スナックワールド トレジャラーズ エメラルド   作:アメデス

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第5話 午後零時の魔法

 私は本当のところ、地図が読めないらしい。今まで読めているつもりだったけれど、気がつくといつも目的地と違う場所にいる。つまり、四文字熟語で言うと、方向音痴?迷って辿り着いたここは、コンビニだった。

 「おぉ!!さすがはチャップさんでゴワス!!」

 コンビニ店内で騒ぐ一行の声がする。あれはさっき(第3話)、泥棒と追いかけっこしていた一行か。何をしているんだろう?

 「一発くじ、まさかのA賞、クリスタルソード当たっちゃったよ!早速デカ化してみるね!」

 そう行って黄色いバンダナをした、逆立った白い髪の少年が、ジャラのクリスタルソードをフェアリポンにかざした。

 「フォース オブ マ〜ジック♪ブリタニア、エンチャント♪”クリスタルソード”!」

 クリスタルソードが読み込まれると、フェアリポンからどこか懐かしげなメロディが流れ、さっきまでキーホルダーサイズだった剣が、人が斬れるほどの大きさに”デカ化”した。

 「スッゲー!かっこいいー!」

 「ちょっとチャップ!店内でデカ化したら危ないでしょうがっ!」

 「ブヒ〜〜!」

 賑やかな人達だ。チャップと呼ばれた男の子は、えへへと笑いながら、クリスタルソードを元の大きさに戻した。

 「だって〜、ついカッコいいなあって…あれ?君も一発くじを引きに?」

 こちらに気付き、一行の視線が私の方へ向く。

 「一発くじ…?」

 少し俯きがちになってしまったが、言葉を自然に返せただろうか。

 「今オレらが引いてたやつ!いくつか券が余ってるからキミにもあげるよ!」

 明るさがまぶしい人だ。

 「あ…、ありがとう。」

 「ただ、A賞はチャップが今引いちゃったからもう無いぞい。」

 タケノコモンスターが喋った。

 「まあ、今引かなくても、次のが入荷された時に引けばいいかもね。」

 黒いハート型の髪留めに、2つのおさげをした女の子が付け加えた。

 「次の一発くじはダークワンドでゴワスか。」

 わいわいと盛り上がっているチャップ一行。私は商品をひとしきり見た後、コンビニを出た。

 

 フェアリポンが鳴った。王様からのスナラインだ。

 「ミノリ!無事に辿り着けたかね…ってどうやらコンビニの近くにいるようじゃな」

 「そんなことまで分かるの?」

 驚いて王様に聞くと、どうやらフェアリポンにGPSが搭載されているらしい。つまるところ国家の犬か。言うなればフェアリポンはその犬の首輪…なんてね。

 「コンビニはクエストに役立つ商品が取り揃えてある。行っておいて損はないじゃろう。だが、今行くべきはあっちじゃ。しばらくまっすぐ歩くと、宿屋が見えるじゃろう。そこの交差点を左に曲がるのじゃ。」

 贅沢な事にも、王様による道順ナビゲートが始まってしまった。よっぽど酷い方向音痴だと思ったらしい。申し訳ないけれども、それに従って進む事にした。王様も意外に暇なのかな?

 「決して暇ではないぞ、階段を上がったら右手にBarが見えるじゃろうが、そちらには行かず西の方へ進むんじゃ。そっちではない。逆じゃ。」

 王様優しいなぁ。

 「そのまままっすぐ歩くと、左手の方に靴のような看板をかけた家が見えるはずじゃ。そこに行って欲しい。」

 「王様、見えました。」

 王様の指示通りにその家に入ると、なんと中には、私を見つけてくれた、さっき(第1話)の金髪の女の子…シンデレラが居た。

 「レクチャーをつけてくれる教官って…?」

 シンデレラを見て、まさかとは思ったが。

 「おお、無事に着いたな。実はシンデレラくんは、王宮直属の兵士訓練隊長なのじゃ。その昔、エリート特殊部隊「ガラスの靴」で大隊長まで上り詰めた、豪傑であるぞ!」

 「ええっ…?」

 私は困惑した。目の前にいるシンデレラも、困惑している様子だった。いや、彼女はいつも困惑した様子だけれども。

 「…ふんっ!!」

 俄かに、シンデレラは懐から指揮棒を取り出すと、天高くそれを掲げた。するとどうだろう。瞬く間にシンデレラの服は迷彩の軍服に変わり、目つきは鋭く、頭には赤のハチマキが巻かれ、ストレートだった金髪は荒々しいウェービィに早変わり。

 「ミノリよ!王様から話は聞いている!」

 先ほどからは思いつかないような、男性らしい野太い声が私に語りかけた。

 「今日からは隊長のオレが、お前をみっちりシゴいてやる!」

 えっ…えええー!!!??王様!これ、どういう事ですか!?スナラインの画面を見ようとしたが、シンデレラ”隊長”にそれを制止される。

 「よそ見をするな!返事は!」

 隊長に返事を求められる。

 「は、はい?」

 「イエッサー!!!だ!!!」

 「い、い、イエッサー…」

 「声が小さいぞ!!!」

 「イエッサー!!!」

 「うるさいぞーー!!!」

 ど、どうすりゃいいんだ…!?

 

 今日から隊長と2人、特訓の日々が始まった。


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