まだまだ拙い文章ですが読んでくださると嬉しいです!
いつも通り
学校の屋上で、新しい歌詞を作ろうと一人作詞に励んでいた。
授業を抜けてきているので周りに人はいない。
全く進まない作詞作業にため息をつき、何か思いつかないかと綺麗に晴れた青空を見上げる。
春の暖かさを感じるとても気持ちの良い日だ。
ぽかぽかしていてなんだか眠くなってしまう。
今作らなければならないものではないから、と一旦手を止め、あたしは好きな日向ぼっこをすることにした。
寝転がると心地よい風が吹く。
「今日も気持ちいい日…」
こんなに気持ちのいい所で一度寝転がってしまっては起き上がるのは難しい。
あたしはそのまま目を閉じてしまう。
頬のあたりをぺちぺちと叩かれる感覚と、名前を呼ばれている気がする。
「おーい、らーん。らんってばー。」
重たい瞼を上げ、声の主を視認する。
「...ん、モカ...?」
「おー、やっと起きたー。」
モカも授業を抜け出して来たのだろうか。
「モカも授業抜けてきたの?」
「ちょー優等生のモカちゃんはそんな事しませーん。」
あたしは確か1限目の中頃に寝てしまったはずなんだけど...
「あれ、もしかしてもうお昼?」
パンを買い込んだであろう大きな袋を見ながら聞く
「そーだよー?蘭はいつから寝てたのー?」
「い、1限目から...」
「寝すぎでしょ、これはモカちゃんより寝るセンスありますね~。」
「別にそんなセンス要らないし…」
「そんなことよりお昼食べよ。」
そう言いながら大きな袋を置く。相変わらずすごい量だ。
「そんなに食べてて、なんでそんな綺麗な身体してんのよ…」
「ひーちゃんにカロリーを送ってるから~」
「全然意味分かんないし...あたしもお昼買ってくるから少し待ってて。」
立ちか上がろうとすると手を掴まれる。
「んーんー」
既にパンを頬張るモカに止められる。たくさん口に含んでいるせいで何を言っているのかさっぱり。
「ちょ、ちょっと!お昼買うだけなんだから待っててよ。あと、飲み込んでから分かるように話して。」
もぐもぐとパンを食べる。モカ。
「ん...。らんのお昼買ってあるよ~。」
「え?モカのパンしか見当たらないけど..」
「体重が気になる乙女なモカちゃんはこんなに食べませーん。」
「いや、普段からこれくらい食べてるでしょ。」
「むー、失礼しちゃうな~。普段はこっちの菓子パンと追加のフランスパンは食べてませーん。」
とは言うもののそれを除いても7個ある。十分多い。
「はいはい。」
あれ?モカはなんであたしの分まで買って、あたしのいる屋上に?
「モカ。」
「んー?」
ほんと幸せそうにパンを食べてる。...可愛い...って何考えてんだろ…!!
「な、なんであたしの分のお昼まで買って、しかも屋上に来たわけ?ここにいるなんて寝てたから伝えてるわけでもないし…」
「3限目終わった後の休み時間にたまたま屋上に来たら、らんが寝ててー。」
ごそごそとポケットから携帯を取り出す。
「らんのすーぱーかわいい寝顔写真を撮らせてもらったお礼に、と思いましてね~。」
と写真を見せつけてくる。そこには寝ているあたしの姿が。
「ちょ、ちょっと待って!!それ早く消してよ!」
「いーやー、もう一生の宝物リストだもーん。」
「意味分かんないし!」
無理やり携帯を取りあげようとする。
「あんまり乱暴にされるとAfterglowのグループに間違えて送っちゃうよ~。」
間違えるどころか正確な操作でSNSのグループ画面を開き写真を送ろうとしている。
「待って待って待って!ごめんってば!」
さすがにみんなに見られるのは勘弁してほしいので離れる。
「うんうん、仕方ないから待ち受けだけでゆるしてやろーう。」
「絶対にやめて!」
「えー、おねがーい。今日だけでいいから~。」
「だめ。」
「むー。」
そんなくだらないやり取りのせいでお腹がすいてしまった。
「...それより、パンもらってもいいかな?」
「いいよ~、あたしのおすすめフランスパンとこの菓子パンをあげる〜。」
「ありがと。」
ここは素直にくれるのかと少し驚いたが、ありがたいのであたしも素直にもらう。
「ん、これ結構おいしい。」
「でしょ~?最近発売されたんだー。」
二人で他愛もない話をしながらお昼を過ごした。
ーーとても安心できる。いつも通りの温かさ。
午後だけでも授業に出ようと思い教室へ向かう。
しかし、つまらないにも程がある。授業が、とかではない。
モカが、他のいつものメンバーが全員違うクラスのせいで軽い談笑すらできないのが、である。
「はぁ、なんであたしだけ...」
途端ものすごい寂寥感が押し寄せる。
クラスが違うだけ、と分かってはいても高校からはあたしだけ一人になってしまうような感覚に襲われる。
「この調子で1年間も過ごすのかな...」
暖かい春だというにもかかわらず、心は冷めていくような感じだった。
今日は、放課後みんなと集まってバンドの練習をする。この時間とみんなで遊んでる時間が一人じゃないって実感できるあたしにとって幸せな時間。
帰宅前のホームルームが長引き少し遅れてしまったので、早足でスタジオに向かう。
スタジオ前によく見かけるスタッフさんがいたので軽く挨拶する。
「こんにちは。」
「お、こんにちは!少し前に他のみんなは集まってたよ!」
みんなは既に着いているようだ。軽くお礼をしスタジオへ
「ありがとうございます。」
扉を開けるとほとんどセットは終わっていた。
「あ、蘭ちゃん!今日は遅かったね、何かあったの?」
近くにいたつぐみが声をかけてくれた。
「ごめん、何もないけどホームルームが長引いちゃって...」
「あはは、蘭ちゃんのクラスの先生話し長そうな人だもんね~」
それぞれ楽器の手入れをしていたが、みんなあたしに気づいてこっちへ来た。
「おぉ、蘭!屋上で昼寝でもしてたのか?」
冗談交じりに巴がいう。それを聞いてひまりが
「えぇー!蘭ってば寝てたの!?」
「いやいや寝てないし。ホームルームが長くなっただけだから。」
こんな何気ない会話がとても幸せに思える。
「らんー?なんでそんなに嬉しそーなの?」
「は!?なんでそうなんのよ!」
「顔に出てるよ〜」
にやにやとこちらを見るモカ。そんな事はないと思いながらも、恥ずかしくなってしまい後ろを向く。
「らんは分かりやすいよね〜」
何かとモカにはペースを崩される。
「うるさい!さっさと練習するよ!」
「ははっ、モカにはほんと敵わないな!」
「「そうだね!」」
ひまりとつぐみの笑う声が重なる。
「えへへ〜、いや〜それほどでも〜。」
いじられるのが好きなわけではないけど、このみんなでいる楽しい時間がずっと続けばいいのに…昔のままでいられたらいいのに。
あんなにふざけていても練習との切り替えはみんなしっかりしていた。リズムもよく音も伸びいつも通りの音が出てた気がした。なのにーー
「おい、蘭。大丈夫か?全然いつもの声出てないぞ?喉痛めてるなら言ってくれれば…」
「ごめん、考え事しちゃってて。次からはちゃんと切り替える。」
「そうか...無理はするなよ?」
「らーん。」
モカが抱きついてくる。あったかくて、優しい匂い。...ってーーー
「えっ...!?なに!どうしたの!!?」
意識した途端鼓動が早くなる。みんなが見てるのに抱きつく!?さすがに恥ずかしいでしょ!!?
「集中できるおまじないてきなー?というか、心臓すごい音してるよー?」
「集中どころかもう無理...」
小声で呟く。
「何か言った?あ、もしかして超絶美少女のモカちゃんに抱き着かれてドキドキしちゃってるー?」
いつものおふざけ口調。全くの図星であるが、そうだとは言えない。
「そんなわけないでしょ!ほら、さっさと練習の続きやるよ。」
「はいはーい」
「ふふっ、蘭ちゃんとモカちゃんはほんとに仲良いね!」
なんてみんなで笑いつつ、それぞれ自分の楽器のところへつく。今は練習なんだからあたしもちゃんと切り替えよう...
「さっきは止めちゃってごめん。この曲、もう一回行くよ。」
「「「「了解!」」」」
その後の練習は順調に進んだ。後半はあたしも上手くいったかな。
「お疲れ様、今日もみんな良かったよ。」
片付けをしながら皆に声をかける。
「お疲れさま〜、今日は練習終わりのパンたべたーい。」
「分かったからまずは片付けて。」
「モカはほんとにパン好きだよね~。私こんな時間には絶対食べられないよ..」
「ひーちゃんはこれ以上食べたら太っ...」
「だめ!それ以上は絶対言っちゃだめ!!」
「はははっ、日頃から運動しとけば大丈夫だぞ!」
「巴はスタイル良すぎだよ~!ずるい!」
「モカちゃん、早く片付けないとパン屋さん閉まっちゃうんじゃないの?」
「はっ!そうだった、みんな早く片付けよう!」
パンのことになると人が変わったように動きが早くなる。
「単純すぎでしょ...」
なんて無駄話をしつつも、ささっと片付けてスタジオを出る。
パン屋さんに行く途中、今日の練習や学校の事をみんなで話したり、日が落ちかけていればつぐみが一番星を見つけたりする。
中学までは当たり前だったし、今でも別に回数が極端に減った、というわけでもない。
でも、クラスが違うだけでずっと考えちゃうし、こんなに寂しいものなんだな...
「らんは何か買うの?」
突然袋を持ったモカに話しかけられる。もう会計を済ませたようだ。それと、さっきまでいたはずの他のみんなが見当たらない。
「え?ごめん。なんだっけ?あと、ほかのみんなは?」
「らんはパン買うの?って聞いたのと、トモちんはあこと約束してるって先帰ったし、ひーちゃんは食べたくなっちゃうから行かない!って言ってたし、つぐもおうちの手伝いって行っちゃったよー。」
「あたしは大丈夫。というか、みんなは帰っちゃったんだ。」
「ねーねーらん。今日はうちに泊まりに来てよ。というかきょーせーね〜。」
「いや、いきなりす..」
「うるさい。今日は黙って言うこと聞いて。」
この一言だけはいつものモカではなく、強めの口調ですごく真剣な様子だった。
「でも父さんが...」
「それはだいじょーぶ。らんパパの許可は取ってありまーす。」
とメール画面を見せてくる。いつの間に連絡してたんだろうか。それより
「いや、なんで父さんの連絡先知ってんの...?」
「幼馴染のパパくらい知ってて当然でしょ~。」
「ありえないって...」
「とーにーかーくー」
「はいはい、泊まりに行けばいいんでしょ。」
「素直でよろしい〜。」
そんなこんなで今日は強制で泊まることになった。
一度家に戻って準備をする。しかし、なぜ突然泊まれなんて言ってきたのだろうか。
まぁ、今日は金曜日だし明日は学校がないから別にいいけど。
それに前はみんなでうちに泊まったこともあるし...って、あれ、二人?モカとあたしで!?
考えるほどなんだか恥ずかしくなる。いきなり二人でなんてハードルが高すぎる...
でも、モカはただの幼馴染で、前はよく一緒に泊まってたからと自分に言い聞かせて気を落ち着かせる。
「...はぁ、全く一人で何考えてるんだろ...」
とは言いつつも、内心ちょっと楽しみにしている自分がいる。
ただ考えているだけでは仕方ないので、ひとまずモカの家へ向かう。
外へ出てみると、日はとっくに落ちていて少し肌寒い。もう一枚上着を着てこようかと思ったが、近いから大丈夫だろうと思いそのまま出発。
ほんの数分でモカの家の前についた。しかし、インターホンを押す手が震える。寒いからではない。なぜか緊張してしまっている。
もう5分は経ったと思う。未だに押せていないが、ずっと外にいても寒いし、埒が明かないのでもう押そうかといったところで電話が鳴る。
「わっ!?...なに?モカから...?」
「もしもし、らんー?」
「ん、なに?」
「さっきから家の下でなにやってるの〜?」
「えっ!?」
二階を見るとモカがこちらを見てにやにやしていた。全部見られてたの...?
「い、いつから見てたの...?」
「最初からだよ?というか、そのままじゃ寒いだろうし...」
と、窓にいたモカがいつのまにか居なくなっている。
少しの間をおき、玄関が開いて
「部屋においでよ。」
「う、うん。お邪魔します。」
「いらっしゃいませー♪」
なんだか上機嫌なモカにそのまま案内される。
「ゆっくりしてていいよ~、飲み物取ってくるね。」
そのまま出て行ってしまう。一人ですることもないのでただただ待つことにした。
少しして飲み物を持ってきたモカにお礼と、一番気になってたことを聞く。
「ありがと。あと、ひとつ聞きたいことがあるんだけど。」
「なんで泊まらせようとしたか、でしょ?」
「うん。」
「じゃあ、話すけどその前にお風呂入ろ~。」
気になってしょうがないが、このマイペースさはいつもの事なのでおとなしく待つことにした。
「...待ってるからさっさと行ってきて。」
「らんも一緒に、だよ?」
「..え...?」
自分の聞き間違いかと思ったが
「だからー、らんも一緒に入るのー。」
「は!?意味分からないでしょ!?」
「らん外にいたから寒いでしょ?」
「じゃあ一人で入れさせてよ!」
おもむろに携帯をとりだ...
「待って待って!それはずるいでしょ!」
聞く耳を持たず、ただこちらを見ながら写真を送ろうとしている。
写真を送られるのもお風呂もどっちもどっちだったが、みんなに見られるよりはまだ一人がいいと割り切り声を出す。
「分かったから!一緒に入ればいいんでしょ!!」
「最初からそうしてくれればいいのに~。」
はぁ...今日はずっと振り回されっぱなしだ。一体何なんだろうか...
先に入っててと言われたので、さっさと洗って出てしまおうと思ったが
「やっほー、らんー。」
「...っ!?」
手にはハンドタオルを持ち、身体に何も巻かず突然入ってくる。..無防備すぎてこっちが危ない...。
「そ、それじゃあ、先出るから...」
「湯船に入ってないでしょ?ちゃんとあったまってからー。」
と、手をつかまれる。もう考える事が難しくなっている頭では何もできず、言われるままに湯船に入れられてしまう。
熱すぎずぬるくもない、長く入っていらそうな気持ちのいい温度だった。
しばらくぼーっとしてたら、モカが入ってきてふわふわしていた意識がすごい勢いで戻ってきた。
もう高校生なんだから、幼馴染とはいえ同じお風呂に二人で入るなんて恥ずかしくてしょうがない。
「ご、ごめん!もう無理!先出るね!!」
慌てて出ようとするあたしを、後ろから抱きついてきてとめてくる。
「少しだけ、一緒にいよ...」
とても優しい声だった。
身体に触れる腕が、全てが温かく柔らかい。モカのぬくもり。
もうどうすることもできず大人しくする。
高校生二人で入るには少し狭いくらいの大きさ。時々お互いの足が当たるだけでびくっとしてしまう。とても顔を直視できるような状態ではない。
10分ほど経っただろうか。二人ともずっと黙ってしまっていてこのままではずっとお風呂にいることになってしまうので、こちらから切り出す。
「も、もう上がるね。」
「...うん。……らん。ありがとね...」
「え?何か言った?」
「なんでもないよ。」
「そっか。」
短く言葉を交わしてお風呂を出る。
あんなに近くでモカの事を感じられた。一緒にいられた。恥ずかしかったが、また入れたらな...なんて考えてしまう。
部屋で待っていると、もうすっかり普段通りのモカが戻ってきた。
「おまたせー。」
「ん、おかえり。」
お風呂のせいで忘れかけていたが、聞こうと思っていたことを聞く。
「結局、あたしを呼んだのはなんでなの?」
「ん~、理由は二つあるけど、まずはひとつね。」
「うん。」
「らん、高校入ってからちょっと元気なかったじゃん?でも、あたしたちとクラスが違うからってだけじゃないでしょ?」
「えっと、それは...」
「言いたい事とか悩みがあるなら言って。友達でしょ?それともあたしじゃだめ?」
「...だめじゃないけど..」
「じゃあ教えて。らんの調子が戻らないといつも通りじゃなくなるんだよ。」
いつも通りじゃ、なくなる..?それは、あたしが一番恐れていること。
それだけは絶対に嫌だった。みんなといつも通りでいたい。でも、
「あたしは...みんなとクラスが離れちゃって」
「ふと頭に、あたしだけずっと一人になっちゃうんじゃないかって浮かんで来たり...」
「もう昔みたいにいられなくなるような感じがして..!」
「らん。」
「なに..?」
「一人だけ違うクラスなのは寂しいと思うし、前とは違うかもしれないけどさー」
「たったそれだけであたしたちのいつも通りが無くなっちゃうと思うの?あたしたちがらんを一人にしちゃうと思うの?」
優しい声だった。そして、
「あたしはそんなうすーい日々を送ってきたつもりはないよー??」
自分では気付けなかったことを教えてくれた。
「モカ..ごめん。」
こんな簡単なことを忘れるなんてばっかみたい。勝手な思い込みで一人ぼっちなんて。
「これくらいじゃあたしたちは離ればなれにはならないね...!」
あたしには最高の友達がいるんだから!
「そうそう。あたしたちのいつも通りは不滅だよー。」
「そうだね!」
くだらないことで悩んでた自分が情けない、けど、それ以上にモカの、みんなの温かさを感じられて、とても元気をもらえた。
「あとね、泊まってもらった理由の二つ目なんだけどー。」
...忘れてた。もう一つ理由あるんだっけ。
「あ、そういえば言ってたね。それで、もう一つは何なの?」
「もう少し待ってね~」
それから数分が経過した。
「あのさ...まだ?」
「もうちょっとだからまって~」
もう何がしたいのか分からずにいると、突然携帯の通知音がなる。
それと同時にモカが抱きついてきた。一体何がしたかったのか分からずにいたが
「らんー、誕生日おめでとー!」
ちらっと携帯を見ると4/10 0:00と表示されてあり、ひまりと巴とつぐみからメッセージが来ていた。
「あたしの誕生日覚えててくれたんだ..えっと、ありがと。」
「そりゃー忘れないでしょ~、友達だからね~。さて、お楽しみの誕生日プレゼントは~...」
「モカちゃんでーす!」
「え、いや、何言ってんの!?」
何を言い出すかと思えば、自分をプレゼントしようとしてくる。
「みんなとはいつも通りでも、あたしたちの関係はもういつも通りじゃなくて特別になろうよ。」
「えっ?」
一瞬理解できなかった。けど、
「あたしはらんの事好きだよ?だから、あたしをもらってほしいなーって。それとも、らんはあたしの事きらい?」
瞳を潤ませて言ってくる。...そんなのずるいよ。
「...嫌いなわけないじゃん。」
「じゃあ」
もう離したくなくなっちゃうじゃん。
「モカはあたしのものだよ。」
「わーい、らんかっこいい~」
いつもなら何か言い返していただろう。でも、今はとても嬉しかった。
「それじゃあそろそろ寝ますか~。」
「うん。」
「誕生日のらんにはあたしのベッドを使ってもらいまーす。」
と、ベッドに寝かされる。
「じゃあ、モカはどこで寝る気なの?」
「余ってる布団でも敷くよ~」
そういうモカの腕を引っ張り、ベッドへ乗せる。
「あたしのモカなんだから一緒に寝るよ。」
ちょっとカッコつけてみたもののめちゃくちゃ恥ずかしい。でも、
「え、あ...!!うん...。」
珍しく顔を赤くしたモカが可愛かったから、よかったかな。
みんなにありがとうと返信して、後ろを向いてしまったモカを抱きしめる。
「モカ、すきだよ。」
「あたしもだよ...らん。」
ふたりくっついてそのまま眠った。
次の日の朝、朝食をごちそうしてもらった後、支度をしてモカの家を出る。
「じゃーまたあとでねー。」
「うん、またあとで。お邪魔しました。」
今日は午後に練習がある。昨日は歌詞なんて考えてもまったく思いつかなかったが、今はすごい書ける気がしてきた。
家に帰りながらメモをし、帰ってからはフレーズの追加と歌詞のまとめ作業。
今までにないくらい良いものができたと思う。
【 True color 】
作詞をしていたらあっという間に練習の時間になる。
スタジオへ行くと、わざわざ早く来たであろうみんなが、プレゼントやお祝いの言葉で出迎えてくれた。
練習を始める前にみんなに伝える。
「みんな、わざわざありがとう。あと、最初に言っておくね。昨日はごめん。くだらないことで考え事してて集中できてなかった。でも、もう解決したから大丈夫。」
「それと、一つ歌を作ってきたから聞いてほしいんだ。あたしからみんなに伝えたいことを歌詞に載せたから。」
「おー、それは気になりますな~。」
「それは楽しみだな!」
「蘭ちゃんの歌、毎回すごくいいから気になるね!」
「早く聞かせてー!」
「うん。今回は自信作だから。聞いて、True color!」
変わる事がとても怖かった、今の幸せを失うかとーー
移ろい行く日々の中、全員がいつも通り一緒にいるために、今日も歌い続ける。
お読み頂きありがとうございます。これからも練習していくのでよろしくお願いします。