突然低い声が頭の中に轟いて私は飛び起きた。
目の前には三百眼の見知らぬ男がいた。
私を睨んで見下ろしている。
男は白のワイシャツに茶色のズボン姿で歳は自分より少し年上くらいか。
家の者ではないことは明らかだった。
ちらりと周囲を見回すと男の他に銀髪の青年と赤髪の少女が遠目からこちらを見守っている。
「おい、お前は何者だ。何しに地下街へ来た?」
言っている意味がわからなかった。
私に何者だと聞いてきた彼は私を知らないのだろう。
けど、何をしに地下街へ来たのかという質問はどういう意味か。
「………地下街?」
「そうだ。倒れていたのをこの俺様が見つけてここへ連れてきた。お前のような身なりの純粋な東洋人はすぐ殺されるからな」
私は男が何を言っているのか訳が分からなかった。
倒れていたことはわかるけど地下街って何?
殺されるってどういうこと??
「ここは、日本ではないの?」
「ニホン…?なんだそれは…」
男の言葉に私は言葉を失った。
え?なんで?日本を知らないの?日本語を喋っているのに??
「ニホンというのは君のいたところかい?」
銀髪の垂れ目の青年が聞いてきた。優しそうな顔をしているがその外見に騙されてはならない。質問のタイミングがドンピシャだ。私をよく観察している。
「ええ、まあ……」
言葉を何とか絞りながら慎重に答える。
この人たちは何なのか。よく見れば銀髪の青年も赤髪の少女も目の前の男と同じような格好をしている。
「フン……知らず知らずのうちに連れ去られたクチか」
「連れ去られたって…、そんな…」あり得ない。私が誰かに連れ去られるとしたら家に帰されるだけだ。
ここは家じゃない。
病院でもない。
「信じられないのも無理はないがな…。まあいい。元の場所に帰してやらんでもないが…」
「やめて!あの家には絶対に帰りたくない!」
ベッドから立ち上がって大声を張り上げると男はニヤリと笑う。
「…そうか。それならうちで面倒を見てやってもいいが…、タダじゃねえ…」
男は私を金持ちの家の人間だと思っている。事実そうだ。お金で解決できるならそれが一番手っ取り早く安心できる。
「お金が必要なのね」と答えた。
「そうじゃない。お前の身体で払ってもらう」
「………っ…!!」
ここは危険だ。すぐに逃げなければ。
思うと同時に私はすぐにドアを開けて外に出た。
「おい待て!」
後ろで声がしたが足を止める気は全くない。ここは危険だ。捕まったら何をされるかわからない。
角を曲がって出た通りを無我夢中で駆け出した。