迷った。
北へ一本道と言いながら、どうやら南に来ていたらしい。ここは、どこだ。
自分が方向音痴だという事を忘れていた。名前以外忘れてるから当然か。情けないよ…。
おろおろと迷っていると、後ろの方から「どけどけぇー!!!」と大声が聞こえた。
「だからぁ〜!!俺じゃねえんだよ〜!!信じてくれよぉ〜!!これは元々俺の財布だ〜!!」
人を見かけで判断するのは良くないが、いかにも小悪党、盗人、というような見てくれをした、目つきの悪いおじさんが、猛スピードで駆けてきた。
「しらばっくれるな!財布を盗んだのはお前だろ〜!!」
黄色いバンダナをした、トンがった白い髪の少年がその盗人を追いかけていた。他にも女の子や大柄な男の人、そして謎のタケノコモンスターなど、お祭りか?パーティか。とりあえずそういった一行が、盗人と大チェイサーゲームを繰り広げながら、交差点を突っ切っていた。
「子どものはしゃぐ声は、聞いてるだけで元気になるわねぇ」
と、横目におばあさんが歩いていった。
子ども?今の少年、子どもというには少し大きすぎる気もするが…。人は見かけによらないし、おばあさんにとっては小学生も大学生も同じ「子ども」なのかもしれない。それはともかく。
「お城は一体、どこなの…?」
とぼとぼと歩いていると、大きなお店が見えた。”WEAPON”と大きい文字で看板が掲げられていた。武器屋だ。お城の場所聞いてみようかな。そう思い、店に入る事にした。
店内はしんとしていた。電気も消えていて静寂に包まれていた。扉は開いていたのに、どうしたのだろう?
「すみません、誰かいますか?」
返事はない。
カウンターの奥に目をやった時、は、と私は息を呑んだ。
白い体をした背の高い人形が、時が止まったようにじっと佇んでいた。
飴細工のような艶やかな体をしていたので、私はみいってしまった。頭部や腕に刻まれた繊細な一本のライン、顔であろうと思わしき液晶も、私にとって、あまりにも美しく”儚い”ものだった。
「お客さんか?」
背後からそう声がして、我に帰った。現実に引き戻されたような感覚だった。
「すまねえな、今そいつの調整中でよ、店は準備中なんだ。」
武器屋の店主らしい、白いひげを蓄えたおじいさん…(と言ったら怒りそう)が申し訳なさそうに言った。
そいつとは、私が今じっと見ていた人形のことだった。調整中…?動くのか?
「見ねえ顔だな?」
店主のおじさんは、黙ってる私に訝しげにといただした。
「わ、私この国に来たばかりで…ミノリと言います。お城に行く途中でした。」
返答がしどろもどろになってしまった。その人形を見つけてから少し気が動転していた。そもそも、何故動転したのかはわからないが…。
「お城はここを出て北の方角だぜ、お嬢ちゃん、それよりもお城に行くより前に武器屋に何か用があったのかな?」
「あ、あ、ありがとうございます。」
何かここにいてはいけないような気がして、急いで武器屋を飛び出そうとした。
「おう待て、そう急ぐな。俺はカルボナーラ。もし王様に何か頼まれごとだったら、うちの武器をごひいきにな!」
「は…、はい。」
爽やかな笑顔で、私はカルボナーラさんに見送られたのだった。
さて、お城に急がなくちゃ…。
やっぱ寄り道したよね。ロミジュリの店やコンビニには行きません。多分。