸をして気持ちを落ちつける。この時間なのでもしかしたら親御さんもいるかもしれない。慎重に、ゆっくりと深呼吸をし終わるとチャイムを鳴らす。

 

ピンポーン...

 

少し待ったが誰か出てくる気配はない。

 

ピンポーン...

もう1回鳴らすがやはり出ない。

私は少し後ろめたかったがドアノブに手をかけ、それを回す。するとゆっくりと、ドアは開いた。彼女の匂いが充満している。私は小声でおじゃましまーすと言うと鍵をかけて家の中へ上がった。

家の中はとても綺麗に片付いていて普通のどこにでもありそうな一般家庭といった印象。1階には誰もいない。2階へと上がると2つの部屋とトイレと思わしきドア。そして2つの部屋のうちの1つのドアには『Yukina』と木の英語ブロックが掛けられている。私はもう一度深呼吸してコンコン、とドアをノックする。

「湊先輩?」

呼びかけてみるが返事はおろか出てくる気配すらない。玄関に靴は無かったし鍵も掛かって無かった、もしかしたら出掛けているという考えがよぎる。私はもう1回同様にノックして呼びかけてみるが結果は同じ。私はドアを開けてみる。この部屋も、鍵はかかってない。

ドアの先に、湊先輩は居た。水色のパジャマ姿でベッドの隅に壁に寄りかかり膝を抱えて座っている。仄かな柑橘系の香りが漂う部屋は小綺麗で女の子の部屋としては少し殺風景、私も人のことは言えないが。

湊先輩は私が入ってきたことに気づいてないのか、じっと生気のない瞳で床を見つめている。その姿はさながら魂の入っていない人形を思わせる。

「湊先輩、お久しぶりですね」

返事は無い。聞こえていないのか、もしくは聞いていないのか。

「湊先輩!!」

肩を掴んで揺さぶる。手荒だがこちらに気づいて貰えるならなんでもいい。とりあえず話が出来る状態にしなければ。

「湊先輩!!!!そうやって腑抜けてても!!!つぐみは...つぐみは目を覚ましませんよ!!!」

彼女の瞳に色が戻る、その瞳はまっすぐと私を捉えた。次第に目が潤み、涙が頬を伝った。顔はクシャッと崩れ、いつもの関心なさげで綺麗な顔はどこにも無い。

「なんで電話に出なかったんですか...氷川先輩も今井先輩もみんな心配してるんですよ」

「知らない!!私に構わないで!!」

私の腕を振り払い傍にあった枕を投げつけてくる。柔らかい素材だったので痛くはないが私はプチンときた。右拳で彼女の左頬を思いっきりぶん殴った。鈍い音がして彼女は反動で頭を壁にぶつける。私の右手も徐々に鈍い痛みが広がり手を抑えた。だがここで、意外なことに彼女は反撃してきた。私の視界がぐるんと変わり、左頬に痛みが走る。殴られたと理解した時には、私は押し倒され、湊先輩は馬乗りになって私を抑えつけた。

静寂が流れる。私の頬にぽたぽたと彼女の流す涙が落ちては弾け、彼女の小刻みに震える手の振動が押さえつけられた腕から伝わってくる。

「お願い...もう放っておいて...!みんな...みんなどうせ!私から離れていくのなら!...私はもう1人でいい!!!」

その悲痛な叫びは、きっと彼女の本心だ。

「紗夜も、リサも、燐子もあこも!みんな...みんな私のせいで離れていく!前だってそうだった...けど、今回は前のようにいくはずない!」

彼女は手を離すと私の胸に顔を埋めた。嗚咽を漏らし、それに混じって呟いた。

「私なんて......いなければよかったのに......」

その一言に、私は、

「違う...違う違う違う!思ってもないことを口にしないでください!いなければよかった...?そんな甘ったれた事をつぐみが聞いたら、泣いて悲しみますよ!」

「やめて!!羽沢さんの名前を出さないで!」

「現実から目を背けないでください!湊先輩がやっていることは、みんなを...つぐみを裏切ってるんですよ!」

「やめてって言ってるでしょう!!」

湊先輩は私の胸を叩く。しかしその拳に力は無い。

「私はずっと1人だった!これまでも、これからも!」

 

「もう...やめてください!」

 

 

部屋に響いたのは蘭ちゃんでも、友希那でもない声。友希那はゆっくりと、こちらに顔を向けた。その顔は酷く暗く、涙でぐしゃぐしゃになっていた。




今回は一旦ここまで
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