部屋でそんな風にしていると、金髪の少女は、小さな声で「下に」と呟いた。
下?下に何かあるのか?私がベッドの下を覗き込むと、少女は違う違う、とクスクス笑いながら手を拱いた。どうやら私達が今いるここは2階で、下の階に来いということらしい。
大人しく従って、少女についていき木造の階段を、手すりに捕まりながら下の階に降りると、髪の長いふくよかな女性がこちらに気付き、カウンター越しに「おう」と声を掛けてきた。
「もう体は大丈夫なのかい?」
心配した様子で聞かれたので、「もう大丈夫です」と私は返した。
「そりゃあよかった。あたしの名前は、ジェニファー山本。ここはあたしがやってる宿屋だよ。」
気さくな雰囲気でジェニファーさんが話してくれた。
「私は…ミノリです。」
名乗られたので、私も自分の名前を言った。
「そうかい!ミノリ、それで、あんたは一体全体どこからどうやって来たんだい?」
「どこから…どうやって?」
落ち着いて思い出してみようにも、今起き上がってからの記憶しか思い出せない。自分の名前しかわからない。私はどこから来たんだろう。どうして、ここに来たんだろう。何故、何も思い出せないんだろう。
「ごめんなさい、何も思い出せないんです。」
「…こりゃあ驚いた。名前以外何も思い出せないのかい!」
弱ったなあ、といった風にジェニファーさんは金髪の少女と顔を見合わせた。
「あぁ、そうそう、これはミノリを見つけた時に、着ていた服と、持っていた荷物だよ。」
ジェニファーさんは、カウンターの下から丁寧に畳まれた深緑色のワンピースと、グリッターグリーンの装飾が施されたフェアリポンを取り出し、私に渡した。
「こっちのワンピースは”ブリタニアエンチャント”のワンピースだねぇ。”エメラルダウェア”、魔力を引き出してくれるある一種の魔法着に…フェアリポンだけど、データか何か、記憶の手掛かりになるものは、入ってないのかい?」
エメラルダウェア?私が着ていたのか…。見覚えがない。着ていたというのだから、着ていたのだろう。肝心のフェアリポンの方は…。
「ダメだ、データ、からっぽ…メールも連絡先も、写真も何も入ってません…。」
残念。あーあ、一体自分に何があったんだろう?
「うーん、そうかい、まあそんなこともあるさね。」
ないよ。普通。
「そういえば、ジェニファーさん、私がその服を着ていたってことは…。」
今私が着ている、この服は?
「ああ、だいぶこっちのワンピースが汚れていたんでね、洗って、破れてた所は修繕させてもらったよ。ミノリが今着てるのは、古着をちょっと手直ししたものさ。返されても困るし、それを着ていきなさいね。」
「そんなことまで…ありがとうございます。」
ジェニファーさん、なんて優しいんだ…。ん?着ていきなさいって…私はこれからどこに行けばいいんだろう?
「そうそう、王様がミノリのことを呼んでいたよ。多分、どこから来たのかとか、根掘り葉掘り聞かれると思うけど、わからないならわからないって、正直に言って大丈夫だからね。」
えっ、王様?そりゃ、そうか、急に国に部外者が来たら、スパイか何かの使者かと思うのが普通だよね。
「ありがとうございます。行ってきます。」
「おう、気を付けるんだよ。まあ、お城まではここから北に一本道だから大丈夫だと思うよ。」
道まで教えてくれてしまった。どうしてこんなにジェニファーさん、親切なの?
金髪の女の子も手を振って見送ってくれた。
さて、お城に行かなくちゃ。
ゲーム本編では服のくだり無いですけどアレンジです。
ジェニファーさんもこんなに喋らない。
あと、主人公を見つけたのはゲーム本編では王国兵士で、導入も王様からですが、
この作品は「エメラルド」なので、多少差が出ると思います。メインヒロインはピノですしお寿司!
シンデレラに見つけてもらった事になってるし、導入は…(もう分かっちゃっただろうか)
そして、果たしてこのまま、ミノリはお城に直行できるのでしょうか?